ハイスクールD×D ~神魔兄弟の奮闘~   作:さすらいの旅人

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第十四話

 準備を進めていく中、俺は作業部屋でイッセーにミョルニルの使い方のレクチャーをしていた。

 

「……なぁ兄貴、ちょっと訊きたいんだが」

 

 レクチャーを受けているイッセーが、急に真面目な顔になって俺に問おうとする。

 

「何だ?」

 

「朱乃さんについてなんだが、何であの人はお父さんと仲が悪いんだ? 俺、バラキエルさんがそこまで悪いお父さんには見えないんだが……」

 

 その問いに俺は判断に迷った。教えても良いかダメかと。

 

 けれど、イッセーの疑問は至極当然だった。この数日の間、朱乃のバラキエルに対する態度が余りにも辛辣だったから。対してバラキエルは朱乃に話しかけようとするも、向こうが無視するから結局諦めている。

 

 そんな場面を何度も見ていたから、イッセーが気にならない訳がない。俺だってアザゼルから聞いてなければ、一体あの親子に何があったのかと気になって調べようとするだろう。

 

 本当なら俺じゃなくリアス、もしくは朱乃本人に訊いて欲しいが……当の二人は別件対応中だ。それにとても話せる雰囲気じゃない。

 

 状況が状況なので、ここは俺が教える事にした。

 

「……聞いた話だと、母親の死が原因らしい」

 

 イッセーにミョルニルをしまうように言った後、アザゼルから聞いた話をそのまま説明しようとする。

 

 朱乃の母親は日本のとある有名な寺の巫女だった。

 

 名は姫島(しゅ)()。だから朱乃は母方の姓を名乗っている。

 

 姫島朱璃が寺の近くにある日、敵勢力に襲撃されて重傷を負ったバラキエルが飛来する。彼女は傷付いたその堕天使の幹部を救い、手厚く看病した。彼女はその時バラキエルは親しい関係になった後、その身に子供を宿したそうだ。

 

「なんつーか、ファンタジー系の恋愛ドラマとかでよくあるパターンだな」

 

 イッセーのツッコミに俺は特に否定せず、話を続ける。

 

「バラキエルは朱乃の母親と生まれたばかりの朱乃を置いていくわけにもいかず、近くで居を構え、そこから堕天使の幹部として動いていたらしい。その時の三人は慎ましい生活でありながらも、とても充実して幸せな日常を送っていた。……だが」

 

 その幸せは長く続かなかった。

 

 母親の親類は何を勘違いしたのか、堕天使の幹部に娘が洗脳されて手籠めにされたと思い込み、とある高名な術者達をけしかけたようだ。

 

 言うまでもなく、バラキエルの力で退かれていた。しかし、術者の中にはバラキエルにやられて恨みを持つ者も現れた。

 

「何だそりゃ? 自分達から勝手に仕掛けといて、バラキエルさんを恨むなんざ筋違いじゃねぇか」

 

「堕天使に負けた事で相当プライドが傷付いたんだろうな。そしてその連中は堕天使と敵対している者達へ、バラキエルが住まう場所を教えたんだと」

 

 ここまで言ってイッセーは何となく分かった表情となる。

 

「運悪く、その日は偶然にバラキエルが家を空けていたんだ。アザゼルからの呼び出しを受けてな。敵対勢力は朱乃と母親が住まう家を躊躇せずに襲撃した。バラキエルが危険を察知して駆け付けた時には……。朱乃は母親が命懸けで庇ったおかげで助かった。だが、母親は残念ながら……」

 

 俺が人間に転生し、イッセーを連れて各国を旅して、堕天使の幹部が他の勢力に恨みを抱かれているのを知った。朱乃の母親を殺した敵対勢力も、さぞかし堕天使勢を恨んでいたんだろう。

 

「それが原因で、朱乃は堕天使に対する憎しみが募ったようだ。そして殺された母親の無念を抱き、父親のバラキエルに心を閉ざしたんだと」

 

 朱乃とバラキエルが険悪になった理由を知ったイッセーは言葉を失っている様子だ。

 

