ハイスクールD×D ~神魔兄弟の奮闘~   作:さすらいの旅人

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今回はイッセー視点です。


第十二話

 エリーについては兄貴に任せた俺――兵藤一誠は、先生が帰って来た後に匙とヴァーリと一緒に転移魔法陣で兵藤家から飛んだ。

 

 以前に兄貴と一緒に出会ったアイツを呼び寄せる為だ。どうやら特別に用意したところで意識を呼び寄せないとダメらしい。

 

 着いた場所は白い空間だ。辺り一面真っ白な空間で何もないかと思いきや、視界に入った先には大きなドラゴンが佇んでいた。

 

「先日以来だな、お前たち」

 

「タンニーンのおっさん!」

 

 元五大龍王タンニーンのおっさんがいた。ミドガルズオルムを呼び出すのに各ドラゴンの力が必要だと言ってたから、ここにいるのは当然だ。

 

「……ふむ、そちらがヴリトラか」

 

 おっさんが匙を見る。その匙はおっさんを見た途端にビビッて全身を震わせていた。

 

「ド、ド、ドラゴン……龍王! 最上級悪魔の……!」

 

 見ただけで緊張と尊敬が混じってる様子が分かる。

 

「緊張し過ぎだぜ、匙。このおっさんは強面だけど、いいドラゴンなんだからよ」

 

「ば、バカ! 最上級悪魔のタンニーンさまだぞ! お、お、おっさんだなんて無礼にも程があるぞ!」

 

 まぁ確かに匙の言う通りだろうな。俺も最初におっさんと会った時はすげぇ緊張した。けどまぁ、友好的なドラゴンだって分かってるから、畏まる事も無く普通に接してる。

 

 すると、匙が俺に指を突きつけて説明しようとする。最上級悪魔について云々と。

 

 冥界でも選ばれた者しかなれず、更にはレーティングゲームの現トップ10内のランカーが全員最上級悪魔。冥界での貢献度、ゲームでの成績や能力、それら全て最高ランクの評価をしてもらって初めて得られる、悪魔にとって最上級の位だと。

 

 嘗て兄貴と一緒に冥界で修行しに行った時に知ったが、匙からの説明に改めて認識した。

 

 最上級悪魔か。何れ聖書の神(あにき)を倒すには不十分な物だが、転生悪魔になったばかりの俺には辿らないといけない険しい道だな。そこは地道に頑張るしかないか。

 

「……白龍皇か。兵藤隆誠から聞いてはいるが、妙な真似をすればその時点で俺は躊躇いなく噛み砕くぞ」

 

 睨みながら警告するおっさんに、ヴァーリは苦笑していた。

 

 そんな中、先生は術式を展開し、専用の魔法陣を地面に描いていく。光が走って行き、独特の紋様を形作っている。

 

「しかし、あやつ、本当に来るのだろうか。俺も二、三度程度しか会った事がない」

 

 嘆息しながら呟くタンニーンのおっさん。

 

「二天龍がいれば否でも応でも反応してくるだろうさ」

 

 先生が魔法陣を描きながら言う。

 

「多分ですけど、俺の闘気(オーラ)を感知したら来てくれると思いますよ」

 

 俺の台詞に先生やおっさんだけじゃなく、ヴァーリと匙もこちらに視線を向ける。

 

「それはどう言う事だ、兵藤一誠?」

 

「まさかとは思うが、ひょっとしてミドガルズオルムに会った事があるのか?」

 

「ええ。前に兄貴と一緒にヴァルハラへ来た時、オーディンの爺さんから許可貰って深海に行ったんですよ」

 

 兄貴から海の中でも自由に移動出来る『潜水の加護』って術を施されてな。あの時は人魚気分で泳いでたから凄く楽しかったよ。まぁ兄貴から『アホなことをやってないで、さっさと行くぞ』と窘められたけど。

 

「ミドガルズオルムと一通り話した後、機会があったらまた会おうって約束もしまして。兄貴から聞いてませんか?」

 

「初耳だ。出来ればそう言う事は前以て話してくれ。ったく、リューセーの奴……」

 

 兄貴に対して悪態を吐く先生だが、それでも魔法陣を描いている手を止めていない。

 

「となると、兵藤一誠は知っているんだな? あやつの怠け癖を」

 

「ああ、最初は起こすのに俺や兄貴も苦労したよ。聞いた話だと、アイツは世界の終わりまで深海で過ごすと言ってたけど、アレってマジなのか? 俺はてっきり冗談かと思って聞き流していたけど」

 

「残念だがそれは本当だ。俺も数百年前に聞いたから間違いない」

 

「ええ~……」

 

