奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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猛虎ダイナマイト!

 

〈鈴々〉「やぁぁ―――――――っ!! いい加減降参するのだっ!」

 

〈白翼党〉「ぐわあああぁぁぁぁぁ―――――――ッ!!」

 

 ――鈴々の振り回す槍が、白翼党を纏めて吹き飛ばす。白翼党は散々に打ちのめされて、最早隊列も何もあったものではないありさまだが、士気だけは失わず、抗戦を続けている。

 

〈電々〉「もぉ~。実力の差はとっくに分かってるはずなのに、変にしぶといなぁ」

 

〈公孫賛〉「これだけの規模の人数だ。どこかに全体を纏めている指揮官がいるはず! そいつを捜し出して捕らえるのだ! それが最も手っ取り早い!」

 

〈騎馬兵〉「はッ!」

 

 公孫賛からの命令を受け、兵士たちの一部が白翼党の指揮官を捕獲するために散開していく。

 その指揮官は、一旦戦場から離れて物陰に身を潜めていた。

 

〈指揮官〉『小娘ども、よくもここまでやってくれたものだ……。まさかこんな短時間で、こうも戦況を覆されようとは……。もうあと少しで、張角ちゃんたちを救い出せるところだったというのにッ!』

 

 吐き捨てた指揮官が、懐から――明らかに大陸の技術水準を超えている、通信機型の機械を取り出した。

 

〈指揮官〉『こうなれば最後の手段だッ! 出てこい、バキシムッ!!』

 

 ――指揮官の使用した怪獣コントローラーの電波により、青い空に、文字通りに亀裂が走った!

 

〈電々〉「み、見て!? 空が、割れてるよぉっ!!」

 

〈桃香〉「えええぇぇぇぇ――――――――――――!!?」

 

 それに気づいた桃香たちは、当然ながら仰天。

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 そして空が完全に割れ、開けた異次元空間から、頭頂部に太く鋭い一本の角を生やした、鋭角的な輪郭の身体の巨大生物が顔を出した!

 

〈鈴々〉「わぁあっ!! 何か出てきたのだぁぁっ!!」

 

 

 

 突然割れた空から、巨大な一角の怪物が現れたのを城壁から見上げて、俺は目を見張る。

 

〈一刀〉「そ、空が!? 空から怪獣が……!!」

 

〈タイガ〉『怪獣じゃない! 超獣バキシムだ!!』

 

〈一刀〉「ち、鳥獣?」

 

 訂正するタイガだが……どの角度から見たとしても、鳥には見えないんだけど。

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 なんて言ってる場合じゃないよな! バキシムは地上に降りて、早速街を破壊し始めて人間を襲う。この暴挙に、敵も味方もなく地上は大混乱の渦だ。

 

〈タイガ〉『一刀、俺たちの出番だぞ!』

 

〈一刀〉「ああ!」

 

[カモン!]

 

 当然、止めなきゃいけない! すぐさまタイガスパークを起動だ!

 

〈一刀〉「光の勇者、タイガ!」

 

 タイガキーホルダーを握り締めて、力いっぱいにスパークを掲げる!

 

〈一刀〉「バディーゴー!」

 

[ウルトラマンタイガ!]

 

 俺の身体が変身して巨大化し、タイガが宙を舞いながらバキシム目掛けて飛び出す!

 

「シュアッ!」

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 タイガの素早い飛び蹴りがバキシムの側頭にヒットし、バキシムの人間を襲う手が止まった。

 

「ハッ!」

 

 左手を頭上に、右手を前に突き出す構えで見得を切るタイガが、バキシムと対峙する!

 

〈桃香〉「勇者様!」

 

〈公孫賛〉「おお……ウルトラマンタイガ!」

 

〈鈴々〉「助けに来てくれたのだー! もう大丈夫なのだっ!」

 

 

 

 ――戦場に向かうところであったが、バキシム出現により止まらざるを得なくなっていた愛紗と趙雲も、タイガの勇姿を見上げている。

 

〈愛紗〉「勇者様……!」

 

〈趙雲〉「あれが、噂に聞く光の巨人、天の御遣いか。……あの時のとは違うな」

 

 ボソリ、と趙雲が小さく独白した。

 その別の場所で、白翼党の指揮官がタイガを忌々しげににらんでいる。

 

〈指揮官〉『ウルトラ戦士……! 奴も来ていたのか。ならば逆に好都合というもの! 奴を倒し、ヴィラン・ギルドの賞金も手に入れてくれる!』

 

 指揮官がコントローラーを通して、バキシムに命令する。

 

〈指揮官〉『バキシム! 先にウルトラ戦士から倒すのだぁッ!』

 

 

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 バキシムが丸っこい両手をこちらに向けてくると――その先端から、弾丸が連射される!

