ハイスクールD×D ~神魔兄弟の奮闘~   作:さすらいの旅人

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今回は原作とは違うオリジナル路線です。


第二話

 ケータイから届いた報せには、『二つの廃工場に敵が潜んでいる』とあった。しかも、それらはかなり距離がある為、一つずつ対処するには時間を要してしまう。

 

 なので今回は、二手に分断して対処する事にした。グレモリー眷族+イリナは一つ目を、俺は二つ目を対応すると。

 

 俺の提案にリアス達は難色を示していた。いくら俺が強くても、一人だけでやるのは危険だと。

 

 その中で特に反対していたのは元教会出身のゼノヴィアと、転生天使のイリナだ。イリナは天使長ミカエルの命により派遣されてるので、万が一に俺の身に何かが起きたら大目玉を喰らうと大反対している。

 

 彼女達が反対する気持ちは分かる。俺は嘗て天界のトップとして君臨していた聖書の神だ。人間に転生したとは言え、ミカエルたち天使勢が未だに聖書の神(わたし)を敬い、各勢力からは警戒されている。そんな聖書の神(わたし)が単独行動したら、危険だと反対するのは至極当然だ。

 

 聖書の神(わたし)を心配する気持ちは分かるけど、今は三大勢力の助っ人の立場だから他のトップ達は違う。俺は積極的に動ける立場なので、単独行動をしても何ら問題はない。尤も、もし自分の身に何か遭った場合は自己責任になるがな。

 

 取り敢えずリアス達には一つ目の廃工場を任せるように言った俺は、すぐに転移を使って目的地から少し離れた場所へ到着するが――

 

「良いのか、イッセー? お前はもう正式なリアスの眷族なのに、こんな勝手な事をして」

 

「確かにそうだが、俺は今でも兄貴の側近的な立場なんだろ? だったら俺が一緒に行っても問題無い筈だ」

 

 イッセーが超スピードで接近して俺の肩に触れた為、一緒に転移する事になってしまった。

 

「珍しいな。俺が分断の提案をした際、必ずリアスやアーシアたち美少女側と行動する筈だと言うのに。リアスに怒られるぞ?」

 

 イッセーは俺の実力を理解と同時に大して心配はしてないから、リアス達の方へ行こうとする。しかし、今回はリアスの制止を振り切って俺と行動するとは。

 

「部長には後で謝るよ。それに、俺が行けば部長やイリナ達も少しは安心するだろうしな。兄貴だって、後々にアザゼル先生やミカエルさんから小言を言われるのは嫌だろ?」

 

「………まぁ、確かに」

 

 言われてみればイッセーの言う通りかもしれない。アザゼルはまだ良いとしても、後から知ったミカエルが小言ついでに護衛を付けるべきだとか進言するのが目に見えてる。

 

「けど、一体どう言う風の吹き回しだ? いくら理由があるからって、お前がそんな殊勝な事を積極的にやるとは思えないんだが。その気遣いは受け取っておくから、お前は早くリアス達の所へ――」

 

「無理すんなよ。ここ最近、参ってるんだろ?」

 

「っ……」

 

 俺がリアス達の所へ戻る様に言ってる最中、イッセーが突然真剣な顔をして言ってきた。

 

 ……まさかイッセーの奴、俺の心情を察して無理矢理付いてきたのか?

 

「何を言ってる? 常に元気な俺が参る筈が――」

 

「今ここには(おれ)しかいない。だから正直に言ってくれ。兄貴、ここ最近襲撃してる『禍の団(カオス・ブリゲード)』――英雄派の事を考えてるだろ? 特に神器(セイクリッド・ギア)の所為で、不幸な人生を送る破目になった奴等の事を」

 

「―――はぁっ。お前には敵わんな」

 

 またしても言ってる最中、今度は確信をついた事を言ってくるイッセー。反論出来ない程の大正解な為、俺は諦めるように嘆息する。

 

「いつから気付いていた?」

 

「襲撃者達がボロクソに罵倒しまくった兄貴の顔を見た後から」

 

「……そうか」

 

 つまり最初から気付いていたって事か。ったく。こういう事に関しては本当に鋭いな、俺の弟は。

 

 イッセーの言う通り、俺はこのところ参り気味だった。と言うより、悩んでいると言った方が正しいだろう。

 

 事の発端は、俺がリアス達と一緒に一回目の襲撃者達の対処をしている時だ。

 

 襲撃者は『禍の団(カオス・ブリゲード)』の英雄派で、構成員は全て人間だった。しかも全員が神器(セイクリッド・ギア)所有者。

 

 俺がリアスと一緒に指揮を執りながら戦っていると、英雄派の連中が俺を見た途端、悪魔のリアス達以上の憎悪を込めて睨んできた。

 

