奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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これが一石二鳥!?

 

〈孝矢〉「ふんッ……! ふんッ……!」

 

 城の庭園で、オレは木材を削って作った、バットに近けぇ形の棍棒で素振りしてた。

 戦場の過酷さは、こないだの城攻めの時によーく分かった。そして思ったのが、今のまんまじゃ、あんなとこで生き抜けねぇってことだ。何があるか分かんねぇ世界だからな……じっとしてたら不安が膨らむばかりだ。

 しかし、こうやってひたすら素振りすんのも久しぶりだな。ここんとこは、タイタスに言われて勉強ばっかさせられてたから……。

 

「ふむ。筋は悪くないが……」

 

〈孝矢〉「ん?」

 

 一心不乱に素振りしてたら、後ろから急に声がした。

 振り返ったら、木陰から祭さんがオレのことを見てた。

 

〈孝矢〉「祭さん」

 

〈祭〉「すまんな。邪魔をする気はなかったのだが、つい、気になってしまってな」

 

〈孝矢〉「気になったって、何がだよ」

 

〈祭〉「いや。鍛錬としては間違ってはおらぬのだから、気にせず続ければ良い」

 

〈孝矢〉「何だよ、こっちが気になるじゃねーか。いいから言ってくれよ」

 

〈祭〉「そうか? では言わせてもらうが……」

 

 促すと、祭さんがオレにアドバイスする。

 

〈祭〉「なかなか鋭く、力強い素振りではあったが、そこまで形が出来ているのであれば、ただ闇雲に振るだけでなく、何かを見据えて振ってみるのも良いのではないか?」

 

〈孝矢〉「何かを見据えて?」

 

〈祭〉「相手や状況を想定してみろということじゃ。戦場において、十分な体勢で武器を振るえることなど、まずありはしない。それに、同時に何人も相手にしなくてはならぬこともある。そういう場面を想定して、体さばきを研究するのも大切なことじゃ」

 

〈孝矢〉「なるほどね……」

 

 野球の素振りってのは、戦うためのもんじゃねぇから、同じポーズばっかだ。確かにそんなもん、戦闘じゃ通用しねぇ。もっと実戦を想定して、動き方を身に染みつかせとくべきか。

 祭さんの意見にタイタスも同意。

 

〈タイタス〉『そうだな。孝矢は幸いに、肉体は最低限出来上がっている。私が指導するから、実戦に応用できる鍛錬を始めるのも悪くないだろう』

 

〈孝矢〉「ああ。祭さん、ありがとな」

 

〈祭〉「やれやれ。口調は粗雑なのに、妙なところで律儀というか……この程度のことで礼を言われるのは、こそばゆいのぉ」

 

〈孝矢〉「ところで、祭さんはこれから仕事か?」

 

〈祭〉「うむ。今日は我が隊の調練を少しな」

 

〈孝矢〉「祭さんの隊か……。じっくり見たことはねぇな。どんなことするんだ?」

 

〈祭〉「儂の隊は弓兵を基本に構成されておるからな。調練は遠的が主になる」

 

〈孝矢〉「えんてき?」

 

〈祭〉「簡単に言えば、遠くに的を置いて、それを撃つ練習じゃ。それから、移動した後にどれだけ早く、部隊が纏まって射撃体勢を取れるかということも試すな」

 

〈孝矢〉「へぇ~……タイタスも、そーいう訓練してたことあるのか?」

 

 不意に気に掛かった。ウルトラマンってビーム出すからな。射撃の練習は重要そうだ。

 

〈タイタス〉『もちろんだ。光線で相手を狙い撃つ訓練は、私たちにおいては基礎の基礎だ』

 

〈孝矢〉「だよな。まぁタイタスの場合は、撃つより殴りに行った方が強そうだけどな」

 

〈祭〉「はっはっ、あの肉体ならばな。まぁ、如何なる兵種であろうとも、練度はそのまま戦の勝ち負けに影響することもある。如何に士気が高く、数が多くとも、烏合の衆では一つのつまずきで戦況を覆されかねん」

