奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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The Spin

 

 ――陳留の城の鎗輔の部屋で、鎗輔は腕を組んでうなっていた。

 

〈鎗輔〉「……う~ん……」

 

 そのままうなりながら、首を大きく傾ける。

 

〈鎗輔〉「ん~……」

 

 顎を引いてうつむき加減になりながら、眉間にいっぱいの皺を刻み込む。

 

〈鎗輔〉「……うぅぅぅ~ん……!」

 

 ……うんうんうなってばかりの鎗輔に、フーマが呆れたように呼び掛けた。

 

〈フーマ〉『またあの西園寺って奴のこと考えてるのか。んなことするくらいなら、いい加減あいつが何なのか、話してみたらどうだよ』

 

 だが、鎗輔からの反応はない。無視しているのではなく、考えに夢中でそもそも聞こえていないようである。

 

〈フーマ〉『……はぁ……』

 

 疲れたようにため息を吐くフーマであった。

 彼らの前に西園寺楯という男が現れて以降、鎗輔は度々こんな風に考え込むことが多くなった。明らかに普通でない様子なのだが、鎗輔は誰に何を聞かれようとも、楯とは『ちょっと知り合い』としか答えないのであった。

 やがて、頭を痛めたように力なく振った鎗輔もため息を吐き出す。

 

〈鎗輔〉「駄目だ……やっぱり、判断材料が少なすぎる。今の状況じゃ、何も分かることがない。あいつがまた姿を見せるのを待つしかないか……」

 

 鎗輔が自己完結したところで、PALが告げる。

 

〈PAL〉[鎗輔、もうじき真桜との約束の時間です]

 

〈鎗輔〉「ああ、そうだったね。行こうか」

 

 鎗輔は報せに従って席を立ち、部屋を後にしていった。

 

〈フーマ〉『……』

 

 

 

 城の庭で、真桜が鎗輔、凪、沙和、そして香風の四人を相手にあるものを披露する。

 

〈真桜〉「ふっふっふっ……! これぞ、全自動竹籠編み装置改二や!」

 

 しかし凪たちの反応が薄いことに憤慨する。

 

〈真桜〉「こらそこ! 拍手喝采はどうしたんや!? ここは、こう……ぐわーっとなるとこやろ!?」

 

 癇癪を起こす真桜に、凪や沙和はうんざりした様子だった。

 

〈沙和〉「つき合わされるこっちの身にもなってほしいの」

 

〈凪〉「以前にも同じものを見た記憶がある」

 

 真桜が披露したそれは、露店に持ってきて、鎗輔が使ったところ爆発四散した装置そのものであった。

 

〈フーマ〉『綺麗に爆発したな、あれ』

 

〈香風〉「お城、壊さないようにね」

 

〈沙和〉「全くなの。華琳さまに怒られるのは真桜ちゃんだけじゃないの」

 

 沙和の口振りからするに、真桜の発明品が爆散したのは一度や二度ではないようだ。

 

〈真桜〉「いやいやいや! 今回はひと味ちゃうねんて!」

 

〈フーマ〉『もっと爆発するのか?』

 

〈凪〉「念のため城の皆を遠ざけた方がいいかもしれませんね。……香風、避難誘導をしてくれるか」

 

〈香風〉「分かった。安全第一」

 

〈真桜〉「だ、だからちょい待ちーって! 今度は大丈夫、大丈夫なはずなんや!」

 

 まるで信用がない真桜に、鎗輔が促す。

 

〈鎗輔〉「論より証拠。大丈夫なら実際使ってみて、証明してみせてよ」

 

〈真桜〉「も、もちのロンや! ほな行くでーっ!」

 

〈凪〉「あ、真桜……!」

 

 真桜が早速装置のハンドルを回し出すと、装置は以前のように竹の薄板を呑み込んで、細断して綺麗に編み込んでいく。

 

〈真桜〉「ふふーん、どんなもんや。ちゃーんと編めてるやろ?」

 

〈凪〉「う、うむ……確かに……」

 

〈沙和〉「作ってるのがただの竹籠って以外は、なかなかすごい気がするの……」

 

〈香風〉「おお~……」

 

