〈冥琳〉「敵を火の中へ追い込め! 体勢を整える隙を与えるな!」
白翼本陣に攻め込んだ孫軍本隊に、冥琳が指示を飛ばす。火災の対応を決めかねて混乱してた白翼党も、こっちの突撃に気づいて慌てて武器を手に取った。
〈白翼党〉「て、敵襲だぁッ!」
〈白翼党〉「えッ、何、敵襲!?」
〈白翼党〉「消火は一旦中止だ! 迎え撃てぇッ!」
〈白翼党〉「そ、そうは言っても……!」
〈白翼党〉「おい、敵はどこだって!?」
〈白翼党〉「火と煙でよく見えねぇッ……!」
だが混乱し切ってる白翼党は足並みがバラバラで、そこに斬りかかる孫軍にまるで対応できなかった。
〈孫軍兵士〉「おおおぉぉぉーッ!」
〈白翼党〉「ぎやぁぁああッ!」
数では圧倒的だってのに、白翼党はろくな反撃も出来ず、訓練の的のように次々倒されてく。こうなっちゃ、いくら人数が多くても何の意味もねぇ。
〈孝矢〉「すっげぇ効果出てんな……。向こうは六倍もいるはずだってのに、完全にこっちが優勢だぜ」
〈冥琳〉「言っただろう、火は人の潜在的な恐怖心を煽ると。恐怖に駆られた兵は木偶人形と同じ。戦の基本だ」
〈雪蓮〉「とは言っても、時間を掛けてたら敵も落ち着いてしまうわ。速攻を決めるわよ!」
雪蓮が勇んで、兵士たちに強く呼び掛ける。
〈雪蓮〉「さぁ、気合いの入れどころよっ!」
〈孫軍兵士〉「「「うおおおぉぉぉぉぉぉ―――――――――――ッ!!」」」
雪蓮の鼓舞で兵士たちの槍の攻撃がより強まり、白翼党を倒すペースが更に高まった。
〈白翼党〉「ぐわぁぁッ!」
〈白翼党〉「ぎえぇぇぇッ!」
〈白翼党〉「あ、熱ちぃぃーッ!」
しばらくは気持ちがいいぐれぇに敵を薙ぎ倒してたが……陣の奥から、他とは様子が違げぇ連中が駆けてきた。
〈白翼党〉「我ら親衛隊が! やられっぱなしでなるものか!」
〈白翼党〉「おう! この命、大賢良師さまのために捧げる! 死に花咲かせよ!」
増援に来た部隊は、火に焼かれるのも恐れずに孫軍に反撃してきて、こっちを押し返し出す!
〈白翼党〉「「「ほあああぁぁぁぁああああああ――――――ッ!!」」」
奴らの勢いは何だ……! 明らかにイッちまった顔で、こっちに向かってくる! 叫び声も変だし!!
〈雪蓮〉「何なのよこいつらっ! 人の目じゃないっ……!」
〈冥琳〉「奴らに飲み込まれるな雪蓮! 全軍! 返り討ちにしてやれっ!」
けどこっちも冥琳が士気を高め、迎え撃たせる。
〈冥琳〉「火に追い込めぇぇぇ―――っ!」
〈孫軍兵士〉「「「おおぉーッ!!」」」
孫軍の攻撃で、白翼党がまた火の手へと押し返されてく。
〈白翼党〉「ぐわあああぁぁぁぁッ!」
〈白翼党〉「お、おのれ孫軍……!」
いくら死を恐れてなくたって、肉体には限界がある。火と熱に晒された身体じゃあ、屈強な孫軍に抗い続けるのも無理な話だった。白翼党はどんどんと体力が尽き、一人また一人と倒れてく。
〈白翼党〉「も、もう駄目だッ! これ以上は戦えねぇッ!」
〈白翼党〉「逃げろぉぉぉおおおお―――――ッ!」
やがて戦うのをあきらめた奴らが、武器を捨てて逃走を図り出した。孫軍は予定通り、逃げる奴に追い討ちは掛けねぇ。けどこのまま逃がしたら、西以外のどこに逃げるか分からねぇんだが……。
〈孝矢〉「ん……? 何か、変じゃね?」
と、辺りを見回したとこで、異変に気づいた。
白翼党の本陣を、いつの間にか、すげぇ数の篝火が囲んでんだ。逃げる奴らは、その火を避けてくので、奴らの用意したもんじゃねぇのは確かだ。
〈孝矢〉「ありゃどこの軍勢だ? 袁術か?」
〈冥琳〉「ははっ、まさかな。あれは私が配備したのだ。篝火だけで、実際に兵士はあの場にいないが」
〈孝矢〉「え?」
〈雪蓮〉「大軍で包囲したように見えるでしょ? でも、北側だけは篝火を焚いていないのよね」
