奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

25 / 113
孫呉の王と家臣たち!!

 

「たーかや♪」

 

〈孝矢〉「ぐぅ……」

 

「あら? まだ寝てるの?」

 

〈孝矢〉「うぅ……炎蓮さん、勘弁してくれ……もう食えねぇって……」

 

「あらあら……夢の中でまで母様にいじめられてるなんて。孝矢、起きなさいよ。もう朝よー」

 

〈孝矢〉「うぅ~ん……みんな戻るな、三塁アウトにしてねぇ……」

 

「もう、どんな夢見てるの? 孝矢ってば!」

 

〈孝矢〉「んん……?」

 

 誰かに呼ばれる声がして、うっすらと目を開けると……。

 見えたのは、文字通り目が覚めるような美人の顔だった。

 

〈雪蓮〉「起きた?」

 

〈孝矢〉「へ……!? 何で男子寮に、女がいるんだ……!?」

 

〈雪蓮〉「何言ってるのよ。まさか、昨日のこと全部忘れちゃったんじゃないわよね?」

 

〈孝矢〉「昨日のこと……?」

 

 と言われて、記憶をたどり――自分が置かれた状況を思い出した。

 

〈孝矢〉「あ、あーあー……! 大丈夫大丈夫、ちゃんと覚えてるぜ」

 

〈雪蓮〉「本当に?」

 

 昨日までのことを頭の中で整理する。始まりは歴史資料館……そこで銅鏡に吸い込まれるなんて異常が起きたと思ったら、目が覚めたら全然知らねー世界。そこは何と、三国志の武将が女になってる世界で、オレの到来は天の御遣いとかいう存在として予言されてた。そしてオレを拾ったのが、炎蓮さんがトップを務める呉の国。そこでオレは……天の血を孫呉に入れるっていう名目で、子作りを命じられたんだよな……。元の世界じゃ彼女欲しいと思ってたが、まさか一足飛びで子供こさえるのに励めなんて言われることになるとは思わなかった……。

 そうそう、忘れちゃいけねーのが一つ。この世界でオレに出来た、最初の仲間。それは人間じゃねぇ。元の世界だと、単なるフィクションでしかなかった……。

 

〈タイタス〉『フッ、フッ……おはよう、孝矢。早く顔を洗うといい。気持ちのいい朝だぞ……フッ、フッ……!』

 

 このウルトラマンタイタスだ。オレと一緒にこの世界に来ちまったという。しかもどーしてか今は小人サイズ。自分一人じゃ元々の姿に戻れなくなってるそうで、オレが一緒になって変身するようになったんだ。正直言って、見知らぬ土地で同じ立場の奴が側にいるってのは安心するが……。

 何でさっきから腕立て伏せしてんだ?

 

〈タイタス〉『しかし、昨日は災難だったな……。君は炎蓮殿に無理矢理酒を勧められて、そのまま酔い潰れてしまったのだぞ』

 

〈孝矢〉「ああ……そんで昼メシから先の記憶がねーのか」

 

 食事はかなり美味かったけどな。あんな本格中華、食ったことなんか一度もねぇってぐれぇ! けど、オレがあんなに酒に弱えぇってのは自分でも知らなかった。二十歳未満だからな。

 

〈タイタス〉『現代ならば、あれはアルコールハラスメントになるのだがな』

 

〈雪蓮〉「はらす?」

 

〈孝矢〉「よくそんな言葉知ってんなー」

 

〈タイタス〉『私のウルトラマンの先輩が、地球で戦っていたからな。私自身、つい先日まで地球で活動していた。そこで勉強したのだ……!』

 

 今時は、ウルトラマンも時事ネタに詳しいもんなんだな。しかし、しゃべるのか腕立て伏せするのかどっちかにしてくれ。

 

〈孝矢〉「しっかし、なら随分と寝たもんだ。もう日付変わってんだろ? その間ずっとたぁ」

 

〈タイタス〉『突然環境が全く異なる世界に放り出されたのだ。知らぬ内に身体に疲労が溜まっていたのだろう。精神的にもな』

 

〈雪蓮〉「あら? 精神的に疲れるようなことなんてあったかしら」

 

〈タイタス〉『よく言う……』

 

 全く……。国推奨で子作りなんざ、今でも冗談としか思えねぇ。

 

〈孝矢〉「けど、ずっと寝てたとはいえ……早すぎじゃねーか? まだ日が昇ったばっかじゃんか」

 

 窓の外から見える太陽は、完全に昇り切ってもなかった。タイタスたちの言葉がなかったら、夕暮れと間違えてそうな空模様だ。

 

