奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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劉備、公孫賛と再会するのこと

 

 レッドキングを倒し、変身を解いた俺は桃香たちのところへ戻ってく。

 

〈一刀〉「おーい!」

 

〈桃香〉「ご主人様!」

 

〈麋竺〉「お兄さん、どこ行ってたのー?」

 

〈麋芳〉「いきなりいなくなっちゃうから、心配してたんだよー?」

 

〈一刀〉「ごめんごめん。逃げる人の波に流されちゃってさ」

 

 事情を知らない麋竺と麋芳に、そう言い訳する。

 

〈麋竺〉「しょうがないなー、お兄さん。肝心なところで頼りない」

 

〈麋芳〉「でも、そういう脇が甘いところもちょっとかわいいかも」

 

〈一刀〉「あはは……」

 

 頭をぽりぽりかいて苦笑い。ウルトラマンに変身する人って、いつもこんなことを繰り返すんだろうか。よくバレないものだ。

 

〈麋竺〉「そうそう、お兄さん! 劉備お姉ちゃんにはもう言ったんだけど」

 

〈麋芳〉「電々たち、お姉ちゃんたちについていこうと思うんだ!」

 

〈一刀〉「えッ?」

 

〈麋竺〉「雷々たちだけで頑張るより、お姉ちゃんと一緒の方が、もーっとでっかいことが出来るかなーって」

 

〈一刀〉「……桃香、いいのか?」

 

〈桃香〉「うーん……いいのかなぁ……」

 

 桃香自身も悩んでるけど、端から聞いてた戯志才が意見する。

 

〈戯志才〉「良いのではありませんか? 資金や兵士も一緒、ということなのでしょう?」

 

〈麋竺〉「けちんぼ戯志才さんには言ってないもん! そうだけど!」

 

〈麋芳〉「ねぇ、お兄さん。お兄さんも電々たちが一緒の方が嬉しいよね? ね?」

 

〈一刀〉「まぁ、二人も一緒の方が、確かに賑やかだろうしなぁ」

 

 それに、戯志才の言うことももっともだ。今の俺たちにとって、資金や兵士が手に入るというのは非常にありがたい話。

 

〈桃香〉「ならまぁ……いいか。だったら、これからよろしくね、麋竺ちゃん、麋芳ちゃん」

 

〈雷々〉「うん! これからは雷々のこと、雷々って呼んでいいからね!」

 

〈電々〉「電々の真名も呼んでいいよ」

 

〈桃香〉「分かったよ。なら、わたしも桃香でいいからね」

 

 真名を預け合い、正式に雷々と電々が仲間になる。後で、二人にもタイガのことを教えないとな。

 ……もしかして、戯志才、こうなることも見越して、最初にあんなことを言ったのか?

 

〈戯志才〉「……一刀殿。どうかしましたか?」

 

〈一刀〉「い、いや……別に」

 

 ……まさかね。それは考えすぎだろう……きっと。

 

〈馬岱〉「何なに? 一刀さん、戯志才さんまでそんな目で? やーらしー♪」

 

〈一刀〉「ちょッ! 馬岱!?」

 

 までって何だ、までって!

 

〈桃香〉「ご主人様……??」

 

〈愛紗〉「ご主人様……」

 

〈一刀〉「ち、違う! 誤解だよ!」

 

〈雷々〉「あっ、そうか。桃香ちゃんの仲間になるなら、お兄さんのこともご主人様って呼ばないとだね!」

 

〈電々〉「雷々、ご主人様だったら……やらしーのも、アリな気がするなー♪」

 

〈桃香・愛紗〉「ご主人様ぁ……!!」

 

〈一刀〉「俺は何も言ってないってば!」

 

〈鈴々〉「むにゃ……お兄ちゃん、やらしーのだ……?」

 

 愛紗に背負われてる鈴々がつぶやいた。

 戦闘中ずっと寝てたのに、どうして今になって起きるんだ!