 あれはやっぱりマジで言ってたのか。一緒に聞いた兄貴が溜息を吐いていたのって、本当にやると思って物凄く呆れていたんだろうな。

 

「さて、魔法陣の基礎は出来た。あとは各員、指定された場所に立ってくれ」

 

 先生に促され、俺達はそれぞれ、紋様が描かれたポイントに立った。

 

 それらの紋様には、二天龍、龍王を意味するんだと。

 

 俺達が指定ポイントに立ったのを確認した先生は、手元の小さな魔法陣を操作して最中調整をしようとする。

 

 すると、淡い光が下の魔法陣を走り出した。俺は赤く光り、ヴァーリは白く光る。先生は金色で、匙が黒、おっさんは紫色に光り輝く。

 

 この色って各ドラゴンの特徴を反映した色かな? 俺の闘気(オーラ)の色は赤だし。

 

『その通りだ。相棒が察した通り、それぞれが各ドラゴンの特徴を反映した色となっている』

 

 あ、やっぱり。補足説明あんがと、ドライグ。

 

 因みに残りの五大龍王の色は?

 

『ティアマットが青で、玉龍(ウーロン)が緑だ』

 

 へぇー。あ、そういや思い出したけど、ドライグって五代龍王の中で会いたくないのはティアマットだったな。何で会いたくないんだ?

 

『……そんな事よりも、魔法陣が発動したぞ。今はそっちに集中しておけ』

 

 何だ? ドライグが俺の質問に答えないって珍しいな。

 

 集中しろと言われたが、数分間その場で立ち尽くすだけだった。

 

 一先ず黙って見ていると、魔法陣から何かが投影され始めた。

 

 立体映像が徐々に俺達の頭上に作られていくも、それはどんどん広がっていく。匙なんか驚いた顔をしている。

 

 そして、俺達の眼前に映し出されたのは、この空間を埋め尽くす勢いの巨大な生物だった。

 

 …………おおう。久しぶりに見たけど、相変わらずでけぇな。

 

 姿はでっかい蛇だが、頭部はおっさんと同様のドラゴンだ。長い体でとぐろを巻いている様子だった。

 

「なんつーか、以前に見たグレートレッドが小さく見えるな。それでも実力は向こうが断然上だけど」

 

「そうだな。大きさだけで言うならグレートレッドの五、六倍はあるだろう」

 

 おっさんから改めて言われると、ミドガルズオルムは本当に怪獣の域を超えてるな。

 

 色々な意味で驚いている中、俺の耳に特大に聞き覚えのある音が飛び込んできた。

 

『……………………ぐごごごごごごぉぉおおおおおおおん………………』

 

 あ、やっぱりいびきだった。

 

 本当に寝てばっかりだな、このドラゴンさんは……。

 

「案の定、やはり寝ているな。おい、起きろ、ミドガルズオルム」

 

「お~~い、起きてくれ、ミド」

 

 タンニーンのおっさんと俺が話しかけると、ミドガルズオルムはゆっくりと目を開いていく。

 

『………………懐かしい龍の波動だなぁ。あとこの前聞いたばかりの声も聞こえる。ふあああああああああっ……』

 

 ミドガルズオルムが大きなあくびをする。でっけぇ口だな。おっさんを余裕で丸のみ出来る大きさだ。

 

『おぉ、タンニーンじゃないかぁ。久しぶりだねぇ。イッセーはこの前会ったばかりだねぇ』

 

 相変わらずゆったりとした口調だ。

 

 この前会ったとは言うけど、もう数年前の話だ。まぁコイツからすれば短い時間だろうが。

 

 因みに俺が呼んだミドと言うのは、ミドガルズオルムを略した名前だ。当人、じゃなくて当龍はその呼び方が気に入ったのか、今後はミドと呼んでくれと言われてる。

 

 ミドが俺達を見渡すと、少し不思議そうな顔をしている。

 

『……アルビオンまでいる。……ファーブニルと……ヴリトラも……? ひょっとして、世界の終末なのかい? そうなる前にイッセーとリューセーにまた今度会う約束した筈なんだけど、忘れられたのかなぁ?』

 

「いや、違う。今日はおまえに訊きたい事があってこの場に意識のみを呼び寄せた」

 

「ってかミド、お前に会うって約束は俺や兄貴もちゃんと憶えてるから安心してくれ」

 

 タンニーンのおっさんと俺がそう言うが……。

 

『あ~それを聞いて安心したよ………ぐ、ぐごごごごん……』

 

 ミドは安堵した途端に再びいびきをかき始めた。

 

「寝るな! 全く、おまえと玉龍(ウーロン)だけは怠け癖がついていて敵わん!」

 

「頼むから起きてくれミド! こっちは非常事態なんだからさ!」

 