〈雪蓮〉「孫家の朝は早いのよ。お腹は空いてる?」

 

〈孝矢〉「まー、半日は食ってねーことになるからな。朝メシ食わせてもらえんのか?」

 

〈雪蓮〉「もちろん。朝食は昨日と同じ部屋に用意してあるからね? 済んだら、謁見の間まで来て」

 

〈孝矢〉「分かった」

 

〈雪蓮〉「じゃあねー」

 

 オレに指示すると、雪蓮はすぐに部屋を出てった。昨日、国の一員として認めてもらたから、城ん中は自由に行動していいみてぇだ。

 

〈タイタス〉『朝食は一日の活力の源だ。しっかりと食べなさい』

 

〈孝矢〉「おう。けど、そーいうタイタスは何も食わねーのか? 昨日だって、何も食ってなかったよな」

 

〈タイタス〉『ウルトラマンのエネルギー源は光だ。とはいえ、食物を摂取できない訳ではないが、今のこの身体ではな……』

 

〈孝矢〉「そいつぁ残念だな。早く元に戻れるといいな」

 

〈タイタス〉『うむ、ありがとう』

 

 話し合いながら、タイタスを肩に乗せて部屋から出てく。

 外の廊下や窓から見える街並みは、当然ながらこれぞ中華って雰囲気だ。何より空気がめっちゃ澄んでるし、静かだ。車なんてねーからな。マジのマジで、ここは別の世界ってことが確認できた。オレ、これからは元の世界に帰る手段が見つかるまで、この環境で生きてくのか……。

 まー先のことを考えてたってしょうがねぇぜ。今は目先のメシだ、メシ!

 

 

 

 朝メシを食い終わると、その足で雪蓮の指示通りに謁見の間にやってきた。

 

〈炎蓮〉「おう孝矢、昨日はよく眠れたか?」

 

〈孝矢〉「はい。お陰さんで」

 

〈雪蓮〉「ご飯、ちゃんと食べた?」

 

〈孝矢〉「ああ。ごっそさん」

 

 謁見の間には、もう昨日のメンバー+知らねぇ女三人が集まってた。オレは初対面の女たちの方に顔を向ける。

 一人は長い髪で大人の女っぽい雰囲気。もう一人は眼鏡掛けてて、どっかぽわ~んとした感じ。で、例に漏れず巨乳。やっぱ、食事に何か秘密が……。

 ただ、三人目は飛び抜けて小っさい。つかどー見ても子供だ。妙に気難しい面してるが、何で子供がいるんだ? まぁオレがとやかく言うことじゃねぇだろうけど。

 そういや昨日、張昭っつぅ婆さんがいるとか言ってたが、それらしい人はいねーな。腰が悪いらしいし、療養中か?

 

〈炎蓮〉「孝矢、何をしている? 近う」

 

〈孝矢〉「あッ、はい」

 

 呼ばれて、とりあえず炎蓮さんの家来たちの隅に並ぼうとした。

 

〈炎蓮〉「そこではない。もっと近う。オレの前まで来い」

 

〈孝矢〉「は、はい……」

 

 いいのか? ってか、みんなの前に立つと余計緊張すんだが……。別に物怖じする性格じゃねーけど、こーして見たらそろいもそろって美女。こんな経験、今まで一度だってねーからな……。

 ともかく言われた通りにすると、オレを一瞥した子供が腕組みしながら口を開いた。

 

〈???〉「これが天の御遣いとやらか? 話に聞いた通り、奇妙な小人を連れておるが、それらしい神気は微塵も感じぬ」

 

 何か、じじむさい口調だな……。ってか子供に失礼なこと言われた。誰なんだこいつ?

 次にオレの感想を言ったのは大人の女っぽい人だ。

 

〈???〉「でも、目つきがなかなか可愛らしいじゃない。私好みよ」

 

 ま、マジかよ……。目が可愛いとか言われたことねーぞ。逆なら何度でもあるが。

 

〈???〉「はい~。仲良くできそうですね~♪」

 

 眼鏡の女は、口調もぽわ~んとしてた。この人は、あんま軍人って感じはしねーが……。

 

〈炎蓮〉「よし、これでそろったな。評定を始める前に、まずは貴様らに紹介する」

 

 玉座の炎蓮さんが、最初にオレとタイタスのことを紹介した。

 

〈炎蓮〉「この孺子たちが先日この地に流れた星に乗って舞い降りた天の御遣い、南出孝矢とウルトラマンタイタスだ。こやつらが昨日の、怪物を討ち取った巨人へと変化する」

 

