奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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打倒!再生怪獣

 

「ワーハハハハハハ!」

 

 地上に出てきたライブキングは、長く扇のように大きい手を伸ばし、屋台から店主が用意したところの点心の籠を器用に奪ってみせた。

 

〈店主〉「ひ、ひぃぃぃぃぃ~!」

 

〈鈴々〉「あっ! それは鈴々の点心なのだ! 返せー!!」

 

 鈴々が怒鳴り声を上げるが、怪獣に通じるはずもない。ライブキングはそのまま籠ごと点心を丸呑みしてしまった。

 

「ウワ―――ハハハハハハハハ!」

 

〈鈴々〉「こらー! 人のご飯を横取りして、何笑ってるのだー!」

 

〈一刀〉「あれは笑ってるんじゃないよ! ああいう鳴き声なんだ!」

 

 しかし、人の笑い声に聞こえる鳴き声なんて不気味だ……。しかもあの巨体だから、最早恐怖しかない。

 

「ワッハハハハハハハハ!」

 

 ライブキングは更に、他の客のラーメンをも奪い取って食らい尽くしてく。

 

〈通行人〉「ああー! 俺の昼食ー!」

 

〈通行人〉「せっかくのラーメンがー! 泥棒ー!」

 

「ウハハハハハハ……!」

 

 しかし、所詮人間の料理じゃライブキングの腹には全然足りないみたいだ。奴の目は……居並ぶ人間そのものに向けられ出した。

 

〈通行人〉「ひ、ひぃッ!? 今度は俺たちの番かよぉー!?」

 

〈通行人〉「お、お助けー!!」

 

 視線に気づいて、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す人々。鈴々は、そんな彼らをかばうように蛇矛を構えて進み出た。

 

〈鈴々〉「く、来るなら来いなのだ! 大陸最強の鈴々が相手になってやるのだっ!」

 

 だが、いくら鈴々が怪力無双でも流石に無茶だ! 八丈蛇矛でさえ、ライブキングの前だとつまようじにしか見えない。鈴々もそれは分かっており、冷や汗を垂らしてる。

 この状況、もちろん黙ってる訳にはいかない!

 

〈タイガ〉『一刀、変身だ!』

 

〈一刀〉「ああ!」

 

 念のために建物と建物の間に飛び込んで人の目を逃れ、タイガスパークを起動させる。

 

[カモン!]

 

〈一刀〉「光の勇者、タイガ!」

 

 タイガキーホルダーを右手に持ち替えて、タイガのエネルギーをスパークにリードさせる。

 

『ハァァァァッ! フッ!』

 

〈一刀〉「バディーゴー!」

 

 タイガを掴んだ右腕を高く突き上げて、変身だ!

 

[ウルトラマンタイガ!]

「シュアッ!」

 

 建物の陰から飛び出したタイガは、ひねりをつけながら宙を舞い、今にも鈴々に襲い掛かりそうだったライブキングの頭部に飛び蹴りを決めた。

 

「ワハハハハハハッ!」

「タッ!」

 

 顔面にキックを食らってひっくり返るライブキング。その間にタイガが華麗に着地。

 

〈鈴々〉「あっ、タイガお兄ちゃん! ありがとうなのだー!」

 

 タイガに助けられた鈴々は、ぶんぶんと大きくこっちに手を振った。

 

「ウワハハハハハハハハ!」

 

 一方のライブキングはすぐに起き上がって、食事行為を邪魔したタイガを敵と認識したようだ。こちらをにらみ返してくる。

 

〈一刀〉『「タイガ、まずは奴を街から追い出してくれ!」』

 

〈タイガ〉『よぉしッ!』

 

 俺の頼みで、タイガがライブキングの懐に向かって飛び込んでく。

 

「ワハハハハハ!」

「ハッ!」

 

 ライブキングは口から火炎を吐いて迎撃を狙ってくるが、タイガはそれをかいくぐって相手に組みつき、持ち上げようとする。

 が……。

 

〈タイガ〉『うぅ……!? お、重い……!』

 

〈一刀〉『「ええッ!?」』

 

 タイガが渾身の力を腕に込めても、ライブキングの身体が、地面から離れない! でっぷり太ってるような体躯のように、奴の重量はとんでもない重さなのか……!」

 

「ワ――――ハハハハハハハ!」

「ウワッ!」

 

 タイガが苦戦してる間に、ライブキングは腕を振り回してタイガを振り払った。すごいパワーだ……!

