ハイスクールD×D ~神魔兄弟の奮闘~   作:さすらいの旅人

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一ヵ月以上空けてすいませんでした。

あと今回はフライング投稿です。


第十三話

 イッセー達がミドガルズオルムと話し終えた翌日の朝。

 

 朝食を済ませた俺達は地下の大広間に集まっていた。俺――兵藤隆誠やグレモリー眷族、そしてシトリー眷族も今日は学校に行かない事になっている。と言っても、俺達を模した使い魔達が代わりに学校生活を送ってもらう予定だ。因みに俺は改良した影武者人形を使って学校に向かわせている。

 

 ロキとの戦いが近づいている為、今回ばかりは休まないといけない。イッセー達は平穏な学園生活を送れない事に残念がっていた。言うまでもなく俺も同様だ。

 

 特にソーナは生徒会長である事もあって、自分が学園に行けない事にもどかしさを感じている。「自分のいない間に何か起こらないか?」と落ち着かない様子だ。

 

 すると、アザゼルが小言を呟きながら現れた。しかも顔が不機嫌極まりない様子で。

 

「オーディンの爺さんからのプレゼントだとよ。ミョルニルのレプリカだ。ったく、あのクソジジイ、マジでこれを隠してやがった……!」

 

「本当に昔っから食えないねぇ、あのご老神は」

 

「ところで兄貴、これが本当にミョルニルなのか? 俺はてっきり、ゲームでよく見るド派手な形をしたハンマーだと思ってたんだが」

 

 アザゼルと俺の話を余所に、レプリカを見たイッセーが問う。

 

 その疑問はある意味当然かもしれない。今、俺達の前にあるミョルニルのレプリカの見た目が、日曜大工で使いそうな普通のハンマーだからな。一応、豪華な装飾や紋様が刻まれているが、それでも日常的な物に見えてしまう。

 

「まぁゲームじゃ派手な形状をしてる武器ほど強いって言うお決まりだけど、現実はそうでもない。これは正真正銘、北欧の雷神トールが持つ伝説の武器のレプリカだ。見た目とは裏腹に、神の雷が宿っているぞ」

 

「へー、確かに言われてみりゃそのハンマーから凄ぇ力を感じるな」

 

 改めてミョルニルのレプリカから感じる力を探知したイッセーは考えを改めていた。

 

「それでロスヴァイセ、これは誰が使っていいんだ?」

 

「はい、オーディンさまよりこのミョルニルのレプリカをイッセーくんにお貸しするそうです。どうぞ」

 

 そう言ってロスヴァイセはイッセーにミョルニルのレプリカ(以降はハンマー)を渡す。

 

「じゃあイッセー、試しに闘気(オーラ)を流してみろ。量は半分以下でいい」

 

「おう」

 

 俺の指示にイッセーは闘気(オーラ)をハンマーに流し込んだ。

 

 直後、カッと一瞬の閃光が走った。その後にハンマーがぐんぐんと大きくなり――

 

「おわっ! とととと……!」

 

 

 ズドンッ!

 

 

 既にイッセーの身の丈を越す巨大なハンマーとなって、急な重さによってイッセーがバランスを崩して大広間の床に落としてしまった。

 

 落下した衝撃により、大広間自体が大きく振動してしまっている。

 

「わ、悪い兄貴! 半分以下に流し込んだつもりなんだが……!」

 

 イッセーは謝りながら、巨大化したハンマーを力一杯持ち上げた。

 

「ほう。たった半分以下の闘気(オーラ)で、そこまで大きくさせるとは凄いじゃないか」

 

「感心してる場合じゃねぇだろうが。イッセー、もう少し闘気(オーラ)を抑えろ抑えろ」

 

 俺の台詞にアザゼルが突っ込みながらも、イッセーに嘆息しながら言う。それを聞いたイッセーは言われた通り、更に闘気(オーラ)の量を抑えた途端、縮小し、両手で振るうに丁度いいサイズとなった。

 

「ったく。禁手(バランス・ブレイカー)でもないのに、よくもまぁ軽々と持てるもんだ。それだけ聖書の神(おやじ)に鍛えられてるって証拠か」

 

「そう言う事だ。取り敢えずイッセー、もう止めていいぞ」

 

「了解っと」

 

 アザゼルが少し呆れてる中、俺に言われたイッセーがハンマーから手を離す。すると、ハンマーは元のサイズに戻った。

 

 どうでも良いんだが、ヴァーリの奴が面白そうに笑みを浮かんでいる。何かまるで、『俺の宿敵(ライバル)だからこれ位は当然だ』みたいな感じで。

 

「つーか、これマジでレプリカなのか? 本物じゃないかって思う程に凄ぇ力を感じたぞ」

 