〈???〉「ということは、この人は御仏様なんですか~? 崇めなくちゃいけないでしょうか~」

 

 眼鏡の女が首を傾げると、炎蓮さんが呆れたように顔をしかめた。

 

〈炎蓮〉「莫迦を申すな。こやつらがこの地に降りたのは、天がオレを頼ってきたためだ。つまり、位はオレの方が上だ」

 

 い、言い切った……天が自分を頼ったって……。何つぅ自信……けど、有無を言わせぬ説得力が炎蓮さんにはあるぜ……。

 

〈炎蓮〉「既に孺子たちと話はついている。これから先、我が孫呉が飛躍するためにも、こやつらの存在を最大限に利用する!」

 

〈???〉「ふむ……如何に利用なさいますか?」

 

〈炎蓮〉「雪蓮たちにはもう申したが、天の御遣いの血を孫呉に入れるのだ。天下にもそれを喧伝し、我が追い風の一つと致す!」

 

 血を入れる……まぁつまり子作りのことが指摘されると、タイタスが頭痛そうに眉間を抑えた。理解はしても、納得はしてねーって奴だな。

 

〈???〉「……お考えは分かります。されど、この者が天の御遣いだと、如何に諸侯に信じさせるのですか?」

 

〈雪蓮〉「と言うと?」

 

〈???〉「確かに奇抜な出で立ちじゃが、それを除けば、どうということのない普通の若者ではないか」

 

〈???〉「それはそうね。この、南出孝矢くん? 巨人になると言っても、今の彼は私たちと同じ、人にしか見えないわ」

 

〈???〉「うむ。間近で見る我らでも、そう感じるのじゃ。天下の諸侯がその風評を鵜呑みにするとは思えん。いちいち巨人になるところを見せるのか?」

 

〈炎蓮〉「ふっ。おい孝矢、お前は言われっぱなしか?」

 

〈孝矢〉「あッ、えーと……」

 

 自分は天の御遣いだと、自分で証明しろってことか? 炎蓮さんの意図を読んで言いかけるが、その前に冥琳が口を挟んだ。

 

〈冥琳〉「まぁその前に紹介しておこう。まずはそちらの方が、宿将の張昭子布殿だ」

 

 と紹介される子供。……えッ!?

 

〈孝矢〉「この人が張昭!? 昨日、炎蓮さんが婆とか言ってなかったっけ!?」

 

〈張昭〉「孺子、何が言いたいのじゃ」

 

〈孝矢〉「あッ……あーいや、別に……」

 

 マジかよ……。今の今まで、子供だとばかり思ってたぞ……。確かに雰囲気は一番歳食ってる感じだが……一体何歳なんだ?

 大人の女と眼鏡の女が自分たちで名乗った。

 

〈程普〉「私は程普徳謀よ」

 

〈陸遜〉「陸遜伯言です~。お見知りおきを~♪」

 

〈孝矢〉「どーも。で、えーと、オレが天の御遣いだって証明しろってことっすよね。じゃあ……」

 

 これ以上張昭にツッコまれねぇように、話の路線を戻した。で、昨日と同じようにスマホのカメラ機能で、張昭を撮ってみせる。

 

〈孝矢〉「これでどーだ!」

 

〈張昭〉「! ……これは、わしか」

 

〈陸遜〉「うわわっ! すごいです~! ねえねえ孝矢さん、これってどういう仕組みですかぁ?」

 

〈程普〉「へー」

 

 やっぱ、これ見せるとここの人たちは大分驚くぜ。

 

〈程普〉「これって妖術?」

 

〈孝矢〉「いんや。こいつは、えーっと……自画像を一瞬で作る機械だ。こんなの、こっちの世界にゃねぇっしょ?」

 

 昨日のタイタスの説明をまんま口にする。オレの言葉で言っても、伝わんねーかもしんねーし……。

 

〈程普〉「機械なの? 天の世界から持ってきたの?」

 

〈孝矢〉「まーね」

 

〈張昭〉「むむ……何という精巧な絵じゃ」

 

〈陸遜〉「うふふ~、こうして見ると、本当に可愛らしいですね~♪」

 

〈張昭〉「たわけがっ!」

 

〈陸遜〉「いたっ!? ひどい~……」

 

 張昭にポカッと叩かれる陸遜。見た目的には、立場逆なんだがな……。

 

〈張昭〉「理解不能じゃ。一体どうすれば、かような板のみで肖像画を描ける? 筆も墨汁もなく……」

 

〈冥琳〉「天の世界だと、当たり前にある技術だそうですよ?」

 

〈張昭〉「むぅ……確かに珍しいが、これだけではの」

 

