「パァオッ! パオォッ!」
街中に出現したグロンケンは、両手に埋め込まれた丸ノコを高速回転させ、周りの家屋に走らせた。
するといくつもの建物が一瞬で真っ二つに切り裂かれてしまい、バタバタと倒壊していく。
怪獣が回転ノコギリ使うなんて……本当に野生の生き物なのか、あいつは!?
〈男〉「うッ、うわああぁぁぁぁぁ――――――――――!!」
〈女〉「いやあぁぁぁぁ――――――っ! 助けてぇぇぇぇぇっ!」
斬られた建物の倒壊に巻き込まれそうになる街の人々が、次々に悲鳴を上げる……!
〈愛紗〉「何たる蛮行……! 怪獣め、許さんっ!」
激昂した愛紗が青龍偃月刀を固く握り締めて、襲われる人たちをグロンケンから助けに向かおうとするが……それを押し留める。
〈一刀〉「待った、愛紗! あの回転する刃物が見えるだろ。その刀でもバッサリ斬られちゃうぞ!」
〈愛紗〉「ご主人様……」
〈一刀〉「今答えたばかりだろ? 引き締める時は、引き締めるって。早速俺が、俺たちが愛紗の力になるッ!」
決意を胸に、愛紗の代わりに前に進み出る!
〈タイガ〉『いいぞ一刀! 変身だ!』
〈一刀〉「ああ!」
[カモン!]
全身に力をみなぎらせながら、タイガスパークを起動した。
〈一刀〉「光の勇者、タイガ!」
『ハァァァァッ! フッ!』
スパークでタイガキーホルダーを握り締め、高々と振り上げる!
〈一刀〉「バディーゴー!」
[ウルトラマンタイガ!]
「シュアッ!」
飛び出したタイガが、今まさに街の人たちに斬りかかろうとしてたグロンケンの頭部にキックを食らわせた!
「パァオッ!」
不意打ちを受けて横倒れになるグロンケン。着地したタイガは、人々の盾となって構えを取った。
「ハッ!」
〈一刀〉『「愛紗は街の人たちを逃がしてくれ!」』
〈愛紗〉「かしこまりました!」
町民の避難を愛紗に託し、俺たちはグロンケンに立ち向かう!
「パァオッ! パオォッ!」
すぐ起き上がったグロンケンは、ボクサーのような連続パンチを繰り出してくる。
これだけなら普通の攻撃だが、その手にノコギリが回ってるだけで段違いの殺傷力がある!
〈タイガ〉『くッ!』
タイガも文字通りの殺人パンチを受けることは危険で、かわすしかない。
〈タイガ〉『肉弾は危なすぎるな……!』
〈一刀〉『「けど、ここじゃ距離を取って戦うのは無理があるぞ!」』
まだまだ民衆の避難は済んでいない。いたずらに戦闘の範囲を広げることも出来ない。
〈タイガ〉『だったら選択肢は決まってるよな!』
〈一刀〉『「ああ!」』
[カモン!]
意気込んでタイガスパークに触れて、愛紗リングを左手の中指に召喚した。
愛紗、俺にも君の力を貸してくれ!
[愛紗リング、エンゲージ!]
リングにスパークをかざすことで、タイガの手中に青龍偃月刀が出現!
「ハァッ!」
「パオォッ!?」
前触れなく武装したタイガにグロンケンは動揺を見せた。これで互角に戦えるぜ!
「シュアァッ!」
「パァオッ!」
タイガが偃月刀を、風を切って振り回しながら、グロンケンに突き出す。グロンケンの方もノコギリパンチで応戦してきた。
「パァオッ! パオォッ!」
「タァァッ!」
刀とノコギリが幾度も交差して火花を散らす。しかし、こっちは言ってしまえば普通の刃。対して向こうは回転して遠心力が加わってる。ぶつかる度にタイガの手が揺さぶられ、刀が弾かれそうになる。
だが……愛紗の力が宿ったこの青龍偃月刀は、ただの武具じゃあない! 世の人々を護るための刃だ! お前の切り裂くだけの刃に負けてたまるか!
