「なるほど。イッセーちゃんが
「全くですよ。と言っても既に瓦解してるので、後は残党共を片付けるだけです。ローズさん、万が一ソイツ等と遭遇した時は始末してもらっていいですか? 倒した後は
「あらぁ、嬉しいお知らせねぇ♪ 良いわぁ。もし来たら、ワタシがヌッポリ……じゃなくて、身体の隅々までジックリ教育してあげるわぁ♪ ウフフフフフ♪」
「言い直したところで大して変わってませんよ?」
オカマバーで店長のローズさんに自分の事や、先日に起きた事件の経緯を話すこと約数時間。彼は仕事をしながらも俺の話をずっと聞いてくれた。途中で昼食として、ローズさんお手製のランチセットも美味しく頂いた。勿論、金は後でちゃんと払う。
そして旧魔王派の残党処理を頼み、ローズさんが笑みを浮かべながら快く引き受けてくれたのを見て理解した。もしも残党共がローズさんと遭遇したら、死んだ方がマシだと思う奈落の底へ叩き落される事に。
「そう言えば話してる途中で思い出したんですけど、以前に其方で教育した堕天使は今どうしてるんですか?」
「ああ、ドーちゃんの事? 今はもうすっかりウチの従業員で、立派に接客しているわぁ。良かったら呼ぼうかしら?」
「……え、遠慮しておきます」
ドーちゃんって……。アイツの名前はドーナシークで、嘗てはバカ娘こと堕天使レイナーレの配下だった男堕天使だ。
それが今や、洗脳と言う名のローズさんの教育によってオカマ化し、完全な男好きとなってるか。確か以前、イッセーの悪友の一人――元浜の尻を狙おうとしてたな。
後日、嘗て部下だったドーナシークの変わり果てた姿と現在を堕天使総督アザゼルに報告すると――
『ドーナシーク? 誰だソイツは? 知らないなぁ。こんなキモい奴を部下にした憶えはないし、見た事も無いなぁ。ってか、写真見せるな。見るだけで目が腐りそうだ』
初めから知らないと記憶消去されてしまった。部下を簡単に切り捨てるとは、アザゼルは随分と酷いもんだ。訴えられても知らないからな。
「おっと、もうこんな時間ですか。すいません、長々と居座ってしまって」
時計を見ると午後二時を指していた。この店には午前十時前に入ったから、もう四時間以上経っていた。時間が経っている事で既に他の客、と言うよりオカマの客も少なからずいる。何かさっきから、ローズさんと話したそうな様子だ。
「リューセーちゃんは特別だから、何時間居ても構わないわよ?」
「ははは。これ以上ローズさんを独占してたら、向こうのお客から文句を言われそうなんで退散します。はい、お代です」
そう言いながら俺は財布から千円札を二枚出して支払う。因みにランチセットとコーヒー数杯分の料金だ。俺の場合は何割か引いてくれているので、通常の料金より安くなっている。他の客と同様に通常料金で構わないんだけど、ローズさんは俺に恩があるからと言って必ず割引してるんだよな。
「ごちそうさまでした。また来ます。もし何かありましたら、連絡しますので」
「いつでも来てねぇ~」
店を出た俺は、適当に歩きながらイッセーの
え~っと、イッセーと朱乃は……もう指定の遊園地にはいないが、未だにデート中みたいでずっと傍にいるか。リアス達は……あれ? 何か二人から随分と離れているな。ついさっき確認した時は、憤怒のオーラを出しながらも一定の距離を保っていたのに。
リアスはイッセー関連で嫉妬してる時、必ずと言っていい程に怒りのオーラを放つ癖がある。まぁ表面上には出さないが、探知した時には禍々しいオーラを感じるんだよなぁ。
直接は見てないから分からないが、リアス達はイッセーと朱乃を見失ったか、もしくは撒かれたか。後者だったら、間違いなく朱乃の仕業だろう。そろそろ本格的に二人っきりの時間になりたい、ってな感じで。
イッセーと朱乃のオーラが感じる方角は分かるが、何処にいるのかは分からないな。遊園地は場所を知ってたから特定出来たが、今アイツ等はあんまり人気がない所にいるとしか分からない。
……………これはあくまで俺の推測に過ぎない。まさか朱乃がこんな昼間っからイッセーとラブホテルに……いやいや、それは流石にないか。ってかアイツ等はまだ学生だから、そんな場所に入れる訳無いし。
いくらなんでも考え過ぎ……ん? イッセーと朱乃のオーラの他に……って、おいおい! このオーラはまさか!?