 ハンマー、と言うよりミョルニルに対して認識を改めているイッセーが――

 

「かなり本物に近い力を持っているぞ。本来、神しか使えないんだが、バラキエルの協力でこいつの使用を悪魔でも扱えるよう一時的に変更した」

 

「先に言っておくが、無暗に振るうなよ? もしお前が禁手(バランス・ブレイカー)状態でそれを全力で振るったら、高エネルギーの雷でこの辺一帯どころか、駒王町その物があっと言う間に消え去るからな」

 

「マジか! うわっ、怖い!」

 

 アザゼルと俺の言葉を聞いて戦慄した。 

 

 取り敢えずイッセーにロキ対策の武器が用意出来たので良しとしよう。

 

「ヴァーリ、どうせならおまえもオーディンの爺さんに強請ってみたらどうだ? いまなら特別に何かくれるかもしれないぞ」

 

 アザゼルが愉快そうにそう言う。

 

 しかし、当のヴァーリは不敵に笑いながら首を横に振った。

 

「そんな借り物の武器はいらないさ。俺は天龍の元々の力のみを極めるつもりだ。兵藤一誠と再び戦う時に無粋な装備などいらない。それに俺が欲しい物は他にあるんでね」

 

 凄くどうでも良いように言ってるけど、イッセーを凄く意識しているようだ。それに気付いたのか、イッセーはジッとヴァーリを見ていた。

 

 ヴァーリはイッセーと戦う前まで大した事の無い相手としか見てなかった。けれど、それが今やイッセーとの再戦による決着を心から待ち望んでいる。

 

 勿論、イッセーも同じ気持ちだ。だが生憎、イッセーは才能が無い為に、天龍以外の力も補わなければヴァーリと互角に戦う事が出来ない。本人としては自力で勝ちたいだろうが、それが無理だと理解してるから何も言わないでいる。

 

 弟の心情を察してる最中、アザゼルが美猴に話しかけていた。初代孫悟空からの伝言を聞いた瞬間、顔中汗ダラダラ出して青褪めている。

 

 タンニーン相手に勇猛果敢に挑んでいた奴は、どうやら初代相手には形無しのようだ。因みにタンニーンは決戦日に来る予定で、今は冥界で待機中となっている。

 

 すると、美猴と話し終えたアザゼルが俺に視線を向ける。

 

「そういやリューセー。そっちの方はどうなんだ? 俺達がミドガルズオルムに会ってる最中、フレイヤからオッタル対策について訊いたんだろ」

 

「まぁな。と言っても殆どはオッタルの戦い方と実績ばかりだったが」

 

 取り敢えず俺はアザゼル達に昨日の内容を説明する。

 

「昨日も聞いた通り、オッタルはフレイヤが抱えていた英雄の中で最強と呼べる武人だ。当時の奴はフレイヤより授かった伝説の武器や防具で、どんな相手でも勇猛果敢に挑んで数々の偉業を成し遂げ、多くの神々からも称賛される程らしい。戦い方は至ってシンプル。力をメインとした剣技に加え、鍛えられた肉体と怪力による格闘戦法。小細工など一切使わずに正々堂々な戦いを好む生粋の武人だ。イッセーやヴァーリなら、そう言う相手は大歓迎だろ?」

 

 俺の問いにイッセーとヴァーリはコクンと頷く。真っ向勝負が好きな二人なら、オッタルと気が合うだろう。

 

「だが今のオッタルはロキの操り人形で、俺を執拗に狙う殺人鬼同然の狂戦士(バーサーカー)になっている。奴が愛用していた武器と防具はないが、ロキから仮初の肉体と『魔剣レヴァンテイン』を与えられている。ほんの僅かだったが、戦闘能力は当時の頃と全く衰えてないとフレイヤが見解したらしい。あとこれは予測だが、オッタルにはフレイヤを認識出来ないよう仮初の肉体に細工を施しているかもしれない。フレイヤ曰く、主の自分を見ても何の反応もしないのは絶対におかしいってな。俺がオッタルと戦ってる最中に止めろと何度も叫んでいたが、当の本人は完全無視……と言うより本当に聞こえてないかもしれないと言ってた。確かに考えてみれば、フレイヤに関する対策を施さないとオッタルは戦力にならないどころか、却って邪魔な存在になってしまうからな。早い話、今のオッタルにフレイヤをぶつけても無駄って事だ。なので俺がアイツと戦うしか方法はない」

 

 俺からの説明にアザゼルやイッセー達は揃って眉を顰めていた。ただでさえロキやフェンリル相手に梃子摺るのに、ここで聖書の神(わたし)と言う最大戦力の一つがオッタルの方に割かなければいけない事を認識したから。

