奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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羅刹の炎蓮!!

 

 変身を解いて、オレは元の場所まで走ってく。そこでは祭さんが待ってた。

 

〈祭〉「おお、戻ったか南出。すさまじい戦いであったな。何度も揺れが襲って、立っているだけで大変じゃったぞ」

 

〈孝矢〉「悪りぃ。こっちはどうなってんだ?」

 

〈祭〉「策殿は既に城門の上へ登った。しかし……炎蓮様のお姿が、気がつけば見えなくなってしまったのじゃ」

 

〈孝矢〉「えッ、マジ!?」

 

 城門を見上げると、確かに雪蓮が賊を蹴散らしてんのは見えるが、さっきまで戦ってたはずの炎蓮さんがどこにもいねぇ。

 炎蓮さんは、どこに行っちまったんだ? あそこまでの圧倒的な強さで、まさかやられたなんてことはねぇと思うが……。

 

〈祭〉「梯子は数に限りがある。今、門を破ろうとしておるところじゃが……これがてこずっておってな……」

 

 視線を門の方に移すと、粋怜が兵士たちに命令して衝車をぶつけさせてた。

 

〈兵士〉「「「うおおおおおッ!!」」」

 

 屈強な兵士が何人も力を合わせて何度もぶつけるが、門は開く気配がねぇ。

 

〈粋怜〉「まだ破れない……!」

 

〈冥琳〉「炎蓮様が造られた城門ですから……」

 

〈粋怜〉「そうなのよねー……。もう一度よ!」

 

 頑丈に造ったのが、今は仇になっちまってる訳だ。それでもあきらめずに、衝車をぶつけ続けようとしたが、

 車を引いたとこで、門が勝手に開いた。

 

〈粋怜〉「えっ……」

 

 出てきたのは……。

 

〈炎蓮〉「おお、粋怜、冥琳。茶でも飲んでいたか? あまりに来るのが遅いので、迎えに来てやったぞ」

 

 炎蓮さんだ!

 

〈粋怜〉「……」

 

〈冥琳〉「何と……」

 

〈雪蓮〉「えええっ、母様! 何であんなところにいる訳っ!?」

 

〈祭〉「我が殿はまさに戦の化身じゃな……」

 

 マジかよ……。オレが変身した数分前までは、確かに城壁の上にいたんだぞ? それから今までの間に、門の前まで下りて、内側から開けたのか?

 ってことは……タイタスがズシンズシン地面揺らしてた間も戦い続けて、移動したって訳? 人間業じゃねぇ……。

 

〈孝矢〉「炎蓮さん、一人でどんだけの数の敵やっつけたんだ……?」

 

〈祭〉「ふ~む……数えるのが馬鹿らしくなるほど、炎蓮様は戦の度に、敵をお斬りになるからの……」

 

〈孝矢〉「あんなほっせぇ剣で、よくやるな……」

 

 意外なのは、炎蓮さんの武器だ。あんな豪快な人なのに、使う剣はかなりの細身。レイピアみてぇだ。

 

〈祭〉「あれは“南海覇王”じゃ。孫家に伝わる業物だからな」

 

〈孝矢〉「南海覇王……」

 

 炎蓮さんは、あんまりのことに呆然としてる兵士たちに喝を飛ばす。

 

〈炎蓮〉「さぁどうした! 門は開いたぞっ!」

 

〈粋怜〉「……は、はい!」

 

〈冥琳〉「よし、全軍! 城内へ突入しろっ!」

 

〈兵士〉「「「おおおおおおッッ!!」」」

 

 呉軍のみんなが門に押し寄せ、城の中に雪崩れ込んでく。オレもボサッとしてられねぇ。祭さんと一緒に、すぐに後に続いてった。

 

 

 

 戦いの場は城内に移る。そこでも先陣を切るのは、変わらず炎蓮さんだ。

 

〈炎蓮〉「るぁあああっ!!」

 

〈盗賊〉「ぎゃはぁッ!?」

 

〈盗賊〉「も、もうダメだぁーッ!!」

 