 

〈タイガ〉『駄目だ……! あの重量を投げ飛ばしたら、結局地上に相当な影響が出る! ここで戦うしかない!』

 

〈一刀〉『「やむを得ないか……!」』

 

 ライブキングを投げ飛ばすことはあきらめたタイガが、肉薄して肉弾戦を仕掛ける。

 

「ハァッ!」

「ワッハハハハハハ!」

 

 幸いと言うべきか、ライブキングは力こそ強いものの、動きは腕をブンブン無造作に振り回す程度のレベル。タイガは攻撃をかいくぐりながら、カウンターパンチを決めて押していく。

 

「ウハハハハハハ!」

 

 ライブキングの動作が一瞬鈍った隙を突いて、一旦後ろに下がって腕を高く掲げる。

 

〈タイガ〉『ストリウム! ブラスターッ!』

 

 両腕をT字に組んで、タイガスパークから光線を発射! ライブキングの肩に命中!

 

「ワッハハ!」

 

 ブツブツしたコブを吹っ飛ばし、肩の肉をえぐった! 倒すには至らなかったが、大ダメージだ!

 

〈タイガ〉『このまま押してくぞ!』

 

〈一刀〉『「ああ!」』

 

 休む暇を与えずに、攻勢を掛け続けようとするタイガだったが……。

 

「ワハハハハハハハハハー!」

 

 何と、ライブキングの肩の肉がもりもり盛り上がり、みるみる内に傷がふさがってく!

 

〈タイガ〉『何ッ!?』

 

〈一刀〉『「ええ!?」』

 

 タイガが与えたダメージは、一瞬の内に何事もなかったかのように回復された……!

 

〈一刀〉『「い、今の何だよ! 目に見えるスピードで再生したぞ!」』

 

〈タイガ〉『そういえば……ライブキングが再生怪獣だって話だ! 心臓一つからでも復活できるほどだって……!』

 

〈一刀〉『「生命力強すぎだろ!」』

 

 そいつはやばいぞ……! ウルトラマンの一番の弱点は、長期戦が出来ないってことだ……三分間しか戦えないからな。だから、どんなにダメージ与えてもすぐ回復されるような奴相手だと、時間内に倒し切れないかもしれない……!

 

〈タイガ〉『くッ……!』

 

「ウワハハハハハハ!」

 

 あきらめずに挑んでくタイガだが、ライブキングは見た目通りにタフで、いくら打ち込んでもまるで応えない。

 

〈タイガ〉『スワローバレット!』

 

「ワッハハハハハハッ!」

 

 光弾を連射して食らわしても、やはり負傷はたちどころに再生される……。

 時間経過でカラータイマーが赤になった。まずい、未だに有効打を与えられてないのに……!

 

「ウワーハハハハハハッ!」

「グワァッ!」

 

 エネルギーが減って弱まってきてるタイガを、ライブキングの張り手が吹っ飛ばした! 倒れ込むタイガ!

 

〈一刀〉『「くッ、どうすれば……!」』

 

 考えても答えが出て来ず、時間を浪費するばかり……!

 俺たちが追いつめられてると……声が地上から響いた。

 

〈鈴々〉「お兄ちゃんっ! 立つのだー!!」

 

〈一刀〉『「! 鈴々……!」』

 

 鈴々が精いっぱい声を張って、俺たちに声援を送ってる。

 

〈鈴々〉「あきらめないで! 勇者は悪い奴には、絶対負けないのだ! 必ず勝つって、昔から決まってるのだーっ!!」

 

 ……! 鈴々はどんなに俺たちが追いつめられようとも、最後は勝利すると、信じてくれてるんだな……!

 

〈タイガ〉『へッ……あんな風に言われちゃあ、寝転がってる訳にはいかないよな……!』

 

〈一刀〉『「ああ……!」』

 

 タイガも勇気づけられて、力を振り絞って立ち上がった!

 

〈一刀〉『「タイガ、こうなったら一撃に賭けよう! 奴を一撃で粉砕するような、どでかい攻撃に!」』

 

〈タイガ〉『だが、それをするには溜めが必要だ。奴だって無抵抗じゃあないだろ……!』

 

〈一刀〉『「分かってる。その時間を作る作戦を、思いついた!」』

 

〈タイガ〉『本当か!?』

 

 俺たちに声援を送ってくれた鈴々の姿と、それからライブキングを見て――閃いたんだ!

 

〈一刀〉『「こうするんだ!」』

 

[カモン!]

 

 俺はスパークに触れて、左手首に青いブレスレットを召喚した。

 

[ブルレット、コネクトオン!]

 

 エネルギーをスパークで受け、タイガの身体に一本角の青いウルトラマンの幻像が覆い被さる。

 

〈タイガ〉『アクア! ブラスターッ!!』

 

 タイガが組んだ腕から、膨大な量の水流が発射される! 

 ライブキングの口に向かって!

