「イッセーくんの修行は、もう模擬戦じゃなくて実戦そのものですね」
「アイツはお前等と違って才能が無いからな。それを埋める為に多くの戦闘経験を積ませてるんだ」
イッセーとの修行後、スポーツ飲料をあおりながら裕斗はそう苦笑していた。
今は俺が各々に自主トレをやるよう課している。
裕斗はさっきまで俺とイッセーの修行を観戦したせいか、急に疲れが出て休憩中。ギャスパーは空中を飛び回る小型ロボットを目で止める練習。あれはアザゼルが作ったギャスパー専用の練習アイテムだ。
イッセーは
今までは俺の修行で長い時間を掛けて
その証拠の一つとして、この前に俺が朱乃と話している時にイッセーが隠れていた時だ。アイツは気配と
このままでは不味いと思った俺は、イッセーに再度瞑想の修行をさせる事にした。自身の
知っての通り、転生悪魔となった者の中には、急激な力を得た事で制御出来なくなって暴走する事例がある。力に溺れた転生悪魔は挙句の果てに、主を殺して『はぐれ悪魔』となった後、理性を失った異形の怪物となる。
弟がはぐれ悪魔となる事は絶対に無いが、急上昇した
もしも悪魔になって強くなったと慢心し、『今なら兄貴に勝てるかもしれないな』とイッセーがほざいた瞬間、力の差を徹底的に教えてやろうと一から矯正する予定だった。ま、それは杞憂に済んだがな。
「けど、お前も相当腕を上げたじゃないか。スピードやテクニックは、イッセーより上だぞ」
俺がそう言うと、祐斗は首を横に振る。
「イッセーくんが超スピードの瞬間的なダッシュをするのを考えれば、僕に引けを取らないと思いますが」
「いいや、アレって凄そうに見えても実は直線での移動しか出来ないんだ。だからお前はさっき俺の超スピードに反応していたじゃないか。それに加えて、俺との模擬戦で縦横に高速移動しながら攻撃をするのはイッセーには出来ない。そう考えれば、祐斗もイッセーに負けてはいないって事だ」
「あくまでスピードやテクニックに関してです。パワーでは僕を圧倒的に上回っていますし。それに赤龍帝を相手にすると考えるだけで相当なプレッシャーです。イッセーくんがリューセー先輩との修行で繰り出した強烈なパンチが自分に飛んでくるのを考えるだけで肝が冷えます。命がいくつあっても足りませんよ」
ふむ、祐斗はイッセーに対する戦闘評価は相当高いようだな。俺からすれば、祐斗も充分に戦えると思うんだが。
それとは別だが、俺達はアザゼルとサーゼクスが作ってくれた頑丈なバトルフィールドで修行している。冥界グレモリー領のとある地下に作ったものだ。
俺はともかくとして、イッセーと祐斗とギャスパーは能力上の関係で、普通の場所では思いっきり修行する事が出来ない。イッセーが本気になれば簡単に風景を吹っ飛ばし、祐斗は周囲を剣だらけにしてしまう。
人間界で修行してる時は俺が結界を張っているが、それでも時々周囲に僅かな影響を及ぼしてしまう事がある。特に俺とイッセーが全力のガチンコバトルする時は、な。
修行をやる場所が物凄く限られて難儀してる中、あの二人からプレゼントを頂いたって事だ。
イッセー達がディオドラの件で活躍した褒美と、
家からは専用の魔法陣でジャンプして、この場所へ来ている。特殊な作りである上に、
レーティングゲームに参戦する常連の上級悪魔は似たような場所を持っているが、若手悪魔のイッセー達は特例という形で頂いていた。因みに
まぁ俺としては冥界にも世話になっている身なので、ああだこうだと言えない。それにバトルフィールドの管理者ぐらいなら請け負っても問題ないからな。
因みにこの特例は他にもいる。それは若手悪魔のサイラオーグ率いるバアル眷族達だ。特に主のサイラオーグは時間に空きがあったら、真っ先にバトルフィールドへ向かって修行してるようだ。イッセーと戦う為に備えて。