 

「やれやれ、やっぱりそうなるか。本当なら聖書の神(おやじ)にはロキの相手をさせたかったが」

 

 心底残念そうに言うアザゼルに俺は苦笑する。

 

 元神とは言え、聖書の神(わたし)ならばロキと対抗出来るとアザゼルは思っていたんだろう。確かに俺が聖書の神(わたし)の姿で戦えばロキと対抗出来るだろう。

 

 しかし、そうするにはフェンリルをどうにかしないといけない。神殺しの牙を持ってるフェンリルに噛まれたら殺されてしまうので。

 

 俺からオッタルの話を聞いたアザゼルが咳払いして、俺たち全員に言う。

 

「それじゃあ、作戦の確認だ。先ず、会談の会場で奴が来るのを待ち、そこからシトリー眷族の力でお前達をロキとフェンリル、そしてオッタルごと違う場所に転移させる。転移先はとある採石場跡地だ。広く頑丈だから存分に暴れても問題無い。ロキ対策の主軸はイッセーとヴァーリ。二天龍で相対する。オッタルの相手はリューセーとヴァーリチームのエリガン。最後にフェンリルの相手は他のメンバー――グレモリー眷族とヴァーリのチームで鎖を使い、捕縛。そのあと撃破してもらう。分かってるだろうが、絶対にフェンリルをオーディンのもとに行かせるわけにはいかない。あの狼の牙は神を砕く代物だ。主神オーディンと言えど、聖書の神(おやじ)と同様あの牙に噛まれれば死ぬ。なんとしても未然に防ぐ」

 

 作戦の内容に誰もが頷く。俺としてはオッタル戦でイッセーをパートナーにしたかった。けれど、ロキ対策用のハンマーを所持しているので無理だ。久しぶりの兄弟コンビプレーが出来なくて残念だが、二天龍のヴァーリなら大丈夫だ。宿敵(ライバル)とは言え、イッセーと組んで戦う事にヴァーリは何の異論もないので。

 

 エリーが俺の方へ回ったのは、『ダーリンがオッタルと戦うなら私もそっち側に行く』と言ったからだ。その発言に誰もが文句を言わなかった。不本意だが、ヴァーリと同様に何を考えているのか分からないエリーは俺の傍に置かせた方が良いとアザゼルが了承しているので。エリーはリアス達だけでなく、ヴァーリチームのメンバーからも余り信用されてないから、俺に回るのはある意味当然かもしれない。

 

 まぁ戦闘面に関して、それなりに信用出来る相手だ。過去に何度も戦ってる事もあって、エリーの戦い方を理解しているので。

 

 因みにそのエリーだが、今はこの場にいない。あの後にフレイヤと言い争っていたので、我慢の限界に達した俺は二人纏めて、聖書の神(わたし)能力(ちから)で作った光の鎖で拘束させた。

 

『ちょっとリューセー! いくらなんでも女神の私に対して酷過ぎない!?』

 

 フレイヤは文句を言ってたが、俺は気にせずオーディンに引き渡した。

 

 そして――

 

『ああ、私の身体がダーリンに縛られてる……。緊縛プレイも良いかもしれないわぁ♪』

 

 エリーは俺が拘束した事で変なスイッチが入ったのか、恍惚な表情となって悶えていた。その場にいた面々がドン引きする程に。

 

 その後は別室に放り込み、更には俺が施した結界に閉じ込めている。その際、『今度は放置プレイ……これも良いわぁ♪』とか言ってたが無視した。

 

 言っておくが、俺はフレイヤとエリーに卑猥な拘束なんかしてない。ミノムシみたくグルグル巻きにしただけだ。

 

「さーて、鎖の方もダークエルフの長老に任せているから、完成を待つとして、後は……。リューセー、匙の方だが」

 

「それはお前に任せるよ」

 

 確認してくるアザゼルに俺がそう言うと、名前を呼ばれた匙が反応した。

 

「あの、俺が何ですか?」

 

「おまえも作戦で重要だ。ヴリトラの神器(セイクリッド・ギア)あるしな」

 

「今回は匙にも存分に働いてもらうぞ」

 

 アザゼルと俺の一言に匙は目玉が出るほど驚いていた。

 

「ちょ、ちょっと待って下さいよ二人とも! お、俺、兵藤や白龍皇みたいなバカげた力なんてないっスよ!? とてもじゃないけど、神様やフェンリル相手に戦うのは無理です! て、てっきり会長たちと一緒に皆を転移させるだけだと思ってましたよ!」

 

 自分は戦力外だと必死に言ってくる匙に、俺とアザゼルは嘆息した。

 

「勘違いしてるようだから言っとくが、何も前線で戦えとは言ってない。お前には味方のサポートをやってもらいたいんだ」

 

