奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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行くぜ!バディーゴー!!

 

「グギャアアア! ギャアアァァ!」

 

 氷塊から出てきた怪獣四体は一斉に雄叫びを上げて、活動を始める。これを見たタイタスが叫ぶ。

 

〈タイタス〉『むぅ! あれは冷凍怪獣シーグラ! ジョーニアスの地球での初戦の相手だ!』

 

 解説どーも! けどジョーニアスって誰?

 タイタス曰くシーグラって怪獣を目にして、鼻息を荒くする。

 

〈孝矢〉「すっげー! モノホンの怪獣だ! いるんだなーあんなの。写メ写メ」

 

〈タイタス〉『何をのんきなことを言ってる! 人が襲われてるのが見えないのかッ!』

 

 思わずスマホを取り出そうとしてたら、叱られちまった。確かによく見りゃ、シーグラの群れは兵士っぽい人たちを狙って踏み潰そうとしてる。街は既に大混乱だ。

 あー……こりゃ、やばい事態っぽい?

 

〈黄蓋〉「何と……! あの氷塊には怪物が潜んでおったのか……!」

 

〈孫堅〉「オレの庭であんな狼藉を働くたぁ……許しておけねぇなぁ!」

 

〈孫策〉「ま、待って母様! 無茶はよして! いくら母様でも、あんな大きいのを仕留めようなんて無謀だわ! しかも四匹もいるのよ!」

 

〈周瑜〉「左様。それに、ここには怪物を討伐してくれる打ってつけの人材がおります」

 

〈孫堅〉「打ってつけだぁ?」

 

〈周瑜〉「予言をお忘れですか。巨躯の妖が跋扈せん時、それを鎮圧するのが……」

 

 何か、周瑜から期待されたような目で見られてんだが……。

 更に、タイタスもオレを見上げて頼み込んでくる。

 

〈タイタス〉『ウルトラマンとして、これを捨て置くことは出来ない。だが、今の私では力を発揮することが出来ん。ならば……孝矢君!』

 

〈孝矢〉「へい!?」

 

〈タイタス〉『君の力を、私に貸してほしい! これを貸そう! タイガスパークだ!』

 

 タイタスの姿がいきなりキーホルダーみてぇな形に変わった上、オレの右手に黒い籠手みてーなもんが嵌まった。どーいう手品だこれ!?

 

〈孝矢〉「えッ、それってまさか、そーいうことか!? マジで出来んの!?」

 

〈タイタス〉『時間がない! やってくれるのか、否か!』

 

〈孝矢〉「おーやるやる! 子供の時夢だったんだよなー。今になって叶うたぁ思わなかったぜ」

 

〈タイタス〉『……何やら動機がひどく軽いが、仕方ない! レバーを下ろし、その手で私を掴むのだ! 賢者、ウルトラマンタイタスの力を、君に!!』

 

〈孝矢〉「よっしゃ!」

 

 言われた通り、タイガスパークっつぅ籠手についてるレバーを動かした。

 

[カモン!]

 

〈孝矢〉「いっくぜタイタス!」

 

 タイタスを左手で掴んで、スパークのついてる右手に持ち替える。するとエネルギーみてぇのが出てきて、スパークの丸いランプに吸い込まれて黄色く光った。

 

〈タイタス〉『叫ぶのだ! バディーゴーと!』

 

〈孝矢〉「バディー……ゴー!!」

 

 叫びながら腕を思いっきり突き上げる。そこからピカッとまぶしい光が起きて……オレの身体が変わって大きくなってく!

 

[ウルトラマンタイタス!]

 

 ――七色の光の奔流がマーブルに変化し、その中からウルトラマンタイタスが両腕を振り上げて飛び出していく!

 

「ヌンッ!」

 

 ……オレの身体は完全に赤黒い巨人のものに変わって、元いた城壁の外側にゆっくりと立ち上がった。そして……。

 

「ムンッ!」

 

 ダブルバイセップスからのモストマスキュラー!

 

「ムンッ!」

 

 からのラットスプレッド!

 

「ムゥンッ!」

 

 からのサイドチェスト! ナイスバルク!

 って、何でポーズ取ったんだ!?