『聖書の神! 貴様の所為で俺は不幸のどん底を味わった! 貴様が、貴様が神器(セイクリッド・ギア)なんか作らなければ、こんな事にならなかったんだ!』

 

『俺は貴様を絶対許さねぇ! 殺してやる!』

 

『返せよ! 俺の人生を! 何もかもテメエが悪いんだ!』

 

『この疫病神が!』

 

 ってな事を罵倒されまくったよ。あの時は本当に内心グサッと突き刺さった。

 

 アイツ等は言うなれば、聖書の神(わたし)の被害者みたいな者達だ。

 

 聖書の神(わたし)は嘗て、人々を幸福にさせる愛と称し、『システム』で素質のある人間に神器(セイクリッド・ギア)を与える処置を施した。これが最善な方法だと。

 

 自分のお陰で幸せな日々を送っているだろうと、最初は思っていた。だが、人間に転生した後、それは大きな間違いだった同時に後悔した。神器(セイクリッド・ギア)を得られた事で幸福になったどころか、逆に不幸な人生を送ってしまう破目になってしまったと。

 

 数年前に(イッセー)と修行の旅をしていた際、一人の幼い神器(セイクリッド・ギア)所有者と出会った。その子は周囲の人間から迫害されていた。挙句の果てにはバケモノ扱いまでして殺そうとしていた程だ。俺とイッセーは速攻でその子を助け、迫害していた連中の記憶を消去させた。そして、その後にあの子が泣きながらこう言った。『どうして僕には、こんな物があるの?』って。

 

 あの時ほど、聖書の神(わたし)は自分がどれだけ思い上がり、愚かな事をしてしまったのだと果てしなく後悔した。イッセーからも、神器(セイクリッド・ギア)を与えた聖書の神(わたし)に対して罵倒した時も、結構グサッときたよ。

 

 故に決めた。もし神器(セイクリッド・ギア)の所為で不幸になった人間から罵倒されても、聖書の神(わたし)は全て甘んじて受け入れると。彼等からしたら、そんな事だけで許さないだろう。しかし、それが今の聖書の神(わたし)にしか出来ない事だ。

 

 だと言うのに、今回の襲撃者達から罵倒されまくった時は、もう本当に突き刺さる様に効いたよ。尤も、その連中は俺に対する罵倒に、ブチ切れたゼノヴィアとイリナによって徹底的に叩きのめされたがな。

 

 それ以降、立て続けに襲撃してくる英雄派の中に、最初の連中と同じ罵倒する者もいた。それが流石に何回も言われると、聖書の神(わたし)も流石に参るよ。不幸にさせた自覚があるとは言え、嘗て天界のトップだった者がこの程度でへこたれるとは少しばかり情けないな。

 

「……なぁイッセー、お前は今どう思ってる? 神器(セイクリッド・ギア)の所為で、人間を不幸にさせた諸悪の根源である聖書の神(わたし)を」

 

「は?」

 

「以前、旅をしてた時に言ってたじゃないか。『神器(こんなもの)を人間に与えた神様は一体何考えてるんだ?』と」

 

 イッセーが初めて聖書の神(わたし)に大して毒を吐いた内容は今でもハッキリと覚えている。今の聖書の神(わたし)にとって、(イッセー)の言葉が他の人間と違って一番効いたから。

 

「……ああ、確かに言ったな」

 

「今でも俺を一人の家族として接しているが、それでも色々と思うところはあるだろう? 何なら今ここで言ってくれ。もしくは殴っても良いぞ。その方がお互いにスッキリするからな」

 

 もしイッセーに罵倒されたり、殴られたとしても、俺は何の抵抗もせずに受け入れる。イッセーが弟とは言っても、聖書の神(わたし)の所為で神器(セイクリッド・ギア)を与えられた被害者の一人でもある。例えもし殺すような事をしても、相手がイッセーなら俺は受け入れるつもりだ。

 

「…………………」

 

「どうしたイッセー? 何故、何も言わない?」

 

「………はぁ。急に真剣な顔をして何言うかと思えば……やっぱり兄貴は意外とバカなんだな」

 

「ば、バカ?」

 

 思いも寄らないイッセーからのバカ発言に、目が点になって鸚鵡返しをする俺。

 

「確かに思うところはあるよ。愛を受け取れば幸福になれるって己惚れた神さまは今でも気に入らねぇよ。もし会えるなら文句を言いたいと思ってる。けどなぁ」

 

 と言って、イッセーは顔をグイッと近づけてくる。

 

「その神さまはもう存在してないだろ。今は人間に転生した元神さまで、俺の師匠になって鍛えてくれてる兵藤隆誠(あにき)だ。生憎俺は、現在(いま)の兄貴を責める気なんか微塵もねぇ。それに兄貴は人間になって気付いたんだろ? 自分の所為でどんだけバカな事をしたのかって後悔する程に。前の神さまが今でも生きてたら、そんなの気にしない筈だ。そう考えると、今の兄貴の方が前の神さまなんかより遥かに良いじゃねぇか。兄貴が昔のクソったれな神さまのまんまだったら、俺は今頃ぶん殴ってるよ」

