豫州、沛国の都の城。陳珪と陳登を始めとした沛国軍が立てこもるこの城を白翼党の大軍が取り囲み、今まさに防壁を突破しようとしていた。
〈指揮官〉『ククク……半月もよく粘ったものだが、あの城が陥ちるのも、もう時間の問題だな』
この大軍を指揮しているのは、苑州の街で敗走した指揮官であった。逃げ帰った彼はすぐに沛国に各地の白翼党員を呼び寄せ、城攻めを開始したのである。
しかし、苑州にいた男がどうやって間を置かずに豫州まで移動してきているのか……。
〈指揮官〉『この間はウルトラ戦士どもにしてやられたが、何のことはない。奴らがいない場所で事を起こせば良かったのだ。この国も豊か……ここを手に入れれば、張角ちゃん、あいや大賢良師様もさぞお喜びになるだろう』
〈副官〉「しかし、あの城の陳珪という奴は、その曹操とつながりがあると聞いてます。苑州軍が援軍に来るんじゃないでしょうか?」
副官の懸念に、指揮官は余裕綽々に返した。
〈指揮官〉『心配はいらん。『人間』の体力で、あそこからこの地まで来るのにはかなりの時間が必要のはずだ。何ならもう半月戦いが長引いても、ここには到着しないだろうさ』
〈副官〉「ですが、曹操はあの天の御遣いを抱えてるんですよ? 天の御遣いならここにもひとっ飛びじゃ……」
〈指揮官〉『ふん、それこそいらん心配だ。アレは人間同士の争いの範疇を超えなければ、何もしない、何も出来ない……。奴らの正義なぞ、所詮はその程度よ』
ウルトラマンの正義の精神をせせら笑う指揮官。
その時に、指揮官の元に伝令が駆け込んできた。
〈白翼党〉「も、申し上げますッ!」
〈指揮官〉『何だ!?』
〈白翼党〉「北方に新たな軍隊を発見! 旗印は曹! 苑州の、曹操の軍ですッ!」
〈指揮官〉『な、何ぃッ!?』
飛び込んできた報告に、指揮官たちは一気に騒然となった。
〈指揮官〉『ば、馬鹿な! 早すぎるぞッ! 奴らの体力に余裕などなかったはず……! 一体どんな手品を使ったんだ!?』
沛国の城の北方に陣取った苑州軍の中で、秋蘭が華琳に告げる。
〈秋蘭〉「斥候の兵、戻りました。既に沛城は最寄りの北門を始め、主要な門のいくつかが崩壊。ですが、城に未だ陳の旗は健在。陳登殿は不明ですが、陳珪殿はまだ無事と思われます」
〈鎗輔〉「陳珪さんが無事なら、娘の陳登ちゃんもきっと大丈夫だ……。間に合いましたね、華琳さま」
〈華琳〉「こちらもここまでなりふり構わず来たのだもの。易々と陥ちてもらっていては困るわ」
道中の出来事を振り返って軽くため息を吐いた華琳は、気を取り直して指示を飛ばす。
〈華琳〉「まずは城と、陳珪陳登親子の確保が最優先よ。その後に賊を捕らえ、暴徒どものつながりを暴く。これだけの規模の賊だもの、張角につながる手掛かりは必ずあるでしょう」
〈凪〉「はっ!」
〈華琳〉「桂花」
〈桂花〉「はい。まずは落とされた北門を集中して攻略します。その後、城の確保と各城門の支援に隊を分割。門の攻撃は内外から同時に行い、門を攻める敵を挟撃して殲滅します」
〈春蘭〉「まずは、あの一番近い門を攻めている連中を叩き潰せば良いのだな」
春蘭が作戦を要約して確認した。
〈桂花〉「そうよ。好きなだけ暴れなさい」
〈春蘭〉「桂花にしては良い策だ! 季衣もいけるな?」
〈季衣〉「もちろんです! ご飯もお腹いっぱい食べましたから、いくらでも戦えますよーっ!」
〈華琳〉「ならば、我が陳留の勇者たちよ! 沛国を襲う脅威を蹴散らし、この地に平穏を。そして、我が国の農の希望を救出なさい!」
華琳の激励で銅鑼が高らかに鳴らされ、秋蘭が合図を発した。
〈秋蘭〉「総員、進撃を開始せよ!!」
苑州軍が鬨の声を上げて、城を攻める白翼党の背面に向かって駆け出していった。
北門から城内に侵入しようとしていたところ、慌てて振り返る白翼党に接近していく季衣が叫ぶ。