 今はリアスの眷族となっているが、彼女に会うまでの朱乃は天涯孤独な身となって各地を放浪していたらしい。

 

「とまあ、そう言う事があったって訳だ」

 

「………話は分かった。けど、一つだけ納得出来ねぇところがある」

 

 そう言ってくるイッセーに、俺はどこら辺が納得出来ないのかと尋ねた。

 

「バラキエルさんを呼び出したアザゼル先生についてだ。あの人は知ってた筈だろ? バラキエルさんや朱乃さん達が敵に狙われてるって事を。そんな状況の中、どうして先生はバラキエルさんを呼び出したんだ?」

 

「……」

 

 アザゼルを咎める感じで言うイッセーに俺は無言になった。

 

「あんまり言いたくないが、朱乃さんのお母さんが殺されたのは――」

 

「――そう。原因を作った俺が全部悪いのさ」

 

「「!」」

 

 イッセーが言ってる最中、第三者の声が聞こえた。

 

 俺たち兄弟が振り返った先には、いつの間にか部屋に入っているアザゼルが佇んでいる。

 

「先生……」

 

「どうした、アザゼル。VIPルームで作業してたんじゃなかったのか?」

 

 また前みたいに勝手に入室してきたので咎めようとしたが、少し悲痛な表情だったので敢えて何も指摘しなかった。

 

「一段落ついたから、お前らの様子を見に来たんだ。入ろうとした矢先に、朱乃の過去話が聞こえちまってな」

 

「……それで先生、自分が悪いってどういう事ですか?」

 

 イッセーはアザゼルの返答が気になったのか、理由を尋ねた。その事にアザゼルは説明しようとする。

 

「あの日、確かにバラキエルを招集したのは俺だ。イッセーの言う通り、バラキエル達が狙われてるって事も知っていた。けれど、どうしても奴じゃないとこなせない仕事があったんだ。だから、無理を言って呼び寄せたんだよ。そのわずかな間に……。俺が朱乃とバラキエルから、母と妻を奪ったんだ」

 

「……先生。だから朱乃さんのこと、バラキエルさんの代わりにみようと?」

 

「…………」

 

 再び尋ねるイッセーにアザゼルは何も答えなかった。それを察したのか、イッセーはもう訊こうとしない様子だ。

 

 すると、部屋の扉からノックがした。俺がどうぞと入室許可を出すと、扉が開いて誰かが入ってきた。

 

「失礼する、聖書の神。アザゼル、ここにいたのか」

 

 入って来たのはヴァーリだった。

 

「ああ、おまえか。どうだ?」

 

 アザゼルの問いかけにヴァーリは手を前に突き出し、小さな魔法陣を宙で展開した。

 

 ほう、これは北欧の術式じゃないか。もう使えるようになったんだな。

 

「北欧の術式はそこそこ覚えた。ロキの攻撃にいくらか対抗出来るはずだ」

 

 思った通りの返答だった。流石はヴァーリ、お見逸れした。

 

 習得出来たのは、今もヴァーリが手にしている本をずっと読んでいたからだ。

 

 こう言うのは悪いが、イッセーは魔術に関する知識はあっても、それを実行出来る才能はない。

 

 魔術と言うのは簡単に習得できるモノじゃない。魔術その物の理論を完全に理解し、それを魔力に変換させる為の演算能力を必要とする。なので魔術は頭脳などの知力を求められるから、それが大してないイッセーには無理だ。

 

 ヴァーリからの返答を聞いたアザゼルはそれを確認して頷いていた。

 

「分かった。……さて、邪魔しちまったな聖書の神(おやじ)。俺は少し休んでくる」

 

 そう言ってアザゼルは部屋を出て行った。

 

 此処にいるのは俺とイッセー、そして――ヴァーリ。ライバルがいるからか、イッセーは少しばかり警戒している様子だ。

 

「聖書の神、少しばかり此処にいて良いか? 勿論、そちらのやってる事に邪魔をするつもりはない」

 

「どうぞご自由に。そこにあるソファにでも座って寛いでいいぞ」

 