 

 

 

 雷々と電々を道中に加えてしばらく。俺たちはようやく、幽州の都・薊にたどり着いた。

 

〈桃香〉「ふわぁ……。すごい都……」

 

〈一刀〉「ホントだな……」

 

 薊は流石に一つの州の中心地だけあって、最初にいた街よりもずっと規模が大きかった。映画を見て想像するような、古代中国の街並みに全く以て相応しい。

 

〈雷々〉「はれ? ご主人様は大きな街って初めてなの?」

 

〈一刀〉「ああ……こっちに来てから、ここが一番大きい街だな」

 

〈桃香〉「わたしも……」

 

〈電々〉「都って、もっと大きいよね?」

 

〈雷々〉「うん。もっともっと、もーっとおっきいよ」

 

〈一刀〉「あ……雷々と電々は見たことあるのか」

 

〈雷々〉「うん! 行ったことあるよ、都!」

 

 そうか、二人は大商人の生まれみたいだからな。漢帝国の中心……洛陽となると、更に大きいのか。幽州なんて国の最北だし……これでまだ小さい方だとは、古代中国侮りがたし。

 

〈桃香〉「うぅ。わたし、幽州の北から出たことなかったもんなぁ……そうだ! 愛紗ちゃんと鈴々ちゃんは……!!」

 

〈愛紗〉「そ、それが、その……」

 

〈鈴々〉「都はないけど、もっと大きな街は行ったことあるのだ。薊もお姉ちゃんに会う前に来たよ」

 

〈桃香〉「あぅぅ……わたしとご主人様だけかぁ。田舎仲間」

 

 落胆して遠くをぼうっと見やった桃香だが、そのまま固まる。

 

〈愛紗〉「……桃香さま? どうかなさいましたか?」

 

〈桃香〉「ううん、あれ」

 

 桃香の視線の先は大通り。そこを、騎馬兵の一団が城へと向かっていってる。

 人も馬もそろいの装備は、派手ではないが、使い込まれてるのが素人目からでも分かる。騎兵の所作と行進の練度も高く、何かのパレードと見紛うほどだ。通りの人垣からは自然と拍手やため息が起こってた。

 

〈愛紗〉「これは……すごいですね」

 

〈鈴々〉「かっこいいのだ……」

 

〈戯志才〉「孟起殿の西涼兵ですね。彼女も私たちと同じ、伯珪殿の客人ですよ」

 

〈桃香〉「そ……そう、なんだ」

 

 孟起という、一団のリーダーと副官と思しき騎兵は、どちらも女の子だ。兵を連れてひと足先に城に戻った馬岱と、どこか似てるが……。

 とうなってたら、桃香が控えめに聞いてきた。

 

〈桃香〉「ね、ねぇ……ご主人様。わたしたち、この格好で行って大丈夫かなぁ……?」

 

〈一刀〉「……気持ちは分かる」

 

 街に入るまでに洗濯はしてるが、何分桃香たちの衣装は結構くたびれて、ほつれもある。あれを見せられては、見劣りする気分にはなってしまう。

 

〈雷々〉「だったら、先に服屋さんに行く? お金なら電々たちのがあるでしょ?」

 

〈桃香〉「でも、電々ちゃんたちのお金は、これからのための大事なお金だし……」

 

〈電々〉「でもでも、商談も顔合わせも、第一印象ってとっても大事だよ!」

 

〈桃香〉「そ、そうなのかなぁ……」

 

〈電々〉「だからほら、まずは服をちゃんとしよ! 戯志才さん、この辺りの服屋さんってどこにあるの? 出来るだけかわいい服のあるお店がいいなー!」

 

〈戯志才〉「……かわいいかどうかは分かりかねますが、向こうに服飾店街はありますね」

 

〈電々〉「ありがと! じゃあ、とつげきーっ!」

 

〈桃香〉「え、あ、ひゃぁっ!」

 

 言うが早いか、電々は桃香を引っ張って走り出してく。

 

〈電々〉「雷々も早く来てねー!」

 

〈雷々〉「はいはい。じゃ、鈴々ちゃんと愛紗ちゃんもね!」

 

〈愛紗〉「わ、私もかっ!?」

 

〈鈴々〉「鈴々も今の服でいいのだー!」

 

〈雷々〉「雷々は別にいいけど、電々が許さないよ。ほら、行くよー!」

 

 雷々もまた、愛紗と鈴々を強引に連れて行ってしまった。

 

〈一刀〉「あはは……」

 

〈戯志才〉「やれやれ……伯珪殿との面会の刻限に、間に合えばいいのですが」

 

 何とも自由奔放な電々たちに、戯志才が肩をすくめてた。

 

 

 

 その後、俺たちは肝心の公孫賛との面会に臨んでいた。

 