 まだごねる張昭。しつけぇなぁ。

 

〈冥琳〉「南出。お未来から来たということは、これから起きることを既に知っているのではないか?」

 

〈孝矢〉「えッ? あー……まぁ、一応」

 

〈張昭〉「何と!」

 

 とりあえず肯定するが……オレの三国志知識はゲームからで、それも全部覚えてるって訳じゃねーから、あんま突っ込んでもらいたくはねぇんだけどな……。

 

〈孝矢〉「あー……何か言った方がいいっすか?」

 

〈炎蓮〉「いいや。細かいことはこれから聞くことがあるかもしれんが、先のことが何もかも分かってはつまらん。特に、人の生死に関わることは絶対に言うな」

 

 ほッ……。

 

〈炎蓮〉「もう十分だろう。婆はまだ信じられんか?」

 

〈張昭〉「……先ほども申しましたが、如何にして諸侯に天の御遣いを信じさせ、風評を広めるのか。わしが案じておるのは、その点にございまする」

 

〈炎蓮〉「左様な風評は後から勝手について参る。孝矢が励んで、タネをバラ撒いている内にな」

 

〈張昭〉「品の無い!」

 

〈炎蓮〉「まずは貴様らが信じることが肝要なのだ。どうだ、婆? 孝矢が……オレが信じられんか?」

 

〈張昭〉「……初めから、炎蓮様を疑ってなどおりませぬ。まぁ、そういうことでござれば……」

 

 炎蓮さんが念押しして、張昭はやっと引っ込んだ。炎蓮さんはやっぱ、トップだけあって、ここぞというとこで強く信頼されてるみてぇだ。

 

〈炎蓮〉「おう、分かったか」

 

〈張昭〉「ただ! それではまるでお飾りじゃ。怪物を征伐すると言っても、平時には役立たぬような者を養う余裕など、今の孫呉にはありませぬぞ?」

 

〈炎蓮〉「分かっておる。孝矢も種馬の役目だけじゃあ、それはそれで身が持たんだろう?」

 

〈孝矢〉「じゃあ……オレに何をしろと?」

 

〈炎蓮〉「いずれは戦場にも立たせる」

 

 えッ、戦場!? 驚くオレの一方で、タイタスもピクリと肩を震わした。

 

〈雪蓮〉「ええ。天の御遣いとして、兵の発揚には役立ってもらわないとねー」

 

〈孝矢〉「けど、オレ喧嘩ならともかく、戦争の経験なんてねぇよ……」

 

〈祭〉「昨日はあれほど勇ましく戦っておったではないか」

 

〈孝矢〉「いやぁ、あれやったのタイタスだし……」

 

 と言ってると、ここでタイタスが発言した。

 

〈タイタス〉『先に言っておきますが、私は怪獣とは戦いますが、人間相手の争い……特に、戦の力にはなりません。口出しもしません』

 

〈炎蓮〉「ほう。何故だ?」

 

〈タイタス〉『禁じられているからです。私が力になれるのは、あくまで皆さんの手に余る超常の存在が相手の時のみ。そこをお忘れなきようお願いしたい』

 

 きっぱり言うタイタス。まぁ、ヒーローって戦争はしないもんだからな。

 

〈炎蓮〉「まぁ構わん。一人に頼り切っていては、兵たちがだらける。しかしそうなると、戦場に立つのは孝矢のみとなるが」

 

〈孝矢〉「だから、オレは経験ないって……」

 

〈祭〉「案ずるな。鍛錬なら儂がたっぷりしてやろう」

 

〈程普〉「私も、いつでも相手をしてあげるわよ?」

 

〈雪蓮〉「私だって♪」

 

〈炎蓮〉「応。叩き込んでやれ!」

 

 何とも体育会系なノリの人たち……オレも体育会系だけどよ。

 

〈張昭〉「ふむ。ろくに剣も握れぬなど、左様な軟弱者の居場所などこの孫家にはない」

 

〈孝矢〉「頑張ります……」

 

 マジでオレ、戦場に立つの? けど、ただ置いてもらうってのも忍びねぇしな……。役立てることは役に立ってかねぇと。男だからな。

 

〈程普〉「怖がらなくても大丈夫よ。困ったこと、分からないことがあったら、何でも私に相談してね?」

 

〈孝矢〉「あ、ありがとうございます。程普さん」

 

〈程普〉「粋怜よ。素敵な真名でしょ?」

 

〈孝矢〉「え……」

 

〈陸遜〉「わたしは穏と申します~♪」

 

〈張昭〉「ふん……雷火じゃ」

 

