奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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Shinonome Guards Start

 

 豫州からの帰還後、鎗輔は正式に警備隊総隊長に任じられ、同時に凪、真桜、沙和の元義勇軍三人娘が副官としてあてがわれることとなった。

 今日は鎗輔の、警備隊隊長としての初日であった。

 

〈鎗輔〉「はぁ……いよいよこの時が来てしまったか。本当に、ぼくにこんな役目が務まるのかなぁ……」

 

〈フーマ〉『最初から弱気でどうすんだよ。もっと胸張ってけ! 警備隊隊長なんて、ゾフィーさんみたいでカッコいいじゃねぇか。ま、俺は会ったことねぇんだけど』

 

 これから、隊長として初めて凪たちと面通ししに向かう鎗輔だが、不安な様子でいるのでフーマが発破を掛けた。

 

〈フーマ〉『何にせよ、リーダーに一番に大事なのは気迫だぜ! 威厳あるとこ見せて部下引っ張りゃ、後は大体何とかなるだろ』

 

〈鎗輔〉「大雑把だなぁ……。まぁ、やるからにはしっかりとやるつもりだけど」

 

〈フーマ〉『その意気だよ。――って言うか、何でマントなんか羽織ってんだ?』

 

 歩く度、鎗輔の背ではためくのは、街の服飾店からわざわざ仕入れてきた外套――要するにマントだ。当然だが、普段はこんな格好していない。

 

〈鎗輔〉「責任職に就いたのに、いつもの格好じゃ締まらないからね。これで少しは隊長らしく見えるかな?」

 

〈フーマ〉『鎗輔……お前って、形から入るタイプだったんだな……』

 

 新たな事実が発覚して、フーマが感心したような呆れたようなひと言。

 

〈フーマ〉『それだったら、兜も被ってみろよ。実用的でもあるぜ?』

 

〈鎗輔〉「いや、鉄の兜重いから……」

 

〈フーマ〉『……相変わらず情けねぇこと言いやがる……』

 

 フーマと話しながら玉座の間にたどり着き、扉を開ける。

 凪、真桜、沙和の三名は、無人の玉座の間に既に集合していた。

 

〈凪〉「隊長、おはようございます!」

 

〈鎗輔〉「うん、おはよう」

 

〈真桜〉「何や隊長、その外套。ここ室内やで」

 

〈沙和〉「カッコつけてるの? あはは、隊長かわいいの~」

 

〈凪〉「こら、お前たち! しっかりと挨拶しないか!」

 

〈鎗輔〉「まぁまぁいいから。それでは……」

 

 生真面目な凪をなだめつつ、鎗輔が切り出す。

 

〈鎗輔〉「今日は初日なので、まずはぼくと君たち三人が担当する仕事の概要から入ります。ぼくたちの主な仕事は、この陳留の警備隊の指揮を執ることです。一日の業務の流れは、この書巻に書いてきました。はい注目」

 

 持参した巻物を、台の上にいっぱいに広げる鎗輔。

 

〈鎗輔〉「まずはこの流れを覚えて下さい。それから各業務の詳しい説明に移りますので、質問があるなら今の内に……」

 

〈真桜〉「隊長、何やかしこまり過ぎやろ。ウチら相手なんやし、もっと自然体でええで?」

 

〈沙和〉「そーだよ~。隊長は、隊長らしくしてるのが一番なのー」

 

〈鎗輔〉「あの……聞いてる?」

 

 砕けた態度の真桜と沙和に、冷や汗がタラリの鎗輔。すると凪が二人を叱りつけた。

 

〈凪〉「真桜も沙和もいい加減にしろ! 隊長がせっかく我らのために頑張って下さってるというのに、その言い草は何だ」

 

〈真桜〉「へへっ、ごめん。隊長がオモロいからつい、な」

 

〈沙和〉「ごめんなのー」

 

〈凪〉「分かれば良い。……さ、隊長。続きをどうぞ」

 

〈鎗輔〉「う、うん。ありがとう……」

 

〈凪〉「副官として当然です」

 