 

〈周瑜〉「おお……! 少年が巨人へと変身を……!」

 

〈孫堅〉「管路の予言の通りだな。しかも、ただの巨人じゃねぇぜ」

 

 孫堅たちも驚いたような、見惚れたような目でこっちを見上げてる。

 

〈孫堅〉「見ろ、あの筋肉を! まるで岩山のようじゃねぇか!」

 

〈黄蓋〉「まっこと! あれほどにたくましき背面は見たことがありませぬ!」

 

〈孫策〉「すっごーい! あれだけ鍛えるのにはどれだけの時間を掛けたのかしら!」

 

〈周瑜〉「眠れない夜もあったろうに……!」

 

 何か筋肉ガチ勢多くね!? そーいう趣味の集まりなのかここ!?

 ともかく……オレ、本物のウルトラマンになってるぜ! すっげぇ! ちょっと小っこい時に夢見たのとは違げぇけど!

 

「グギャアアア! ギャアアァァ!」

 

 いきなり出てきたタイタスに、シーグラたちは驚愕してたがすぐにこっちに敵意を向けてきた。そして一体が先んじて突進してくる。

 

〈タイタス〉『賢者の拳は、全てを砕く!』

 

 タイタスは拳を握り締めて、何か矛盾してるようなこと言いながら迎え撃ちに出た!

 

「ウオォォッ!」

 

 そして向かってきたシーグラにパンチを一発食らわせると……相手の身体が一瞬で木端微塵に吹っ飛んだ!

 す、すげぇぇぇぇ!? 殴っただけで怪獣が爆死したんだが!?

 

「グギャアアア!?」

 

 残る三体も完全にビビった! タイタスはお構いなしに、地響き立てながらこっちから突進していく! デカすぎるダンプカーみてぇだ!

 

「ウオオオォォォッ! トゥアァァッ!」

 

 ショルダータックルが、突出した一体をボールみてぇに軽々ぶっ飛ばす!

 

「グギャアアア! ギャアアァァ!」

 

 巨大怪獣をボウリングみてぇに蹴散らすタイタスだが、向こうも反撃してきた。白いブレスを吐いたかと思うと、それを浴びたタイタスの全身が凍りつく! 冷凍ガスか!

 

「ウオッ! ムゥンッ!」

 

 だがタイタスは全身に力を込めると、発熱してすぐに氷を溶かして脱出した。

 

〈タイタス〉『こんな冷気では、アイシングにも使えんな!』

 

 小気味いいジョーク!

 

「ムゥン!」

 

 そしてタイタスが右腕、左腕の順に振り上げてから腰の前で交差させると、スパークから光の球が出てきて、それを拳で殴り飛ばす!

 

〈タイタス〉『プラニウム! バスターッ!』

 

 繰り出した光弾が、シーグラをまた一体粉砕!

 

「グギャアアア! ギャアアァァ!」

 

 これで残りは二体! だが片方が足を前に出すと、足元の小屋が踏み潰されちまう。

 

〈タイタス〉『一体ずつ倒していては被害が広がる。ジードレットを使いなさい!』

 

 腕をピシッと斜め上に伸ばして指示してくるタイタス。だから何でポーズ取る!?

 

〈孝矢〉『「ジードレット!? 何だそりゃ!?」』

 

〈タイタス〉『先ほどと同じようにすれば出てくる』

 

〈孝矢〉『「こうか!?」』

 

[カモン!]

 

 もう一度スパークに触ると、今度は左腕の手首に、縦に細長い飾りがついたブレスレットが嵌まった。そいつをスパークにかざして、エネルギーを吸収する。

 

「ムンッ!」

 

 一瞬タイタスに目つきがめっちゃ悪りぃウルトラマンの幻が被さって、またさっきの必殺技のポーズを取ったが、今度は禍々しい紫の色の光球が出てきた。

 

〈タイタス〉『レッキング! バスターッ!!』

 

 飛ばされた光弾は、残ったシーグラ二体を纏めて吹き飛ばすほどの威力を見せつける!

