「イッセー、また
「お、おう……すぅぅぅぅ……はぁぁぁぁ~~~~」
ミョルニルを使っての実戦形式をやろうと思っていた俺だが、急遽変更する事となった。理由は勿論ある。
イッセーがミョルニルに
そして現在。空いてる部屋でイッセーは上半身はTシャツ、下はハーフパンツと言う軽装で座禅を組ませている。自身の
因みに俺も同じ軽装姿で、一緒に瞑想をしている。戦いに備える為には何事も準備が必要なので、俺自身もやっておこうと思ったので。
瞑想を始めて約一時間経つと、イッセーの昂ってる
「今日はここまでだ。もう崩しても良いぞ」
「―――っ。はぁぁぁ………」
俺の台詞を聞いた瞬間にイッセーは座禅を崩し、そのまま大の字となって倒れた。俺は座禅を崩さないまま、首だけ動かしてイッセーの方を見ている。
「何かいつもと違って疲れたぁ~。自分で言うのもなんだけど、俺の
「そりゃ悪魔になった事で、お前の
人間だった時のイッセーは俺の修行でコツコツと上昇させていた。しかし、今は転生悪魔化によって順序を吹っ飛ばすかのように
やはり瞑想をしておいて正解だったと、俺は改めて確信した。もし瞑想をやらせずにロキと戦ったら、イッセーは自身の
ミョルニルのレクチャーも大事だが、それを使おうとするイッセー自身が先ず己の力を制御しなければ話にならない。そう考えた俺は、ロキとの決戦前に可能な限り瞑想を重点的にやらせようと決意する。
「イッセー、決戦前に必ず
「分かってる。こんな暴れ馬状態でロキに挑んだらあっさり負けちまうのが目に見えてる」
天井を見ながら言うイッセーは、どうやら分かっていたようだ。
余計なお節介だったかと思ってると、突然ガチャっと部屋のドアが不意に開いた。
俺とイッセーは誰が入ってきたのかを視線を向けると――白装束姿の朱乃が入ってきた。しかも思い詰めたような表情で。
「あれ? 朱乃さん?」
「どうしたんだ、朱乃? 俺達に何か用か?」
「……………」
俺たち兄弟が問うも、朱乃は答えようとしない。そのまま此方へ近づいて、片手で俺の左手を軽く掴んでくる。
「リューセーくん、ちょっとよろしいですか?」
「ああ、いいけど」
「?」
頷きながらすぐに立ち上がると、朱乃は左手を掴んでる俺を連れて移動する。と言っても、イッセーから少し離れた程度だが。
イッセーが首を傾げてる中、朱乃は急に小声で俺に話しかける。
「すみませんが、イッセーくんと二人っきりにさせてもらえませんか?」
「え?」
朱乃からのお願いに俺は疑問に思った。
イッセーの腕に溜まったドラゴンの力を吸い出す行為はこの前やったばかりだから、それをまたやるにしてはまだ早い。何より、イッセー本人も今のところ大丈夫なので必要無い筈だ。
それが目的じゃないとすれば――
「……朱乃、お前まさか」
「………………」
俺がもしやと思って確認するように言ってみると、案の定と言うか朱乃は顔を真っ赤にしていた。
……はぁっ、やっぱりそう言う事か。
本当なら俺が今すぐ止めるように説得すべきだろう。
『
そう言って止めれば、図星を突かれた朱乃は逃げ出すように部屋から出て行くだろう。尤も、その後は俺がいない隙を狙ってイッセーに迫ろうとするだろうが。
だけど、今の俺にはそれが言えなかった。深刻に思い詰めた表情をしている朱乃を見ているから。
それに加えて、あの朱乃が恥を忍んでまで俺に頼み込んでくると言う事は、それだけ覚悟を決めたと言う証拠だ。
ここは何れ
無責任に思われるかもしれないが、イッセーなら朱乃を何とかしてくれるかもしれないと俺は思っている。俺やアザゼル、そしてバラキエルでは出来ない事をイッセーは必ずやってくれると。
「……はぁっ。リアス達には黙っといてやるから、好きにしな。ついでにカギは閉めておけよ」
「はい。ありがとうございます」
俺が了承の返事を聞いた朱乃は顔を赤らめながらも礼を言ってきた。
「イッセー、今日の修行はここまでだ。俺はもう部屋に戻って寝るから」
「え? あ、ああ、わかった」
言うべき事を言った俺が部屋から出てドアを閉めた直後、カチッとカギを閉める音がした。
やっぱり俺の思った通り、朱乃はイッセーと……って、これ以上は無粋だから止めておくか。
後はイッセーがどうにかしてくれるだろうと思いながら自分の部屋へ戻っていると――
「ダーリン♪」
「それ以上近付いたら光の槍をぶっ放すぞ」
