「イッセー、ロキは任せたぞ」
「ちょっとダーリン、私にも言ってよ~!」
兄貴は俺――兵藤一誠にそう言った直後に上空へ飛翔すると、オッタルも追いかけるように飛んでいく。
その後に、少し離れた所からエリーが不満そうに言いながら二人に続いて飛翔した。
本当は俺も行きたかったけど、戦う相手がロキなので、取り敢えずオッタルの方は兄貴達に任せるしかない。
さて、やるか。
『
赤い閃光を放ちながら、俺の体に赤龍帝の力が
転生悪魔となって初の
けど、ロキとの戦いに備えて昂る
『
ヴァーリは俺と違って、以前見た時の白い
それを見た事に、ロキが歓喜した。
「これは何と素晴らしい! 二天龍がこのロキを倒すべく共同するというのか! 特に赤龍帝! 前に会った時より、また更に腕を上げたではないか! これほどまで胸が高鳴る事はないぞッ!」
直後、ヴァーリが仕掛けた。空中で光の軌道をジグザグに生み出しながら、高速でロキに近付いていく。
俺はそれと違い、構えながらも身体を少し屈ませた瞬間、ロキ目掛けて高速の低空飛行をする。
空中からヴァーリ、地上から俺がそれぞれ突っ込む!
「赤と白の競演ッ! こんな戦いが出来るのは恐らく我が初めてだろうッ!」
嬉々としたまま、ロキは全身を覆うように広範囲の防御式魔法陣を展開させた。
と、思いきや、その魔法陣から魔術の光が幾重もの帯となり、俺達に放たれる。
見た感じ、追尾性の高い攻撃だ。空中を飛び回るヴァーリ目掛けて、幾重もの光の帯が向かっていく。
同時に俺の方も何十もの攻撃が前方から放たれてきた。
チラリと見た程度だがヴァーリは問題無いだろう。空中で曲芸みたいに飛び回っていたのが視界に入ったので。
対して俺は――このまま突貫だ! 避ける必要なんかねぇ!
キィンッ! キィィンッ!!
俺の体に魔術の攻撃が当たる瞬間、包んでいる紅い
右拳に力を込め、ロキ目掛けて低空飛行のまま最大加速で突っ込む!
バリンッ! バリィンッ!
「ッ!」
これには予想外だったのか、流石のロキも驚愕している様子だ。
すると、空中にいるヴァーリから途轍もない魔力を感じた。思わず見上げると、ヴァーリの手元に魔力以外の術式が展開していた。
あれは北欧の攻撃式魔術だ。以前ヴァルハラでオーディンの爺さんが兄貴にレクチャーした時に見たのと似てるが、あそこまでバカげた術式は展開してねぇ!
「――取り敢えず、初手だ」
パァァァアアアアアアアアアッ!
あの野郎、俺がロキに接近してるのに何の躊躇いもなく掃射しやがった! いくら俺がロキの防御を崩したからって、少しは考えて攻撃しやがれ!
そう思いながら超スピードで回避+退避すると、採石場の三分の一ほどを包むほどの規模の一撃が降り注いだ。
攻撃が止むと、ロキのいた場所は――全く底の見えない大きな穴が生まれていた。
なんつーか……まるで地球を侵略しに来たベジターの相棒だったヤサイ人――ナパーが大地に底の見えない穴を開けた『オーラ破』みたいだな。俺もやろうと思えばできない事もないが。
ヴァーリの事だから一応攻撃範囲は狭めたんだろうが、使い始めた事もあって完全にコントロール出来てないようだ。いくらアイツが天才だからって、覚えてすぐ使いこなすなんて無理だろう。兄貴も空孫悟たちの技を初めて使った際、調整するのに少しばかり苦労している。
「ふはははは!」
突如、高笑いが聞こえてくる。
そこへ視線を向ければ、宙に漂う人影――ロキだ。ローブはいくらか破れても、奴自身は全くの無傷だ。
くそっ。やっぱ躱してやがったか。ヴァーリが術式を放った瞬間、咄嗟に転移術を使っていたのを見えた。反応が一秒遅ければ、それなりのダメージを与えていたんだが。
だったら今度は俺の出番だ! 腰に付けていたハンマー――ミョルニルを手に取り、練習通り
バリバリバリバリバリバリィッッ!!
