「ハッ!」
「キイイィィィ!」
俺が変身した赤と銀の、角を生やした巨人――ウルトラマンタイガが、左手を反り返らせ、右腕を前に伸ばした独特の構え――昔テレビで見たことがあるウルトラマンタロウと同じ構えを取って、怪獣アストロモンスと対峙した。
タイガと一体化してる俺は、今の自分の状態を確認して大興奮!
〈一刀〉『「す、すごい! 俺、ほんとにウルトラマンになってる! 地面が遠い! 夢みたいだ!」』
〈タイガ〉『ちょっと落ち着いてな! これから激しく動くからな!』
注意されてしまった。一方で、地面にはさっきの劉備ちゃんたち三人の姿が見える。今は豆粒ほどの大きさに感じる。
〈劉備〉「わぁー!? 見て見て二人とも! お兄さんが、銀色の巨人になっちゃった! すっごいピカピカしてる!」
〈関羽〉「まさか、本当に天の御遣い……!?」
〈張飛〉「かっこいーのだー!」
三人とも、タイガの姿にすっかり釘づけだ! まぁそりゃ驚くよね!
「キイイィィィ!」
なんてことをしてる内に、アストロモンスが腕の鞭を振るって先制攻撃してきた。
「ハッ!」
それをタイガはバク転で回避。するとアストロモンスは腹の大きな花から霧のようなものを噴射してきた。それに触れた岩や地面がドロドロに溶けていくので、劉備ちゃんたちは慌てて逃げていく。
〈タイガ〉『くッ、溶解液か……!』
毒づきながら後退するタイガ。これじゃ迂闊に近づけないぞ!
するとタイガは左腕を縦、右腕を横にして十字を組む。
〈タイガ〉『スワローバレット!』
その腕から光弾が乱射され、アストロモンスの顔面を撃ってひるませた。
「キイイィィィ!」
すごい! 腕から光線が出た! 本当の本当にウルトラマンなんだな!
「ウオオオオッ!」
溶解液が途切れたところですかさずタイガが前に飛び出し、飛び蹴りを食らわせた。
「テヤァァッ!」
「キイイィィィ!」
ひるませながら距離を詰めたところで、パンチや後ろ回し蹴り、チョップなどを叩き込んでどんどん押していく。アストロモンスもこらえるとフックと鞭を振り回して反撃するが、タイガはその軌道を見切って巧みにいなす。
攻撃のかわし方だけでよく分かる。タイガ……かなりの場数を踏んだ戦士みたいだな……!
「フッ! イヤァッ!」
相手の動きが鈍ったところですかさず首を捕らえ、グルリと放り投げた。アストロモンスが一回転して地面に叩きつけられる。
「キイイィィィ!」
「テヤアアアァァァァァッ!」
起き上がったところに、更に腹部の花にパンチの猛ラッシュを浴びせる。アストロモンスは悶絶して大きな隙を晒した。
だがこちらも、胸のカラータイマーが赤く変色して点滅し出す。ここもテレビと同じか! ウルトラマンって、三分間しか戦えないというのは有名な話だ。
〈劉備〉「見て! 胸の丸いのがピコピコ言ってる!」
〈張飛〉「何だかあれ見てるとハラハラしてくるのだ……!」
〈関羽〉「周りに危険な状態だと報せるものかもしれないな」
すっげぇ……赤信号って古代の中国でも通じるんだ……。
カラータイマーが鳴り出したタイガは右腕を天高く掲げると、更に両手を頭上で合わせて腰にぐっと引き寄せる。すると全身に光が集まっていき、虹色に輝く。
この構え……まさかッ!
〈タイガ〉『ストリウム! ブラスターッ!』
右の拳を下から左手の平に当ててT字を作ると、腕のタイガスパークから光線が発射された! それがアストロモンスに命中!
「キイイィィィ!」
必殺光線の直撃を食らってもがき苦しむアストロモンスだが……倒れるには至らない!