 一喝された真桜と沙和だが、コソコソと内緒話し出す。

 

〈真桜〉「凪、いつにも増して怖ないか? 眉間の縦皺も一本多いで」

 

〈沙和〉「うんうん、きっと隊長の前だから真面目っ子なの」

 

〈真桜〉「固いなぁ……冷えた米粒くらい固いっ」

 

〈沙和〉「そーゆうとこも凪ちゃんらしくていいけどね~」

 

 しかし自分たちの他には誰もいないのだから、バレバレであった。

 

〈凪〉「……何?」

 

〈真桜〉「何でもありません!」

 

〈沙和〉「あはは~なのー」

 

 不真面目な二人にギリリと拳を握り締める凪。それを鎗輔が必死になだめる。

 

〈鎗輔〉「ま、まぁまぁ! いきなりそんな喧嘩しないで……! 説明聞いてるだけじゃ分かりにくいよね! じゃあ実地を見ながら仕事覚えていこうか! うんッ!」

 

 強引に話を纏め、逃げるように場所を移していく。鎗輔は早くも三人娘に振り回され気味であった。

 フーマがボソリとつぶやく。

 

〈フーマ〉『こんな調子で大丈夫なのかよ……』

 

 

 

 城下町に出て、凪たちを連れ歩きながら、鎗輔が説明をしていく。

 

〈鎗輔〉「一番に覚えてほしいのは地形だ。陳留は割と道が入り組んでるから、土地勘がないと逃げる犯罪者を捕まえるのは難しい。指揮にも大きく関わってくるから……」

 

 話しながら通りを歩いているが、ふと言葉が途切れてうなり出す。

 

〈鎗輔〉「う~ん……?」

 

〈真桜〉「隊長、難しー顔してどないしたん~?」

 

〈鎗輔〉「いや、何か様子が変だなって」

 

〈沙和〉「特におかしなとこはないと思うの」

 

 通りは活気にあふれていて、平和そのものだ。街の人も皆健康そう。

 

〈鎗輔〉「街の様子はいいんだけど……いつもならみんな気さくに挨拶してくれるのに、今日は遠巻きにこっちを見てるだけなんだ。何でだろう」

 

 不思議に思っていると、フーマが突っ込む。

 

〈フーマ〉『んなもん決まってるだろ。今日は武装したツレがいるじゃねぇか』

 

〈鎗輔〉「連れ? あッ」

 

 振り向くと、ついてきている凪、真桜、沙和と目が合った。

 

〈凪〉「隊長、不審者でもいましたか?」

 

〈沙和〉「えー、そんなの怖いのー」

 

〈真桜〉「あんたが怖いゆうてどないすんねん。ウチらより、強い不審者なんて滅多におらんから安心し」

 

 分かっていない凪たちが話している間に、フーマが指摘する。

 

〈フーマ〉『お前は童顔だからとっつきやすいけど、三人は今日が初めてだし、武装してるしで、みんなおっかなびっくりなんだろうよ』

 

〈鎗輔〉「そうかぁ……言われてみれば」

 

 日常的に苑州軍の濃い面子と行動しているので感覚が麻痺しているところがあるが、凪たちも普通の市井の目からだと、奇異に映るのだろう。

 

〈凪〉「隊長、何か」

 

〈鎗輔〉「ああいや。ちょっと目立ってるかなって思っただけ」

 

〈真桜〉「そう? そんなことないやろ」

 

〈鎗輔〉「いやぁ……みんなの格好は色々派手だよ」

 

〈沙和〉「気のせいなのー。……あ、もしかして沙和に見とれてるのかな」

 

〈真桜〉「はははっ! ないない」

 

〈沙和〉「そんなすぐ、否定しなくたっていいじゃーん! 真桜ちゃん、ひどいのー」

 

 今一つ真剣みがない真桜と沙和と対照的に、凪は鎗輔の言ったことを真に受け過ぎて、周りの路地を覚えようと辺りにジロジロ視線を向け、街の人から怖がられていた。

 