〈孝矢〉「は、はい。よろしくお願いしやす」

 

 新しい人たちからも真名を教えてもらった。この人たちからも、仲間って認めてもらえたってことか。更にプレッシャーも感じるが……。

 

〈雷火〉「時に炎蓮様、天の御遣いについて一つ、気になることがございまする」

 

〈炎蓮〉「何だ雷火よ」

 

〈雷火〉「この南出孝矢、星が運んできたと聞きましたが、先日の流星は三つでした。となると、北と東に流れた二つにもそれぞれ、天の御遣いが乗っていたのでは?」

 

 何! 天の御遣いって他にもいんのか! それってもしかして……。

 

〈祭〉「ほう。南出とは別の御遣いか……」

 

〈雪蓮〉「孝矢とタイタスは心当たりない?」

 

〈孝矢〉「ある。オレぁここに来る前、二人ツレがいてな。オレ以外にこの世界に来た奴がいるってぇなら、多分そいつらだと思う」

 

 その詳しい経緯は、恥ずかしいから黙っとこ。

 

〈タイタス〉『私にも、二人の仲間がいる。私はトライスクワッドという三人組を組んでいたのだが、その二人が行方不明だ。他の天の御遣いが私たちと同様なら、あの二人も現在この大陸のどこかにいると考えられる』

 

〈粋怜〉「へぇ……まだ確定じゃないけれど、三人の天の御遣いね」

 

〈穏〉「その人たちも、孝矢さんたちみたいに誰かを頼ってるのかもしれませんね~」

 

 穏は名前通りのんきなことを言ったが、

 

〈炎蓮〉「気に食わんのはそこだっ!」

 

 おわッ!? 炎蓮さんが急に大声出すんでびっくりした……。

 

〈炎蓮〉「天め、この孫文台に泣きついておいて、三人もいる天の御遣いを一人だけしか寄越さんだと? よもや、オレに並び立つような者が他にいるとでもいうのか!」

 

 何か怒ってるぜ……。炎蓮さん、如何にもプライド高そうだからなー。

 

〈冥琳〉「炎蓮様に並び立つ……。南出、未来を知る者として、いずれこの大陸で頭角を現す者に覚えはないだろうか?」

 

〈孝矢〉「そーだな……」

 

 ちょっと考えたが、これって考えるまでもねーかもな。だって、呉と並ぶ勢力っつったら決まってるしよ。

 

〈孝矢〉「やっぱ、劉備と曹操かな」

 

〈炎蓮〉「ほう、曹操か」

 

〈雪蓮〉「誰なのそれ?」

 

〈炎蓮〉「大宦官、曹騰の孫よ。劉備というのは知らんな……。劉姓ということは、天子様の御一族か?」

 

〈孝矢〉「らしいっすよ」

 

 実際どうなんかは知らねーけど。

 

〈炎蓮〉「ふむ、他の天の御遣いはそやつらの下にいる可能性が高いということか……」

 

〈雷火〉「炎蓮様、何をお考えか。まさか……」

 

〈炎蓮〉「そのまさかよ。いずれは天の御遣いを全員、この孫呉に引き入れてくれよう! 真の英傑は我が孫家の血筋だと、優柔不断な天に知らしめてやるのだ!」

 

 マジっすか!? 欲張りっつぅか、怖いもの知らずっつぅか……。炎蓮さんは豪快な人だぜ。

 

〈雪蓮〉「母様、本気なの!? まだいるかどうかも決まってないのに……」

 

〈炎蓮〉「いずれと言ったであろうが。曹一門の居城は苑州の陳留、ここからだとちと遠い。劉備とやらはどこにいるかも知れん」

 

 劉備、かなりあちこち転々とするしなー。捜すだけでひと苦労だろうな。

 

〈炎蓮〉「今の足下もおぼつかない孫呉に、左様な遠征をするだけの余裕はない。まずは地盤を固めねばな。覇道を踏み出すのはそれからだ」

 

〈雪蓮〉「分かったわ」

 

〈炎蓮〉「いささか長くなったが、天の御遣いの話はここまでとする。では冥琳、始めろ」

 

〈冥琳〉「はっ、それでは評定に移ります」

 

 炎蓮さんの指示で、冥琳が司会をする評定――会議みてぇなもんだな。そいつが始まった。オレには全く分かんねー話ばっかだったが……。

 しかし、そうか……。一刀と鎗輔、ついでにタイタスの仲間もこの世界のどっかにいるってのか。すぐには会えそうにねーが……なるべく早く、あいつらと再会してぇな。そん時のためにも、しっかり頑張ってここで生き抜いてかねーとな!

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。