 

〈一刀〉『「うわッ!?」』

 

〈タイガ〉『っとッ!』

 

 タイガはすかさず横に跳んで回避するが……バキシムは更に鼻先からも機関銃をぶっ放し、タイガが側転につなげて銃撃から逃れた。

 

〈一刀〉『「な、何だあいつ!? 怪獣の身体に、銃火器!?」』

 

〈タイガ〉『超獣は戦闘用に生体改造された怪獣兵器! 体内に様々な破壊兵器を仕込んでるんだ!』

 

 ま、マジか……。何て危ない奴! というか、古代中国で銃弾ぶっ放すな!

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 なんて言っても敵が聞く耳を持つ訳もなく、今度は火炎放射を繰り出してくる。バキシムの遠距離攻撃をかわすのに専念するタイガだが……これじゃ反撃できないぞ!

 

〈タイガ〉『スワローバレット!』

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 それでも攻撃の合間の隙を突いて、タイガが光弾を発射するが、バキシムの腕から発した光線で相殺された。

 

〈タイガ〉『くッ、超獣相手に遠距離戦は不利か……! 飛び込むぞ!』

 

〈一刀〉『「ああ!」』

 

 タイガは危険を承知で、重火器を満載した生体兵器の懐に向かって踏み込んでく!

 

 

 

〈指揮官〉『やれ! バキシム! ハチの巣にしろッ!』

 

 ――タイガと戦うバキシムに向けて叫ぶ指揮官の近くに、ザッと二つの人影が参上した。

 

〈愛紗〉「貴様、白翼党だな! そこで何をしているッ!」

 

〈指揮官〉『しまった、見つかったか!』

 

 愛紗と趙雲だ。趙雲は指揮官の出で立ちを観察し、不敵に微笑む。

 

〈趙雲〉「あれは敵方の大将だ。では、あれを討ち取った方が勝ちとしよう!」

 

〈愛紗〉「あっ! おい、勝手に決めるな!」

 

 言うが早いか、趙雲が槍を構えて指揮官へ肉薄。愛紗も遅ればせながらそれに続き、槍を振るった。

 

〈趙雲〉「はぁっ!」

 

〈愛紗〉「てぇいっ!」

 

〈指揮官〉『ぬぅッ!?』

 

 ギリギリで二人の槍をかわす指揮官。その際に、被っていたローブが裂かれて、素顔が露わとなった。

 

〈愛紗〉「な、何!?」

 

〈趙雲〉「これは……驚いた」

 

 それを目の当たりにした愛紗と趙雲が、途端に驚愕。

 何故ならば、ローブの下から出てきた顔は、明らかに人間のものではない――完全にセミのものだったからだ!

 

〈愛紗〉「セミ人間……!?」

 

〈趙雲〉「白翼党は妖怪変化の類も飼い慣らしておるのか」

 

〈セミ人間〉『妖怪などではないッ! 俺はチルソニア遊星から来た宇宙人! 貴様ら原始人よりもはるかに進歩した種族なのだ!』

 

 セミ人間は愛紗たちを見下しつつ名乗りを上げる。

 

〈愛紗〉「その台詞……勇者様のような、天の世界から来た人間ということのようだな」

 

〈趙雲〉「何やらよく分からんが……結局は、討ち取ってしまえば良いのであろう!」

 

 趙雲が気を取り直して、セミ人間を倒そうと槍を構え直すが、

 

〈セミ人間〉『なめるなよ原始人! 文明の差を思い知れッ!』

 

 セミ人間は光線銃を取り出し、二人へ銃口を向ける。

 

〈趙雲〉「むっ!?」

 

〈愛紗〉「危ない、子龍!」

 

 愛紗が趙雲の腕を引き、横の路地の入口に引き込む。セミ人間の発砲した光弾は、地面や建物の壁を鋭くえぐった。

 

〈セミ人間〉『隠れても無駄だ! 出てきたところをぶち抜いてやるぞぉッ!』

 

 銃を構えたまま豪語するセミ人間を、趙雲は強く警戒。

 

〈趙雲〉「あの光の矢が出る武器は厄介だな。見えづらい上に速いので、よけづらい」

 

〈愛紗〉「案ずるな。あの武器、欠点がある」

 