 炎蓮さんはずっと戦いっぱなしとは思えねぇほど、技のキレが落ちねぇ。対する盗賊たちは、ヘクトールを失ったのもあって、すっかり心が折れて逃げ回るばっかだ。勝敗は、もう決まったと言っていい。

 それでも最後の抵抗を見せる奴はチラホラいる。呉軍の戦いはそれの掃討に移り変わってた。

 

〈祭〉「孺子、儂から離れるでないぞ!」

 

〈孝矢〉「あ、ああ……!」

 

〈祭〉「ふっ!」

 

〈盗賊〉「ぐほぉッ!」

 

 城下町の路地や建物の中から、こっちに奇襲を仕掛けようって奴らは、祭さんの矢で次々と漏らすことなく仕留められる。

 

〈粋怜〉「進め―――っ! 敵を追い込めっ!」

 

 粋怜は的確に路地に兵を入り込ませ、残る敵を分断して各個撃破してく。

 

〈粋怜〉「最早勝敗は決した! 武器を捨てて降伏しなさいっ!」

 

〈盗賊〉「う、うるせぇッ!」

 

〈盗賊〉「こんなとこで終わってたまるかってんだぁーッ!」

 

〈粋怜〉「馬鹿ねっ! せやぁああっ!」

 

 やけっぱちになって襲ってくるような連中は、粋怜たちの敵じゃあなかった。抵抗する賊はどんどんと数を減らしてって、呉軍が瞬く間に街を制圧してく。

 日暮れまでには、市街地のほとんどを賊から奪還してた。

 

 

 

 ほとんどの奴が斬られるなり捕まるなりして、もうひと握りだけにまでとなった盗賊たちは、街の中央で呉軍に取り囲まれてた。

 

〈炎蓮〉「ふっふっ、鼠どもの隠れる場所はもうどこにも無いぞ? ここで降ると言うのなら、後々のことも考えてやるが……」

 

〈頭〉「だ、黙れッ!」

 

 盗賊の頭は、こんな状況になっても悪あがきしようとしてる。

 

〈頭〉「せっかく、あそこまで軍団を大きくしたんだ……! 大陸を手に入れるのも夢じゃなかったんだッ! 孫堅、よくも邪魔しやがって……!」

 

〈炎蓮〉「らぁあああああっ!!」

 

 だが言い切る前に、炎蓮さんの剣で、その首が飛んだ。

 

〈盗賊〉「ひいいぃぃぃぃぃッ!?」

 

〈冥琳〉「炎蓮様! そやつには、吐かせねばならぬことがありましたのに……!」

 

〈炎蓮〉「鼠風情がいつまでもキーキーうるせぇから、鳴き声を止めたまでのことよっ! さぁ、次に死にたい奴はどいつだぁっ!?」

 

〈盗賊〉「ち、ちくしょぉぉぉおおおおおおおッ! おのれ孫けぇぇぇんッ!!」

 

〈盗賊〉「その首、刈らずにいられるかああぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 目の前でボスの首が飛んで、とうとうおかしくなったか、生き残りの賊どもは無謀にも炎蓮さんに押し寄せてく。

 

〈炎蓮〉「ハハァっ! やってみろやぁあああっっ!!」

 

 そして当然、片っ端から炎蓮さんに斬られるだけの末路をたどる。

 

〈盗賊〉「ぎゃあああああッ!!」

 

 炎蓮さんが剣を振るう度に、血の雨が飛び散って――広場が、どす黒い赤と死体で埋まってく。

 

〈冥琳〉「愚かな……降伏すればいいものを」

 

〈雪蓮〉「ええ。こうなったらもう止まらないわ……母様は最後の一人まで、皆殺しにするわよ」

 

 次々と村を襲い、滅ぼしたような連中とはいえ……ここまで来ると、かわいそうにすらなってくる。そんくらい、炎蓮さんの暴力の嵐は途轍もないものだ……。オレはもう、声も出ねぇ……。

 あれが……あれが、マジモンの戦国に生きる修羅、羅刹の類か……。

 

〈盗賊〉「ま、待て! 待ってくれ!」

 

〈炎蓮〉「あああ!?」

 

〈盗賊〉「分かった、俺たちの負けだッ!」

 

〈盗賊〉「降る! あ、あんたに降るからッ……! どうか命だけは……!」

 

 とうとう残り数人になったとこで、遂に恐怖が上回ったのか、武器を捨てて命乞いを始めた。

 

〈炎蓮〉「クククっ、遅すぎるぞ虫けらが……」

 

 い、炎蓮さん……許さねぇのか……!? まさか……無抵抗な奴まで斬り捨てるんじゃあ……!!