 

「………………………」

 

 本心で言ってるイッセーの言葉に、俺は言葉を失っていた。と言うより、何も言い返せないと言うのが正しいか。

 

 俺が無言のままになってると、イッセーは近づけた顔を話してこう言う。

 

「俺が言いたいのはこんなところだ。ったく! 戦闘前だってのに、こんなこと言わせんなよ」

 

「…………ぷっ、くく、くくく………はははははははは!」

 

「何いきなり笑ってんだよ」

 

 耐え切れずに笑い出す俺に、顔を顰めながら言ってくるイッセー。

 

「ああ、悪い悪い。まさかお前からそんな風に言われるなんて思ってもみなくてな」

 

 俺は一通り笑い終えると、謝りながら理由を言う。

 

 あ~久々に笑った。こんなに心の底から笑ったなんて久しぶりだよ。おまけに今まで抱えていた物がスッキリしたように吹っ飛んでるし。

 

 さっきまでウジウジと悩んでいた自分がバカだったんじゃないかと思う程だ。イッセーの言う通り、俺は本当にバカだったかもしれないな。

 

 とは言え、いくらイッセーが責めないとは言っても、聖書の神(わたし)の所為で不幸にした人間に対しては受け止めないといけない事に変わりはない。

 

「ありがとな、イッセー。お陰で心が晴れたよ」

 

「は?」

 

「よし! 今日は久々にお前とコンビプレーでもやるか。即効で襲撃者共を片付けた後、すぐにリアス達と合流するぞ」

 

「お、おう……って! ちょっと待ちやがれ兄貴! さっきまで参ってた顔してたのに、何で急に元気になってんだよ!? 今日の兄貴は何か不気味なんだけど!」

 

 先に行く俺に、イッセーは文句を言いながら後から付いてくる。

 

 ああだこうだと言いつつも、俺とイッセーは襲撃者が潜んでいる廃工場の中に入る。

 

「来たか、聖書の神! 俺達は貴様の所為で不幸な人生を――」

 

「悪いけど、もう英雄派(おまえら)からの罵詈雑言は聞き飽きてるんだ。文句なら後で聞いてやるよ。行くぞ、イッセー。一分以内で片付けるぞ」

 

「おう!」

 

「え? ちょ、ちょっと待て! 俺達は貴様の被害者で――」

 

『ぎゃぁぁぁぁあああああああ~~~~~!!!』

 

 襲撃者達の行動に付き合う事なく、俺とイッセーは神器(セイクリッド・ギア)を使わせる前に速攻で仕掛けて全員をKOさせた。

 

 俺たち兄弟は今まで個人で戦っているが、格闘戦のコンビプレーも大得意だ。それに加えて個人の戦闘力以上の力を発揮する。なので神器(セイクリッド・ギア)に頼った未熟な戦い方しかしない襲撃者達を簡単に倒したのは言うまでもない。

 

 因みに俺達にKOされて今も気絶中の襲撃者達は、目覚めた後には記憶が消去されている為、何の情報も得る事が出来ない。最初の襲撃者達から同じ事が続いている。一応コイツ等は襲撃者である為、調べるだけ調べると言う事で冥界へ送る手筈になっている。

 

 一通りの作業を終えたので、俺はイッセーと一緒に転移術を使ってリアス達がいる一つ目の廃工場へ向かうと、もう既に片付いていた。何人か逃がしてしまったみたいだが、残りは全て冥界へ送るようだ。因みに俺の単独行動とイッセーの独断については、後でアザゼルに報告するらしい。

 

 その後、イリナから意見が上がった。今回や今までの英雄派の行動について。

 

 リアス達が色々な推測を立てるも、俺の方でアザゼルと話し合ってみるとと言う事で話を終える事にした。

 

 用が済んだ俺達は部室へ戻って一息ついた後、帰り支度をする中で朱乃が何故か鼻歌を歌っていた。

 

「どうした、朱乃。何か随分とご機嫌だが」

 

「それは当然。明日ですもの。自然と笑みがこぼれますわ」

 

「明日? ………ああ、そう言えば明日はアレだったな」

 

「ええ。デート。明日イッセーくんは私の彼氏ですわ、うふふ」

 

 危ない危ない。俺とした事がまたしても忘れてた。明日はイッセーが朱乃とデートする日だって事を。

 

 俺と朱乃の会話を聞いた直後に空気が変わり、女性陣全員の殺意がイッセーに向いていた。俺も俺で、朱乃のデートを手助けした事もあってか、リアスから睨まれたし。




今回は兵藤兄弟メインの話でした。
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