〈公孫賛〉「あはは、そりゃ大変だったな!」

 

〈桃香〉「笑いごとじゃないよぅ。もう……」

 

 あれから、電々が桃香たちのコーディネートで大騒ぎして、結局元の格好の新品を仕立てることに落ち着いたのだが、それまでにかなりの時間を食ってしまった。

 しかし公孫賛は幸いにも気の良い人で、待たせまくったことも笑い飛ばして許してくれた。

 

〈桃香〉「でも……久しぶりだね、白蓮ちゃん」

 

〈公孫賛〉「ああ。風鈴先生のところを出て以来か……? ……と、積もる話は後だな」

 

 顔なじみの桃香と軽く挨拶を交わした女の子は、姿勢と態度を正して、俺たちに向き直った。

 

〈公孫賛〉「改めて、公孫伯珪だ。この幽州の刺史をしている。啄郡の件、刺史として礼を言わせてもらう。こんな田舎じゃ大したもてなしも出来ないが、客人として歓待させるから、ゆっくりしていってくれ。戯志才も案内ご苦労だったな、助かったよ」

 

〈戯志才〉「構いません。私としても良い経験が出来ましたから」

 

〈公孫賛〉「後は……報告は大体馬岱から聞いたけど、彼女たちが桃香の妹分たちか?」

 

〈桃香〉「うん。関羽ちゃんと、張飛ちゃん。それから、ここに来る途中で一緒に来てくれることになった、麋竺ちゃんと麋芳ちゃんだよ。それと……こちらが、ご主人様」

 

〈一刀〉「北郷一刀と言います。よろしくお願いします」

 

〈公孫賛〉「そんなに硬くならなくていいって。桃香の旦那なら、私の弟みたいなものだからな。私のことも気軽に呼び捨ててくれ」

 

 旦那……旦那!?

 

〈桃香〉「ふぇっ!? 白蓮ちゃん!?」

 

〈公孫賛〉「何だ、ご主人様って呼んでるからそうかと思ったけど、違うのか?」

 

〈桃香〉「あぅぅ。そういうのじゃなくって……ご主人様は、わたしたちを導いてくれる大事な人だからで……旦那さまだなんて、そんな……あぅぅ……」

 

〈公孫賛〉「なるほどなぁ。ま、挨拶も終わったし、こんなところで話すのも何だな。食事も用意させてるし、後の話は食べながらにするか」

 

〈鈴々〉「ごはん!!」

 

〈愛紗〉「……鈴々。そういうところだけ反応するんじゃない」

 

 

 

 軽い顔合わせの後に、食堂へ移動してく俺たちだが、その途中の廊下である人たちと出くわした。それは……。

 

〈馬岱〉「あっ、劉備さん!」

 

〈桃香〉「馬岱ちゃん。さっきは兵士さんたちのこと、ありが……」

 

〈???〉「……ん?」

 

〈桃香〉「あ……っ。さっきの……!」

 

 さっき大通りで、城に向かってた騎馬隊のリーダーだ。

 

〈公孫賛〉「何だ馬超。もう玄徳に会ってたのか?」

 

 馬超……!

 

〈馬超〉「いや……鶸?」

 

〈???〉「いえ、私も覚えが……」

 

〈桃香〉「あ、そうじゃなくって、ですね。お城に着いた時、騎馬隊を率いて戻ってくるところを見かけたので……」

 

〈馬超〉「そういうことか。伯珪殿、こちらは?」

 

〈馬岱〉「もぅ。さっき話したでしょー! 劉備さんだよ」

 

〈馬超〉「ああ、啄郡の! 話は色々と聞いてるよ」

 

〈桃香〉「ふぇっ!? ……って言うか、馬岱ちゃんと馬超さんって……同じ姓ってことは」

 

〈馬岱〉「翠姉様は、たんぽぽの従姉妹だよ」

 

 そうだ、馬岱と言えばあの馬超と一緒に蜀に入った人じゃないか。何でさっき気づかなかったのか。

 

〈馬超〉「あたしは馬超。字は孟起だ。我が母、馬騰の命で、天下を見て回る旅をしてる。さんづけなんて堅苦しくしないで、馬超でいい」

 

〈桃香〉「え、あ……はいっ! わたしは劉備、字は玄徳って言います。こちらこそ、よろしくお願いひます!!」

 

〈公孫賛〉「噛んだ」

 