「さ、サポートっスか?」

 

「リューセーの言う通りだ。お前が持ってるヴリトラの力は、最前線で戦うイッセーとヴァーリのサポートに必要なんだよ」

 

 そう言ってアザゼルは更に付け加える。

 

「だが、その為にはちょっとばかしトレーニングが必要だな。試したい事もある。ソーナ、少しの間こいつを借りるぞ」

 

 ソーナに確認を取るアザゼル。

 

「それはよろしいですが、一体どちらへ?」

 

「転移魔法陣で冥界の堕天使領――グリゴリの研究施設まで連れて行く」

 

 楽しげな顔をするアザゼルに、俺はすぐに察した。

 

 コイツの事だから、恐らく地獄とも思えるトレーニング内容を面白可笑しく匙にやらせようとするだろう。

 

「なぁ兄貴、先生があんな顔するって事は地獄行き確定のしごきだろ」

 

「よくわかったな、その通りだ」

 

 コッソリと訊いてくるイッセーの問いに答える俺。その直後にイッセーは匙に憐憫の眼差しを送っていた。

 

「匙、先に言っとく。多分だけど先生のしごきは地獄だ。無事に生きて帰って来いよ」

 

 匙の肩に手を置いたイッセーは凄く気の毒そうに言った。それを聞いた匙は更に尻込みする。

 

「はっはっはー。じゃあ行くぞ匙」

 

 笑みを浮かべて言うアザゼルは嫌がる匙の襟首を掴み、そのまま魔法陣を展開した。

 

「い、嫌だぁぁぁっ! 助けてぇぇぇぇぇっ! 兵藤ぉぉぉぉっ! 会長ぉぉぉぉっ!」

 

 魔法陣が光り輝き、泣き叫ぶ匙を包んでいく。

 

 アザゼルと匙の姿が消えると、イッセーは敬礼をする。勿論それは匙に対するものだ。

 

「つーか、匙に俺達のサポートをさせるって、どうするつもりなんだ?」

 

「アザゼルの話だと、イッセーとの一戦で匙の内に眠るヴリトラが反応し始めていたようだ。ドライグもそう感じているんだろう?」

 

『ああ。俺もヴリトラが反応したのを確認した。間違いない』

 

 俺の問いにドライグが全員に聞こえる様に答えた。

 

 すると、イッセーが何か思い出した顔をしてドライグに話しかける。

 

「そういや、ドライグ。久しぶりに会ったアルビオンとは何か話さないのか?」

 

『いや、別に話す事もないが……。なあ、白いの』

 

 そう言ってドライグが話しかけると――

 

『ふんっ、赤いのと話す事などない。拳龍帝などと言う腑抜けた奴は断じて私の宿敵ではないからな』

 

 久しぶりに聞いたアルビオンの声は随分と辛辣だった。と言うより、アルビオンが何か剥れてるような気がする。

 

『おいおい、随分な言い草じゃないか。拳龍帝と呼ばれているのは宿主の兵藤一誠だぞ』

 

 ドライグは何か察したのか、大して気を悪くせずに言い返した。

 

『誇り高き二天龍だった筈なのに、それが今や多くの小さな子供に好かれているではないか。これを腑抜けと呼ばずして何と呼ぶ、赤いの。テレビで宿敵を模した「ファイタードラゴン」などというヒーロー番組を見た時に、私は情けない気持ちでいっぱいだったぞ』

 

『そう言うな、白いの。これでも俺は結構気に入ってるんだ。白いのもやってみれば、俺と同じく気に入るかもしれないぞ』

 

『世迷言を。私がそんな低俗な物に現を抜かす訳が――』

 

 二天龍の会話に、ヴァーリが不可解そうな表情となっている。

 

「アルビオン、前と言ってる事が違っていないか? 兵藤一誠を模したテレビ番組を見ていた時、ドライグに対して矢鱈と羨ましがっている発言をしていたと言うのに」

 

『よ、余計な事を言うなヴァーリ! 大体私がいつそんな事を言った!?』

 

 ああ、そう言うこと。ヒーローと称されて大人気となってるドライグに嫉妬して、辛辣な毒を吐いていたのか。

 

 既に察したドライグは気付いていながらも、アルビオンの発言を軽く聞き流していたって訳ね。

 

「兵藤一誠。俺はこういう時、アルビオンになんて言うべきだろうか?」

 

「知るか。んなこと俺に訊くな」

 

 ヴァーリからの問いに、イッセーが即座に突っぱねたのは言うまでもない。

 

 一先ず二天龍の事は後回しだ。俺達が今やるべき事は、対ロキ戦の為に備えて準備を進める事なので。


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