覚えがある複数のオーラを感じ取った俺は、すぐに人目が付かない所へ隠れて、すぐにイッセー達がいる所へ向かおうと転移術を使った。
☆
ど、どうしよう。俺はどうすれば良いんだ!?
俺――兵藤一誠はさっきまで朱乃さんとのデートをしていた。陰から紅髪の追跡者さまご一行こと部長達のプレッシャーを感じながら。
年相応の可愛い女の子の服装になってる朱乃さんと遊園地で一通り楽しみそこから出てすぐに急に予定外な事が起きた。朱乃さんが俺の手を引っ張って走り出し、部長達を撒こうと。俺は逆らう訳もなく、一緒に走り出す事によって朱乃さんと一緒に撒く事になったのは言うまでもない。
そして、問題はその後だ。部長達を撒いたのは良いが、がむしゃらに走り回ったせいで、どこだか分からなくなって周囲を確認すると……何とラブホテルばかりある場所だった!
部長達に知られたら大変な事になると思った俺は、すぐに朱乃さんを連れて出ようとした。しかし、朱乃さんが顔を細田まで真っ赤にしながら凄く恥ずかしそうに呟いた。『イッセーが入りたいなら、いいよ』と。そして今に至る。
今の朱乃さんを見て断ってしまえば、男が廃るような気がしてならない! だけど後になって、部長に殺されてしまいそうで恐い!
俺の頭の中を支配して戦っている。このまま行くんだ! ダメだ断るんだ! と言う二つの考えが!
最大の決断を迫られる俺に、横から話しかける者がいた。
「ま~ったく、こんな昼間っから、女を抱こうなどとやるではないか、イッセーよ」
ん? 何か聞き覚えのある声だ。思わず振り向くと、そこには帽子をかぶったラフな格好の爺さん。背後にガタイの良い男性とパンツスーツを着込んだ真面目そうな女の人だ。
って! この爺さんは!
「オーディンの爺さん!?」
「ほっほっほ、久しいの、イッセー。北の国から遠路はるばる来たぞい」
何と目の前には北欧の主神である爺さんがいた! ディオドラとの一戦以来じゃないか。
「ところでイッセーよ。ワシがこうして折角来たんじゃから、例の本を献上したらどうじゃ?」
「いやいや、そんな事より、何で爺さん達が此処に来てるんだ?」
兄貴やアザゼル先生から爺さんが来るなんて話は全く聞いてないぞ。と言うより、テロが活発な時期に来たら色々と不味い筈だろ? と思っていたら、ロスヴァイセさんが入ってくる。
「オーディンさま! こ、このような場所をうろうろとされては困ります! か、神さまなのですから、キチンとなさってください! 聖書の神であるリューセーさんに知られたら呆れられますから!」
おおっ。また爺さんを怒り出したよ。この前冥界で会った時もこんな感じだったな。
「よく言うわい、ロスヴァイセ。元勇者じゃったリューセーと別れる前に、ここに入りたかったと今でも未練がましくぼやいておったではないか」
「そ、それとこれとは別です! 私より、オーディンさまはご自重なさってください! あと、イッセーくんや貴女もです。ハイスクールの生徒なんだから、お家に戻って勉強なさい」
ああ、ロスヴァイセさんは未だ兄貴に未練があるんだ。ああ言ってるって事は、まだ新しい
ってか話を逸らす為に、俺達に正論ぶって怒ってもなぁ。今のロスヴァイセさんにはとても説得力が感じられない。
まぁどの道、こんな空気じゃラブホテル入るか否かを決められないな……。
畜生っ! 俺は心の中で慟哭していた!