 

「グギャアアア!! ギャアアァァ!!」

 

 すっげぇパワー……。あっという間に四体もの怪獣をぶっ倒したタイタスは、顔を空に向けて、一気に飛び上がって空の彼方に去ってく。

 

〈黄蓋〉「飛んだ!」

 

〈孫策〉「すっごい神通力! 神仏の如きというのは本当ね!」

 

〈孫堅〉「……だが、どこ行っちまったんだ?」

 

〈孝矢〉「よっと」

 

 飛んでったタイタスを見上げてた孫堅たちの元に、元に戻ったオレが着地した。

 

〈孫策〉「あっ、戻ってきたわ」

 

〈周瑜〉「……ならば、何故一度地平の彼方へ飛んでいったのだ?」

 

 さぁ?

 

 

 

 色々と騒動があったが、オレたちは謁見の間に戻って中断された話の続きを始める。

 

〈孫堅〉「予想外の事態であったが、お陰で孺子が真の天の御遣いと証明されたな」

 

〈孫策〉「被害が最小限に抑えられたのは、あなたたちのお陰よ。どうもありがとう!」

 

〈タイタス〉『いえ。これがウルトラマンとしての使命です』

 

 謙遜するタイタスは、オレの肩の上に乗っかってる。またちっこい状態に逆戻りだ。

 

〈孫堅〉「時に、そこの巨人――今は小っせぇがな――が何者なのかを、まだ聞いてなかったな。力の賢者だとか言っていたが」

 

 孫堅がそう言うと、タイタスは改めて自己紹介をし出す。

 

〈タイタス〉『これは失礼。私はウルトラマンタイタス。こことは別の世界にある、U40という国の出身です』

 

〈孝矢〉「ゆーふぉーてぃー? M78星雲じゃねーの?」

 

 何気なく聞いたつもりだったが……途端にタイタスはがっくり肩を落とした。

 

〈タイタス〉『そうか……知らないかぁ……。先輩ジョーニアスの活躍がアニメになったりもしたんだがなぁ……』

 

〈孝矢〉「わ、悪りぃ」

 

 気にしてるとこに触れちまったみてぇだ。けど、人の肩の上で落ち込むのは正直やめてほしい。

 

〈周瑜〉「何やら色々とあるみたいだが……お主と南出孝矢は、同じ国の出ではないのか?」

 

 周瑜の質問に、気を取り直したタイタスが答える。

 

〈タイタス〉『違います。天の国にも種類がありまして。しかし、私と孝矢君が時間をさかのぼって、我々からしたら昔の時代のこの世界に迷い込んだのは共通しています』

 

 タイタスはこんなナリだが、賢者を名乗るだけあって頭良さそうだ。オレの時より話がサクサク進むぜ。

 

〈孝矢〉「けど、タイムスリップってだけじゃ武将がことごとく女なのはどーいう……」

 

〈タイタス〉『すまないが、今の段階で話をこじらせてもいいことはない。あまり複雑な部分は置いておいてくれ』

 

 あッ、はい。

 

〈孫堅〉「貴様たちからしたら昔の時代……つまり、未来から来たと申すのか」

 

〈タイタス〉『状況を鑑みるに、そうとしか思えません』

 

〈孫堅〉「ならば、それを証明してみろ」

 

〈孝矢〉「証明?」

 

〈孫堅〉「貴様らがはるか先の時代から来たと言うなら、何かそのことを証明できるものはないのか?」

 

 そう聞かれて、タイタスがオレを見上げた。

 

〈タイタス〉『私には持ち合わせがない。孝矢君、君はどうだ?』

 

〈孝矢〉「証明ねぇ……」

 

 だったらさっきのタイガスパーク……は、オレ自身どーなってんのかよく分かんねーしな。だったら……。

 

〈孝矢〉「じゃあこいつで」

 

 さっき出しかけたスマホを取り出した。充電はまだ大丈夫なはずだ。もう一日二日したら切れちまうだろうけど。

 

〈周瑜〉「その薄い板は何だ? 変わった色彩だな」

 

〈孝矢〉「スマホ……スマートフォンっす。孫策さん、ちっとそこ立っといて下さい」

 

〈孫策〉「え?」

 

 電話やメールは出来ねーし、一発で未来の道具って分かってもらうんならこの機能だな。孫策に向けてスマホを構えて、シャッターを切った。

 カシャッて音に孫策たちが怪訝な顔をする。

 

〈孫堅〉「何だぁ今の音は?」

 

〈黄蓋〉「それは楽器だったのか?」

 

〈孝矢〉「いやいや。これ見て下さいよ」

 

 画面にアップになった、孫策の写真をみんなに見せる。この時代にカメラなんかある訳ねーし、これで即分かってもらえるだろ。

 案の定、写真を見た孫策たちは仰天してた。

 

〈孫策〉「えっ……こ、これ、私っ!?」

 

〈黄蓋〉「おおおおお!?」

 

〈孫堅〉「……ふっ……ふはっ! ふはははははっ! はーはっはっはっはっ!!」

 

 な、何か孫堅はえらくご満悦だな……。そんなに面白かったか?