 相変わらず全自動を謳いながら手動だが、編み方はより緻密になり、今のところ動作不良も起こしていない。

 ただ、問題が一つ。

 

〈香風〉「これ……いつ出来るの?」

 

〈真桜〉「そりゃ、編み終わってからや」

 

〈フーマ〉『その編み終わるのがいつかって質問だろ』

 

〈真桜〉「そりゃ……」

 

 仕事が丁寧な分、編み込む速度が、あまりに遅かった。この調子では、一個編み終わるのに何時間掛かるか分かったものではない。

 

〈鎗輔〉「……こんなに時間掛けてるようじゃ、とても実用には堪えないよ」

 

〈フーマ〉『手で作った方が断然早えぇよな』

 

〈真桜〉「あ……安全性のためにはしゃーないねん! 全部手で編むよりは何倍もマシやろ!?」

 

〈沙和〉「……蟻の行列をながめてるようなの」

 

〈香風〉「ふわ~あ……」

 

 あまりにのんびりとした装置に、香風は退屈してあくびする始末だった。

 

〈鎗輔〉「この時間もったいないし、出来上がった頃に見に来ようよ」

 

〈真桜〉「何言うとるんや隊長! このカラクリの一挙手一投足を見てもらわんと、安全快適の証明がでけへんやんか!」

 

〈香風〉「最後まで見てなきゃ……ダメ?」

 

 真桜がごねるので、仕方なくつき合う一同。

 しかし……やはり装置の稼働はひどく遅く、なかなか半分も出来上がらない。

 

〈フーマ〉『おい、せめてもうちょっと速くなんねぇのか? ウルトラマンは三分以上待てねぇんだよ』

 

〈凪〉「眠くなってきますね……」

 

〈香風〉「すぴー……」

 

〈沙和〉「香風ちゃん、寝ちゃってるの……」

 

 不評の嵐に、真桜のフラストレーションが溜まっていく。

 

〈真桜〉「むむむむむむ……!! ここまで言われたら、ウチも黙ってられへん! この改二の真の力を見せたろうやないか!」

 

〈沙和〉「うーん……何となくやめておいた方がいい気がするの」

 

〈凪〉「ああ、順調に動いているのは確かなのだし……」

 

〈真桜〉「うるさーい!! この改二は、やろうと思えば鳥が飛ぶよりも早う作れるんや! ほな、いくでっ!!」

 

 真桜が装置のつまみのような部品を時計回りに回すと、装置の速度が一変し、すさまじい勢いで竹籠を編み始めた。

 

〈香風〉「おお……!」

 

〈フーマ〉『やれば出来るじゃねぇか』

 

〈沙和〉「真桜ちゃん、これ、洗濯籠にしてもいーい?」

 

〈真桜〉「何で改二の初作品を沙和の洗濯籠にせなあかんねん。しかし、流石改二や。想定よりも強度が上がっとったみたいやな」

 

〈PAL〉[いいえ]

 

 真桜の安堵を、PALが否定した。

 

〈PAL〉[稼働するに従い、歯車の配置が歪んできています]

 

〈香風〉「あ、手が絡まってる」

 

〈真桜〉「ああっ!?」

 

 竹を編み込む二本のアーム部がぶつかり、絡まってしまっていた。

 

〈真桜〉「あ、あかん! 改二! それ以上はあかん!」

 

〈PAL〉[枠組みの軋みが限界に達しています]

 

〈鎗輔〉「! 総員退避ッ!」

 

 咄嗟に鎗輔が指示し、そして、

 ド――――――――ンッ!!

 

〈真桜〉「……けほっ」

 

 竹籠編み装置は初作品とともに無残に砕け散った。最後までしがみついていた真桜を黒焦げにして。

 

〈フーマ〉『やっぱりこうなんのか……』

 

〈凪〉「そら見たことか、やはり爆発したじゃないか!」

 

 戻ってきた凪が一番に真桜を非難する。

 

〈凪〉「今回は……まぁ……その、お前が真っ黒焦げになるだけで済んだからいいものを」

 

〈真桜〉「ウチが真っ黒焦げになるのは大事やないんか!?」

 

〈沙和〉「もう慣れたと思うの」

 