〈愛紗〉「噛みましたね」

 

〈鈴々〉「噛んだのだ」

 

〈桃香〉「うう……白蓮ちゃんまで……」

 

〈馬超〉「あはは、そんな大したもんじゃないよ。で、こっちが……」

 

 馬超の側についてる、馬岱をもうひと段階小柄にしたような子が頭を下げる。

 

〈馬休〉「馬超の妹の馬休です。この度は、馬岱がご迷惑をお掛けしました」

 

〈馬岱〉「ちょっとぉ! 何でいきなりたんぽぽの謝罪からなの!」

 

〈馬休〉「だって。蒲公英だし、絶対迷惑掛けてるでしょ」

 

 普段はどんな感じなんだろう、馬岱……。

 

〈桃香〉「あの……馬岱ちゃんには、たくさんお世話になりましたから」

 

〈馬岱〉「ほら。劉備さんもこう言ってるでしょ」

 

〈馬休〉「はいはい」

 

〈公孫賛〉「馬超。これからみんなで食事なんだが、お前たちもどうだ?」

 

〈馬超〉「さっき済ませたばかりだし、遠慮しとくよ。それに、古い友が遠くから来てくれた時は、そっちを優先するもんだ」

 

〈馬岱〉「だ、だったらたんぽぽだけ……」

 

〈馬休〉「ほら。蒲公英も邪魔しないの」

 

〈馬超〉「今日の件の報告は、また明日にさせてもらうよ。それじゃな」

 

 抵抗する馬岱を引きずって、馬超と馬休は廊下の向こうへと去っていった。

 

〈雷々〉「……ふぇぇ。何だか、格好良かったねぇ」

 

〈電々〉「うん……。ああいうのを、男前って言うんだろうね。女の人だけど」

 

〈公孫賛〉「ここからはるか西の、西涼の出身だからな。あっちの生まれは、ああいう性格の連中が多いぞ」

 

〈愛紗〉「すみません、公孫賛殿。馬騰殿といえば……あの?」

 

〈公孫賛〉「ああ。あの、だよ」

 

〈鈴々〉「あの……って、愛紗は知ってるのだ?」

 

〈愛紗〉「……お名前くらいはな」

 

〈戯志才〉「馬騰殿は、近隣の異民族にもその名の知れ渡る、西涼の大英雄ですからね」

 

〈公孫賛〉「ま、その辺りの話も食堂でな。こっちだよ」

 

 改めて食堂に案内された俺たちは、食事をしながらこれからについての話を交わし合ったのだった。

 

 

 

 次の日。俺は桃香と一緒に公孫賛の部屋へ行き、大っぴらには出来ない話をした。つまり、天の御遣いに関わることだ。

 

〈公孫賛〉「なるほどな……。見慣れない衣服だとは思ったが、天の国の人間だったとは」

 

〈戯志才〉「天の御遣い……単なる噂とばかり思っていましたが、実在したのですか」

 

〈馬超〉「巨人に変身するなんて、にわかには信じられない話だが、これを見せられたら信じざるを得ないか」

 

 俺はこの三人に、素性とタイガのことを打ち明けた。タイガもキーホルダーの状態を解いて、生きてることを証明する。

 公孫賛の下に身を寄せるからには、このことは話しておかないといけない。戯志才と馬超も立ち会ってるが、公孫賛の食客である彼女たちに伏せるのは、公孫賛を信じてないことになる。それは失礼だ。

 

〈タイガ〉『戯志才には、黙ってて悪かったな。けど、教えるのは公孫賛と一緒にって決めてたんだ』

 

〈戯志才〉「構いません。大事の話は、誰の目があるか分からないような場所でするものではありませんからね。……しかし、そうなると……やはり、あの時の彼は……」

 

〈タイガ〉『ん? 何かあるのか、戯志才?』

 

〈戯志才〉「……いえ、何でもありません」

 

〈一刀〉「俺とタイガも天の御遣いだなんてされてるけど、正直状況を分かってないところの方が多い。だけど、桃香の夢には、協力を惜しまないつもりだ。まぁ、他に行くアテもないってのもあるんだけどさ」

 

〈馬超〉「何だ。正直な奴だな」

 

〈戯志才〉「とはいえ、綺麗事ばかりを並べているよりは信用できるかと」

 