〈タイガ〉『耐えたか! 父さんを苦戦させた怪獣だけある。だったら……!』
タイガはつぶやくと、俺に向かって呼びかけてきた。
〈タイガ〉『オーブレットを使うんだ!』
〈一刀〉『「オーブレット!? どうやるんだ!?」』
〈タイガ〉『さっきと同じようにタイガスパークを使えば出てくる!』
〈一刀〉『「こ、こうか!?」』
[カモン!]
再びタイガスパークのレバーを動かすと、俺の左腕の手首にリング型の飾りがついたブレスレットが装着された。腕を前に伸ばして、それにタイガスパークをかざす。
するとブレスレットから光の粒子が生じて、スパークのランプ部分に吸い込まれた。
[オーブレット、コネクトオン!]
「フッ!」
タイガの身体に一瞬、別のリング型のカラータイマーのウルトラマンの姿が重なって、さっきと同じ動作で光線の構えを取る。
〈タイガ〉『スプリーム! ブラスターッ!!』
今度は腕を中心に光の輪が広がって、より大規模な光線が発射された!
「キイイィィィ!!」
これが突き刺さったアストロモンスは、とうとう倒れて大爆発を起こした! やっつけたんだ!
〈劉備〉「やったぁぁ―――!」
〈関羽〉「何という力……! 管輅の占いは真だったか……!」
劉備ちゃんたちも喜んでると、タイガは両腕を空に向けてピンと伸ばし、そのまま飛び上がった!
「シュアッ!」
わぁッ!? 飛んでる! 俺、空を飛んでる!!
〈張飛〉「あっ……! 飛んでっちゃったのだ……」
〈関羽〉「ど、どこへ行くのだ?」
――その直後に、俺は元の姿に戻って劉備ちゃんたちの元へと走っていく。
〈一刀〉「おーい!」
声を上げながら手を振ると、劉備ちゃんたちがこちらに気づいて手を振り返した。
〈劉備〉「あっ、戻ってきたよ! おーい!」
〈関羽〉「……わざわざ戻ってくるなら、どうして一度飛び去ったのだ?」
それは言えてる。
怪獣アストロモンスを倒した後、俺たちは当初の予定通りに移動をした。ただし、今はタイガという連れが増えた。タイガと話してると周りの人が驚いてしまう、ということで、予定を少し変更し、五人で気兼ねなく話が出来るというところに向かった。
その場所というのが、ある丘を越えた先にある――。
〈劉備〉「わぁぁぁぁ……!」
辺り一面を桃色に染める、桃の園だった。
〈関羽〉「そうか……もう桃の季節か」
〈張飛〉「いい匂いもするのだ。桃、なってるかな?」
〈劉備〉「ふふっ。実がなるのはもうちょっと後かな。だから、今の時期は人が少ないんだって」
〈関羽〉「内密の話をするには打ってつけですね」
〈張飛〉「じゃあ、早くお話しと一緒にお昼ご飯にするのだ! お弁当食べたいのだ!」
俺たちは桃園の真ん中で、一旦立ち寄った街で用意してもらったお弁当を広げ、食事をしながら、中断してた話を再開した。
最初に切り出したのは、俺の肩の上に乗ってる、人形のような大きさに逆戻りしたタイガだ。
〈タイガ〉『改めて、俺はウルトラマンタイガ。M78星雲、光の国のウルトラマンで、またの名を光の勇者だ』
光の勇者……。またファンタジーにありがちな肩書きだな。だけど、さっきの戦いぶりは確かに勇者の呼び名に相応しいものだった。
〈劉備〉「えむななじゅーはちせいうん……」
〈関羽〉「全く聞いたことのない地名ですな」
〈張飛〉「つまり、お兄ちゃんと同じ天の国から来たってことなのか?」
〈一刀〉「こことは違う国なのは同じだけど、だからって同じ国じゃないさ。俺とタイガは、それぞれ別の国の生まれだ」
〈関羽〉「ふむ……。天の国にも種類があるということですね」