 愛紗が、事前に一刀らから聞いた、銃器の欠点を告げる。

 

〈愛紗〉「光の矢はまっすぐにしか飛ばんから、手の角度と指の動きを注視すれば、我らならかわすことは十分に可能。そして、何より……」

 

〈趙雲〉「……なるほど。では、ここは一時共闘と行こうか。しかし、勝負に勝つのは私だぞ」

 

〈愛紗〉「まだそんなことを言って……ああもうっ!」

 

 趙雲は相変わらず、言いたいだけ言うと建物の陰から飛び出していく。頭を振って続く愛紗。

 

〈セミ人間〉『そこかぁッ!』

 

 セミ人間の銃撃を、二人は左右に別れて回避した。

 

 

 

「ハァッ!」

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 タイガが銃弾の雨をかいくぐり、バキシムの懐に入り込むことに成功。至近距離から相手の横面にパンチを叩き込む。

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 数歩よろけるバキシム。よし、効いてるみたいだ!

 

「ハァァッ!」

 

 そのまま一気に押し込もうとするタイガだったが、

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 バキシムの反撃の拳をもらうと、俺の身体を突き刺さるような鋭い激痛が襲った!

 

〈一刀〉『「うわッ!? 何だ、この痛みは……!」』

 

 単に殴られたくらいじゃ、ここまで過敏な痛覚は感じない。何をされて……と、相手をよく見て、原因が分かった。

 

〈一刀〉『「げッ!? 手にトゲが生えてる!」』

 

 バキシムの丸っこい手の内側には、太く鋭いトゲがいくつも生えてる。代わりに指がない……。指がないと、生命活動にひどく不利益なはずだ。

 生存能力を捨てて、戦闘方面に吹っ切った改造をされてるのか。そんなことした奴は、相当残酷な性根してるんだろうな……!

 

〈タイガ〉『流石超獣。遠近ともに隙がないな……!』

 

〈一刀〉『「感心してる場合かよ! これじゃ一方的に痛めつけられるだけだぞ!」』

 

 痛みを堪える俺に、タイガが告げる。

 

〈タイガ〉『なぁに。武器には武器を使えばいいんだ!』

 

〈一刀〉『「そうか!」』

 

[カモン!]

 

 タイガの助言で、すぐに愛紗リングをリード。

 

[愛紗リング、エンゲージ!]

「ハッ!」

 

 青龍偃月刀をタイガに装備させた。これで、奴のトゲも怖くないぜ!

 

「ギギャアアアアアアアア!」

「テアァァッ!」

 

 狙い通り、バキシムのトゲの一撃をタイガは槍の柄で防ぎながら、ひと太刀を相手のボディに浴びせた! これで互角以上に戦えるぞ!

 

 

 

〈セミ人間〉『ぬぅッ!』

 

 ――セミ人間は素早く辺りに目を走らせて、愛紗と趙雲が出てくる度に的確に発砲して近寄らせない。しかし二人の動きもまた速く、光弾は命中せずに二人はすぐに遮蔽物から遮蔽物へ身を隠す。

 

〈セミ人間〉『くそッ、何とすばしっこい連中だッ!』

 

 悪態を吐いたセミ人間が、自棄になって遮蔽物ごと撃ち抜いてやろうと連射する。が、

 カチカチッ。

 

〈セミ人間〉『しまったッ!』

 

 途中で、引き金をいくら引いても銃口から何も出なくなってしまった。

 銃器の最大の弱点。それは、弾切れを起こしたら一転無力になってしまうことだ。

 

〈愛紗〉「今だっ!」

 

〈趙雲〉「はぁぁっ!」

 

 セミ人間が動じた一瞬の隙を逃さず、愛紗と趙雲が瞬時に飛び出して槍を振り上げた!

 

 

 

「ギギャアアアアアアアア!」

「ハァァァッ!」

 

 バキシムが放ってくる火炎を、タイガは槍を回して盾のようにすることで遮断。そのまま距離を詰め、連続で斬撃を食らわせる。

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

〈一刀〉『「よし、行けるぞ!」』

 

〈タイガ〉『ああ! この一撃で決めてやるぜ!』

 

 タイガが刃に虹色のエネルギーを集中させ、振りかぶってバキシムを狙う!

 

〈タイガ〉『ストリウム逆鱗……!』

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 だが振り下ろす寸前、バキシムの一角がミサイルのように発射されて青龍偃月刀を撃った!

 

〈一刀〉『「何ッ!?」』

 

 角は爆発を起こし、その衝撃で槍がタイガの手から吹っ飛ばされてしまった!