 

〈孫策〉「何これ、一体どうやったの?」

 

〈タイタス〉『これは写真ですね。いわば、自画像を一瞬で、そのままの形で描き出すものです』

 

 説明取られた。まぁいいや。

 

〈孫策〉「一瞬すぎるでしょ!?」

 

〈黄蓋〉「たまげたな……とても絵には見えんぞ」

 

〈周瑜〉「ふむ……確かにこの世界には存在しない……聞いたこともない技術だ」

 

 孫策たちは感心しきりだ。何かオレ、カメラを知らねー人に写真見せたらどんな反応するか、その実験に立ち会っちゃってるよ。

 

〈孫堅〉「良かろう! 貴様らが未来から来たということ、認めてやる!」

 

〈孝矢〉「どーも……」

 

 分かってもらえたのは何よりだが……これから何すりゃいいんだ? どっちかってーと、元の世界に帰りてぇとこなんだが……。

 

〈孫堅〉「貴様らは何をしにここへ参った?」

 

〈孝矢〉「だから、来たくて来たんじゃねぇっすよ。強いて言うなら事故で」

 

〈タイタス〉『私も孝矢君と同様、気がついたらこの状態でここにいました』

 

〈孫堅〉「そうであったか。しかし、ここで何もする気がないと言うのであれば、今すぐ放り出すぞ?」

 

〈孝矢〉「へぇッ!?」

 

 んな極端な! 見ず知らずの、それもずっと昔の世界に放り出されるとか、死亡フラグでしかねーじゃんか!

 

〈孫策〉「そうねー。巨人に変身するような力の持ち主なら、獄に閉じ込めておいた方が賢明だと思うけれど。あの力を私たちに向けられたらたまったものじゃないわ」

 

〈孝矢〉「マジで!? 獄って牢獄!?」

 

〈孫策〉「もちろん♪」

 

〈黄蓋〉「はっはっはっ。どうする孺子、困ったの?」

 

 んなこた言われたって……感謝してんじゃねーのかよ……。返事に困ってるオレに、タイタスが呼び掛けた。

 

〈タイタス〉『ならば孝矢君、私の役目を手伝ってほしい』

 

〈孝矢〉「ん? タイタスの役目?」

 

〈タイタス〉『君なら分かると思うが、ウルトラマンの役目は巨大すぎる暴力と戦い、弱き者を護ること。どこの世界に行ってもそれは変わらない。どうやら、この世界の人々も先ほどのような怪獣に苦しんでいるようだ。助けてやりたいのだが、今の私一人ではろくに戦うことも出来ない』

 

〈孝矢〉「あー……そんでさっきみてーに、オレが必要って訳か」

 

〈タイタス〉『話が早くて助かる。どうだ、やってくれないか?』

 

〈孝矢〉「まぁ他にやることもねーし、構わねぇぜ。どーせだったら、ヒーローとして世のため人のために働く方がいいしな」

 

〈タイタス〉『ありがとう。それでは私と君はこれからバディ、共に支え合う仲間だ!』

 

 オレたちで話を纏めると、タイタスが孫堅に申し出る。

 

〈タイタス〉『そういうことで、私たちはこれから天の御遣いとして働きます。皆さんには、私たちの後ろ盾となっていただきたい』

 

〈孫堅〉「ほう……。己らを売り込もうというのか」

 

〈タイタス〉『私はともかく、孝矢君がこの世界で頼るところなく生きていくのは厳しい。だから、彼の保護をしていただきたいのです。そちらとしても、天の御遣いを抱えているという事実だけで、その権威が政治上で優位に働くことでしょう。十分に見返りがあると思いますが』