 

〈炎蓮〉「……ふん」

 

 だがオレの予想に反して、炎蓮さんは一気に熱を失ったように、剣を鞘に納めた。

 

〈炎蓮〉「降伏を認める。冥琳、後の始末は任せた」

 

〈冥琳〉「はっ!」

 

 ひと言で冥琳に後を任せると、荒い息を整えながらここを去ってく。盗賊たちは糸が切れたように脱力し、中には失禁してる奴までいた。

 

〈粋怜〉「この戦、炎蓮様の勝利ね」

 

〈祭〉「応! 者ども、勝鬨を上げよっ!!」

 

〈兵士〉「「「おおおおおおおおッッ!!!」」」

 

 呉軍の雄叫びが夕暮れの街に響く中――オレは、現実感が感じられねぇで、ひたすら立ち尽くしてた。

 

〈タイタス〉『孝矢、気は確かか』

 

〈孝矢〉「た、タイタス……」

 

 戦いが終わってから、初めてタイタスが声を掛けてきた。

 

〈タイタス〉『凄惨な光景だったな……。正直、私の予想をも上回っていた』

 

〈孝矢〉「あ、ああ……。これが、戦争なんだな……。オレ、全然知らなかった……」

 

〈タイタス〉『それは仕方のないことだ……。今でも、君に見てもらいたくはなかったと思っている。……が、人間の歴史はこの積み重ねで築き上げられたのだ。人間を護る者は、このような世界もあるということも、知らなくてはならないのかもしれない……』

 

 この戦いには、タイタスにとっても考えさせられるものがあったのかも……そんな言葉だった。

 

〈雪蓮〉「孝矢、大丈夫?」

 

 オレのとこに、雪蓮もやってきて心配してくる。

 

〈孝矢〉「ああ……。けど炎蓮さん、最後の奴らは斬らなかったな。オレぁもうどうなるもんかと思ったが……」

 

〈雪蓮〉「そうね、私も意外だったわ。でも、相手が戦意を失ったから、きっと熱が冷めたのよ。……尋問は、生き残りの連中に行うわ」

 

〈孝矢〉「ああ……」

 

〈雪蓮〉「……初陣を終えた気分はどう?」

 

 雪蓮が気遣いように聞いてくる。

 

〈孝矢〉「……正直、吐きそうだぜ。辺り一面、血生臭せぇ……」

 

〈雪蓮〉「ふふっ、正直ね。でも、無理に己を強く見せようとしないのはいいことよ。さっきと違ってね?」

 

〈孝矢〉「やめてくれよ……」

 

 馬上でカッコつけようとしたことを思い出して、苦い顔をする。今のこれを知っちまったら、もう戦場で背伸びしようなんざ思えねぇ。

 

〈雪蓮〉「気分が優れないなら、街の外に出ていなさい。ここよりは、多少はマシよ」

 

〈孝矢〉「ああ……」

 

 雪蓮の言うことに従おうとした時に――冥琳が、オレのとこに来て言った。

 

〈冥琳〉「南出、少しいいか?」

 

〈孝矢〉「冥琳?」

 

〈雪蓮〉「孝矢に何か用?」

 

〈冥琳〉「うむ……。実は今しがた、鉄の怪物の残骸を調べていた兵たちから、奇妙な報告があってな……」

 

〈孝矢〉「報告? それが、オレと関係あんのか?」

 

〈冥琳〉「でなければ、こんな話をしていないさ。……何でも、おかしな物を残骸の中から見つけたというのだ」

 

〈孝矢〉「おかしなモンだぁ?」

 