辿り着いた瞬間、どこからか現れたエリーが俺に近付きながら抱き付こうとしていたので、俺はすぐに警告をした。
俺が本気だと分かったのか、エリーは諦めたように足を止める。
「ちょっと~、あの色ボケ女神は良くて私はダメって差別よ」
「お前、以前まで俺達と敵対してた事を綺麗さっぱり忘れてるだろ」
エリーの事を信用してると言ったが、警戒を緩めたりはしない。いくら俺に対して嘘は吐かないと分かってても、この得体の知れない女は色々な秘密を抱えているので。
「そんな事ないわよ。だけど、それで私のダーリンに対する愛は全く変わらないから♪」
「……あ、そう。それで、俺に一体何の用だ? ヴァーリ達の監視下に置かれてるお前が、一人で勝手に動かれるのはこちらとしては非常に困るんだが」
この前は光の鎖でグルグル巻きにして結界付きの部屋に閉じ込めていたが、美猴達が外に出る時に同行させる必要があったので解除していた。
だと言うのに、こんな堂々と単独で動いてリアス達と遭遇したら、確実に面倒事が起きてしまう。
「あの鬱陶しい色ボケ女神がいないから、ダーリンとちょっとばかりお話しようと思ってね。あ、信用出来ないなら鎖で縛ってもいいわよ。それはそれで興奮するから♪」
「…………はぁっ。付いてこい」
自ら縛られてもいいとエリーの発言に内心呆れつつ、一先ずは気にしないでおく事にした。
お前と話す事は無いとヴァーリの所へ送り返したいところだが、そう簡単に諦めない性格なのは分かっていたので、俺の部屋へ招こうとする。
許可を貰えたと嬉しげに入るエリーは、部屋に入って早々に周囲を見渡す。
「へぇ~、ここがダーリンの部屋なのね。何だか彼氏の部屋に入ってるみたいで緊張するわ」
「誰が彼氏だ」
まるで恋人気分を味わってるエリーの発言に俺はしかめっ面で言い放った。
「でも、案内されるならダーリンの寝室にして欲しかったわ。二人っきりで話すには――」
「それ以上ふざけた事を言うと、マジで追い出すぞ」
「――OK。ここは部屋を案内してくれた事で妥協するわ」
俺を怒らせると不味いと思ったのか、エリーは両手を上げて降参のポーズをとった。
一先ずは部屋にあるソファーに座らせるよう促した後、飲み物を用意しようとする。
「何かリクエストはあるか?」
「ダーリンが用意してくれるなら何でも良いわ」
「そうかい」
エリーは嘗てリアスと同じ貴族悪魔だったので、ここは紅茶を用意しておくか。
そう思いながら紅茶セットを出してすぐ、電気ポットに入ってるお湯を使って紅茶を淹れる。
「ほれ、紅茶のストレートだ」
「あら嬉しい。私の好きな紅茶を用意してくれるなんて」
紅茶が入ったカップを渡すと、エリーは嬉しそうに受け取ってすぐに飲み始める。
「はぁっ……。今まで飲んだ紅茶の中で格別に美味しいわ」
「そうか? 俺は普通に淹れただけな上に、お前からしたら安物の紅茶だぞ」
「ダーリンが淹れるから美味しいのよ。うふふ、悪魔の私がダーリンの淹れてくれた紅茶を飲んだと天使達が知ったら、果たしてどんな面白い反応をするかしら♪」
「アイツ等がそんな些細な事で反応する訳ないだろうが」
いくら未だに俺を父と慕ってるからって、悪魔に紅茶を飲ませた程度で怒るほど狭量な
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、エリーの向かいにあるソファーに座りながら自分の淹れた紅茶を飲む。
「まぁそんな事は如何でもいいとしてだ。俺に話って一体何だ?」
「もう、ちょっとくらいは余韻に浸せてよね。折角ダーリンのお部屋に入って紅茶を頂いてるのに」
「リアスが敵対してるお前に対して神経尖らせてるんだ。それ位は察しろ」
アイツは今もエリーをこの家から追い出したいのを我慢している。俺としてもこれ以上リアスのストレスを溜めて欲しくないから、さっさと用件を済ませようと思っている。
すると、俺の台詞を聞いたエリーはクスクスと笑い始める。
「あらあら、あんな家柄しか取り柄のない
「その小娘の温情によって、この家に滞在出来てる事を忘れないで貰おうか?」
「むぅ……」
少しばかり調子に乗った発言をするエリーに俺が牽制すると、言い返せなくなったのか再びカップに口を付けて紅茶を飲む。
「それじゃ、本題に入るわ。今度の戦いで私とダーリンが相手をするフレイヤの元英雄――オッタルについてなんだけど……ダーリンはどうするつもりなのかしら?」