まぁ、光の国とかウルトラマンとかは俺の世界じゃフィクションのはずなんだけど……。けど今まさに三国志の世界、それも武将が女の子になってる世界にいるんだから、ウルトラマンが現実にいても不思議じゃないのかもな。
それにしてもこの弁当、美味いな。流石、食に関しては現代でもトップクラスの中国料理。四千年の歴史は伊達じゃないか。いやまぁ、この時代だと四千年も経ってないだろうけど。
〈劉備〉「わたしは劉備玄徳! 御遣い様たち、さっきは助けてくれてありがとうございます!」
〈張飛〉「張飛なのだ! とってもかっこよかったのだー!」
〈関羽〉「関羽雲長です。我々をお救い下さり、誠に感謝致します」
〈タイガ〉『よしてくれよぉ。弱きを助けるのがウルトラマンの使命なのさ』
〈一刀〉「俺は北郷一刀だ。さっきはごめんな、蹴っ飛ばして。まさか生きてるなんて思いもしなかったから」
〈タイガ〉『ああ、これから気をつけてくれよ』
謝罪してから、さっきから気になってたことをタイガに尋ねる。
〈一刀〉「それで……どうしてそんなに人形みたいな小さい身体なんだ? せめて、人間並みの大きさなら分かるけど」
〈タイガ〉『それが、俺にもよく分からないんだ。確かに少し前までは、諸事情で本来の肉体じゃない状態にあったけど、もう完全回復したはずなのに……』
〈一刀〉「じゃあ……どうしてあんな場所にいたんだ?」
何で資料館なんかにいたんだ、と聞いたつもりだったけど、タイガからの答えは意外な形だった。
〈タイガ〉『それもよく分からないんだよな。確か、何か強い力の波動を感知して、それを調べようとしてたところまでは覚えてるんだが……気がついたら、さっきの場所にいたって訳だ』
意識が戻ったのが、さっきの荒野……ということは、資料館にいたのは本人の意思じゃない。つまり、何者かがあそこにタイガを置いた……一体誰が?
謎に思ってる間に、話が先に進んでく。
〈関羽〉「……しかし、こうしてこの目で見てもにわかには信じられません。管輅の占いそのままの、神仏の如き力を持った巨人が、私たちの前に現れたということが」
〈劉備〉「ほんとすごい神通力だったよね! 一瞬で怪物と同じくらいに大きくなったり、かと思ったら小さくなったり、腕から光を出したり! 巨人様は、本物の仏様なんじゃないですか?」
〈タイガ〉『いいや、そういう訳じゃないさ。お嬢ちゃんたちとは大分違うけど、それでも俺たちウルトラマンは紛れもない人間だ。神様仏様の類じゃない』
へぇ、ウルトラマンも人間なのか……。まぁ確かに、神仏というにはタイガは色々と慣れ親しみがある。
〈タイガ〉『だからそんなにかしこまらなくたっていいんだぜ』
〈劉備〉「いえ、そういう訳にはいきませんよ! あなたと御遣い様は、わたしたちを導いて下さるお方なんですから!」
〈タイガ〉『御遣い? それってどういうことだ?』
事情を呑み込めてないタイガに、俺から説明する。
〈一刀〉「何でも、俺たちはこの乱れた世界を平和にするためにやってきた存在なんだって。予言にそうあったらしいぞ」
〈タイガ〉『ふーん。じゃ、俺と一刀が君たちを導くってことは、君たちも平和が望みなのか』
〈劉備〉「そうなんです! わたしたちは弱い人たちが傷つき、無念を抱いて斃れることに我慢が出来なくて、少しでも力になるために旅を続けてたんです。でも……三人だけじゃもう、何の力にもなれなくなってきてて……」
劉備たち三人が無念そうに目を伏せる。……中国大陸とひと口に言っても、超広いからな。たったの三人じゃ、国中の人間を助けようなんて土台不可能な話だ。