 

「ワバババババババ!?」

 

 ライブキングは強引に大量の水を飲まされる。

 さっきまで鈴々は、とんでもない量のラーメンを食べてた。ライブキングも人の料理を奪い取るほどの食いしん坊だ。で、この両者が似てるなぁって思ったんだ。

 そして鈴々が食べてる間、俺はそんなに食ったら腹がパンパンになって動けなくなるんじゃないかって思った。怪獣の胃袋だって同じはずだ。いくら大きくても、限界はあるはず……!

 

「オ、オボボ……!」

 

 俺の狙い通り――水流を飲み込まされたライブキングは腹が限界ぎりぎりまで膨れ上がり、自分の身体を支え切れなくなってゴロンと倒れ込んだ。

 

〈タイガ〉『やった! やるな一刀!』

 

〈一刀〉『「ありがとう! 今だ!」』

 

[カモン!]

 

 この機を逃さずに、俺は愛紗リングを召喚!

 

[愛紗リング、エンゲージ!]

 

 タイガが青龍偃月刀を握り締め、刃に残るエネルギーを注ぎ込む。

 

〈一刀・タイガ〉「『ストリウム逆鱗斬!!」』

 

 跳躍しながらの斬撃を、倒れて動けないライブキングに叩き込んだ!

 

「ワバー!!」

 

 ライブキングの全身が赤熱化して、粉々に破裂!

 

〈タイガ〉『これで仕上げだ! ウルトラフリーザー!』

 

 破片が飛び散る前に、タイガが全ての破片に冷凍光線を浴びせて凍りつかせた。

 いくら心臓一つでも動き回れるような奴でも、凍らせてしまえば何も出来ないだろう。その間に回収して、処分すれば完全に勝利だ。

 

〈鈴々〉「わーい! やったのだー!」

 

 俺たちの逆転劇に、鈴々も跳びはねて喜んでる。

 

〈鈴々〉「お兄ちゃーん! 鈴々、信じてたのだー!」

 

 こっちに手を振りながら叫ぶ鈴々の胸元から……ひと欠片の光が飛び出す。

 

〈一刀〉『「……!」』

 

 タイガの手を通して、俺の元に、愛紗リングのように鈴々の要素――髪型と蛇矛、ついでに虎の髪飾りの要素を合わせた指輪が届く。

 

〈一刀〉『「鈴々からも、リングが……」』

 

〈タイガ〉『愛紗が特殊って訳じゃなかったか……。どういうことなんだろうな』

 

 またも人間の身体から、リングが出てきた。謎は深まるばかりだ……。

 

「シュアッ!」

 

 ともかくタイガが、空に飛び上がって地上から去っていった。

 

 

 

 その後はすぐに事情を桃香たちに知らせ、兵たちと協力してライブキングの破片を全て回収し、念入りに処分した。これでひと安心だ。

 

〈鈴々〉「ふぅ~……街中駆け回って、ヘトヘトなのだぁ」

 

〈一刀〉「お疲れさま、鈴々」

 

 中でも一番働いたのは、鈴々だ。ノンストップで走り続け、破片のほとんどを一人で集めたんだ。

 

〈一刀〉「お陰で助かったよ。桃香たちも感心してた」

 

〈鈴々〉「ふふんっ! お兄ちゃんたちが、頑張ってくれたからね。鈴々だって頑張ったのだ!」

 

 えっへんと鼻息荒く胸を張る鈴々。ははは、体力や食欲は常人離れしてても、こういう無邪気なところはやっぱり普通の子供と変わりないな。

 しかし、急に鈴々が俺に寄りかかってくる。

 

〈一刀〉「どうした?」

 

〈鈴々〉「……食べた後にいっぱい走り回ったら、眠くなってきたのだ……」

 

 しょぼしょぼとした眼をこすって、大きくあくびする鈴々。

 

〈一刀〉「しょうがないなぁ、ほれ……おぶされよ背中」

 

 頑張ってくれたご褒美だ。鈴々に背を向けて、その場にかがむ。

 

〈鈴々〉「んしょ、あは……♪ お兄ちゃんの背中、広いのだ」

 

〈一刀〉「それはどうも」

 

〈鈴々〉「……くー」

 

〈一刀〉「早ッ!」

 

 寝つきいいな……。俺の背におぶさった瞬間に、鈴々はもう寝息を立ててた。

 

〈タイガ〉『はは。鈴々を寝かせに、城に戻らないといけないな』

 

〈一刀〉「ああ……。愛紗には見つからないようにしないとな」

 

 歩き出そうとすると……鈴々の手から蛇矛が滑り落ちて大きく音を立てた。

 

〈一刀〉「矛は落とすなー! 危ない!」

 

〈鈴々〉「ん……うるさいのだぁ」

 

 はぁ……こんな長い矛まで、俺が運ばないといけないのか……。ほったらかしにする訳にもいかないもんな……。

 まぁそれでも、今日は鈴々に感謝あるのみだ。

 


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