 

〈孫堅〉「賢者と言うだけあって賢いじゃねぇか。全く以て貴様の言う通り。その申し出、引き受けてやろうじゃねぇか。貴様らの面倒はオレが見てやる」

 

〈孝矢〉「どうもっす」

 

〈タイタス〉『こら孝矢君、お礼の言葉はちゃんと言わないか。孫堅殿、感謝致します』

 

 注意された。これじゃ仲間っつーより、タイタスがオレの保護者みてぇだぜ。

 

〈孫堅〉「公瑾。我らが天の御遣いを虜としたこと、城下に広く知らしめるのだ」

 

〈周瑜〉「早くも噂を広めますか」

 

〈孫堅〉「応! 孫呉に天の血が入ったとなれば、諸侯はもちろん漢室にさえ影響を及ぼせる!」

 

 ん? 血を入れる……? 何だその表現……。

 

〈黄蓋〉「はて? 血とは……」

 

 黄蓋がオレと同じ疑問を聞くと――孫堅は、とんでもねぇことを言い出した……。

 

〈孫堅〉「知れたこと。おい孝矢、貴様は今日より、天の御遣いのタネを我が家、我が臣どもにバラ撒け!」

 

〈孝矢〉「種? オレ、花屋じゃねーっすけど」

 

〈孫堅〉「何を寝ぼけたことを言ってやがる! 貴様の子胤のことに決まってるだろうが! 我が家の女どもを孕ませろと命じているっ!」

 

 ちょっとの静寂後、

 

〈孝矢〉「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ――――――――――ッッ!!?」

 

〈タイタス〉『な、何とぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおッッ!!?』

 

 オレたちは目が飛び出るぐれぇ仰天! 流石の賢者も、今のは予想できなかったみてぇだ!

 

〈孫策〉「ああー……」

 

〈孝矢〉「何納得してんの!?」

 

〈孫策〉「母様にしては名案だもの。孝矢が何人か孕ませたら、呉に天の血が入ったと喧伝できるものね。庶人の心にも孫呉の人間に対しての、畏怖の感情が自然と起こるでしょうね」

 

〈孫堅〉「応よ。手元に置いておく程度では不十分だ。天の血脈と呉の血脈、それを一つにして盤石になるというものよ」

 

〈黄蓋〉「はっはっはっ! これは確かに良き案じゃ。南出、お主も男冥利に尽きるというものだろう?」

 

〈孝矢〉「ちょッ……周瑜さん……!」

 

〈周瑜〉「文台様のお決めになったことだ」

 

〈孝矢〉「決まったの!? オレの意思は!?」

 

〈タイタス〉『そ、孫堅殿! 頼み入れたのはこちらですが、いくら何でもそれは飛躍しすぎ……!』

 

 こんなぶっ飛んだ提案なのに、女たちは受け入れ気味。ただ一人タイタスだけが反対するありさまだったが、

 

〈孫堅〉「うらぁああっ! まどろっこしいこと言ってんじゃねぇえっ!!」

 

〈孝矢〉「はひッ!?」

 

〈孫堅〉「貴様らはオレの下でタダ飯を食らう気かっ!?」

 

〈タイタス〉『ですから、天の御遣いとしてお役に立つと……!』

 

〈孫堅〉「それでは足りぬと申しただろうがっ! それともあれか、己が省かれたのが不満なのか。だが生憎、小さい貴様では女を満足させられそうにないのでな」

 

〈タイタス〉『なッ……下品すぎるッ!』

 

 絶句するタイタス。こーいう話に弱えぇみてぇだな……。

 見れば、孫策は何か怖い笑顔でこっち見てて、黄蓋は相変わらず大笑い。周瑜はあきらめ気味だ。孫堅の普段がどんな感じなのかが窺える……。

 

〈孫策〉「さっ、どうする? 孫呉の種馬として働くか、路頭に迷うか……好きな方を選んで♪」

 

 これってあれか。オレ、脅されてんのか……。

 

〈周瑜〉「どうするのだ? 早く決めろ」

 

〈孝矢〉「そ、そりゃあ路頭に迷うのは嫌に決まってるし……まぁ、オレも男だし? 嬉しくねぇって言ったら嘘になるけど……」

 