〈季衣〉「やめろーっ! 何でお前たちはこんなに街を襲うんだっ!」
〈白翼党〉「全ては張角様、張宝様、張梁様のために!」
白翼党の一人が、堂々と返した。その声音には、自分たちの行いの正当性に微塵の疑いも含まれていなかった。
〈華琳〉「そこまで言わせるなんて、白翼党の首魁、興味が湧いてきたわね。だからと言って容赦するつもりはないわ。全軍突撃!」
〈苑州軍〉「「「おおおおーッ!!」
華琳の命令で、苑州軍の攻撃が始まる。
〈秋蘭〉「ゆけっ!」
まずは秋蘭の隊の矢が、白翼党の幾人かに刺さる。
〈白翼党〉「ぎゃあッ!」
〈春蘭〉「敵は城に気を取られたままだ! 一気に背中から押し潰せ!」
先制攻撃で動揺した白翼党に、苑州軍兵士たちが一斉に斬りかかった。それに白翼党から非難の声が飛ぶ。
〈白翼党〉「貴様ら正規の州軍だろうが! 背後からとは卑怯者め!」
〈春蘭〉「ふん! 賊相手に卑怯もクソもあるか!」
〈季衣〉「そうだそうだ! 攻められるのが嫌なら今すぐ降参しろ!」
当然そんなものを気に留める春蘭たちではなく、勢いを止めずに猛攻撃を加える。
〈柳琳〉「たぁっ!」
〈香風〉「えいっ……」
〈凪〉「はぁぁぁっ!」
〈真桜〉「うらぁぁーっ!」
〈沙和〉「やぁーっ!」
〈華侖〉「食らえーっ!」
〈白翼党〉「「「ぐわあぁぁッ!」」」
華侖たちの振るう刃により、白翼党の陣形はすぐに崩される。
〈栄華〉「とどめっ!」
そこを狙って、栄華の隊の矢の雨が降り注ぐ。
〈白翼党〉「「「ぐええぇぇぇッ!!」」」
順調に敵を蹴散らすが、白翼党の兵力はまだまだ多い。また、門からも増援が続々と出てくる。
〈秋蘭〉「友軍を援護せよ!」
〈季衣〉「みんな! 行っくよー!」
その増援は、秋蘭と季衣が隊を指揮して出てきたところを出会い頭に叩き潰していく。
〈白翼党〉「「「ぐわあぁ――――ッ!?」」」
そして戦況の流れを決定づけるために、春蘭がその真価を発揮した。
〈春蘭〉「夏侯惇隊の力を、天下に示してやるのだっ!! おおおおおおおおっ!!」
怒髪衝天の勢いで大鉈を振るい、並み居る白翼党を千切っては投げ、千切っては投げとまさに鎧袖一触で蹂躙する。
〈白翼党〉「う、うわああぁぁぁぁッ!? 何だあいつはぁぁあああッ!!」
〈白翼党〉「鬼がいやがるッ! たッ、助けてくれぇぇぇえええ――――――!!」
春蘭の暴威に少しでも対抗できる兵は白翼党にはおらず、されるがままに兵力を減らしていった。
〈???〉「……」
苑州軍の白翼党への攻勢を、離れた場所から日本刀を提げた男が、腕を組みながらじっと観察していた。
フーマに、ガギのバリアーを破壊する方法を伝授した男だ――。
城を陥落するのにあと少しというところで、苑州軍の猛攻を受けた指揮官は、わなわなと手を震わせていた。
〈指揮官〉『おッ、おのれぇぇぇ~……! 人間風情が、一度ばかりか二度までも邪魔をしおって……! こんなに醜態を重ねたら、張角ちゃんに褒められるどころか私の立場まで危ういではないか……ッ!!』
怒りに打ち震えている指揮官は、とうとう我慢の限界に達したかのように豪語する。
〈指揮官〉『もう許さんッ! こうなったからには、この私自ら奴らを踏み潰してくれるわぁぁッ!!』
そう怒鳴って目深に被っていたローブを投げ捨て――急速に巨大化していった!
北門の制圧までもうわずかというところまで敵軍を叩き伏せた春蘭たちであるが、門の外側に出現した巨大な怪人の影が頭に覆い被さって、驚愕して顔を上げた。
〈春蘭〉「あれは!?」
〈華侖〉「か、怪物っすー!!」
顔のパーツがない頭部が首と一体化していて、その頭部は三角錐状という、地球の生物ならばあり得ない形状の赤紫色の怪人。
悪質宇宙人、レギュラン星人だ!