兄貴に教わったやり方で、無駄に大きくさせない為に
両腕を振り上げ、そのままロキに突き付ける。
すると、ロキがそれを見て目元を引くつかせた。
「……あれはミョルニル……いや、レプリカか? だとしても、あの危険なモノを少々面倒な赤龍帝に渡すとは。オーディンとフレイヤめ、それほどまでに会談を成功させたいか……ッ!」
どうやらロキは俺に少しばかりの警戒をしながらも、オーディンの爺さんやフレイヤさんがコレを渡した事にキレているようだ。
ノーマル状態だと若干ふらついたが、
振り上げたまま、構えた格好で――
「なッ!!」
超スピードを使って一瞬でロキに接近した。
突然目の前に現れた事に驚くロキだったが、ハンマーを振り下ろす俺を見て即座に避けた。
そして、ハンマーが地面に激突――
ゴァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
「………え゛?」
した直後、俺の視界に映ってる前方の地面が雷を縫うように舞っているかと思いきや、ヴァーリ以上に破壊した大穴が出来上がった。
この光景を見た空中にいるヴァーリも動きを止めており、ロキですら驚愕の表情をしていた。多分だけど、部長達も同じ反応をしてると思う。
おいおい……俺まだ本気じゃねぇのに、何でもう採石場の半分以上が大穴になっちゃってんの?
「ふはははははははは!」
若干呆け気味となってる俺にロキが再び高笑いをする。
「素晴らしい一撃ではないか! その槌は本来力強く、そして純粋な心の持ち主にしか扱えない。貴殿は邪な心があるのをヴァルハラへ来た時に知ってたから、恐らく雷が生まれないと予想していた。だが、あの強力な雷を生みだせるようにしたのは、恐らく聖書の神が何かしらの細工をしたのであろう?」
その読みは大当たりだ。
ロキの言う通り、俺はハンマーを振り回せても、スケベな為に雷まで出す事は出来ない。けど、そこを聖書の神である兄貴がカスタマイズしてくれた。ハンマーを通して、俺の
これはレプリカだからこそ出来た荒技だ。兄貴曰く『もし本物だったら、かなりの時間を要して今回の戦いには絶対間に合わない』らしい。
「ふっ。流石は俺の
どうでもいいが、なんかヴァーリの奴が俺を凝視してるような気がする。取り敢えずは無視しておこう。
そんな中、さっきまで笑っていたロキが真面目な表情となった。
「赤龍帝、その槌を持っている貴殿は少々危険だ。ここからお遊びは抜きにしようッ!」
ロキが指を鳴らすと、今まで様子を見ていたフェンリルが一歩前に進みだした。
同時に奴の両サイドの空間が激しく歪みだす。
出て来たのは――灰色の毛並みに鋭い爪、そして感情がこもらない双眸と大きく裂けた口。それも二体だ。
「スコルッ! ハティッ!」
ロキの声に呼応するように、二体は天に向かって吼えた。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
月の光に照らされて、二匹の巨大な獣の狼が咆哮をあげていた。
マジかよ!? 確かフェンリルは一匹だけじゃなかったのか!?
当然俺だけでなく、この場にいる全員が驚きの顔だった。ヴァーリだけは楽しそうだが。
「この二匹はフェンリルの子供達だ。親のフェンリルよりも多少スペックは劣るが、牙は健在だ。神はおろか、貴殿らも簡単に葬れるだろう」
フェンリルに子供がいたのかよ……くそっ! こりゃ完全に誤算じゃねぇか!
ミドはあの二匹の事を言ってなかったが……恐らく知らないだろう。知ってたら教えてくれている。そう考えると、ミドが今も深海でグースカ寝てる時に、親フェンリルが子供を作ったかもな。
最悪だ。一匹だけでも厄介なのに、子供とは言え二匹もいるって……マジで最悪だよ! こんな事ならオッタルと戦えば良かった!
そう思ってると、ロキが親子のフェンリル三匹に指示を送り出す。
「さあ、スコルとハティよ! 先ずは父と一緒にミョルニルを手にしてる赤龍帝を始末しろ! その牙と爪で食らい千切るがいいっ!」
原作と違ってロキはイッセーを少々警戒しています。
感想お待ちしています。