 

〈タイガ〉『しまった!』

 

 手の内から離れて宙を舞った槍は、地上に落下する前に消滅してしまう。

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 バキシムの角はすぐに新しく生えてきて、無手になったタイガの腹にもう一発撃ち込んできた!

 

〈タイガ〉『うわあぁぁぁッ!』

 

 まともに爆撃を食らったタイガのカラータイマーが鳴り、危険を報せる!

 

〈雷々〉「あぁっ! 勇者様ー!」

 

〈電々〉「勇者様が危ないっ!」

 

 

 

〈愛紗〉「――ぐはっ!?」

 

〈趙雲〉「ぬっ……! 何だ、この圧力は……!」

 

 ――セミ人間に斬りかかろうとした愛紗と趙雲であったが、突如二人を見えない力が襲い、建物の壁まで吹っ飛ばされ抑えつけられた。

 セミ人間は光線銃を捨て、リモコンのような装置に持ち替えていた。

 

〈セミ人間〉『クククッ、油断したな! 銃は囮よ! このエスパライザーこそが本命! 貴様らが飛び出てくるのを待ってたという訳だ!』

 

〈愛紗〉「うぅっ……!」

 

〈趙雲〉「くっ……この趙子龍としたことが……!」

 

 強力な念動力を放つエスパライザーにより、愛紗と趙雲は全身が締めつけられて苦悶に喘ぐ。抵抗しようにも、足すら地についていないので、満足に身体に力を込められない。

 

〈セミ人間〉『このまま絞め殺してくれるッ!!』

 

〈愛紗〉「うわああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 セミ人間がエスパライザーの出力を上げ、愛紗がたまらず絶叫を上げる――!

 

〈セミ人間〉『ワハハハハッ! どうだ、もっと苦し〈鈴々〉「愛紗ぁぁぁぁあああああ―――――――――っ!!」めごふッ!!?』

 

 ――哄笑を上げたセミ人間に、猛スピードで横道から飛び出してきた鈴々が衝突し、セミ人間ははね飛ばされた。

 

〈愛紗・趙雲〉「「あ」」

 

 途端に念動力から解放され、着地する愛紗たち。今の衝突で、エスパライザーが砕けて壊れたからだ。

 

〈鈴々〉「すごい悲鳴が聞こえたけど、大丈夫なのだ!? 愛紗を追いつめるような敵がいたのか!? 鈴々がやっつけてやるのだっ! 敵はどこなのだ!?」

 

〈愛紗〉「あー……えーっと……」

 

 鈴々に轢かれたセミ人間は、自分が壁にめり込んでピクピク痙攣していた。必死に駆けつけた鈴々は、ぶつかった感覚もなかったようだ。

 

〈鈴々〉「うわっ!? 何か、変なのが壁に埋まってるのだ! 気持ち悪いのだ!」

 

〈趙雲〉「……やれやれ。勝負は引き分けのようだな……」

 

〈愛紗〉「天の国の人間の力、甘く見ていた……。私も修行が足りん……」

 

 意外な幕切れであったが、鈴々が来てくれなかったら危なかったのは事実。反省した愛紗は、ハッと状況を思い出して顔を上げた。

 

〈愛紗〉「そうだ、勇者様の方は……!」

 

 

 

〈タイガ〉『くッ、てこずらせてくれるぜ……!』

 

〈一刀〉『「このまんまじゃやばいぞ……!」』

 

 全身の兵器を駆使してこっちを追いつめてくるバキシム相手に、タイガは大分まずい状況にある。残り少ないエネルギーで、どうやって奴を仕留めるか……!

 

〈雷々〉「勇者様ー! 負けないでーっ!!」

 

〈電々〉「勇者様には、電々と雷々がついてるよー! 最後の力を振り絞ってーっ!!」

 

 その時、雷々と電々の応援の声が届いた。二人は俺たちの逆転を信じて、精一杯跳びはねて鼓舞してくれる。

 けど、あんなに目立ったら……!

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 やっぱり、注意を引きつけられたバキシムが二人へ光線を撃った!