他のグレモリー眷族達も当然利用しているが、今回は男組だけしかいない。ゼノヴィアも参加したがっていたが、アイツは後日に俺とマンツーマンの特訓に付き合う予定だ。それを聞いた祐斗が、少しばかり面白くなさそうな顔をしていたがな。
「あの、リューセー先輩。今更ですけど、僕達は強くなっていますよね……?」
いつもの祐斗らしくない少し弱気な質問だった。
「勿論だ。こう言っては大変失礼だが、イッセーは当然としてお前もリアスと朱乃の力を疾うに超えている。並みの上級悪魔より遥かに上だ。祐斗は大丈夫だろうが、強くなったからって油断はするなよ」
「分かっています。僕やイッセーくんの能力は広く知られているから、対処されやすいんですよね?」
「その通りだ」
祐斗の言葉に俺は頷いた。
イッセー達の力は既にレーティングゲームの全冥界放送で広く知れ渡っている。なので他の上級悪魔は対処と言うより、倒す為の戦術を組み込んでくる。以前のシトリー戦では、ソーナがイッセーに真っ向勝負では勝てないと理解し、ルールを利用して倒したのがソレだ。
対処だけじゃなく、コイツ等にも弱点は当然ある。
イッセーは直情型な為、シトリー戦のように特殊ルールが設けられたら、そこを的確に突かれると負けてしまう。加えて強すぎる事もあって、イッセーと真っ向勝負せずに敬遠されてしまう。倒すとするならトラップかカウンター、もしくは龍殺しをメインにした攻撃を仕掛けるだろう。
祐斗は防御力の低さと脚だ。修行によって防御力が多少高くなったとはいえ、あくまで必要最低限のだ。イッセーと違って、
そしてギャスパーは単独で戦える戦闘力はない。なので一人の時に狙われたら終わりだ。けど、単独では弱くてもサポートに適しているのから、誰かと組めばギャスパーは真の力を発揮する。
「そういや俺って悪魔になったから、龍殺しの他に光関連も弱点になっちまったんだよな。朝起きた時には、いつもよりダルく感じたし」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は弱くても皆さんの力になります……!」
俺が一通りの弱点を言ってると、聞いていたイッセーとギャスパーが自主トレを一時止めて話に加わってきた。
「ギャスパーはともかく、イッセーは瞑想以外に光対策の修行も必要だな。今度の修行では最低でも
「じょ、冗談じゃねぇ! 確か聞いた話じゃ、
「大丈夫だ。そこは俺が上手くやるから心配するな♪」
「そんな笑顔で言われても全然説得力ねぇ!」
「とは言っても、お前は普段修行で俺の攻撃をずっと受けてるから、他の転生悪魔と違って光の耐性はそれなりにあるぞ」
「………え、マジ?」
追加の特訓内容にイッセーが物凄く嫌そうに叫ぶも、俺が補足した内容を聞いた途端に目が点になる。
「ああ。それに加えて、お前には今も
「……もうイッセーくんは転生してるけど、悪魔に加護を施す神って……」
「お、お二人が兄弟でも、そんなの見た事ないです……」
俺の台詞に祐斗とギャスパーが苦笑していた。
言われてみれば、確かにそうかもしれない。転生前の
「本当に色々と変わったな、
すると、第三者の声がした。俺達が振り返るとアザゼルだった。
「ほら、差し入れ。女子部員お手製のおにぎりだ。あとフレイヤから
イッセー達が喜び、早速おにぎりを頬張っていた。フレイヤの差し入れは……リアス達と同じおにぎりでも、かなり不格好な形をしていた。イッセー達と違って不安を抱きながら食べるも……普通だった。具が入ってない塩気の強いおにぎりだけど、普通に美味しい。
「兄貴、アーシアの作ったおにぎりいらないなら俺が全部食うぞ?」
「冗談じゃない! 俺だって食べる!」
大事な可愛い妹分が作ったおにぎりを食べない訳ないだろうが!