〈鎗輔〉「……何というか……纏まりがないなぁ……」

 

〈フーマ〉『華琳たちに負けず劣らず、個性が強すぎるな』

 

 どうにも足並みがそろわず、今後にそこはかとない不安を覚えていたら、

 

〈沙和〉「あ―――!!!!」

 

 沙和がいきなり大声を発して、数軒先の店舗へ脱兎の如く駆け出していった。

 

〈鎗輔〉「ど、どうしたんだ!?」

 

〈フーマ〉『マジモンの不審者でもいたか!?』

 

 鎗輔たちが慌てて後を追いかけると……沙和は店先に売られている、大きめの本を手に振り返った。

 

〈沙和〉「新しい阿蘇阿蘇が出てるー!!!」

 

〈鎗輔〉「……あ……あそあそ……?」

 

 何のことか、一瞬分からなかった鎗輔。

 

〈沙和〉「そ、阿蘇阿蘇なの。ほら!」

 

 沙和がペラペラめくったページの内容を見るに、どうも今で言うファッション雑誌のようなものであることが分かった。

 

〈沙和〉「見てみてー! 社練の抜具の新作が載ってるの♪ かわいー!」

 

〈鎗輔〉「……いや、阿蘇阿蘇って……それってもしかしてanaむぐッ」

 

〈沙和〉「隊長、それ以上は駄目なの。ね、それよりほらー! 沙和、今月の恋愛運、二重マルみたいなのー! 隊長はー、誕生日いつ?」

 

〈鎗輔〉「……いやね、沙和さん? 今仕事中だから……そういうのは帰ってからに」

 

 諭す鎗輔だが、すっかり盛り上がっている沙和は聞いておらず、ため息を吐く。

 しかし……服飾の技術がいやに先進的であったり、紙の大量生産もまだの時代にファッション雑誌めいたものがあったり……よく分からない世界だと鎗輔は思った。

 

〈鎗輔〉「全くもう……凪さんと真桜さんからも何か言ってあげて……ってあれ?」

 

 阿蘇阿蘇に夢中な沙和を注意してもらおうと鎗輔が振り返ったが、真桜も凪もいつの間にかいなくなっていた。

 と、その直後に、

 

〈真桜〉「お―――っ!!!」

 

〈鎗輔〉「今度は真桜さんが!」

 

〈フーマ〉『向こうは何見つけたんだ?』

 

 向かいの店から真桜の叫び声がしたので、そっちに行ってみると、

 

〈真桜〉「見てぇ! 発売中止になった超絶からくり夏侯惇!」

 

〈鎗輔〉「……いや、ちょっと……何これ?」

 

 真桜は、春蘭とロボットを混ぜ合わせたかのような奇天烈な人形を手に持っていた。

 

〈真桜〉「え。隊長、知らんの? ほんまに? からくり夏侯惇やで」

 

〈鎗輔〉「そんな、言わずと知れた常識ですみたいな言い方されても……」

 

〈真桜〉「これはな、許昌のからくり師が、勇名轟く春蘭さまのからくりを是非とも作りたいっちゅーことで作られてんけど……大人げない春蘭さまは『こんなものはわたしではない!』って怒ってもーて、あっちゅー間に発売中止になってん」

 

〈鎗輔〉「……いつの間にそんなしょうもない出来事が……」

 

〈フーマ〉『そのからくり師も、何で春蘭モデルしようと思ったんだか……』

 

 説明を聞くだけでカオスな状況に頭を痛める鎗輔。そんな彼をよそに、真桜はからくり夏侯惇を買い取ろうとする。

 

〈真桜〉「おっちゃん、これナンボ?」

 

〈鎗輔〉「ちょっと真桜さん、買うつもりなの? こんな、かろうじて春蘭さんと判別できるような代物……」

 

〈真桜〉「当たり前やろ! こりゃ掘り出し物やで! この機会逃したら、次いつこんな巡り合わせがあるか分からへんやん!」

 

〈鎗輔〉「けど、今は仕事中だって……」

 