 

 だよなぁ。やっぱ、日頃の練習って大事だよな。野球やってりゃ、そのことが身に染みて分かる。

 

「~♪」

 

〈孝矢〉「ん?」

 

 話し込んでたら、何か機嫌良さそうな鼻歌が近づいてきた。

 

〈祭〉「おう。穏ではないか」

 

〈穏〉「あ、祭さま~。それに孝矢さんも~」

 

 鼻歌の主は穏だ。名前を呼ばれて、パタパタとこっちに来る。

 

〈穏〉「ご一緒で何してたんです~? もしかして、祭さまが、孝矢さんをいじめてたとか~?」

 

〈祭〉「人聞きの悪い……どうして儂が南出をいじめねばならんのだ? 素振りや調練について、少し教示をしてやっていただけじゃよ。のう、南出?」

 

 バッシィッ!

 

〈孝矢〉「いっでッ!?」

 

 祭さんの背中を叩かれて、思わずのけ反るオレ。

 

〈孝矢〉「ちょッ、祭さん、力強すぎだぜ……」

 

〈祭〉「軽く叩いただけで、何を情けないことを。男じゃろうが、この程度耐えてみせい!」

 

 ドカッ!

 

〈孝矢〉「いぃッ!?」

 

 だから痛てぇって! 祭さん基準で物を考えねぇでくれよ!

 

〈穏〉「孝矢さん、嫌なら嫌って、もっとはっきり言った方がいいですよ~? もっとも、孝矢さんがいじめられるのがお好きだというのなら、穏は口出しする気はありませんけどね。そういう相手としては、祭さまは打ってつけだと思いますし~」

 

〈孝矢〉「勝手に人をマゾにすんなッ!」

 

〈穏〉「まぞ?」

 

〈タイタス〉『……説明は控える』

 

〈祭〉「儂は男をいじめるよりも、甘やかす方が好きじゃぞ」

 

〈孝矢〉「んなこたぁ聞いてねーから!」

 

〈祭〉「しかし、間違いは正しておかねば……」

 

〈穏〉「ふふっ♪ 祭さまと孝矢さんは仲がよろしいんですね~。じゃあわたしは邪魔にならないように、この辺で~」

 

 立ち去ってこうとする穏を、祭さんがきつい口調で呼び止める。

 

〈祭〉「待たんか穏。お主に少し話があるのを思い出した」

 

〈穏〉「話……ですか?」

 

〈祭〉「お主の部隊だが、最近、調練をしているのを見かけんが大丈夫なのか? よもや、以前の賊との小競り合いで連携が遅れていたことを忘れてはいまいな?」

 

〈穏〉「忘れたりしてませんよ~。あの後で兵士の皆さんには、ちゃ~んと言い含めておきましたから、次はきっと大丈夫です」

 

 きっと……。穏が言うとさっぱり大丈夫に聞こえねぇぜ。

 

〈祭〉「言い含めただけでどうにかなるなら苦労せんわい」

 

〈穏〉「苦労せずに済むなら、ちょうどいいじゃないですか」

 

〈孝矢〉「そーいう意味じゃねーだろ」

 

〈タイタス〉『穏、楽な道を選ぼうというのは感心できんぞ。心にたるみがあれば、足元をすくわれるものだ』

 

〈祭〉「タイタス殿の言う通りじゃ。全く……お主の知謀は頼りになるが、お主の隊はあてにならんのぉ……」

 

〈穏〉「そうですか? 火矢を撃つのは得意なんですけど?」

 

〈祭〉「毎回、火矢を使うとは限らんじゃろうが」

 

 注意される穏だが、何を思ったか、こんなことを言い出した。

 

〈穏〉「じゃあ、祭さまの部隊と一緒に調練しちゃって下さいよ」

 

〈祭〉「……何じゃと?」

 