〈孫堅〉「おう! それでこそ男だ!」

 

 いや、ここで一も二もなくがっつく方が男としてどうかと思う。

 

〈孝矢〉「タイタスもいいか? これで……」

 

〈タイタス〉『むぅ……仕方ないか。あまり強くも言えんからな……。ただし! 無理強いはいかんぞ! 男女の関係は、清い交際を経て同意の上で築きなさい!』

 

〈孫堅〉「いいやっ! 手当たり次第に突っ込め! 何なら、この場で伯符を孕ませたって構わねぇぞっ!」

 

〈タイタス〉『孫堅殿ッ! あなたはそれでも人の親ですかッ!』

 

 何だこのやり取り……男女逆だろ……。いや、男が言ってたらもっとやべぇか。

 

〈孫策〉「私だってそれは嫌よ! もう、母様ったら……」

 

 孫策も突っぱねたが……オレに身体を寄せると耳元に囁いた。

 

〈孫策〉「だけど……二人きりの時ならね?」

 

〈孝矢〉「ッ……!?」

 

 い、今の過激すぎんだろ……。鼻血出そうだ……。

 

〈孫策〉「あはっ♪」

 

 どこまで本気なんだ……。まぁ、孫堅は完全に本気みてぇだが……。

 

〈周瑜〉「私も、手当たり次第というのは賛同できませんな。風紀が乱れます」

 

〈黄蓋〉「そうだな。南出、気に入った女子がおれば、タイタス殿の言う通り、ちゃんと口説いてその気にさせるのじゃ」

 

〈孫策〉「ええ。その気にさせて……相手が承知したら、その先はもう何をしたって構わないからね♪」

 

 何でそんなノリノリなんだ……。服の肌色面積がそろってでけぇし、これが肉食系って奴なのか……?

 

〈周瑜〉「文台様、よろしいですね?」

 

〈孫堅〉「ふん、まぁいいだろう。だが、チマチマしてるんじゃねぇぞ? とっととタネをバラ撒いて、孫呉の女どもに貴様のガキを産ませろ!」

 

〈孝矢〉「……分かりやした」

 

〈タイタス〉『はぁ……おかしなことになったものだ……』

 

 そりゃオレが言いてぇ。

 

〈孫策〉「孝矢、タイタス。これであなたたちは孫呉の一員よ」

 

 話に区切りがついたところで、孫策がオレに向き直った。

 

〈孫策〉「もう一度、自己紹介をするわ。姓は孫、名は策、字は伯符。真名は雪蓮よ」

 

 ん? 最後、何つった? まな……?

 

〈孫堅〉「気の早いこった」

 

〈黄蓋〉「もう真名までお許しになるか」

 

〈雪蓮〉「だって、いつか身体を重ねるかもしれない相手だもの。それぐらい特別扱いしてあげないとね♪」

 

〈孝矢〉「あのー……まなって何すか?」

 

〈周瑜〉「真の名と書いて真名と呼ぶ。私たちの誇り、生き様が詰まっている神聖な名前のことだ」

 

〈黄蓋〉「己が認めた相手、心を許した相手……そういった者だけに、呼ぶことを許す大切な名前じゃ」

 

〈雪蓮〉「他者の名前を知っていても、その者が許さなければ呼んではいけない。そういう名前」

 

 はー……んな大層なもんがあんのか。それを、子供作れって言われたからって、会ったばっかのオレに教えてくれんのか……。

 

〈孝矢〉「何か、緊張すんな……」

 

〈孫堅〉「んん? 何故だ?」

 

〈孝矢〉「だって、オレのこと認めてくれたってことでしょ? だったら、その気持ちに応えねーと。オレぁ不義理が嫌いなんすよ」

 

〈周瑜〉「ほう……」

 

〈孫堅〉「ククっ。そういうところは愚昧ではないようだな」

 

〈タイタス〉『確かに……芯は軽薄ではない。君を選んだのは間違いではないみたいだ』

 

 何か、周りのオレを見る目が変わった。ここで初めて、南出孝矢っていう人間として認められたような感じだ。

 

〈雪蓮〉「孝矢、これからもよろしくね」

 

〈孝矢〉「あ、ああ。えーっと……雪蓮」

 