〈秋蘭〉「人型の体型をしている……あれもウチュウ人なのか!」
〈栄華〉「フーマさんのように、大きくなれる者もいるのですか!」
〈季衣〉「くっ……相手が誰でも、これ以上街の人たちを苦しませはしないっ!」
季衣はレギュラン星人の天を衝く巨体相手にも、鉄球で立ち向かおうと構える。
しかしこんな理不尽な暴力を振るう悪党は、鎗輔たちの相手だ。
〈鎗輔〉「季衣ちゃんたちの想い、無駄にはさせないッ!」
決意を口にして、タイガスパークを起動する。
[タイガスパーク、スタンバイ]
〈鎗輔〉「フーマ!」
フーマキーホルダーのエネルギーをスフィアに受けて、握り締める。
『ハァァァァ……フッ!』
〈鎗輔〉「Buddy Go!!」
タイガスパークを力強く掲げて、変身を遂げた!
[ウルトラマンフーマ、変身完了]
「セイヤッ!」
飛び出したフーマが、レギュラン星人の頭部に飛び蹴りを食らわせる。
〈レギュラン〉『ぐわッ!』
蹴り飛ばされて転がるレギュラン星人からかばうように、フーマが季衣たちの前に着地した。
〈フーマ〉『お前の相手は、この俺だぜッ!』
〈季衣〉「兄ちゃん……!」
すぐ起き上がったレギュラン星人は、フーマに強い敵意を向けた。
〈レギュラン〉『ウルトラ戦士めぇッ! 貴様さえいなければ、全て上手くいってたのだッ! 許さんッ!』
〈フーマ〉『許さねぇってのは、こっちの台詞だッ!』
レギュラン星人とフーマが互いに距離を詰め、格闘戦を開始。
「セイヤッ!」
レギュラン星人の平手突きをいなし、相手の肩口にチョップを見舞う。反撃のキックをかわして、上腕を掴んで投げ飛ばす!
「セイヤァッ!」
〈レギュラン〉『ぬぅッ!』
地面に叩きつけられながらも立ち上がるレギュラン星人が、フーマに飛び掛かってヘッドバットをかましてきた。それをよけつつ、横に回り込むフーマ。
「ハァッ!」
互いの手刀が交差し、インファイトの応酬を繰り広げる。フーマはご存じの通りスピードファイターだが、レギュラン星人もなかなかに素早く食い下がる。
「セイヤッ!」
しかしやはりフーマの方が上手で、鋭い水平チョップがレギュラン星人の腹部に食い込んだ。
〈レギュラン〉『ぐぅぅ……食らえッ!』
一瞬うめいて後ずさったレギュラン星人が片腕を伸ばすと、赤い光弾を発射してくる!
「フッ! ハッ!」
反射的に跳んで光弾をよけたフーマが光波手裏剣で反撃。レギュラン星人も身体をよじってかわした。
「セイヤァァッ!」
両者、真横に飛びながら手裏剣と光弾を撃ち合う。荒野にそれた光の弾が着弾してあちこちで爆発を起こしていく。
〈凪〉「何という戦いっ!」
〈柳琳〉「鎗輔さん、フーマさん、頑張って!」
人間では到底不可能な動きの高速戦闘には立ち入ることは出来ず、柳琳たちは白翼党と戦いながらもフーマを応援する。
「セイヤッ!」
フーマが投擲した極星光波手裏剣を、レギュラン星人は上空に上がって回避。頭上から光弾を乱射してくる。
「セイヤッチ!」
負けじとフーマも飛翔。ぐんぐん追いかけてくるフーマに、レギュラン星人も真っ向から突っ込んでいく。
〈レギュラン〉『ぬぅおうッ!』
〈フーマ〉『はぁぁぁッ!』
空中でフーマとレギュラン星人が交差。軌道を変え、一旦離れていくがターンして再度激突に行く。
〈真桜〉「隊長ー! やったれー!」
〈香風〉「お兄ちゃん……!」
ここでフーマが鎗輔に指示。
〈フーマ〉『鎗輔、リングを使うんだ!』
〈鎗輔〉『「うんッ!」』
[セット]
鎗輔が左手の中指に嵌めたのは、柳琳のリングだ。
[柳琳リング、エンゲージ]
タイガスパークをかざすと、金色の電流が生じ、鎗輔の傍らに柳琳のビジョンが現れた。
すると突進していくフーマの全身を金色のオーラが覆い、勢いを上昇させる!