 真桜は見た目ほど怪我を負ってはおらず、煤まみれになっただけのようだ。

 

〈真桜〉「……はぁ、今回は上手く行くと思ったんやけどな……」

 

〈鎗輔〉「まぁ、落ち込まないで、真桜さん。発明というのは、何百回の失敗を積み重ねて成功に近づいていくものだよ。くじけないことが肝心だ」

 

〈凪〉「隊長、お手伝いします」

 

 飛び散った装置の破片を拾い集めながら、技術者として励ます鎗輔。

 

〈鎗輔〉「ただ……仮にも人前に出すからには、先に動作実験して安全を確かめてからにしないと。披露会で事故でも起こそうものなら、次がなくなるかもしれないよ?」

 

〈真桜〉「う……えらいすいまへん……」

 

〈鎗輔〉「まぁ反省は後にして、後片づけしよう。栄華さん辺りに見つかったら大変だ」

 

〈香風〉「こういうの、栄華さま的には間違いなく無駄遣い」

 

〈真桜〉「その無駄遣いの先に技術の革新が……言うても、栄華さまには通用せんやろなぁ……」

 

〈凪〉「ほら、真桜もしゃべってないで片づけろ。隊長が掃除して下さっているのだぞ」

 

〈沙和〉「罰として、真桜ちゃんは晩ご飯奢りなのー!」

 

〈真桜〉「ええっ!? 傷心のウチにたかる言うんか!?」

 

〈沙和〉「んー……じゃあ、隊長にたかるの!」

 

〈鎗輔〉「何でそうなるのさ」

 

〈香風〉「わーい。お兄ちゃん、シャン、餃子食べたい」

 

〈鎗輔〉「香風ちゃんまで……」

 

 などと話しつつ、箒やちりとりも持ってきて、庭中に散らばった破片を手分けして掃除していく。

 

〈香風〉「そもそも、何で爆発するんだろう? 火薬は……使ってないよね?」

 

〈鎗輔〉「そこが不思議なんだよなぁ……。一から作ってるところ見てても、どこにもそんな要素ないはずなのに。どういう理屈なんだろ」

 

〈フーマ〉『光線撃たれたのでもねぇのにな』

 

〈鎗輔〉「いや、光線で爆発が起きるのも謎の理屈なんだけど……」

 

 しかしそんなことを言い出したらキリがないので、深くは問いたださない鎗輔であった。どうせフーマは答えを知らない。

 

〈香風〉「お兄ちゃんでも分からないんだ」

 

〈鎗輔〉「うん。もしかしたらここの材料の材質が、天の国とは違うのかも……」

 

〈香風〉「……天の国には、色んなカラクリがあるんだよね」

 

〈鎗輔〉「まぁね。……もしかして、飛行するための機械のことが知りたいの?」

 

 香風の質問の意図を察する鎗輔。

 

〈香風〉「うん……!」

 

〈鎗輔〉「でも、残念だけどここで作り上げるのは少し無理があるよ。人類が空に進出するのには、相当な苦労があったんだから。まぁでも……」

 

 答えながら、鎗輔は手に持った長めの竹の破片に目を落とした。

 

〈鎗輔〉「それ自体が、宙に浮き上がるだけでいいのなら……」

 

 

 

 ひとしきり掃除が出来たところで、一旦集合する。

 

〈真桜〉「ふー……ひとまずは証拠隠滅完了やな~」

 

〈沙和〉「沙和たちはちょっとお掃除しただけなの。後ろめたいことはしてないの~」

 

〈凪〉「……ところで隊長、それは捨てなかったのですか?」

 

 鎗輔は先ほどの長めの破片をキープしていた。

 

〈香風〉「お兄ちゃんが、何か面白い物を作ってくれるんだって」

 

〈真桜〉「ほほう……? 隊長、ウチに対抗心芽生えてきたん?」

 

〈鎗輔〉「そういうのじゃないけど……まぁちょっと待ってて」

 

 ジャケットの内ポケットに手を突っ込んで、ニッパーやキリなどいくつかの工具を取り出してその場に腰を下ろす。

 

〈凪〉「隊長、そんなものを持ち歩いているのですか!?」

 