 怒るおっさんと叫ぶ俺。ミドは大きな目を再び開けていた。

 

「……タンニーンはいつも怒ってるなぁ。イッセーもせっかちだねぇ……。それで僕に訊きたいことってなんなのぉ?」

 

「おまえの兄弟と父について訊きたい」

 

 おっさんが単刀直入に訊く。

 

 ミドにそれを訊く理由は、目の前にいるドラゴンはロキによって作り出されたドラゴンだからだ。その為にロキがミドの父親で、ロキに作られたフェンリルは兄弟の関係だ。

 

 これはオーディンの爺さんから聞いた話だが、ミドは強大な力を持っていながら、その巨体と怠け癖から北欧の神々も使い道が見い出せず、海で眠る様に促したようだ。世界の終末が来た時にだけ何とかしろと言って。当然、最終的な判断を下したのがオーディンの爺さんだ。

 

 なのでミドはずっと深海で眠り続けている。『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)』と言う正に異名通りの龍って訳だ。

 

『ダディとワンワンのことかぁ。いいよぉ。どうせ、ダディもワンワンも僕にとってはどうでもいい存在だし……』

 

 とても親子とは思えない発言だが、実際は本当にそうだ。もしもそうでなかったら、ロキはフェンリルだけじゃなくミドも連れてきている筈だ。アイツは最初からミドを当てにせず、戦力外扱いと言う名の放置をしている。

 

『あ、そうだイッセー。ちょっと聞かせてよぉ』

 

「なんだ?」

 

『アルビオンとの戦いはやらないのぉ?』

 

 俺とヴァーリを交互に大きな目で見て問う。

 

「もう既にやって一回負けたよ。今度やる時は絶対勝つ。けど今は訳あって、共同戦線でロキとフェンリルをぶっ倒さなきゃいけなくてな」

 

「待て、兵藤一誠。何を勝手に――」

 

 俺の返答にヴァーリが反論しようとするが、すぐに先生が止めた。

 

 聞いたミドは笑ったような顔をする。

 

『へぇ、おもしろいねぇ……。二人が戦いもせずにならんでいるから不思議だったけど、もう既に戦って負けたのかぁ。もし勝ったら僕にも教えてねぇ』

 

 ミドがそう言った後、改めておっさんからの質問に答えだした。

 

『知ってると思うけど、ワンワンはダディよりも厄介だよぉ。牙で噛まれたら死んじゃう事が多いからねぇ。でも、弱点もあるよぉ。ドワーフが作った魔法の鎖――グレイプニルで捕らえる事が出来るよぉ。それで足は止められるねぇ』

 

 ワンワンは当然フェンリルを指してる。ミドから見れば、フェンリルは小さなワンワンか。

 

「それは既に認識済みだ。だが、北からの報告ではグレイプニルが効かなかったようでな。それでお前から更なる秘策を得ようと思っていたのだ」

 

 そういやフェンリルはその鎖が弱点とか言ってたな。トリックスターと呼ばれているロキの事だから、フェンリルの弱点対策を立てた上で俺達に戦いを挑んだんだろう。

 

『……うーん、そうなるとダディは、ワンワンを強化したかもしれないねぇ。それなら、北欧のとある地方に住むダークエルフに相談してみなよぉ。確かあそこの長老がドワーフの加工品に宿った魔法を強化する術を知っているはずぅ。長老が住む場所は以前リューセーに教えたけど、アルビオンの神器(セイクリッド・ギア)に転送するよぉ。なにせイッセーは戦いが専門だからねぇ』

 

「ほっとけ! 普段から寝てばっかりいるミドに言われたくねぇよ!」

 

 ミドの余計な発言で思わず突っ込む俺。

 

「ってかイッセー、そいつと随分仲良いんだな」

 

「俺としては、ミドなどと言う呼び方は初めて聞いたぞ」

 

 ミドがヴァーリに情報を転送してる最中、先生とおっさんが苦笑しながら言ってくる。

 

「――把握した。アザゼル、立体映像で世界地図を展開してくれ」

 

 情報を捉えたヴァーリが言うと、先生はケータイを取り出して操作した。すると、画面から世界地図が宙へ立体的に映写される。それを見たヴァーリは一部分を指す。先生は素早く、その情報を仲間に送り出していた。

 

「……ほう。よくもまあ、そんなことまで知っていたな。ずっと寝ているとばかり思っていたんだが」

 

 おっさんが感心する様にミドに言った。

 

『まあねぇ。地上に上がった時、色々とエルフやドワーフに世話になったからさぁ』

 

 それは俺と兄貴も前に聞いた。でも、俺としては今でも疑問に思う事がある。

 