と、横を見れば朱乃さんが爺さんの付き添いと思われるガタイの良い男性に詰め寄られていた。
「……あ、あなたは」
朱乃さんはその人を見た途端に目を見開いて、驚いている。ひょっとして見覚えのある人か? それにこの人のオーラは、何か朱乃さんと感じが似ている。
「朱乃、これはどういうことだ?」
男性の方はキレ気味だ。声音を聞くだけで怒気が含まれているのが分かる。すっげぇ迫力だ。
「……あ、あなたには関係ないでしょ! そ、それよりもどうしてここにいるのよ!」
さっきまで可愛かった朱乃さんとは別人のように、目つきを鋭くして睨み付けていた。あの朱乃さんがここまで睨むなんて……もしかして、この人は。
「それは今どうでもいい! とにかく、ここを離れろ。まだ学生のお前にはまだ早い」
男性は朱乃さんの腕を掴み、強引にどこかへ連れて行こうとする。
「いや! 離して!」
朱乃さんが必死に抵抗していた。
男性は朱乃さんを知って、朱乃さんも男性を知っている。俺は何となくだけど分かった気がした。
「はいはい。そこまでにしような、お二人さん。こんな所でみっともない親子喧嘩なんかしないでくれ」
「へ? あ、兄貴!?」
『!』
突然、転移して現れた兄貴が男性と朱乃さんの間に割り込んで止めた。
兄貴の登場に俺だけじゃなく、朱乃さんと男性は驚いている。
「おお、リューセーではないか。お主も久しぶりじゃのう」
「りゅ、リューセー、さん。お、お久しぶりです」
黙って見ていた爺さんは親しげに、ロスヴァイセさんは余所余所しい挨拶をする。
「ち、父上! これは私と朱乃の問題で……!」
男性は兄貴に向かって父上と言った。端から見れば、中年男性が学生の少年である兄貴に向かってそう呼ぶのは無理があり過ぎる。
だけど、俺はすぐに確信した。この男性は――
「今のお前は堕天使組織グリゴリ幹部、バラキエルとして来ている筈だ。――朱乃の父親だからって、何をしても許されるって訳じゃないぞ?」
「ぐっ……」
――やっぱり朱乃さんのお父さんだった。
兄貴の言い分が効いたのか、男性――バラキエルさんは掴んでいた朱乃さんの腕を離した。
何とか事無きを終えたと思った直後、
「リューセー!」
「へ? おわっ!」
突如、いきなり現れた誰かが、そのまま兄貴に猛スピードで接近して抱き着いた。兄貴は何とか倒れずに踏ん張ると、抱き着いてきた誰かを見た途端に驚愕を露わにする。
兄貴だけじゃなく、この場にいる面々も驚いた様子だ。
「またお前か、フレイヤ! いい加減、急に抱き着くのは止めろ!」
「だってぇ、リューセーに会いたかったんだも~ん!」
兄貴に抱き着いたのは、亜麻色の長髪をした超美人――女神フレイヤさんだった。
久しぶりに見たけど、この女神様は相変わらず兄貴の事が大好きだなぁ。兄貴は少し迷惑がってるけど。
「やれやれ、フレイヤ。勝手にいなくなったかと思えば、リューセーが来た途端に現れおって……」
「ふ、フレイヤさま! 貴女もオーディンさまと同じ神さまなんですから、リューセーさんにはしたない真似は……!」
フレイヤさんの登場に、オーディンの爺さんとロスヴァイセさんは窘めようとしている。
何かこの後、とんでもない事が起きそうな気がするな。
オリキャラとして女神フレイヤを久々に出しました。