〈冥琳〉「何と言い表せばいいものか、それすら困るというか……。ともかく、百聞は一見に如かずだ。一緒に来てくれ」

 

 冥琳にしちゃ、要領の得ねぇ話だった。気になるから、オレも雪蓮も冥琳について城の外へと出ていった。

 

 

 

 さっきタイタスが破壊したヘクトールの残骸が散らばってるとこまで来ると、兵士たちが問題のものをオレと雪蓮に見せた。

 

〈冥琳〉「これなのだ……。恐らく、怪物の中から出てきたものだから、南出とタイタスならば何か分かるかと思ってな」

 

〈孝矢〉「な……何だこりゃ?」

 

 オレは『そいつ』を見せられて、すっかり目を丸くした。

 何ていうか……赤いオコゼ? 毛むくじゃらのダルマ? 手足の生えたタワシ? そんな感じのよく分かんねぇ、生物かどうかも謎なモンが、目をつぶって座り込んでた。意識がねぇのか、微動だにもしねぇ。

 何なんだよ、こいつは。新手の怪獣か……? と訝しんでたら、タイタスが声を張り上げた。

 

〈タイタス〉『こ、これは! まさか……ピグではないか!?』

 

〈孝矢〉「あん? ピグ?」

 

 オレたちの視線がタイタスに集まる。

 

〈タイタス〉『ジョーニアスのことを話しただろう。私の大先輩の。そのジョーニアスが守護した世界に、科学警備隊という防衛組織があるのだがな……ピグは、そこで作られたロボットの第一号なのだ』

 

〈孝矢〉「え? こいつロボットなの? こんなナリで?」

 

〈雪蓮〉「ろぼっと?」

 

〈タイタス〉『精巧に出来た、自立行動する鋼鉄の人形のようなものだな。……そうか。ヘクトールは自動操縦する兵器ではないが、生き物の乗っている気配がなかったのが不思議だったが……多分、このピグが動かしていたのだろう』

 

〈孝矢〉「っておい、ちょっと待てよ。もしそうなら、何でオレたちを襲ったんだよ。賊の言いなりになってよぉ」

 

〈タイタス〉『そこは本人に聞いてみよう。ふむ……衝撃で故障してしまっているようだが、直せるだろうか……』

 

 タイタスが小人の状態になって、ピグっつぅ変てこロボットの後ろに回る。そして皮を左右に割って、中身を覗いた。

 うわッ……確かに皮の下に機械の部品が詰まってやがる。生き物じゃねぇてのは確かだ。

 

〈タイタス〉『幸い、大したことのない損傷だ。すぐに直せるぞ』

 

 で、タイタスがちょちょいと修理すると――ロボットはまぶたを開くと、ぴょんと飛び起きた。

 

〈ピグ〉「おはようございます、なんだな。科学警備隊の初代ロボットの、ピグです」

 

〈雪蓮〉「しゃべった!!」

 

 驚愕する雪蓮たち。オレもびっくらこいた。マジで動いてるよ、この変てこ……。

 

〈ピグ〉「あれ? ここはどこなんだな? あんたたちはどなた? 初めましてなんだな」

 

〈孝矢〉「お、おう……」

 

〈タイタス〉『初めまして、ロボットのピグ。私が誰か、分かるだろうか』

 

 タイタスがピグの前に出て尋ねる。

 

〈ピグ〉「その額の星……まさか、ウルトラマンなんだな?」

 

〈タイタス〉『ああ。名前はタイタス。会えて光栄だ、ピグ。君たち科学警備隊がU40を救ってくれた時、私はずっと倒れていたからね』

 

〈ピグ〉「それはそれはどうも。で、ピグは何でこんなところにいるんだな? 引退してからは、ずっとロボット博物館で余生を過ごしてたのに……」

 

 ロボットでも、余生って言うのか? 何か変な奴だな……。

 

〈タイタス〉『ここがどこなのか、話せば長くなるのだがな……』

 

 タイタスがある程度の状況を、かいつまんで説明する。ピグも驚きを見せた。……ロボットのくせに。

 