〈穏〉「良い案だと思いませんか? そうすれば私は楽を出来ますし、隊も強くなりますし、一石二鳥です~♪」

 

〈タイタス〉『穏。己の部下のことを、他人に押しつけようなどとは……』

 

〈穏〉「も~、タイタスさんには言ってないですよ~。祭さま、如何でしょう?」

 

〈祭〉「待たんか。一石二鳥はお主だけで、儂の得が何もないではないか」

 

〈穏〉「得ならあるじゃないですか。祭さまの欲求が叶って、隊が強くなりますよ?」

 

〈祭〉「儂個人に対する得がないと言っておるんじゃ」

 

〈穏〉「え~? 祭さまってば欲張りですねぇ」

 

〈孝矢〉「いや、当然の反応だろ」

 

 祭さん視点からだと、仕事押しつけられるだけだからな……。そりゃ納得いかねーだろ。

 だが穏はオレのツッコミをスルーして、祭さんにすり寄る。

 

〈穏〉「じゃあ、付け届けを差し上げますから……それなら構いませんよね?」

 

〈祭〉「……付け届けじゃと?」

 

〈穏〉「はい~♪」

 

〈孝矢〉「……タイタス、付け届けって何だ?」

 

〈タイタス〉『要するに贈り物、プレゼントだ。だが、ここでの意味だと……』

 

 意味って……ハッ! 賄賂か! 買収か! 袖の下か! や、やることがせこいぜ、穏……!

 当の祭さんは、少し考えてから聞き返した。

 

〈祭〉「して、その内容は?」

 

〈穏〉「内容……ですか?」

 

〈祭〉「ああ。何をくれると言うんじゃ?」

 

〈穏〉「そうですねぇ……美味しいお肉なんてどうですか?」

 

〈祭〉「……肉だけか?」

 

〈穏〉「ふぇ?」

 

〈祭〉「それでは足らんな」

 

〈穏〉「っ……じゃ……じゃあ……お野菜もつけちゃいます」

 

 ごねる祭さん相手に、穏が野菜、魚と次々条件を足して交渉してく。ってかこれじゃ、賄賂っつぅよりお中元みてぇだな。

 最終的に、祭さんが一番欲しがるだろう酒もつけたのだが、

 

〈祭〉「何年分じゃ?」

 

〈穏〉「年っ!?」

 

〈祭〉「ああ。まさか一食分で済ますつもりではあるまい?」

 

〈穏〉「だからって、何年分って……そんなに付け届けたら、陸家の家計がぼーぼーになっちゃいますよぉ~」

 

〈祭〉「ならば、お主に出来る、可能な限りの心意気を見せてみよ」

 

 今度は量の交渉が始まった。祭さん、こーゆー駆け引き得意そうだな……。

 結局、交渉はひと月分の肉、魚、野菜、酒のセットと引き換えってことで話が纏まった。いや祭さんに纏められた。

 

〈穏〉「はぁ~……手痛い出費ですぅ~……」

 

 こんな結果になった穏はすっかり肩を落とし、トボトボと去ってった。あんなんなるぐれぇなら、自分で調練した方が良かったんじゃねぇのかね?

 

〈祭〉「ふふっ。大勝利じゃな」

 

〈孝矢〉「いや、ちっとは手心加えてやりゃ良かったのに……」

 

〈祭〉「何を言う。何かと楽をしようとする穏に、現実の厳しさを教示してやったまでのことじゃ」

 

〈孝矢〉「ホントは一か月分の酒が欲しかっただけじゃねーの?」

 

〈祭〉「まあな」

 

 何ともしてやったりって感じの祭さん。この人もこの人で、したたかだな……。

 

〈タイタス〉『まぁ、同情は出来ん。そもそも、仕事を人に押しつけようとしなければこうはならなかったのだ』

 

〈祭〉「全く以てその通り。ところで、南出。この後は暇か?」

 

〈孝矢〉「ん? 急ぐ用事はねぇけど?」

 