〈真桜〉「おっちゃん、ナンボ!? ……は? あっかん! そら高い! ぼりすぎやろ!」

 

 からくり夏侯惇に夢中の真桜は注意も聞かず、勝手に店主と値段交渉を始めてしまった。

 

〈鎗輔〉「……ぼく、そんなに威厳ないかな……」

 

〈フーマ〉『まぁ、見た目には0だろ。華琳たちはお前のこと知ってるから対等に話ししてくれるが、ここじゃ基本腕っぷしが正義なんだしな。だから鍛えとけって何度も……』

 

 早くも自信を喪失していると、

 

〈凪〉「待てっ!!!」

 

〈鎗輔〉「今度は凪さんかッ!」

 

 凪の大声がしたので、顔を上げると、

 

〈凪〉「待てぇーいっ!!!」

 

〈男〉「待てと言われて、止まる奴がいるもんかッ!」

 

 凪が店先から飛び出していった若い男を追いかけていた。

 

〈鎗輔〉「何だ?」

 

〈PAL〉[周囲の人の会話によると、窃盗犯のようです]

 

〈鎗輔〉「何だって!」

 

 鎗輔はすぐに気を取り直して、凪の後を追って駆け出す。ついでに唯一真剣に仕事に取り組んでいる凪に感動も覚えていた。

 

〈鎗輔〉「凪さん、取り逃がさないで! 絶対捕まえるんだ!」

 

〈凪〉「はい、隊長」

 

 窃盗犯の足は速く、距離もあるので鎗輔では追いつけそうにない。しかし凪の俊足ぶりは確認しているので、彼女なら捕縛できるはずである。

 しかし窃盗犯もいくつも狭い路地に入り込んで、なかなか追いつかせない。

 

〈凪〉「くっ……ちょろちょろしおって……」

 

〈鎗輔〉「挟み撃ちにしよう! 凪さんはその左角から回り込んで……」

 

 指示を与えようとした鎗輔だが、

 

〈凪〉「ええいっ、まどろっこしい!!!」

 

〈鎗輔〉「え」

 

 先に痺れを切らした凪は、掌に氣を練り固めていく。

 

〈鎗輔〉「ちょッ、ちょっと! 街中でそれは……!!」

 

〈凪〉「はああぁぁぁぁーっ!!!」

 

 止める間もなく、凪が氣弾を発射!

 猛烈な勢いで飛ぶ氣弾は、左右に建ち並んでいる店を何軒も、その勢いで薙ぎ倒しながら飛んでいく。

 

〈店主〉「ぎゃあぁーッ!!」

 

〈町人〉「うわあぁー!!」

 

 その末に、窃盗犯に命中した。

 

〈窃盗犯〉「ぐふッ!!」

 

〈凪〉「よしっ、見たか!」

 

 倒れ伏した男の腕をひねり上げた凪が、こちらに笑顔を向ける。

 

〈凪〉「隊長。賊を一名、捕獲しました! ……隊長?」

 

 しかし、鎗輔には返事をする気力がなかった。

 凪の氣弾によって、建物が軒並み崩壊し、町民たちは右往左往。とても、たった一人の泥棒の逮捕劇で起きた事態とは思えない。

 

〈フーマ〉『あーあー……怒られるぜ、こりゃ』

 

〈鎗輔〉「は……ハハ……」

 

 責任者の鎗輔は、もう笑うしかなかった。

 

〈真桜〉「何や何や、どないしたん~?」

 

〈沙和〉「街が大変~! 驚きなのー」

 

 真桜と沙和がようやくこの場にやってくる。両名の腕の中には、それぞれからくり夏侯惇と阿蘇阿蘇がしっかりと抱えられていた。

 

〈フーマ〉『とんだ初日になっちまったなぁ……』

 

〈PAL〉[前途多難ですね]

 

 ピュ~……と吹く風が、呆然と立ち尽くしている鎗輔のマントをハタハタとはためかせる。

 このままマントと一緒に、目の前の光景もどこかへ飛んでいってくれないかな……と、鎗輔は現実逃避していた。

 

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