 俺が許可を出すと、ヴァーリは言われた通り俺が指したソファに座った。そのまま例の本を読み返している。

 

 ヴァーリは必要のない時は、美猴達と外に出ていた。勿論俺と一緒にいたがってるエリーも連れてだ。当の本人は外へ行く度に物凄く嫌がっているが、ヴァーリの指示に渋々従っている。

 

「いいのか、兄貴? ヴァーリを居させて。ここは兄貴の作業部屋なんだろ?」

 

「構わん。今は見られて困るような物は置いてない」

 

 少し休憩するかと言うとイッセーも頷き、ヴァーリから少し離れる。作業部屋に置いてある冷蔵庫を空け、冷たいジュースを二本出して、一本をイッセーに渡す。

 

「で、この後はどうするんだ? まだ続けるのか?」

 

「そうだな。ここでいくら学んだところで実際に使いこなさないと意味が無いから……いっそ実戦形式でやってみるのも良いかもな」

 

 俺が実戦形式と言った瞬間、本を読んでるヴァーリがピクリと反応した。俺は気付いているが、一先ず気にしない事にする。

 

「お、いいねぇ。そっちの方が俺としては分かりやすくて助かる。相手は兄貴か?」

 

「ああ、俺の事を悪神ロキと思ってやるといい。神の姿になったら、更に緊張感が持てるだろう?」

 

「今更そんなモノなんかねぇよ。こちとら元神さまの弟だ」

 

「それもそうか」

 

 こりゃ一本取られたと笑いながらジュースを飲む俺。

 

 確かにイッセーは俺が修行の旅に連れて行った事によって、未知の経験をしまくった事で肝が据わっている。更には多くの知識と経験も積んで。

 

 加えて、嘗てヴァルハラに訪れて多くの神達と対面した事もあるから、今更神相手に怖気づいたりしない。後はもう勝つか負けるかだ。

 

「しかしまぁ、今度は本気でロキと戦う事になるとはな。ってかあの悪神、何であそこまで邪魔してくるんだ? 今の兄貴みたいに平和を満喫しようって気はねぇのか?」

 

「そんな気はゼロだと断言出来る程に無い。奴は今も『神々の黄昏(ラグナロク)』の成就こそが全てだから、俺やお前にとっての平和は非常に耐えがたい苦痛なモノとしか見ていない。それは当然、ロキみたいに平和が嫌いな連中もいる筈だ」

 

 神と言う存在は人間や悪魔以上に長く生き過ぎている為、娯楽や刺激を求めてしまう。それが例え滅びの道を辿る事になっても。

 

 俺の話を聞いて何か思うところがあったのか、イッセーは本を読んでいるヴァーリに話しかけようとする。

 

「おいヴァーリ、本を読んでいながら聞いてたろ。おまえはどうなんだ? 今の世界は苦痛か?」

 

 ヴァーリは本を閉じて、真っ直ぐとイッセーの方へと顔を向けて答えようとする。

 

「苦痛と言うより、退屈なだけだ。だから、今回の共同戦線は楽しくて仕方がない」

 

 如何にもヴァーリらしい返答だった。口元が怖いぐらいに吊り上がってるし。

 

 イッセーとは違って根っからの戦闘狂だ。呆れるほどに。

 

「だが俺から言わせれば、キミを羨ましく思うよ。平和を満喫しておきながらも、聖書の神のおかげで常に実戦の日々を送っているんだからな」

 

 確かにヴァーリからすればそうだろうな。倒したい相手である聖書の神(わたし)が、弟の赤龍帝(イッセー)を強くさせようとキツい修行をさせている。強い相手を求めてるヴァーリからすれば、羨ましがるのは当然か。

 

 予想外な返答だったのか、イッセーは虚を突かれたように少し困惑気味だった。

 

「今だから言えるが、最初はキミのことを大した才能が無くて、聖書の神に鍛えられても俺以上に強くなる事はないと思っていた。だが、キミは俺の予想を裏切っただけでなく、いままでの赤龍帝とは違う成長をしている。聖書の神の助力だけでなく、ドライグと対話しながら、赤龍帝の力を使いこなそうとする者は歴代の中で初めてだろう」