〈祭〉「なら儂につき合え。実際に調練しているところを見せてやる。その後で、少しばかりお主を鍛えてやるとしよう。お主もそれなりに鍛えておるようじゃが、儂からすればまだまだじゃからの。もっと磨いてやるぞ」

 

〈孝矢〉「えッ……鍛えてって、祭さんが?」

 

〈祭〉「何じゃ? 儂が相手では不満か?」

 

〈孝矢〉「いやいや、それこの前断ったじゃんかよ」

 

〈祭〉「この前? 何のことを言っておるのじゃ?」

 

〈孝矢〉「覚えてねーのかよ……:

 

 やっぱあん時は酔ってたんじゃねーか……。

 ん? ……あッ。

 

〈祭〉「つべこべ言っておらんで、素直に喜ばんか。この儂が直々に手ほどきをしてやると言うておるのだぞ? まだ小さかった頃の冥琳などは、儂が稽古をつけてやると言えば、子犬のように尻尾を振って後をついてきたものだ」

 

〈冥琳〉「はて。そのような記憶はございませんが?」

 

〈祭〉「うおっ!? 冥琳っ!?」

 

 祭さんの背後に忍び寄ってた冥琳が声を上げた。

 冥琳、どこにでもいるな。

 

〈冥琳〉「祭殿。私は一度として、あなたから手ほどきとやらを受けた覚えがないのですが?」

 

〈祭〉「いや……あるじゃろう? 何度かは……」

 

〈冥琳〉「ああ。修行と称して、崖から突き落とされたことはありましたな」

 

〈祭〉「うっ……」

 

〈冥琳〉「一人で森の奥深くに置き去りにされ、獣の気配に怯えながら夜を明かしたこともありましたね」

 

〈孝矢〉「何やってんだよ、祭さん……」

 

〈タイタス〉『修行を通り越して虐待だ……』

 

〈祭〉「そ、それは……若気の至りとでも言うか……」

 

〈冥琳〉「ほう。若気の至りと? そのせいで、私が何度、死にそうな目に遭ったとお思いで?」

 

 冥琳の笑顔が怖えぇ……。まぁ、んなことされりゃあんな顔にもなるか。

 

〈祭〉「ええい。昔のことは良かろう! 一体、何をしに来たのじゃ!」

 

 あッ、開き直った。

 

〈冥琳〉「それを言うのなら、祭殿こそ何をしていらっしゃるのです? 調練を始める時間になっても祭殿がやってこないと、兵たちが待ちくたびれておりましたぞ」

 

〈祭〉「むっ……」

 

〈冥琳〉「他に用がないのでしたら、早く行きましょう」

 

〈祭〉「な、何故腕を掴む?」

 

〈冥琳〉「せっかくですから、今日は調練を見学させていただこうかと思いまして」

 

〈祭〉「何じゃと!?」

 

〈冥琳〉「報告で聞くだけでなく、たまには己が目で、個々の部隊の練度を確かめておくのも軍師の役目。それに祭殿がどのような調練をなさるのか、気にもなりますからな」

 

〈祭〉「そんなことを言って、ただ嫌がらせがしたいだけじゃろう! お主が傍におっては、気が散って調練にならん!」

 

 抗議する祭さんだが、冥琳は有無を言わさず引きずってく。

 流石孫呉の人間……冥琳も力あるんだな……。

 

〈祭〉「ええい! 離せ! 離せぇ~~いっ!!」

 

 祭さんが連れてかれて……庭園には、オレだけがポツンと取り残された。

 

〈孝矢〉「……時々、分かんなくなるんだけどよ」

 

〈タイタス〉『何がだ?』

 

〈孝矢〉「孫呉の人たちって、ホントに仲いいのか?」

 

〈タイタス〉『……まぁ、単純な関係ではないのは確かだろうな』

 

 ……これも、喧嘩するほど仲がいいって奴なんだろうか? 分かんねぇぜ……。

 

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