〈沙和〉「真桜ちゃんみたいなのー」

 

〈真桜〉「ウチみたいな人、他におったんやなー……」

 

 まずニッパーで竹の破片を適当な長さに切断し、切り出しナイフで削って形を整える。一つは板状に、もう一つは串状に。

 板の方は左右で反対方向に、一方だけが薄くなるように削って調整。出来たらちょうど真ん中にキリで穴を開ける。

 その穴に串を、板と直角になるように刺し込んで固定。ついでに筆で黄色い塗料を全体にムラ無く塗っていく。

 息を吹きかけて乾かし、完成したそれを掲げた。

 

〈鎗輔〉「はい、竹とんぼ~!(裏声)」

 

〈フーマ〉『おいやめろ!!』

 

 悪ふざけが過ぎる鎗輔を、フーマが一喝した。

 

〈真桜〉「何や、板に串刺しただけやんか。それがどないしたん」

 

〈鎗輔〉「まぁまぁ。これをこうして……」

 

 軸の部分を両手で挟み込んで、すりすりとすり合わせてから宙に放る。

 

〈鎗輔〉「はいッ」

 

 すると回転がついた竹とんぼは、くるくる回りながら宙を浮き続けた。

 

〈香風〉「すごい……すごい! 飛んでる!」

 

〈真桜〉「な……何やあれ! 全然落ちてこぉへんやんか!」

 

 香風たちは初めて見る竹とんぼに目を奪われた。

 

〈真桜〉「たまげたわー……隊長、あれどないなってんの?」

 

〈鎗輔〉「回転を加えることで、羽の部分に揚力という力が働いて飛ぶんだ。だから回転が止まると……」

 

 竹とんぼに加えられた慣性力が切れてくると、姿勢が不安定になり、完全に停止するとぽとりと地面に落下した。

 

〈香風〉「……落ちちゃった」

 

〈鎗輔〉「構造は極めて単純だけど、本来はもう100年以上経たないと発明されないものだよ」

 

〈真桜〉「は~……あんな飛ぶ道具が、竹細工組み合わせるだけで簡単に作れるとはなぁ。こりゃ思いつかんかったわ。流石天の国の技術やなぁ」

 

 真桜は感心しきり。香風は何か期待したように、鎗輔に振り向いた。

 

〈香風〉「お兄ちゃん……あれ使えば、鳥みたいに飛べる?」

 

〈鎗輔〉「いや、それは無理だよ……竹とんぼで人間の体重支えるのは」

 

〈香風〉「そうなんだ……」

 

〈真桜〉「何や、香風はそんなに飛びたいんか?」

 

〈香風〉「うん」

 

 真桜たちの興味が香風の発言に移る。

 

〈凪〉「飛ぶというのは……こう、跳ぶ、のではなくて?」

 

 背後の木に一足飛びで乗り移り、すぐに着地する凪。

 

〈鎗輔〉「……いや、今の方がぼく的にはすごいんだけど」

 

〈香風〉「そうじゃなくて、鳥みたいに自由に、色々なところに行きたい。……天の国にも行ってみたいな」

 

〈フーマ〉『いやー、飛ぶだけで行けるんなら、俺がとっくに帰ってるんだけどな』

 

〈香風〉「あ、そっか……」

 

〈鎗輔〉「ちょっと、香風ちゃんの夢壊さないであげてよ」

 

 余計なことを言うフーマを、鎗輔がたしなめた。

 

〈沙和〉「でも、確かに夢のある話なの~……! 隊長は人を飛ばすこと出来ないの?」

 

〈鎗輔〉「香風ちゃんにも聞かれたけど、それは無理があるよ」

 

〈沙和〉「何でなの? その竹とんぼとかいうのの、でっかいのを作るだけじゃ駄目なの?」

 

〈鎗輔〉「竹とんぼは小さくて軽いから簡単に飛ばせるんだよ。人ほどの重量を飛ばすのはちょっと……」

 

〈真桜〉「けど、原理を応用すれば不可能やないんちゃう?」

 

〈鎗輔〉「それはそうなんだけど、その応用の部分が大変なんだよ」

 