そう思いながら、俺はアーシアお手製のおにぎりも頬張る。うむ。フレイヤと違って優しい味で癒される。
休憩する俺達の傍にアザゼルも座って笑う。
「嘗て天界にいた頃とは別人だよな、
「だろうな。だが、もうあの時の
「それが今は家族思いな兵藤隆誠ってか? サーゼクスと同じシスコン付きで」
「ほっとけ」
「シスコンは否定しないんだな、兄貴」
アザゼルと俺の会話に思わず突っ込みを入れるイッセー。
それはしょうがないだろう。アーシアみたいな可愛い妹分がいたらシスコンになってしまうんだからさ。と言うかそれ、イッセーも似たようなものだろうが。
イッセーの突っ込みを聞いたアザゼルが、何か思い出したように訊こうとする。
「そういやイッセー、聞いたぜ。お前が将来リアスのもとから独り立ちするときが来たら、アーシアとゼノヴィアを連れて行くんだって?」
何? それは初耳だぞ。イッセー、そう言う話は前以て俺にも言っておけ。お前のやる事に口出しはしないが、アーシアに関する事は言って欲しい。
「ええ、まあ」
「やるじゃねぇか。悪魔になったばかりなのに、もうそこまで先の事を考えてるとはな」
「いや、なんていうか、アーシアとはずっと一緒にいるって約束しましたし。俺もアーシアも一緒にいたいんです。それにゼノヴィアとの悪魔稼業も楽しいかなーって」
な~んだ。もう既にアーシアとそう決めていたのか。だったら猶更、俺が口出しする必要はないな。アーシアはイッセーの事が大好きだし。ゼノヴィアがイッセーに付いて行こうとする理由は分からんが。
返答を聞いたアザゼルが、イッセーの頭をくしゃくしゃ撫でている。
「イッセー。お前が将来独立して『
「………
確認する様に答えるイッセーに、アザゼルは感心する。
「その通りだ、イッセー。ゲームのとき、手駒を見捨てなければいけないことが必ず起きる。その時、おまえはどう出るか。そこで『
ここから先はアザゼルと俺が、イッセーに『
まぁその前に、今のイッセーには『
一通りの話を終えると、アザゼルはイッセーに別の確認をしようとする。
「なぁイッセー、おまえがスケベなのは知ってるんだが……もしも半裸の女が出てきたら、どうする?」
「眼福です!」
イッセーの即答にアザゼルと俺は肩を落とす。
「こりゃダメだ。なぁリューセー、こいつすぐに負けるぞ?」
「どうやらお前には理性を保つ修行も課しておく必要があるな。『
「何でだよ!?」
心外だと叫ぶイッセーだが、俺は本気で不安だった。
ここ最近は真面目に戦っていたイッセーだが、コイツは根っからのドスケベだ。ライザー戦ではドレスブレイクを使って、女性眷族を裸にさせた前科がある。
今後の修行について考えながらおにぎりを食べ終えると、一緒に食べ終えたイッセー達は気合を入れた。
「よーし、兄貴! もう一度、組手をやろうぜ!」
「ちょっとイッセーくん、今度は僕の番だよ」
「ぼ、僕も先輩と修行したいんですが……」
「う~ん、順番的に考えてギャスパーだから……。じゃあイッセーは裕斗と組手をやってもらおうか。実力が近い者同士の組手も良いもんだぞ」
俺の提案にイッセー達が驚いた顔をする。特に祐斗は予想外と言わんばかりの反応だ。
「祐斗が相手、か。確かに兄貴の言う通り、それも良いかもな。じゃあ祐斗、相手してくれるか?」
「う、うん。僕は構わないよ。でもイッセーくん……本当に僕で良いのかい?」
「おう。一度お前ともやってみたいと思ってたからな。少し付き合ってくれよ、親友」
「っ……うん! 勿論だよ、イッセーくん!」
拳を突き出すイッセーに、祐斗もそれに倣ってイッセーの拳と突き合わせる。
………う~ん。これは普通に男の友情と言える会話なんだが……この光景をクラスメイトの女子達が見たら、何故か変な方向に誤解するような気がする。だって祐斗がイッセーの台詞を聞いた途端、嬉しいのか少しばかり頬を赤らめてるし。
まぁ祐斗にしては、同い年であるイッセーから名前で呼び合える親友と認識されてるので猶更嬉しいんだろう。
そんな中、二人は俺達から少し離れた場所で組手を開始した。俺はギャスパーの修行をやろうとしたら、アザゼルが手招きする。
「リューセー、ちょっといいか」
「どうした?」
「おまえさんが考案したスピンオフ作品が採用されたぞ」
「何!?」
予想外の台詞に俺は思わず驚愕の声を上げる。
おいおい、ちょっと待て。アレは俺の悪ノリで考えた作品だぞ。絶対に採用されないと思ってたのに。