 

「え? そうなのか、ドライグ?」

 

 イッセーが自分の左手に向かって言うと、手の甲が光り出した。

 

『その通りだ。以前も言っただろう? 聖書の神に言われたとは別に、おまえは歴代のなかで一番俺と対話する宿主だ。更には俺の力に溺れず、過信せず、赤龍帝の力を使いこなそうとしている。尤も、相棒が聖書の神に鍛えられてる時点で、そんな心配は微塵もなかったがな』

 

 確かにイッセーが思い上がった行動をすれば、俺が即座に矯正する事となる。

 

 俺が内心頷いてると、ヴァーリが続く。

 

「今まではただ思うがままにその強力で凶悪な力を振るう宿主ばかりだった。最終的にドライグの力に溺れ、戦いで散っていった」

 

『おまえは歴代で一番才能の無い赤龍帝だが、それを分かっていながらも聖書の神からの指導で強くなろうとしている。――同時に』

 

「歴代で一番力の使い方を覚えようとしている赤龍帝だ」

 

 ドライグとヴァーリにそう言われたイッセーは少し照れた様子を見せる。

 

「随分と期待されてるじゃないか、イッセー。兄の俺としては鼻が高いぞ」

 

「うっせ……」

 

 憎まれ口を叩くイッセーだが、俺は大して気にしない。それどころか愉快そうに笑みを浮かべる。

 

「もし実現出来るのであれば、将来、俺のチームとキミのチームでレーティングゲームみたいな戦いをやってみたいものだ。最後は当然、俺とキミでの大将戦を」

 

「へぇ、それはいいかもしれないな。つっても、今の俺は『兵士(ポーン)』になったばかりだし、俺に付いてきてくれるのはまだ二人で当分先の話だ」

 

「もう既に二人いるとは、随分と幸先がいいな。もしやグレモリー眷族の誰かなのか?」

 

「ああ、お前もよく知ってる二人――アーシアとゼノヴィアだ」

 

 ほほう。アーシアは当然として、まさかゼノヴィアもイッセーに付いて行く予定だったとは。それだけイッセーに惹かれたと言う証拠なんだろうな。

 

 嘗て神に敵対する者は嫌悪感丸出しのガチガチな信徒だったのに、今は転生悪魔となったイッセーと一緒にいたがるとは。随分と大きく変わったもんだ。勿論良い意味で。

 

「元聖女と聖剣使い、か。キミの事だから、他にも既に目をつけている相手がいるんじゃないのか?」

 

「いねぇよ。いくらなんでも買いかぶり過ぎだ」

 

 いや、イッセーは気付いていないが実はもう一人いるんだよな。ソイツは冥界にいるご令嬢――レイヴェル・フェニックスだ。

 

 知っての通り、彼女もイッセーに惚れている。更には弟の力になりたいと言っていたので、イッセーがチームに入ってくれと勧誘したら喜んで受け入れるだろう。そうなったらアーシアと同じく『僧侶(ビショップ)』枠だ。

 

 既にイッセーは『僧侶(ビショップ)』二人、『騎士(ナイト)』一人を確保済みである。残った枠は果たして誰になるのか非常に楽しみだよ。

 

「うむうむ。いいのぅ。青春だのぉ」

 

「って、オーディンの爺さん……!」

 

「ねぇねぇリューセー、私達も青春しよう」

 

「お前は相変わらずブレないな、フレイヤ」

 

 俺たち兄弟とヴァーリの間にオーディンが現れ、更にはフレイヤが俺の腕に引っ付いてきた。

 

「今回の赤白は、実に個性的じゃい。昔のはみーんなただの暴れん坊でな。各地で好き勝手に大暴れして、色んなものを壊しながら死におった。実に迷惑極まりなかったわい」

 

「そうそう。ヴァルハラにも勝手に土足で上がり込んだ挙句、私が好きだった風景も吹っ飛ばしたのよね」

 