それに、さっきみたいな怪獣がまた出てきたら、それこそどうしようもないだろう。
〈劉備〉「でも、わたしたちはくじけたくない! だから御遣い様! 巨人様! 私たちに力を貸して下さい! あなたたちが力を貸して下されば、きっともっともっと弱い人たちを守れるって、そう思うんです!」
俺たちに真摯に頼み込んでくる劉備。そのまっすぐな瞳からは、固い意志がひしひしと伝わってくる。けど……。
〈一刀〉「タイガはともかくとして、俺も? 悪いけど、俺にはタイガみたいなすごい力はこれっぽっちもないよ。ただ他の国から来たってだけの、普通の人間なんだ。俺には人を導くなんてことは……」
タイガと自分を比較してみて、尻込みする。それを抜きにしても、俺にはクラス委員とかボランティアとかの経験すらないんだ。そんな俺に、出来ることがあるようには思えないんだが……。
〈関羽〉「いいえ。正直に言うと、あなたが流星に乗ってきた天の国の人間、その事実があるだけで良いのです」
〈一刀〉「どういうこと?」
〈関羽〉「我ら三人、憚りながらそれなりの力はある。しかし……人を惹きつけるに足る実績がない。本来ならば地道に積み上げていくものですが、大陸の状況は、私たちに猶予をくれそうにもないのです」
なるほど。三人には、黙っていても人が集まって力になってくれる、いわゆるカリスマって奴が必要なんだな。
〈一刀〉「だからこそ、天の御遣いという評判を利用して、大きく乱世に羽ばたく必要があるって訳か……」
三国志の時代なら、科学の概念は確立されてなく、霊的なものが強く信奉されてるはず。天の御遣いの評判は、劉備たちの活動の大きな後ろ盾になるだろう。
けど、その役目を担ったのがどうして俺なんだ? 何か目に見えないような大きな力が働いたとして、その力は何故俺を選んだのか。全く分からない……。
そう考えてたら、タイガが俺のことを説得した。
〈タイガ〉『いいじゃんか、一刀。頼み、聞いてやれよ』
〈一刀〉「タイガ……」
〈タイガ〉『現状、元の世界に帰る手立ても行くアテもないんだろ? 俺もそうだ。だったら、この子たちの必死な願いを聞いてやっても損はないだろ。それに、人を助けるのに一番重要なのは、どんな力があるか、じゃない。気持ちがあるかどうかだ。お前はどうだ?』
気持ちがあるかどうか、か……。もちろん、俺だって冷血漢ではないつもりだ。彼女たちの心からの願いを無碍にするなんて気にはならないし、こんな俺でも誰かを助けられるというのなら、助けてやりたい。
そうだな……考えたって分からないことを、いつまでも考えててもしょうがない。タイガの言う通り、元の世界に今すぐ帰ることは出来ないし、他に頼るものもない。天の御遣いという肩書き一つが誰かの力になれるなら、いくらでもなってやろうじゃないか!
〈一刀〉「分かった。俺で良ければ、その御輿の役目、引き受けるよ」
〈劉備〉「ほんとですかっ!?」
〈一刀〉「ああ。男に二言はないッ!」
言い切った! これでもう後戻りはなしだ!
〈タイガ〉『よく言った、一刀! じゃあこれからもお前は俺のバディ、相棒だ! タイガスパークもそのままお前のものだぜ』
〈一刀〉「いいのか? 俺が相棒で……」
〈タイガ〉『お前だって肩書きだけが取り柄より、ウルトラマンに変身できるって方が、箔がついていいだろ?』
まぁ、それはそうだ。力があるなら、それに越したことはない。
〈劉備〉「ありがとうございます、御遣い様! ……それなら、なんですけど……」
〈一刀〉「ん? 何かあるの?」
〈劉備〉「はい。えっと……御遣い様のこと……ご主人様って呼んでも、いいですか?」
うん……うん?