 その巨体でどうやって世話になったんだ? 怪獣の域を超えたデカさだと、確実にエルフやドワーフの里で世話になれるとは思えないんだが……。

 

「で、ロキ対策はどうだ?」

 

 おっさんは次にロキについて訊く。

 

『そうだねぇ。ダディにはミョルニルでも撃ち込めば何とかなるんじゃないかなぁ』

 

 ミドの話を聞いて、先生は顎に手をやった。

 

「つまり、基本は普通に攻撃するしかないわけか。オーディンのクソジジイが雷神トールに頼めばミョルニルを貸してくれるかどうか……」

 

「あれは神族が使用する武器の一つだからな。あのトールが簡単に貸すとは思えない」

 

 先生の意見にヴァーリがそう言う。

 

『それだったら、さっき言ったドワーフとダークエルフに頼んでごらんよぉ。ミョルニルのレプリカをオーディンから預かってたはずぅ』

 

「物知りで助かる、ミドガルズオルム」

 

 先生は苦笑しながらミドに礼を口にした。

 

 すると、ミドは再び俺に顔を向ける。

 

『そうそうイッセー、前から気になってたんだけどさぁ。リューセーって一体何者なのぉ? 初めて会った時にダディみたいな神の波動を感じたから、普通の人間じゃないのは分かってたんだけどぉ』

 

 あ、ミドは知らなかったか。前に会った時の兄貴は三大勢力に知られないよう正体を隠していた時期だったからな。もう知れ渡ってるから、教えても問題無いだろう。

 

「兄貴の正体は『聖書の神』だ。何でもシステムって物を使って人間に転生したんだと」

 

『………あのリューセーが聖書の神だったのかぁ。これは驚いたよぉ』

 

「その割には大したリアクションじゃないな」

 

『何となくだけどそんな感じはしてたんだぁ。でもそっかぁ、彼があの聖書の神だったとはねぇ…………噂じゃかなりのドラゴン嫌いだって聞いたんだけどなぁ』

 

「ん? 何か言ったか、ミド?」

 

 最後の部分がボソボソ言ってて聞こえなかったので確認するも、ミドはデカい頭をフルフルと横に軽く振る。

 

『何でもないよぉ。イッセー、今度はリューセーを連れて深海に遊びに来てねぇ。さーて、そろそろいいかな。僕はまた寝るよ。ふあああああっ』

 

 久々に喋って疲れてきたのか、ミドは大きな欠伸をする。更に少しずつ映像が途切れてきた。

 

「ああ、すまんな」

 

 おっさんの礼にミドは笑んだ。

 

『いいさ。イッセーと楽しくおしゃべりできたからね。じゃあ、また何かあったら起こして』

 

 ミドがそう言い残すと、映像がぶれていき、ついには消えた。

 

 久しぶりに会ったけど相変わらずだったな。

 

 こうして龍王ミドガルズオルムからの情報を得た俺達は、動き出す事となった。

 

 のだが――

 

「その前に兵藤一誠、今後はミドガルズオルムに間違った情報を伝えるのは止めてもらいたい。あの時の勝負は俺が敗北したと言っているだろうが」

 

「本当にしつこい奴だな、お前は。俺が負けたって事実を伝えただけだ。別に何も間違っちゃいねぇよ」

 

「大間違いだ! 大体キミは――!」

 

「それはお前が――!」

 

 ヴァーリが異議を申し立ててきたので、再びあの時の勝負についての議論をする破目になってしまった。

 

「………一体何なのだ、この議論は? 自分の負けを主張し合う二天龍なんて初めて見たぞ」

 

「イッセーだけじゃなく、ヴァーリも相変わらず譲らないか。にしても珍しいな。あのヴァーリが子供みたいに感情を露わにしてまで主張するとは」

 

「え? え? か、会長から聞いた話だと、兵藤と白龍皇の戦いって相打ちだったんじゃないのか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、兵藤家では――

 

「ちょっと変態夢魔(サキュバス)! 人が目を離してる間にリューセーに抱き着かないで!」

 

「色ボケ女神に言われる筋合いなんか無いわね。貴女こそ、勝手にダーリンと恋人扱いしないでもらいたいわ」

 

「…………お前等、いい加減にしないと俺も流石に本気で怒るぞ」

 

 いつの間にか戻って来たフレイヤが隆誠に抱き着いてるエリーを見た途端に喧嘩を始めていた。二人がそれぞれ隆誠の片腕に引っ付きながら。

 

 そろそろ我慢の限界が訪れようとしているのか、隆誠のこめかみから青筋が浮かんでおり、今にも怒りのオーラが爆発しそうだった。




 原作と違い、この作品のイッセーはミドガルズオルムと対面しているのでクールに対応しています。
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