ホントだ。一箇所だけ、暗闇のまんまのとこがある。逃げる兵は、自然とそこに向かってってる。
〈冥琳〉「偽りの包囲で敵の士気を更に下げ、退き口を用意すれば、逃亡兵がそこに殺到する。その流れが、敵の士気の低下を招き続けるのだ」
〈孝矢〉「なるほどなー。……って、大軍に見せかける用意はなかったんじゃねーのか?」
〈冥琳〉「篝火を用いた偽計は、ひと晩しか使えん。日が昇れば、兵士がいないことは一目瞭然だからな」
そっか、ひと晩で決着つける時限定の策か。色々考えられてんだなー。流石プロの軍師は違うぜ。
けど敵の全部が全部逃げ出してる訳じゃねぇ。そんで元が多いから、一部だけでもこっちには無視できねぇ数が突っ込んでくることになる。
〈指揮官〉「進めー、ここが死に場所ぞ! 我ら一人残らず、大賢良師さまの盾となるのだッ!」
〈冥琳〉「雪蓮、また来るぞ」
〈雪蓮〉「くっ、あきらめの悪い連中だわ! 母様たちと、早く合流したいのに……」
舌打ちした雪蓮が、意識を敵に戻す。
〈雪蓮〉「全軍、掛かれーっ! 敵を討ち破るのだっ!」
〈孫策隊〉「「「うおおおおおッッ!!」」」
雪蓮たちが新しく来た敵を相手取る。……炎蓮さんたちは、今敵陣のどの辺りにいるんだ?
――火の手が広がり続ける本陣をじっとながめた伝道師が、やがてポツリとつぶやいた。
〈伝道師〉「そろそろ潮時か……。しかし、この世界にいるウルトラマンは三人……。私が直接相手をするのは早計か」
何かの算段を立てると、天幕の側に控えていた、ローブで全身を完全に隠した兵を呼び立てて命じた。
〈伝道師〉「私は小娘どもを連れて、この地を離れる。ここは任せたぞ。今後邪魔になりそうな輩は、貴様が消すのだ」
ローブの兵はコクリとうなずくと――明らかに重力を無視した滑るような動きで、本陣で暴れている炎蓮たちの方向へ向かっていった。
――炎上工作を続ける孫堅隊を率いる炎蓮は、どんどんと白翼党を陣の内側から壊滅させつつあった。
〈炎蓮〉「さて……首の用意は出来てるんだろうなぁ?」
〈白翼党〉「ひいいぃぃッ!?」
揚州に名高き江東の虎に、少しでも抗えるほどの豪傑は白翼党にはおらず、彼女の猛攻に屍が増える一方であった。
〈炎蓮〉「おらぁああああっ!!」
〈白翼党〉「ギャ……ッ!」
〈炎蓮〉「ふぅ……」
周辺にいる敵兵の最後の一人を斬り伏せた炎蓮の下へ、祭と粋怜が駆けつける。
〈祭〉「炎蓮様!」
〈粋怜〉「ご無事で何よりです!」
〈炎蓮〉「おお、祭、粋怜……ふふっ、言った通り生きて戻ってきただろう?」
〈粋怜〉「はっ!」
〈炎蓮〉「敵の動きはどうか?」
〈祭〉「兵糧も焼かれ、最早逃げの一手ですな。冥琳の策に乗ぜられ、敵の大半は北へ向かって退いております」
〈炎蓮〉「よし」
〈粋怜〉「袁術殿がちゃんと動いて……官軍ももう少し早く到着してくれたら、ここで白翼党を殲滅できたんだけどね」
〈祭〉「まぁまぁ良いではないか。逃げた賊もこれに懲りて、元の農民に戻るであろう」
〈粋怜〉「だといいんだけれど……」
〈炎蓮〉「さてと……祭、粋怜、そろそろ帰るか? どうもここは暑くて敵わん。さっさと戻ってひとっ風呂浴びたい」
〈祭〉「はっ、そろそろ潮時ですな」
〈炎蓮〉「ああ。しかしまだ、味方本隊と我らの間には、一万からの敵兵がいる。これを一気に貫くぞっ!」
〈祭・粋怜〉「「はっ!」」
炎蓮たちは風上に向けて進路を向けようとしたのだが……。
〈孫軍兵士〉「ぐわぁぁッ!?」
〈孫軍兵士〉「がふッ……!」
〈祭〉「何事かっ!」
突如、味方の兵士の悲鳴が連続で上がったことに、三人が顔つきを一変させた。
〈孫軍兵士〉「敵の反撃ですッ! 数は一人だけですが、異様な強さで……!」