〈一刀〉「ご主人様ぁ!? 何でご主人様!?」
〈劉備〉「それはもちろん、わたしたちのことを導いてくれるお方なんですから、相応の呼び方じゃないと失礼ですよ。御遣い様じゃ他人行儀ですし……ダメ、ですか?」
〈一刀〉「いや……それはその、ダメじゃないけど……」
でも、ご主人様って。こんなかわいい子から、ご主人様って……。
〈張飛〉「お兄ちゃん、何だかデレデレしてるのだ」
〈タイガ〉『全くだらしない奴だな。男ならもっとシャキッとしろよ』
うるさいな、タイガ! 他人事だと思って……。
〈劉備〉「巨人様は、勇者様ですね! ご自身でそう名乗ってましたし!」
〈タイガ〉『勇者様ぁ!? い、いや確かに光の勇者を名乗ってるけど、いざ人からそう呼ばれたら恥ずかしいぞ……』
劉備の提案にしどろもどろなタイガ。ふふッ、ざまぁみろだ。
〈関羽〉「ご主人様……」
〈一刀〉「えッ!? 関羽さんもそう呼ぶの!?」
〈関羽〉「桃香様がそうすると言った以上、私も倣わねば示しがつきませんので……」
〈劉備〉「それで、ご主人様、勇者様……わたしたちのことは、真名で呼んで下さい」
〈一刀〉「真名? 真名って何?」
〈関羽〉「我らの持つ、本当の名前です。家族や親しき者にしか呼ぶことを許さない、神聖なる名……」
〈劉備〉「その名を持つ人の本質を包み込んだ言葉なの。だから親しい人以外は、たとえ知っていても口に出してはいけない本当の名前」
ああ、そういえば三人は、互いを愛紗とか鈴々とか呼んでたな……。ただのあだ名と思ったけれど、そんな深い意味がある名前だったのか。
それを許してくれるということは、それだけ俺が期待されてるってことなのかもしれない。
〈劉備〉「わたしの真名は桃香。わたしたちがご主人様って呼ぶからには、ご主人様もこっちの名前で呼んで下さいね」
〈張飛〉「鈴々は鈴々なのだ!」
〈関羽〉「我が真名は愛紗です。どうぞ遠慮なく」
三人から真名を教えてもらうと、一人ずつまっすぐに顔を見つめながら、その名を口にしていく。
〈一刀〉「じゃあ……桃香」
〈桃香〉「……うんっ」
〈一刀〉「鈴々」
〈鈴々〉「おうっ!」
〈一刀〉「……愛紗」
〈愛紗〉「はい!」
〈一刀〉「みんなの真名、預からせてもらうよ」
〈タイガ〉『しかと受け取ったぜ!』
俺とタイガが告げると、桃香は嬉しそうにはにかんだ。
〈桃香〉「じゃあ、結盟だね! この五人で頑張ろう!」
そして桃香が盃に酒を注ぎ、高々と掲げた。それに倣うように、鈴々、愛紗、俺と続いて同じく盃を掲げる。タイガは今の体格的に持つのが苦しいので、俺が代理として二つ持つ。
俺たちは口々に、誓いの言葉を紡いでいく。
〈一刀〉「我ら五人ッ!」
〈桃香〉「姓は違えども、
〈タイガ〉『共に進む場所は一つ!』
〈鈴々〉「みんなで力なき人々を救うのだ!」
〈愛紗〉「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」
〈桃香〉「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」
「「「「『乾杯!!」」」」』
桃園に響く、俺たち五人の結義の声。
これが三国志でも特に名高き、桃園の誓い。その場に、この俺が義兄弟の一人として立ち会う日が来るなんてこと、夢にも思わなかった――。
〈タイガ〉『……へへッ。何だか、トライスクワッド結成の時のことを思い出すな』
〈桃香〉「とらいすくわっど?」