「リューセー先輩、スピンオフ作品って何ですか?」
「ああ、それは――」
「セラフォルーが出演してる番組『魔法少女マジカル☆レヴィアたん』の外伝作品――『魔女っ子姉妹物語』だ」
ギャスパーの問いに答える途中に、アザゼルが割って入る様に答えた。
「アザゼル、人が答えてる最中に言うなよ」
「悪い悪い。ってか、随分と思い切った作品を考えたな。セラフォルーと対抗でもする気か?」
「別にそんな気は無い。以前にリアス達を幼児化した時に、こんな作品はどうだろうかと考案しただけだ。って、そんな事はどうでもいい。問題は何で『魔女っ子姉妹物語』が採用されたかだ」
アレは二人の少女(モデルはミニリアスとミニソーナ)が魔女っ子になって、弱い悪の魔法生物から大好きな家族を守ろうとするだけの拙い内容だってのに。
サーゼクスやセラフォルーだったら絶対に採用するだろうが、冥界側のテレビ局はすぐに認めない。
イッセー主演の『ファイタードラゴン』は、イッセーがレーティングゲームで子供達に大注目されていたから採用された。なので、次の作品を投稿したところでソレが必ず人気になるとは限らないから。
「ああ、それな。テレビ局のプロデューサーが、ホームドラマ的な番組を考案してたところ、偶然にリューセーが投稿した作品内容を見た途端に即効で採用したそうだ」
「本当に凄い偶然だな」
プロデューサーが偶然目にした途端に採用って……どんだけの確立だよ。そんな展開は全然考えもしなかったぞ。
「で、だ。これにはプロデューサーからちょっとした条件があってな」
「どんな条件だ?」
「モデルにした小さいリアスとソーナを出演させるようリューセーに説得して欲しいんだと。あとそれを聞きつけたサーゼクスとセラフォルーも二人の家族として出演させて欲しいときた」
「アイツ等も一枚噛んでるのか!」
道理で動きが早い訳だ。サーゼクスとセラフォルーの事だから、この前に送ったミニリアスとミニソーナの写真を見て、今度は実物も見たくなったんだろう。
アイツ等の事だから、可能な限りで魔王の権限を使ったと思う。そうでなきゃ、こんなに早く作品の採用なんかされはしない。
と言うかセラフォルー、お前それで良いのか? 悪ノリとは言え、俺はお前の主演番組を基にして考案したんだぞ。
「因みにリアスとソーナ以外の出演予定者はいないのか?」
「一応候補は出てるみたいだが、魔王さま達からの熱い要望があってな」
「つまり、アイツ等以外は認めないって事か」
「そう言うことだ」
ったく、あのシスコン共め。自分達が頼めないからって俺に丸投げするなよ。
…………まぁ良いだろう。魔王二人が動いている以上、作品が採用されたならやるしかない。
「……はぁっ、分かったよ。後で俺の方からリアスとソーナに掛け合ってみる」
「おう、頼むぜ」
「そんじゃギャスパー、待たせて悪かったな。修行を再開しようか」
「は、はい! お願いします!」
了承した俺はギャスパーの修行を再開しようと、アザゼルから少し離れて始める事にした。
因みにイッセーと裕斗は――
「はははは! やっぱりすげぇじゃねぇか、祐斗!」
「それは嬉しい台詞だよ、イッセーくん!」
互いに
ふむ。やはりイッセーにとって、祐斗は丁度良い相手のようだ。ゼノヴィアも祐斗と同じく力を付けてるから、今度はイッセーと彼女を戦わせてみるとしよう。
ギャスパーの修行をしながら、俺はイッセーの修行プランを考えていた。
後日、リアスとソーナに番組出演の交渉をするも――
「冗談じゃないわ! どうして私がそんな恥ずかしい番組に出演しなければならないの!?」
「お断りします。お姉さま関連の番組に出演する気は毛頭ありませんので」
言うまでもなく速攻で断られた。
「まぁまぁそう言うなって、お二人さん。魔法少女と言っても――」
断られてもそう簡単に引かない俺は、あの手この手を使って必死に彼女達との交渉を続ける。
そして何とか交渉した結果、リアスとソーナは渋々と引き受けてくれた。大して人気が出なかったら速攻で番組を降りると言う条件付きで。
俺も俺で、そこまで人気が出る番組じゃないと予想していたので、彼女達の条件を受け入れた。
だがしかし、俺やリアスとソーナはこの時に全く想像すらしなかった。『魔女っ子姉妹物語』が、『魔法少女マジカル☆レヴィアたん』と並ぶ人気作品になってしまう事を。
色々と突っ込みどころのある内容だと思いますが、感想と評価をお待ちしています。