〈粋怜〉「一人……? 白翼党に、そんな手練れがいたとは……」
〈孫軍兵士〉「はッ、こちらへ来ますッ!」
やがて炎蓮たちの前に躍り出てきたのは、ローブで姿を完全に隠した敵兵。得物すら袖に隠れて見えないが、その袖は血に濡れて赤く染まっている。
〈祭〉「ぬぬ、何と面妖な奴……!」
〈粋怜〉「炎蓮様、お下がりを! 祭、援護してっ!」
〈祭〉「応!」
主君には近づけまいと、粋怜と祭で謎の敵の相手をしようとしたが、
〈炎蓮〉「待て! お前たちが下がれっ!」
〈粋怜〉「炎蓮様……!?」
〈炎蓮〉「あれは、ただ者じゃあねぇぞ……。嫌な予感がプンプンするわ」
南海覇王を片手に炎蓮が前に進み出ると、敵兵が地面のすれすれを滑りながら襲い掛かってきた。
〈祭〉「何じゃ、あの動きは! 人間のものではないっ!!」
〈炎蓮〉「うおらぁぁあああああっっ!!」
人智を超越した動作で攻撃を仕掛けてきた敵兵であったが、炎蓮は冷静に対応し、完璧なタイミングで迎撃の斬撃を浴びせた。
〈炎蓮〉「ぐっ……!」
それでも敵の攻撃は非常に速く、炎蓮の肩が何か鋭いものに刺されて血が噴き出た。
〈粋怜〉「炎蓮様!!」
〈炎蓮〉「騒ぐなっ! ただのかすり傷よっ! それより……!」
敵兵の方も後ろに下がったが、炎蓮の剣をよけ切れてはおらず、ローブは切り裂かれて身体から脱げ落ちた。そして露わになった姿に、祭たちが驚愕。
〈祭〉「な、何ぃっ!? 真に人に非ず!!」
〈粋怜〉「何あれは……! 蝉? 蟹? クワガタムシ……?」
全身が青い金属質の皮膚で覆われた、顔面が虫のような怪人。両腕の先は手の平の代わりに、鋭利なハサミをぶら下げている。
「フォフォフォフォフォ……!」
その正体は、いくつもの星を滅ぼした凶悪な侵略宇宙人、バルタン星人だ!
「フォッフォッフォッフォッフォッ!」
正体を知られたバルタン星人は、そのまま巨大化。炎蓮たちを見下ろすほどの巨躯となり、踏み潰そうと足を振り上げる。
〈粋怜〉「タイタス殿のように巨大化を……!」
〈祭〉「まずいっ! 逃げ場がないぞ!」
火計が仇となり、炎蓮たちの周りは火で囲まれていて、バルタン星人の足から逃れられる場所がなかった。
〈炎蓮〉「……!」
白翼党を追いつめる作戦は上手く行ってたが、敵陣の真ん中にいきなりでっけぇ虫人間が現れたことには、オレたちは度肝を抜かれた。
〈雪蓮〉「あれは! 怪獣!?」
〈タイタス〉『いや、あれは宇宙人だ! バルタン星人だ!!』
〈孝矢〉「バルタン星人!? あれが!?」
何かイメージと大分違げぇんだが……。青いし、全体的にとがってるし……。
けど、何であんな場所に……と思ってたら、バルタン星人が意味ありげに足を振り上げた。
〈冥琳〉「あの動作……まさか、炎蓮様たちを踏み潰そうとしているのでは!?」
〈雪蓮〉「そんなっ!!」
〈孝矢〉「させっかッ!」
[カモン!]
オレは即座にタイガスパークを起動させて、タイタスキーホルダーを握り締めた!
[ウルトラマンタイタス!]
「ヌンッ!」
変身したタイタスは巨大化しながら弾丸のように飛び出してって、バルタン星人の腰をむんずと掴んだ。
「ウオオオォォッ!」
そのまま空中に浮かせて押し出して、白翼党本陣から外へ戦いの場を移した。
案の定、バルタン星人の足元には炎蓮さんたちの姿があったのが見えた。危機一髪だったぜ……。炎蓮さんたちの方は雪蓮と冥琳に任せて、こっちはこの宇宙人をとっちめてやる!
「フォフォフォフォフォ……!」
「ウオォォッ!」
タイタスから逃れてゆらりと身体を起こすバルタン星人に、タイタスが猛然と殴りかかってく。
「フォフォフォフォフォ!」
だがバルタン星人は引力に囚われねぇ動きでバク宙して、タイタスの拳をひらりとかわしやがった!