盃を飲み干してからのタイガの聞き慣れない言葉に、俺たちの注目が集まる。
〈タイガ〉『俺が組んでたチーム……三人組の名称だ。俺の他に、タイタス、フーマ。三人のウルトラマンで、俺たちは色んな
〈一刀〉「……そのタイタスとフーマってのは、もしかして筋肉もりもりの赤い身体と、細身の青い身体だったりしないか?」
〈タイガ〉『おッ、何で知ってるんだ?』
やっぱり。ここに来る直前に見た、タイガ以外の二つの人形がそうだったんだ。三人組のウルトラマン……俺も、孝矢と鎗輔の後の三番目に銅鏡に吸い込まれたんだったな。
そこまで考えて――さっき聞いた予言の内容の一部が頭をよぎった。
〈一刀〉「そうだ……。天の御遣いの予言って、三筋の流星がどうとか言ってなかった?」
〈愛紗〉「天の御遣いは、三筋の流星に乗ってやってくると。管輅はそう予言したのです」
〈鈴々〉「うん。実際、昨日の夜に見た流れ星は三つだったのだ。他の二つは遠くに行っちゃったけど、最後の星が落ちたところにお兄ちゃんたちがいたのだ」
ここまでの話で、タイガが何かに気づいたようだった。
〈タイガ〉『一刀、それってもしかして……』
〈一刀〉「ああ。実は、この国に来る直前、俺はもう二人の人間と一緒にいたんだ。そいつらもきっと、俺と同じように流れ星になってどこかに落ちたんだと思う。俺と同じだとするなら……タイガの言う仲間も、多分あいつらの元にいるはずだ」
〈愛紗〉「何と! 天の御遣いが、三人もいるとは!」
〈タイガ〉『タイタスとフーマもこの世界に来てるのか! 他の流星がどっちに飛んでったか分からないか?』
〈桃香〉「一つ目は南に、二つ目は西の方に飛んでったよ。だけど、大陸は広いから……。捜そうとしても、一体どのくらいの時間が掛かるか……」
〈タイガ〉『ああいや、捜しに行きたいってことじゃない。あいつらはきっと無事だからな。丈夫な奴らだから。あいつらが一緒にいるっていうのなら、一刀、お前の連れもきっと大丈夫だぜ』
〈一刀〉「ありがとう。……みんなと一緒に大陸中の人を助ける旅をしてたら、あの二人とも再会できる時が来るかな」
〈愛紗〉「私たちと同様に、天の御遣いの評判にあずかろうという者がいれば、いずれ噂が私たちの耳にも届くでしょう。逆も然り。いずれは安否も分かることかと」
〈鈴々〉「お兄ちゃんのお友達、早く見つかるといいね!」
〈一刀〉「ああ……」
南出孝矢、東雲鎗輔。二人も、今この瞬間、俺と同じこの女の子だらけの三国志の世界の空を見上げているんだろうか。どこにいるとも知れないあいつらに思いを馳せながら、これから先の未来に待ち受ける旅路の想像を胸に描いた。
そしてこれが、本当に長く続く、俺の、俺たちの旅の始まりだった――。
ウルトラマンタイガ
身長:50m
体重:4万t
年齢:4千800歳
飛行速度:マッハ10
走行速度:マッハ2.4
水中速度:150ノット
地中速度:マッハ1.5
ジャンプ力:800m
腕力:6万t
握力:4万5千t
M78星雲・光の国の若きウルトラマン。あのウルトラ兄弟の6番目の弟・ウルトラマンタロウの息子であり、『光の勇者』の異名で呼ばれる。変身アイテムでもあるタイガスパークから発射するストリウムブラスターは強力な必殺技であり、ウルトラタイガアクセサリーを使用することで更に威力を高めることも出来るぞ。
元々はタイタス、フーマとチーム『トライスクワッド』を組んでいた。北郷一刀のバディとなって、桃香たちの大陸に平和をもたらす理想を叶える手助けをすることになったんだ。