〈周瑜〉「雪蓮が真名を許したならば、私からも預けよう。私の真名は冥琳だ。……南出、我が信頼を裏切るなよ?」

 

〈孝矢〉「分かった。よろしくな、冥琳」

 

〈冥琳〉「ああ」

 

〈黄蓋〉「儂の真名は祭じゃ。よく覚えておけ」

 

〈孝矢〉「よろしく、祭さん」

 

〈祭〉「応。よろしくしてやろう」

 

〈孫堅〉「オレも預けてやろう。我が真名は炎蓮だ。分かったな?」

 

〈孝矢〉「は、はい。炎蓮さん」

 

 一人の人間に四つも名前か……。覚えんの大変そうだが、信じて教えてくれたからには、ちゃんと覚えねぇとな。

 

〈炎蓮〉「オレにはそこの雪蓮の他にも、二人娘がいるのだが、今は役目で建業を離れていてな。まぁいずれ紹介する」

 

〈祭〉「そういえば、張昭がおらんのう?」

 

〈雪蓮〉「昨日戻ってきた時には、もうお城にいなかったわね? 母様、張昭はどうしたの?」

 

〈炎蓮〉「婆なら腰が痛むと言って、昨夜は屋敷に戻ったわ。先ほどの騒ぎで、無理を押して城に出てこんといいのだがな」

 

〈雪蓮〉「お年ねー」

 

〈祭〉「はははははっ!」

 

〈炎蓮〉「他の重臣どもも、近い内に紹介してやる」

 

〈孝矢〉「よろしくお願いします」

 

〈炎蓮〉「冥琳、他には何があったか」

 

〈冥琳〉「それならば……」

 

 冥琳が何か言いかけたが……それをさえぎるように、ぐぅぅぅ~……とオレの腹の虫が鳴いた。

 

〈孝矢〉「あ……」

 

 そういや、起きてから何も食ってなかったな……。ウルトラマンに変身したりもしたしなぁ……。

 

〈炎蓮〉「ふはっ! ははははっ!」

 

〈祭〉「ははっ、孺子め。炎蓮様の御前で、腹を鳴らすとはな?」

 

〈冥琳〉「ふふふっ、大した度胸だ」

 

〈孝矢〉「すんません……」

 

〈雪蓮〉「まーまー、しょうがないわよ。孝矢、昨日から何も食べてないんだから♪」

 

〈炎蓮〉「よかろう。ならばこれからメシだ! 天の御遣い殿に、長江の美味を振る舞ってやれっ!」

 

〈冥琳〉「はっ、承知しました」

 

〈雪蓮〉「さっ、孝矢。いらっしゃい」

 

〈孝矢〉「ありがとう」

 

 雪蓮に連れられて、扉をくぐって外に出てく。その道中でタイタスがオレに呼びかけた。

 

〈タイタス〉『まだ気になることはあるが、それは次の機会にしよう。孝矢君、いや、孝矢、改めてこれからよろしく頼むぞ』

 

〈孝矢〉「ああ。こっちこそな、タイタス」

 

 女ばっかの三国志の世界で、オレがウルトラマン……。字にするとやっぱ信じられねぇ気分になるけど、この腹の減り具合は現実だ。なら、ここで生きてく他はねぇぜ。

 そーいや……一刀と鎗輔は結局どーなったんだろうな。少なくとも、ここにはいねーみてぇだが……もしかしたら、どっか別の場所にいるのかもな。

 そして今のオレと同じように、この世界の空を見上げてるのかもしれねぇ。

 




 
ウルトラマンタイタス

身長:55m
体重:5万t
年齢:9千歳
飛行速度:マッハ7
走行速度:マッハ1.5
水中速度:130ノット
地中速度:マッハ0.7
ジャンプ力:500m
腕力:15万t
握力:9万6千t

惑星U40の、栄えある勇者の一人。豊富な知識に通じた頭脳と、屈強なる肉体を両立するその姿を、人は『力の賢者』と呼んで称える。鍛え抜かれたボディから繰り出される肉弾攻撃は、並みの怪獣ならばひとたまりもないぞ。
 元々はタイガ、フーマとチーム『トライスクワッド』を組んでいた。南出孝矢のバディ兼、孫呉の婿に迎えられた彼の後見人となったんだ。

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