〈ピグ〉「ここは、全然違う世界の地球ぅ~!? そんなことあるのかな? 不思議なんだな、やっぱし」

 

〈タイタス〉『今度はこちらから質問させてもらおう。君の最後の記憶を聞かせてほしい』

 

〈ピグ〉「ピグ、さっき言ったように博物館で、お客さんの相手をしたりとかして、ゆっくり生活してたんだな。だけど……真夜中の内に、突然何かに掴まれるような感じがしたんだな。そんで、無理矢理頭をいじくられる感覚がして……そこから先は、全然覚えてないんだな」

 

〈タイタス〉『ふむ……どうも、何者かに電子頭脳を書き変えられて、盗賊の操り人形にされていたようだな。そうなると……ピグやヘクトールを、この世界まで盗み込んだ何者かがいるということになるが……』

 

 話がどうも不穏な方向に転がってるとこに、炎蓮さんが祭さんと粋怜を連れてやってきた。

 

〈炎蓮〉「おう冥琳、こんなところで何やってやがる。……ん? また面白そうなもんを見つけたみてぇじゃねぇか」

 

〈祭〉「何じゃ、その……何と言い表せば良いか分からんのは」

 

〈粋怜〉「孝矢くんの周りには、よくおかしなことが起こるわね」

 

〈冥琳〉「実は……」

 

 冥琳が炎蓮さんたちに、さっきまでの話を要約して説明した。

 

〈炎蓮〉「なるほど、要は天の落とし物って訳か。天というのは、存外に不注意なものなのだな、ははは」

 

〈ピグ〉「ところでピグ、これからどうなるのかな? 行くところ、ないんだけど、やっぱし」

 

〈タイタス〉『ジョーニアスの仲間だ……放っておくことは出来ん。私が面倒を見ることにしよう』

 

〈孝矢〉「っておい」

 

 タイタスの言葉をさえぎる。

 

〈孝矢〉「それって、オレにもこいつの面倒見ろってことか!? このミョーなのの!」

 

〈タイタス〉『すまないが、お願いする。このピグを助けると思って。炎蓮殿、構いませんか?』

 

〈炎蓮〉「ははっ、好きにしろ。建業もなかなか退屈しないようになりそうだ」

 

〈孝矢〉「お、おーい! オレまだやるなんて言ってねぇんだけど……!」

 

〈雪蓮〉「あら、それくらい引き受けてあげなさいよ。タイタスにはいつもお世話になってるんでしょう?」

 

〈祭〉「うむ。恩を返さなくば、男とは言えんのう」

 

〈粋怜〉「天の国の知識があるのは、ここでは孝矢くんだけだからねー。他に適任はいないわ」

 

〈孝矢〉「いや、ちょッ……!」

 

 オレの反論をまるで受けつけず、ほぼ流れで決められちまった……マジかよ……。

 

〈ピグ〉「よろしく、よろしく。ピグです。これからお世話になるんだな」

 

 ピグは何の悪気もなく、オレの袖を引いた。

 おいおい……タイムスリップしただけでもトンデモなのに、更にヘンテコロボットの面倒見ろだなんて……一体、天はオレに何を期待してるってんだよ……。

 

 

 

〈冥琳〉「時に雪蓮。南出のことなのだが……」

 

〈雪蓮〉「あら、まだ何かあるの?」

 

〈冥琳〉「これは私見なのだが……南出には存外に、軍師の才がありそうだぞ」

 

〈雪蓮〉「ええ~!? あの孝矢が、軍師ぃ!? それ、本気で言ってるの?」

 

〈冥琳〉「確かに学には大いに不安があるが……兵法の兵の字も学んだことのない男が、即興で調虎離山の計に近しいものを考え出したのだ。磨けば光る玉だと、私は見ている」

 

〈雪蓮〉「そう……? どうも私には、実感が湧かないけど……」

 

〈冥琳〉「まぁ、今の段階ではお世辞にも使い物にはならんがな。これからのあれ次第だ。とりあえずは、ただの阿呆ではないということだけ覚えておくと良い」

 

〈雪蓮〉「ほんとかしらねぇ……」

 


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