〈フーマ〉『回転する羽で飛ぼうと思ったら、ヘリコプターを用意しねぇとな』

 

 フーマのひと言に首をかしげる香風。

 

〈香風〉「へりこぷたー?」

 

〈鎗輔〉「それは作れないよ。ヘリくらいになると、天の国の設備が必要になるから」

 

〈フーマ〉『ここじゃ絶対無理だわな』

 

〈香風〉「……ともかく、板みたいなのを上でぶんぶん回せばいいんだよね」

 

 何故か確認を取る香風。

 

〈鎗輔〉「原理的にはそうなんだけど……って、香風さん、何で斧持って……」

 

〈凪〉「し、香風……まさか……!」

 

 振り返った鎗輔は青ざめ、慌てて止めようとする。

 

〈鎗輔〉「待って待って! 無理! 斧を回して飛ぼうだなんて!」

 

〈香風〉「シャンは、やれば出来る」

 

〈鎗輔〉「いや不可能だよ! いいかい、さっきぼくが形整えたように、羽は平べったかったらいいってものじゃ……」

 

 しかし香風は制止を振り切り、頭上に掲げた斧をグルングルン回し出した。

 

〈香風〉「できる!」

 

〈鎗輔〉「わぁぁ危ないッ!」

 

〈凪〉「隊長、お下がりを!」

 

〈沙和〉「近寄ったら斬られちゃうの!」

 

 斧の回転はものすごい勢いで上がっていき、やがて刃が目で見えないほどになった。その瞬間に香風がジャンプ!

 

〈香風〉「見てお兄ちゃん!! シャン飛んで――」

 

 しかし、急に地を蹴って跳び上がったことで手元が狂い、

 

〈香風〉「あっ」

 

 斧は彼女の手の中からすっぽ抜け、

 

〈鎗輔〉「へ」

 

〈凪・真桜・沙和〉「「「隊長ぉぉぉぉぉぉっ!?」」」

 

 鎗輔の顔のすぐ横を通り抜けて、背後の城壁に深々と突き刺さった。

 斧が止まってから、鎗輔はサァァ……と顔面蒼白になった。

 

〈香風〉「ちょっと手が滑っちゃった」

 

〈真桜〉「た、隊長! 首! 首ちゃんとつながってる!?」

 

〈沙和〉「お、お医者様呼んでくるの!? それともお坊さん呼んできた方がいいの!?」

 

〈PAL〉[鎗輔は生存しています]

 

〈凪〉「ほっ……一瞬、心臓が止まったかと思いました……」

 

 鎗輔は口をパクパクさせながら、無言で腰を抜かしていた。

 

〈香風〉「……みんな、ごめんなさい」

 

 落ち着いた香風はうなだれて、壁に刺さった斧を取りに行く。

 

〈香風〉「よいしょ……っと」

 

 瓦礫をまき散らしながら抜き取られる斧。壁はすっかりえぐれてしまった。

 

〈香風〉「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

〈フーマ〉『し、香風ぅぅぅぅぅ――――――――ッ!! あんま無茶すんじゃねぇよぉッ! 俺も、鎗輔死んだかと思ったッ!!』

 

 フーマも声を荒げて叱った。彼ですら本気で駄目だと思ったのだろう。

 

〈香風〉「ごめんなさい……。でも、ちょっと飛べた気がした」

 

〈鎗輔〉「ああうん……気がしたんなら、二度とやらないで……。ところで……」

 

 鎗輔は立ち上がりながら、同時に背後から異様な圧を感じた。

 振り向いて城壁の方を見ると――傍らに、栄華がとても笑顔で立っていた。

 

〈鎗輔〉「あ……」

 

〈凪〉「……どうやら、結局怒られるようですね」

 

〈沙和〉「栄華さま、笑ってるの……めちゃくちゃ怖いの……」

 

〈真桜〉「隊長……因果応報なんやね……」

 

〈香風〉「晩ご飯……食べられるかな……」

 

〈フーマ〉『ただの竹とんぼから、何でこんなことに……』

 

 栄華から怒られるという因果から逃れられることが出来なかった鎗輔たちは、日が暮れるまでこってり絞られた上に、壁の補修作業もさせられたのであった――。

 

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