 

〈電々〉「きゃああぁぁぁ―――――っ!?」

 

〈雷々〉「こっち攻撃してきたぁーっ!!」

 

〈タイガ〉『させるかぁッ!』

 

 だがすんでのところでタイガが回り込んで、防御を固めて光線を受け止め、雷々たちを救った。

 

〈タイガ〉『つぅ……! 大丈夫か!』

 

 雷々と電々に首を向け、テレパシーで呼び掛けるタイガ。

 

〈雷々〉「ゆ、勇者様……」

 

〈電々〉「ごめんなさい、電々たちのせいで……」

 

〈一刀〉『「いいや、二人の応援のお陰で力が湧いてきたよ! ありがとう!」』

 

 しょんぼりした電々たちに、励ましの言葉を掛ける。

 

〈雷々・電々〉「「……どういたしましてっ!!」」

 

 別に気を遣ったんじゃない。応援のお陰で、俺たちはまだ力を出し切ってないことを思い出したんだ。

 

〈一刀〉『「これが最後の攻撃だ! こいつに賭けるぜ!」』

 

[カモン!]

 

 タイガスパークに触れ、召喚したのは、鈴々のリングだ!

 こいつにスパークをかざし、赤い電流をスフィアに受け止める。

 

[鈴々リング、エンゲージ!]

 

 俺の傍らに鈴々のビジョンが浮かぶと、タイガの手中に、青龍偃月刀とは違う長柄の武器が出現!

 

〈タイガ〉『こいつは……!』

 

〈鈴々〉「あっ! あれ、鈴々の武器なのだぁーっ!!」

 

 どこかで鈴々が叫んだ通り、波打った穂先を持った、何十階分のビルほどあるだろうか、タイガの身長よりも更に長い槍がタイガの手中にあった。

 鈴々愛用の槍、八丈蛇矛……いや、ここまで来ると八百丈蛇矛かもな!

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 バキシムはまたこっちの武器を弾き飛ばそうと、一角ミサイルを発射してきた! それを、槍の突きで迎え撃つタイガ!

 

「ハァッ!」

 

 一角は激突と同時に炸裂するが、蛇矛はタイガの手から離れず、しっかりと握られたままだ!

 

〈タイガ〉『おおッ! すごい貫通力だな! ミサイルを貫いたぜ!』

 

〈一刀〉『「こいつで、今度こそ決めよう!」』

 

〈タイガ〉『おうッ!!』

 

 タイガが槍を正面に突き出しながら、猛然と突進してく!

 

「ギギャアアアアアアアア!」

 

 バキシムが角を連射してくるが、もうこの勢いは止まらない! 槍がミサイルを片っ端から貫く!

 

「ハァァァァァッ!」

 

 そして波打つ穂先が紅蓮の炎に包まれ、燃える槍をバキシムに突き刺す!

 

〈一刀・タイガ〉「『猛虎ダイナマイト!!」』

 

 灼熱の炎のエネルギーで、バキシムが一撃で爆散!!

 爆風が散った後に立っているのは、タイガだけだった。

 

〈雷々〉「やったぁーっ! 勇者様が勝ったーっ!!」

 

〈電々〉「電々たち、信じてたよー!!」

 

 雷々と電々がぴょんぴょん跳びはねて、全身で喜びを表現してる。

 

〈雷々〉「勇者様ー!」

 

〈電々〉「助けてくれて……!」

 

〈雷々・電々〉「「ありがとーっ!!」」

 

 との叫びとともに、二人からひと欠片の光が飛び立ち、タイガがキャッチした。

 俺の手の中に現れたのは、左側に雷々、右側に電々の髪型を飾りとして取りつけた指輪だ。

 

〈一刀〉『「雷々と電々のリングか……! 二人で一つなんだな」』

 

〈タイガ〉『初めてのケースだな……。この特殊なリング、どんな効果があるんだろうな』

 

 また新しく手に入れた、三つ目のリングはともかく、戦いはこれでようやく終了だ。タイガは飛び上がり、やっと静まった斉国の街から去っていった。

 

「シュアッ!」

 




 
一角超獣バキシム

 セミ人間によって呼び出され、斉の国を襲った怪獣兵器。超獣とは異次元人ヤプール人が作り出した惑星侵略用の生体兵器であり、体内に様々な人工兵器が組み込まれているのが特徴。また、空間を文字通りに割って空間移動する驚異の機動力も持ち合わせている。超獣はヤプールが滅んでも、その怨念の力を元に、宇宙のどこかで新たに生まれ続けている。



宇宙怪人セミ人間

 白翼党の一団を率いていた指揮官の正体である、セミに酷似した頭部のチルソニア遊星の宇宙人。高度な科学技術を有しており、念動力を発動するエスパライザーの他、非常に強固なチルソニア合金で造られた侵略用巨大ロボットのガラモン、及びガラゴンとガラQなどの兵器を開発している。

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