 ため息混じりにオーディンとフレイヤはそう語った。

 

 二人に付いてきていたロスヴァイセも言う。

 

「確かに片方は卑猥なドラゴンで、片方はテロリストという危険極まりない組み合わせですけど、意外に冷静ですね。出会ったら即対決が二天龍だと思っていました」

 

 ロスヴァイセの言ってる事は間違ってない。嘗ての二天龍はその通りの事をしていた。

 

 だと言うのに、イッセーとヴァーリは戦わないどころか仲良く話している。それ自体が異様な光景とも言えよう。

 

「ところで白龍皇。お主は……どこが好きじゃ?」

 

 オーディンがいやらしい目つきでヴァーリに訊く。……おいおい、まさかヴァーリ相手に猥談か?

 

「なんのことだ?」

 

 ヴァーリは意味が分からなかったのか、首を傾げながら聞き返す。

 

 それを聞いたオーディンはロスヴァイセの胸、尻、太腿を指していく。

 

「女の体の好きな部分じゃよ。因みに赤龍帝のイッセーは乳じゃ。白龍皇のお主も何かそういうのがあるんじゃないかと思うてな」

 

「生憎、俺はそういう関連に興味などない」

 

「まあまあ、お主も男じゃ。女の身体で好きな部分ぐらいあるじゃろう」

 

 再度訊いてくるオーディンに、ヴァーリは付き合いきれない雰囲気を見せるが、それでも答えようとする。

 

「……しいて言うなら、ヒップか。腰からヒップにかけてのラインは女性を表す象徴的なところだと思うが」

 

 何気なく答えたヴァーリ。

 

「……なるほどのぉ。ケツか。イッセーとは対照的じゃのう。ついでにリューセー、お主はどうなんじゃ?」

 

「それは前に言った筈ですが?」

 

 ヴァルハラに来た時、オーディンから猥談をされた事があった。その時にイッセーは『おっぱいが好きです!』と答えていたがな。

 

「『好きな女が出来れば関係無い』などと言う模範的な回答なんぞ却下じゃ。ほれ、白龍皇も答えたんじゃから、お主も思い切って言えい!」

 

「あ、それは私も知りたい。ねぇねぇリューセー、どこが好きなのか教えてよ~」

 

「ふ、フレイヤさま! そのような事を知ってどうするおつもりなんですか!?」

 

 フレイヤがオーディンに便乗して尋ねてくる事で、ロスヴァイセが咎めるように言った。けれど、彼女もチラチラと気になるような目で俺を見ている。イッセーとヴァーリも同様に。

 

 どう答えようかと悩んだ結果――

 

「……敢えて言うなら、髪ですかね。綺麗な髪をしている女性を魅力的に感じますので。髪は女の命とも言いますし」

 

「……お主、髪フェチじゃったのか。神なだけに」

 

 無難な答えを出すも、オーディンは意外そうな顔をして言った。イッセー達も同様の反応をしている。

 

 別に神だから髪が好きと言う訳じゃない。あとダジャレで言ったつもりは毛頭無い。

 

「因みに兄貴が魅力的な髪だと思ってる女性は?」

 

「ノーコメント」

 

「え~~~!? そこが重要な所なんだから教えてよぉ!」

 

 イッセーの問いに答えないでいると、フレイヤがすぐに抗議してきた。

 

 フレイヤとこの場にいないエリーは綺麗な髪をしてるが、一方的に想いをぶつけてくる女は論外だ。

 

 もし答えるとしたら……今のところはロスヴァイセだ。個人的に彼女の流れるような長い銀髪は綺麗に思っている。尤も、それを口にしたらフレイヤとエリーが何を仕出かすか分からないので答えるつもりはない。

 

「……か、髪の手入れは、重点的にやっておく必要がありそうですね」

 

 聞いていたロスヴァイセが何やら髪を意識しているようだが、俺は敢えて気にしないでおく事にした。

 

 その後もちょっとした話が続く。すると、オーディンとロスヴァイセは別の用事を思い出したのか、嫌がるフレイヤを無理矢理連れて部屋から出て行った。


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