〈レギュラン〉『!?』
〈フーマ〉『虎豹猛突撃ッ!』
オーラは猛獣のような形状に変化し、突進したフーマがレギュラン星人をはね飛ばした!
〈レギュラン〉『ぐわあああぁぁぁぁぁぁ――――――――!!』
レギュラン星人は真っ逆さまに転落していき、地表に激突した。
「セイヤッ」
反対に軽やかに着地するフーマ。エネルギーを消費してカラータイマーが点滅しているが、最早勝敗は決したと見ていいだろう。
〈フーマ〉『さぁ、観念しな!』
満身創痍のレギュラン星人にとどめを刺そうとするフーマ。だが、レギュラン星人は必死に頭を垂れて命乞いを始めた。
〈レギュラン〉『わ、分かった! 俺の負けだ! 降参するから許してくれ!』
〈フーマ〉『……』
ペコペコ頭を下げて許しを得ようとするレギュラン星人。
〈レギュラン〉『命だけは!! 命だけはお助けくだされ!!』
〈沙和〉「……何だかすごく不愉快なこと言ってる気がするの」
しかし、レギュラン星人の手は密かに土を握り締めていた!
〈レギュラン〉『……うりゃッ!』
そして隙を見て、フーマの顔面目掛け土を食らわせた!
〈フーマ〉『うわッ!?』
〈春蘭〉「なっ!? 何と卑怯なっ!!」
フーマが目つぶしを食らったその隙に、隠し持っていた剣を突き出す!
〈フーマ〉『うわぁぁぁぁぁッ!!』
フーマの腹部が、凶刃に貫かれた!
〈華琳〉「なっ……!?」
〈柳琳〉「そんなっ!?」
〈香風〉「お、お兄ちゃん……!」
〈季衣〉「兄ちゃぁ―――――んっっ!!」
衝撃が走る苑州軍!
〈レギュラン〉『ふははははッ! 獲ったぁーッ!!』
卑怯な手段でフーマを刺し貫いたレギュラン星人が勝ち誇るが、
ドロンッ!
〈レギュラン〉『んなぁッ!?』
フーマの姿が煙とともに消え失せたのだ。
〈フーマ〉『残像だ』
〈レギュラン〉『うそん!?』
本体はレギュラン星人の背後に回り込んでいて、素早く剣を取り上げた!
「セイヤッ!」
奪った剣で、レギュラン星人をバッサリと袈裟斬り!
〈レギュラン〉『ぐわあぁぁぁぁぁぁ――――――――――ッ!!』
肩から脇腹まで達した裂傷から、激しい火花が噴出する。
〈レギュラン〉『や―――ら―――れ―――たぁ――――――ッ!!』
レギュラン星人は断末魔とともに後ろへ倒れ込んで、大爆発を起こして散ったのだった。
「セイヤッチ!」
華麗に逆転して、空の彼方へ去っていくフーマ。一瞬肝を冷やした華琳たちはほっと安堵の息を吐いていた。
〈秋蘭〉「全く……驚かせてくれる」
〈華侖〉「ふはー……もう駄目かと思ったっすよぉ」
〈栄華〉「悪ふざけが過ぎますわ、もう……」
気を取り直して、北門の制圧を再開する。しかし敵部隊は既に戦意を喪失していた。
〈白翼党〉「うわぁぁぁ――――――ッ! 指揮官殿がやられたぁ―――――――ッ!」
〈白翼党〉「もう駄目だッ! 退却ぅぅぅぅ――――――――!!」
残った兵たちは悲鳴を上げて、三々五々に逃げ出していった。
〈桂花〉「我が軍の勝利です! 戦意のある敵兵はもういません!」
〈春蘭〉「手応えのない……。しかし後から後から湧いてきて、面倒な連中だ」
〈華琳〉「彼らのことはいいわ。陳珪と陳登の無事を確認するのが最優先よ」
北門を攻略した苑州軍は直ちに城下町に進み入って、抗戦を続ける陳珪たちの救援に急いでいった。
悪質宇宙人レギュラン星人
苑州、豫州の白翼党の指揮官を務めていた、ネメシス星雲第四惑星の宇宙人。性格は悪辣であり、どんな卑劣な手段も臆面なく用いる。得意技は命乞いと見せかけてからの騙し討ち。「宇宙一の嫌われ者」を自称しているかどうかは定かではない。