「おっぱいメイド喫茶希望です!」
「それでリアス、ウチの愚弟がこんな卑猥な希望を出してるがどうなんだ?」
「訊くまでもなく却下よ」
イッセーが希望した内容を確認する俺に、リアスは嘆息しながら否定する。
今日の部活動は、学園祭で催す出し物について話し合っていた。ロキ戦の前に何を悠長な事をしてると思われるだろうが、平穏な日常生活も大事なので、今日だけは学園に通える事になっていた。
そんな中、イッセーが卑猥なメイド喫茶を希望していた。どうせこの愚弟の事だから、リアスと朱乃を筆頭に胸を強調した喫茶店をやれば、学園祭の売り上げトップを狙えると思ったんだろう。
「一つ言っておく。もしそうなったら、他の男子達にリアスと朱乃の胸を見られる事になるんだぞ」
「リューセー先輩の言う通りだよ、イッセーくん。本当にそれで良いのかい?」
「――っ!」
俺と裕斗の意見にイッセーが衝撃を受けたような顔になった。
学園の二大お姉さまと称されているリアスと朱乃の胸は、この学園の男子達なら誰だって見たいだろう。しかし、今その二人の胸を独占しているのはイッセーだけだ。そんな美味しい思いをしてる愚弟が、他の男子達に見せる訳がない。
事の重大性を漸く理解したみたいで、イッセーは悔しそうに断念する。
「……くっ、無念だ。これじゃ、おっぱいお化け屋敷も無理か……」
「当たり前だ」
「……そんなことを考えていたんですか、どスケベ先輩」
イッセーの失意の言葉に俺が呆れながら突っ込み、小猫も同様に呆れていた。
非常に残念がるイッセーにリアスが溜息混じりに言う。
「あのね、イッセー。エッチなのは確かに高いポイントを取れそうだわ。けれど、生徒会が許さないでしょうし、教員の方々も却下するでしょうね」
そりゃそうだ。と言うか、常識的に考えて、んなもん絶対やらせる訳にはいかない。
因みに俺がリアスに去年と同じにするのかと聞いてみたが、リアスとしては「同じ事を連続でしたくない」との事で却下なんだと。
加えて、メイド喫茶は他の所でもやろうとしているそうだ。尤も、オカ研がやれば同じ喫茶店でも勝てる。理由は至極簡単。一言でいえば、ここにいる女子のレベルが高いからだ。
更には他と同じ事をしたくないリアスはそれもダメだと言ってるので、
リアスが一人一人に案を訊いても、これと言って斬新なものがでなかった。
「リューセー、貴方からは何かないかしら?」
「う~ん、そうだなぁ」
最後となった俺は少し考える仕草をする。
他の所と同じ内容はダメと同時に、イッセーが考えてる卑猥なものもNG。
「じゃあ『脱出ゲーム』ってのはどうだ?」
「『脱出ゲーム』?」
俺が出した案にリアスが分からなそうな表情で鸚鵡返しをした。他の部員も分からないのか、彼女と同様の反応だ。
「あ、それ知ってる。ゲームやバラエティ番組とかでやってた、閉じ込められた所から制限時間内に脱出するアレだろ?」
「そうだ」
イッセーが簡単に説明しながら訊いてきたので、俺はすぐに頷いた。
「内容としては、『各部屋に設置してある迷路やクイズ、ミニゲーム等を制限時間内にクリアして脱出できれば成功。もし出来なければその場で即失格。そして脱出に成功した挑戦者には、オカルト研究部が用意した賞品を進呈』。とまあ、この場で咄嗟に考えたルールだが、部長のリアスとしてはどうだ?」
「中々面白そうね。それは是非とも候補の一つに入れさせてもらうわ」
リアスにとっては嬉しい案だったみたいで、何の文句一つ言う事なく候補となった。
他の所と同じでない上に卑猥なものでもないから、部員達からも反対意見がない様子だ。
「……どスケベ先輩と違って、リューセー先輩の案は凄くまともですね」
「うぐっ!」
ボソッと呟く小猫の台詞に、何かが刺さったように苦しそうな声を出すイッセー。
小猫は相変わらず、卑猥関連になると辛辣だな。それでも嫌ったりはせず、今も甘えるように
すると、少し居心地が悪くなっているだろうイッセーが苦し紛れの提案を言おうとしている。
「……オカルト研究部の女子、誰が一番人気者か、とかはどうかな?」
小声で言ったイッセーの呟きに、女子全員が反応して顔を見合わせた。俺と裕斗も興味深そうにイッセーを見ている。
「それも良いかもしれないが、生憎このオカ研にはリアスと朱乃がいるからなぁ。事実上二人だけの勝負にしかならない」
「だとしても、二大お姉さまのどちらが人気か気になりますぅ」
俺が苦笑しながら言ってると、ずっと静かだったギャスパーがぽろっと漏らした事に、リアスも朱乃と顔を見合わせていた。
「「私が一番に決まってるわ」」
リアスと朱乃の声が重なった直後、睨み合いを始めた。二人は笑顔だが、どちらも怖いオーラを漂わせている。
「あら、部長。何か仰いました?」
「朱乃こそ、聞き捨てならない事を口にしなかったかしら?」
う~む、朱乃の調子がだいぶ戻っているようだな。あの時の深刻そうな表情とは大違いだ。
俺がエリーと一緒に寝た翌日、朱乃に確認をした。余りにも無粋だと言う事は重々承知しているが、それでも少しは気が晴れたかの確認をしたかった。
朱乃は頬を赤らめながらも、二人っきりになった後の事をある程度話してくれた。性行為に迫ろうとしたが、『同情的なもので抱きたくない』と拒否された後、自分を優しく抱きしめてくれたそうだ。
普段スケベな事ばかり考えているあの愚弟が、珍しく誠実な対応をしたんだなぁと内心思った。てっきり朱乃の誘惑に負けて、あっさりと性行為に走ると思ってた。
………と言うのは勿論冗談だ。イッセーは朱乃がここ最近思い詰めていたのを知っている。だから俺は必ず止めてくれるだろうと既に予想していた。もしイッセーが相手の心情を一切気にしないで性行為に走り出すゲス野郎だったら、俺の方でとっくに阻止している。
過ちが起きなかったのは取り敢えず良かったが、それでも朱乃とバラキエルの親子関係が未だ拗れてる事に変わりはない。どうにかあの親子のどっちかが歩み寄って……と言うより、朱乃の方から踏み出してくれなければ始まらないか。
そう考えている中、リアスと朱乃の口喧嘩が始まった事により、会議はご破算だ。催し物決定の会議は後日に持ち越しとなったのは言うまでもない。
出来れば、イッセーたち二年の修学旅行前までに決まって欲しいもんだ。
それとは別に、オカ研の顧問であるアザゼルはさっきから部室の隅で茶を飲んでいる。いつもなら俺達の会議を見ながら面白そうに口出しするが、今回は珍しく静観していた。それどころか窓から外の夕暮れを見て、ぼそりと呟く。
「……黄昏か」
それを聞いた瞬間、俺を含めた此処にいる全員が真剣な面持ちになった。何しろ、この後に俺達はロキと決戦だから。
そして部活終了時間のチャイムが学園中に鳴り響く。
「今の時代に
「ああ、そうだな」
「お前達も教えてやれ。俺達の大事な平穏をぶち壊そうとする、あの大馬鹿者にな」
『はい!』
次回は漸くロキ戦です。