「どういう意味だ?」
質問を質問で返す俺にエリーは気を悪くする事なく答えようとする。
「オッタルを殺すか殺さないのかって事よ。敵になったとは言え、オッタルは元々フレイヤの所有物。ダーリンはそれを考慮して、殺さずに捕らえるんじゃないかと私は思ったの」
「………………」
「アレでも一応は嘗てフレイヤの為に仕え、ヴァルハラの神々からも称賛された英雄の一人。万が一に殺した際、魂までも滅ぼしたら確実に面倒な事になるとダーリンは考えた筈よ」
確かにエリーの言う通り、俺もそれは考えた。オッタルを大事にしていたフレイヤの事を考慮し、肉体は滅ぼしても魂だけは必ず返そうと。
しかし、今のオッタルはロキによって改造されている上に、手加減して勝てる相手だと微塵も思っていない。そんな事をすれば殺されてしまう。
「安心しろ。フレイヤからちゃんと許可を貰っている。オッタルが俺達と敵対している以上は仕方ないってな」
「へぇ、あの色ボケ女神にしては随分と思い切った決断をしたのね。てっきりダーリンにお願いして、『絶対に殺さないでね』って我儘を言うかと思ってたのに」
「今回やる会談を必ず成功させようと、アイツもそれだけ覚悟を決めたって事だ。そう言う訳で、お前が気にする必要は一切無い」
エリーの事だから、戦闘中に俺が足手纏いになるのではないかと危惧していたんだろう。もし的中したら、自分だけでオッタルの相手をする為に、コイツなりの気遣いで俺を外そうと考えていたに違いない。
「と言う事は、ダーリンも初めからオッタルを殺すつもりでやるって思っていいのかしら?」
「ああ。元からそのつもりだ」
「ふぅん、それを聞いて安心したわ」
俺の返答を聞いて満足したのか、エリーはカップに残っている紅茶を一気に飲み干す。
「お代わり頼んでも良い?」
「一杯だけで充分だと思うんだが」
「だって会談はもうすぐだし、ロキとの戦いが終われば暫くダーリンと会えないだろうから、今の内に飲めるだけ飲んでおきたいのよ。ダーリンの淹れる紅茶は凄く美味しいから」
「はいはい」
空になったカップを受け取った俺は席を立ち、再び紅茶を淹れた。
今度は少し多めに入れたカップを渡すと、エリーはまた味わって飲もうとする。
……俺の淹れた紅茶って他と比べて本当に美味いのか? ローズさんに比べたら大した事はない筈なんだが。
不可解に思いながら自分の淹れた紅茶を飲む俺だが、エリーが思うほどにそこまで美味しいとは思えない。
あ、そう言えばこっちもエリーに訊きたい事があるんだった。
「おいエリー、今度は俺から質問させてもらいたいんだが」
「ん? 何かしら?」
美味しそうに紅茶を飲んでるエリーが一旦止めて、俺の方へと視線を向ける。
「お前、
「!」
先程までニコニコとしていたのが打って変わり、驚愕の表情となった。その直後、俺に途轍もない殺気をぶつけてくる。
「………どうしてダーリンがそれを知っているのかしら? その情報はアルスランド家だけしか知らない筈よ」
「前に戦ったラディガンの奴が口を滑らせてな。まだ未熟で暴走するそうだが、それでもアイツより実力は上だとも言ってたぞ」
戦闘中にラディガンが言ってた事を教えると、エリーは物凄く不愉快そうに表情を歪めている。
「あの男、よりにもよってダーリンにペラペラ喋る何て余計な真似を……! もうあんな
この瞬間、エリーは完全に兄のラディガンを忌まわしき存在と認識したみたいだ。
とても嘗て兄を愛していた妹とは思えない罵倒に、俺は僅かばかり死んだラディガンに同情した。もし聞いていたら、あの男は間違いなく絶望の表情を浮かべながら慟哭しているだろうと。ま、俺にとっては非常に如何でも良い事だが。
しかし、まさかあのエリーが此処まで毒を吐くとはな。それだけコイツの真の姿は俺に知られたくなかったと言う証拠か。
「先に言っておくが、俺はお前の真の姿を見たいだなんて微塵も思ってないから安心しろ」
「……思ってなくても、それを知られた時点で嫌なのよ。ダーリンにだけは絶対知られたくなかったのに……!」
うわっ、いつものエリーじゃない。これマジでショック受けてるぞ。
「一応これも確認したいんだが、もしオッタルと戦って不利な状況になったらどうするんだ? やむを得ず、真の姿になるのか?」