〈馬超〉「ま、正直な奴は嫌いじゃないぜ。じゃ、他の二人の天の御遣いの噂を聞いたら、あんたにも教えてやるよ」

 

〈一刀〉「ありがとう。助かるよ」

 

 予言にある、あと二人の天の御遣い……その噂は、まだ俺たちの耳には入ってない。少なくとも、この幽州……漢の東北の地域には、孝矢も鎗輔も落下してないみたいだ。

 

〈公孫賛〉「北郷たちが世を救う天の御遣いだというなら、ここからの話は一層聞いてもらわないといけないな」

 

 公孫賛は小さいため息とともに、大きな机に地図を広げた。

 

〈公孫賛〉「今の大陸は、実際ひどいものさ。この地図は大陸の北東の区域のものだが、この全域に盗賊や怪物がはびこっているという。今回は馬超に頼んで、幽州の北側を回ってもらったんだよな。結局、どの辺りまで行けたんだ?」

 

〈馬超〉「薊を出て……半島の先まではひと通りだな」

 

 馬超が指でなぞったところは、幽州の北部、丸々全部だった。……隣の郡に移動するだけでもあんなに苦労したのに、この距離を移動しようと思ったら、俺の足なら何年掛かるだろうか。

 

〈公孫賛〉「流石西涼の機動力は大したもんだな。で、残りのこっち側は私たちがやってるから……後は、青州か」

 

〈桃香〉「青州って、隣の州? 白蓮ちゃんって、幽州の刺史じゃないの?」

 

〈公孫賛〉「そうなんだけど、青州はここよりも盗賊の規模が大きくてな。挙句、青州の刺史は姿を消してしまったんだ。今は徐州刺史の陶謙殿と協力して、出来るところまでは管理してるんだよ」

 

〈一刀〉「……刺史って、逃げるの? 州の一番偉い人なんだろ?」

 

〈馬超〉「普通なら逃げる訳ないんだが、そんな腰抜けが刺史に収まれるのが今の世の中でな。……世も末だよ」

 

〈タイガ〉『全く、ひでぇ話だな! 無責任すぎるぜ!』

 

 あまりにも情けない話に、タイガもおかんむりだ。だからこそ、桃香たちも旅に出たんだろうけど。

 

〈馬超〉「青州の賊の討伐はあたしがやろう。母様には陶謙殿にも挨拶に行けって言われてたしな。ちょうどいいだろ」

 

 徐州は青州よりも南、幽州の反対側だ。幽州の北半分から戻ってきて、今度は南って……とんでもないフットワークだな。

 

〈タイガ〉『働き者だな、気に入ったぜ。怪獣が出た時は、すぐに俺に知らせてくれ。あんたのためなら、大陸の反対側からでも文字通り飛んでくぜ!』

 

〈馬超〉「ありがとう。そんな時があったら、よろしく頼むよ」

 

〈桃香〉「それで……白蓮ちゃん。わたしたちにも手伝えることってあるかな? わたし、白蓮ちゃんをお手伝いしようと思って来たんだよ」

 

〈公孫賛〉「そりゃ助かるよ。だったら、しばらくはこの辺りや北の賊討伐を手伝ってもらっていいか? 賊が多すぎて、人手が足りてないんだ」

 

〈桃香〉「分かったよ。ご主人様もそれでいい?」

 

 拒む理由なんてない。うなずくと、公孫賛も満足そうな顔をした。

 

〈公孫賛〉「なら、兵は……戯志才も出ていくっていうし、護衛につけてた隊をそのままつけるつもりではあるんだが」

 

〈桃香〉「えっ。戯志才さん、出ていっちゃうんですか!?」

 

〈タイガ〉『まさか、雷々たちのことを気に病んでか……?』

 

〈戯志才〉「まさか。ここには旅の途中で寄っただけですので。今回の件が終わったら、元々出るつもりだったのですよ」

 

〈公孫賛〉「私も止めたんだけどなぁ。ま、無理に引き留めるのも格好悪いしな」

 

〈戯志才〉「もう何日かは逗留する予定ですから、隊の引き継ぎなどはその間にしておきましょう」

 

〈桃香〉「はい。よろしくお願いします!」

 

 こうして、俺たちは公孫賛の下で戦うこととなった。

 ただの辺境の義勇兵だった俺たちの、天下に進出する第一歩になる。怪獣退治も含め、この世界のために頑張っていこう!

 


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