そいつは、いつだって隣にいた。いっつも隣にいて、飽きもせずに適度な距離でそこにいてくれた。

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診断メーカーででた結果であるCharaに「後悔、してないな?」を言わせたかっただけ。
だって完全にセリフが尊いんですもの。そりゃ書きたくもなっちゃうよね。うん。仕方ない仕方ない。

んじゃま、ホンへどうぞ~。


私にたった一人だけいる、ニンゲンの――

 そいつは、いつだって私の隣にいた。いっつも隣にいて、飽きもせずに適度な距離でそこにいてくれた。

 心の、支えだった。支えになってくれていた。そんな奴を、私は今からどこまでも私のためにしなかならない計画に使おうとしている。

 

 どこまでも不思議な奴だった。いっつも一人称も内面も変わっていて、その癖根にはいつだって変わらない優しさがあった。

 本当に、底抜けにいいやつだった。地下に落ちそうになった時だって、何も考えずに手を伸ばして……そして一緒に落ちてきた。

 地上にいたころから縁のある私とそいつの関係は、言葉では言い表せないようなものだ。計画をもとに表すのならば共犯者、協力者など…該当するものはあるが、どうしても的確であるとは思えない。こいつは決して人の事情に入り込みすぎず、かといって遠くにいるわけでもない。

 こちらから手を伸ばせばすぐに届く場所。そこにいる奴だった。

 

「Charaちゃんはもしかして怖気づいてるの?」

 

 私の足が止まっていることに気が付いたのか、そいつは少し先からニヤリと大きく口を歪めながら聞いてくる。そんな訳がないだろう。そう返せば悪戯が好きだと物語るような笑顔になって"あらあらそうですか~?"なんて煽ってくる。

 いつも通り、訳の分からない奴だ。本当に、変わっていない。私に少しでも異変があれば誰よりも先に気付くし、気付いたことに対してそれとなく答えを聞きに来る。直接的でないのは私の性格が原因なんだろう。どうにも、素直に大丈夫かと聞かれると無理をしやすいみたいだから。

 駆け足のような形で私は追いかけて、隣に並ぶ。そうなるのが当たり前だと言わんばかりにまた歩き出すので一歩でも先に進んでやろうとすれば、何も言わずについてくる。

 

 本当に、こいつの隣は居心地がいい。できることならずっとこのまま、なんて思ってしまうほどに。包み込むという表現は少し違う。こいつの場合は……なんというか、合わせてくると言うべきだろうか。

 ふわふわとして、形を掴ませないで。クッションみたいに柔らかく受け止めて、一番楽な形になる。いや、それも少し違うのか。………ともかく、表現が難しいのだ。

 いつもいつも、欲しいものを欲しい形で与えてくれる。なにか礼を尽くそうとしたら、その機会がいつの間にか作られている。望んだものに成る……と言うのが一番近いだろうか。

 本人曰く、ただ"空気を読んでいるだけ"らしいが。

 

 ……すぐ隣にいる奴のことを考え続けるのは思っていた以上に気恥ずかしいな。

 そう思ってそれまでの思考を止め、計画へと中心を移し替える。

 

 計画、とは言ってもそう大層なことではない。ただ少しだけ払う犠牲があるだけの、なんてことはない計画だ。

 ………いや、実際のところは大層な計画とは言ってもいいのだろう。だからこそ犠牲が必要になっているのだから。そしてその犠牲となるのが……今、隣にいる奴なんだ。

 本当ならもっと小規模な、少々私が傷を負う程度で済ませるつもりだった。けれどそれで満足しきれない私の内心に気付いていたのか、こいつが妙に煽ってくるせいで乗ってしまった。

 正直未だに少し迷いがある。こいつを犠牲にしてもいいのか、とか。こいつを犠牲にしてまで得たいほどのリターンが本当にあるのか、とか。

 すでに計画を練って、もう実行するだけの段階であるはずなのに未だに私は迷っている。

 

 こういうのを優柔不断というのだろう。…ケツイを固めたら直進する、普段の私とは大違いだ。

 いや、もちろん作戦も何もなしに直進するわけではないのだが、それでも実行に際して迷いはなくなっているのだ。普段の私であれば。

 まだ迷っているというのは普段と比べてケツイが弱いことの証明だ。これではいけないと頭ではわかっているが、中々身を伴わない。

 

「よし、着いたな」

 

 隣から聞こえたその声にうじうじと悩み始めていた私は現実を受け止めなくてはならなくなる。

 もう、時間切れなのだ。

 私は隣にいる心優しいニンゲンを私の為に利用しなければならない。

 私は隣にいる親愛なるニンゲンを犠牲としなくてはならない。

 私は隣にいる素晴らしいニンゲンを……切り捨てなくてはならない。

 それはとても難しいことで、けれどそうしなくてはいけないことだ。この計画は、きっと誰にも止めることができない。

 認めよう。この先の行動は、作戦の末に得られるものは、ただの自己満足だ。

 ただそれを見たいという私のエゴだ。そのエゴを叶えるために、私は、何の罪のないこいつをイケニエとして捧げようとしている。

 

「後悔、してないな?」

 

 思わず、そう問いかけてしまう。もう計画を実行に移すまで秒読みだというのに、聞かずにはいられなかった。

 それを聞くと、そいつは目を丸くして、あっけからんといってのける。

 

「トーゼンでしょ!」

 

 二カッと、爽快に笑うその姿は、きっと心から出る気持ちの表れなのだろう。一切の曇りがない。それならいいと、そう返したところであいつは行ってしまった。

 これまでずっと隣で見てきたはずの、手を伸ばさなきゃいけない距離だったはずのその背中は、なんでか、手を伸ばす必要すらないほど近くに見えた。




計画の中身
 設定上はAsrielへの告白。ただしオリキャラを強引に突っ込ませ、それを助けるような形で入るという作戦。別名泣いた赤鬼大作戦。

Chara
 性別指定はない。お好きな方で想像を。オリキャラのおかげか余裕があるのでマイルドになってる。悪戯好きだと作者が嬉しい。具体的には悪戯して怒られた後に「相棒、次はどうする?」とか言われたい。

《ちなみに原作ではあなたこんなことしてたんですよ》
Chara「モンスターを地上へ…? 私のソウルを使って? いや、あいつが私を死なせるはずがないだろう。たしかにモンスターは優しいし、ニンゲンは基本的に屑だから地上と地下を入れ替えた方がって考えたことはあるけど…。たしか、ソウルがいくつか必要なんだろう? 仮に地上に出たら戦争が起きそうだってのもあるし…そもそも地上に出すために彼らに手を汚させるなんてできないじゃないか。あいつだって言っていたよ。"落ちてきたオイラたちみたいなニンゲンに、死後ソウルを使ってもらって構わないと思わせればいいんじゃないか"って。"ちなみにだけどワタシのはもちろん使っていいからね!"とも言っていたかな」

オリキャラ
 人をダメにする…と言うわけではないが内側に入り込むことに特化したニンゲン。性別不明だったりする。というか本文にて自由意志がロクに認められていないためキャラ設定もロクにない。コロコロとキャラ(Charaに非ず)が変わるらしいですね。すっごいSansにけーかいされそうだなっておもいました(小並感)

【挿絵表示】

保育士かな?


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