「嫌、絶対に嫌……! イッセーくんならまだしも、ダーリンには見せたくない。あんな醜い姿は絶対に……!」
どうやら自身が死にそうになっても、俺がいる限りは絶対真の姿にならないようだ。
エリーは人間形態だけでなく、
「……あ~、その、悪かったな。嫌な事を訊いて」
「…………………」
俺が謝ってもエリーは何の反応もせずに顔を俯かせている。
いつもの調子だったら――
『全くよ。私の乙女心を深く傷付けたダーリンには責任を持って一緒に寝てもらうわ』
――とか何とか言っている筈だ。
なのに今のエリーからそう言った返しが一切ない。これは本当に重傷モノだ。
不味いな。ロキとの戦い前なのにエリーをこんな状態で戦わせたら、却って足を引っ張られてしまいかねない。
しかも今回は俺が原因を作ってしまった。これでロキ達との戦いで負けてしまったら、間違いなく俺は糾弾されるだろう。主に冥界の貴族悪魔共がこれを機に、色々な責任を押し付けてくるのが容易に想像出来る。
………はぁっ、仕方ない。エリーをこんな状態にしたんだから、ここは俺が責任を持って何とかするしかないな。
そう思った俺はカップをテーブルの上に置き、傷心状態となっているエリーに近付く。
「おいエリー。お詫びって訳じゃないが、今夜は俺と一緒に寝るか?」
「…………え?」
思いも寄らない台詞だったのか、エリーはゆっくりと顔を上げる。
「但し、キスや性行為の他に精気を吸うとかは一切無しで、ただ俺を抱きしめるだけだ。それを了承するなら、俺と一緒に寝てもいい。どうする?」
「……ほ、本当に、良いの? 私が、ダーリンと一緒に寝ても……」
「ああ。お前の知られたくない秘密の棚を、俺が引っ張り出してしまったからな。それ位の責任は取るよ」
「…………ダーリン!!」
「おわっ!」
責任を取ると聞いたエリーは途端に涙目となり、そのまま俺に勢いよく抱き着いてくる。
「ダーリンからそんな事言われるなんて、私……凄く嬉しくて甘えたくなっちゃう!」
「………言っておくが今回限りだからな。それを忘れるなよ?」
念を押す俺にエリーは何度も頷く。
その後、寝る準備をした俺は寝室に向かうも――
「お前……その格好で俺と寝るつもりか?」
「だって、これが私の寝間着なんだもん」
思わず突っ込みを入れた。ってか、もんって言うな。
今のエリーはブラやパンツなどの下着を一切つけず、殆ど透けてる薄いネグリジェを纏っているだけ。ぶっちゃけ素っ裸も同然だ。
俺が少しばかり後悔してると、エリーは気にせず俺のベッドに入ってそのまま抱き着いてくる。
「ふふふ♪ 夢にまで見たダーリンとの添い寝。こうしてるだけで身体が疼いて、このままエッチしたく――」
「おっとエリー、あんまり調子に乗るなよ」
抱き付きながらも、俺の股間に触ろうとしてきたので咄嗟にエリーの手首を掴んで阻止した。
「言った筈だぞ。そう言う行為は一切無しだってな」
「……は~い」
警告を聞いて漸く諦めたのか、エリーは俺を抱き枕のように少し強めに抱き着く。それによって、エリーの肌が直に密着した。
せめてもの抵抗なのか、大きくて柔らかい胸の感触を強調するように強く当てている。だがしかし、俺にはそう言った色仕掛けは通用しないので、単に柔らかい物が当たってる程度にしか思ってない。
別に俺は不能と言う訳ではない。嘗て長い時を生きた
とは言え、いつまでもエリーを放置してたら俺の約束を破りそうだったので――
「おいエリー、ちょっとこっちを見ろ」
「ん?」
俺の呼び声に反応したエリーが見上げた瞬間、頬に軽いキスをしてやった。
「え? え? え?」
「今夜はこれで我慢しろ」
俺にキスされた事が凄く意外だったのか、エリーは惚けた顔になるも――
「~~~~~~~~ッ!!」
一気に顔を真っ赤にさせて、そのまま顔を俺の胸に埋めた。
何だコイツ? サキュバスの癖に、随分と初心な反応してるんだが……これが本当に何度も俺に性行為を迫ろうとしていた奴なのか? 全くの別人としか思えん。
まぁ取り敢えずコイツの色仕掛けがやっと止めてくれたから、このまま寝るとしよう。
「……………ダーリンのバカ。いきなりキスするなんて反則よ。これじゃ今まで迫ってた私がバカみたいじゃない……! どうしよう、このままだと本当に本気で………あのお方に背いちゃうじゃない……!」
突っ込みどころ満載なところがあるかと思われますが、取り敢えず感想をお待ちしています。