空母探偵龍驤ちゃんと七人の駆逐艦たち   作:すたりむ

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第肆話:龍驤ちゃんと『サイレン』(1)

「おーっす龍驤ちゃん、調子どーお?」

「おや、小田切かいな。こちらはぼちぼちやな。そっちは?」

「順調だよー。やっぱわたしみたいな知的美女には、後方での情報整理が向いてるみたいだね!」

「あーうん。で、なんかあったん?」

「こら、ちょっとは突っ込んでよ! 関西の血はどこにいったのさ!?」

「うちは生まれも育ちも神奈川や。前も言ったやろ?」

 

 龍驤はけろりと言って、それからまだぶつぶつ言ってる小田切から書類を受け取った。

 そして、渋い顔をする。

 

「なるほど……こりゃまあ、たしかに小田切は後方やないとあかんわ」

「だよねえ」

 

 ふたりして、ため息。

 

「なにしろよりによって……これは、マジモンのテロ行為やからね」

 

 

--------------------

 

 

「サイレン?」

 

 ヘイヴィアの言葉に、龍驤はうなずいた。

 

「せや。サイレン」

「って、あの警報みたいなあれだよな。それがなんなの?」

「まあ普通の使い方は警報なんやけどな。語源が問題やねん」

「語源? というと?」

()()()()()

 

 龍驤は言った。

 

「ギリシア神話に出てくる海の怪物や。歌声で船を惑わせて、座礁させる」

「ほー。それがどうして問題になると? タンカーでも沈めるの?」

「ヘイヴィア。うちらはなんやったか、覚えてへんの?」

「……あー。『艦娘』か」

「そうや」

 

 龍驤は、厳しい顔で言った。

 

「うちらはみんな、出身である世界は違えど『艦娘』……つまり、船や。敵が今回狙っている『サイレン兵器』は、致命的やねん」

「なるほど。俺たちの弱点をピンポイントに狙ってきたってわけか」

「そうやね。笹目ちゃんたち『サーティーンナンバーズ』の情報網がなければ、不意打ち食らってたな」

 

 龍驤は渋い顔で言った。

 ヘイヴィアはうなずいて、

 

「だが、わかったからといって対策はどうする? 食らったら無力化されるってんならどうにもならなくね?」

「いや、サイレン兵器自体は、まだ構想段階……っちゅうか、材料がないねん」

「材料がない? 材料が必要なのか?」

「呪術やからな、これも。基本的には、『沈んだ船』に関係する物品がないとあかんのよ」

「沈んだ船……タイタニック号とか?」

「まあ、それも一つの手やけどな。うちら基本的には軍艦やから、沈んだ軍艦関係の物品が一番ええんやな」

「なら、靖国神社とか、大和ミュージアムからなんか盗むとか?」

「もちろんその可能性もある。けど、ああやって奉られてる物には、怨念的な力が浄化されてもうて、あまり有効ではないねん。やっぱ、人目にはあまりつかないところで、現存している物がないとあかんのやね」

「海外でダイビングしてとってくるとか?」

「それは有効なんやけど、相手もそのへんにコネ持ってるわけやあらへんからな。今回のターゲットは国内や」

「じゃあ、どこに……?」

 

 不思議がるヘイヴィアに、龍驤は告げた。

 

「実はな……日本では、戦前と戦後で()()()()()に差があってな」

「鉄の作り方? 製鉄所とかの?」

「せや。戦後、鉄には放射性元素が意図的に混ぜられるようになったんよ。放射線を測定することで、作ってからどのくらいの時間が経ったかを計れるようにするためやね」

「ほー。で、戦前の鉄にはそれがないと?」

「そ。せやから、逆にデリケートな作業――たとえば放射線測定装置なんかには、戦後の鉄は使えへんのや。しかし戦前の鉄がそう余っとる場所もそれほどない……ということで、その種の関係者が目をつけたのが、謎の事故で日本近海で爆沈した、戦艦の鉄やったわけや」

「じゃあ、それが……」

 

 ヘイヴィアの言葉に、龍驤はうなずいた。

 

()()()。放射能実験施設に置かれた、かつての戦艦陸奥の残骸である鉄が、今回の敵さんのお目当てっちゅうことやね」




【おことわり】ちょっと忙しいせいで執筆が滞っております。更新はもう少しだけお待ちください。
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