「シュアァァァァッ!」
気合い一閃、一瞬の隙を突いて大きく振り上げられた偃月刀が、グロンケンの右腕を半ばから切断した!
「パァオッ!?」
片腕をばっさり斬り落とされたグロンケンは大きく慌てふためく。
「タァ―――――ッ!」
返す刃で、反対の左腕も叩き斬る!
「!!!!」
一番の武器の両腕を失ったグロンケンは完全にパニックになって、必死に後ずさった。
よし、勝負あった!
「パァオッ! パオォッ!」
だがグロンケンは急に尻尾をダンッ! と地面に叩きつけると、その反動で跳び上がってカンガルーキックを繰り出してきた!
〈タイガ〉『うおわッ!?』
まともに食らったタイガがばったり倒れる。
くッ、悪あがきを……往生際が悪いな……!
〈タイガ〉『つぅ~……! やりやがったなッ!』
〈一刀〉『「タイガ、とどめだッ!」
〈タイガ〉『ああ!』
起き上がって偃月刀を構え直したタイガが、刀身に光のエネルギーを注ぎ込む!
〈一刀・タイガ〉「『ストリウム逆鱗斬!!」』
そしてグロンケンのどてっ腹に袈裟斬りをお見舞い!
「ハァッ!」
更にタイガのスワローキックが突き刺さり、衝撃でグロンケンの肉体が二つに分かれて爆散した!
決まった! 大勝利だ!
「シュアッ!」
怪獣の暴挙を食い止め、街を救ったタイガが飛び上がり、大空へと去っていった。
戦闘後、戻った俺は愛紗から被害状況の報告を受ける。
〈愛紗〉「ご主人様のご対応が御早かったお陰で、被害は最小限に食い止めることが出来ました。これならば、数日もあれば元の賑わいを取り戻すことでしょう」
〈一刀〉「そうか……良かった」
ほっと息を吐く。流石に負傷者が0という訳にはいかないが、それでもこの街に生きる人たちが早くに立ち直れるまでに護ることが出来たのは幸いだ。
〈愛紗〉「ですが……この騒ぎでは、饅頭はあきらめざるを得ませんね」
〈一刀〉「実は期待してた?」
愛紗がちょっと残念そうにしてるから、そんな風に思った。
〈愛紗〉「き、期待などしていた訳ではありません! 失礼なっ!」
〈一刀〉「別にからかったんじゃないよ。街が落ち着いて、また売りに出されたら、今度こそ一緒に行こう」
念を押して誘いを掛けたら、愛紗は少し恥ずかしくなったか、ほんのり頬を赤くした。
〈愛紗〉「……ご主人様は、どこか桃香さまに似ていますね」
〈一刀〉「そうかな? 別に普通だと思うけど」
〈タイガ〉『いーや、今のは口説いてると言われても文句言えねぇぞ。全く、節操なしめ……』
〈一刀〉「タイガ! またそんなこと言って……」
こいつ、すぐ茶化してくるな。俺に恨みでもあるのか? 愛紗だって、変なこと言われてすっかり赤面してるじゃないか。
〈愛紗〉「お、おほん……! ともかく今は、今の件を桃香さまにご報告しに参りましょう。街の復旧にも、隊からいくらか人手を連れてこなければ」
〈一刀〉「ああ」
俺と愛紗は連れ立って、桃香たちがいる屋敷へと向かい出す。
今回の戦闘も、この大陸で起こってる災害のほんの一角でしかない。こんなことは、いやこれ以上の危機だって、これからいくらでも発生することだろう。
だけど、俺は負けるつもりなんてない。俺の側にタイガがいて……愛紗たちみたいな、とても素晴らしい仲間とこれからを歩んでいく限りは。