〈孝矢〉『「何だあの動き!? 速えぇ……!」
「ムッ……オオオォォッ!」
タイタスが走って追いかけ、パンチを繰り出すが、バルタン星人はサッと左側から回り込んで、タイタスの背後を取った。
動きが素早いし、自在すぎる! タイタスが追いつけてねぇッ!
〈タイタス〉『ぬぅ、ちょこまかと……!』
「フォッフォッフォッフォッフォッ!」
振り向くタイタスだが、バルタン星人はハサミから衝撃波を飛ばして、タイタスの姿勢を崩した。
「グゥッ! ヌオオッ!」
タイタスは一瞬膝を突いたが、すぐに飛び出してタックルを仕掛ける。が、バルタン星人は宙に浮かび上がって逃げる。
「フォフォフォフォフォフォフォ!」
バルタン星人はタイタスからつかず離れずの距離を保って、赤い光弾を発射して攻撃を仕掛けてくる。
「グッ……!」
〈孝矢〉『「あんにゃろう……こっちの弱みを分かってやがるぜ!」』
タイタスは長くは戦えねぇ。奴はそこを理解して、タイタスの間合いの外にいるように動き回ってるのが明白だ。しかも、動きが速すぎる。タイタスの一撃は相当な破壊力だが、それも当たらなきゃ意味がねぇんだ!
〈タイタス〉『このままではジリ貧だ……。多少無理矢理にでも、距離を縮めなければ勝てん!』
〈孝矢〉『「ってなると、またこいつの出番だな!」』
[カモン!]
雪蓮、また力を借りるぜ!
[雪蓮リング、エンゲージ!]
「ムンッ!」
全身が赤く輝いたタイタスが踏み込むと、さっきまでの倍以上のスピードが出て、バルタン星人の虚を突いて間合いを詰めた!
「ムゥンッ!」
「フォッ!!」
よっしゃ、タイタスのパンチが入った! バルタン星人が吹っ飛びながらも何とか踏ん張るが、絶好のチャンス到来だ!
〈孝矢〉『「これで決めてやるぜ!」』
[エックスレット、コネクトオン!]
エックスレットを発動して、必殺光弾を叩き込んでやる!
〈孝矢・タイタス〉「『エレクトロ! バスターッ!!」』
電撃を纏った光弾を、バルタン星人目掛け飛ばした! これはその細せぇ身体じゃ耐えられぇだろ!
――この瞬間、バルタン星人の胸がパカッと開いて、鏡が現れた。……鏡!?
「ウオオオォォッ!?」
エレクトロバスターは鏡で反射されて、タイタス自身が食らっちまった!
〈冥琳〉「何っ!?」
〈雪蓮〉「タイタスの攻撃が、はね返された!?」
く、くっそ、あんなん隠し持ってやがったのか……! 判断を焦っちまったか……!
「ヌッ……!?」
しかも悪りぃことは重なるのか、ここで雪蓮リングの効果が切れて、赤い光が収まっちまった。同時に、タイタスのスターシンボルが点滅し出した!
やべぇ……! 逆転するどころか、エネルギーを無駄に消耗しちまった……!
「フォフォフォフォフォフォフォ……!」
「ウオォッ!」
更にバルタン星人がタイタスの背後に回り込んで、ハサミでがっちり首を抑え込んできた! こ、このままタイムアップを狙うつもりか……!
バルタン星人の口吻からは、シュウウとガスが噴射される。
〈孝矢〉『「うぐッ……!? げほげほッ……!」』
途端に咳き込むオレ。また毒ガスかよ……! こ、呼吸が苦しい……!
どうすりゃいいんだ、これは……! ここから打つ手が、全然思い浮かばねぇ……!
〈雪蓮〉「し、しっかりして、タイタス! 頑張って、孝矢っ!!」
〈???〉「……」
――タイタスとバルタン星人の戦闘を、孫軍とは別に、一人の青年が観察していた。
しかし、タイタスが危機に陥った今、大きく舌打ちすると懐から、青い宝石が嵌め込まれたブローチのようなものを取り出す。
そしてそれを己の胸に押し当てると――目を焼くばかりの激しい輝きとともに、青年の姿が大きく歪んで巨大化していった!
〈無幻魔人サイオーガ〉『はぁッ!』
ん!? 何だ、ありゃあ……! タイタスの正面に、いきなり見慣れねぇ姿の巨人が現れやがった! 新手の宇宙人か!?
〈祭〉「ぬぅっ! また敵か!?」
〈粋怜〉「孝矢くんたち、いよいよ駄目だというの……!?」
〈炎蓮〉「……待て。何か、様子がおかしいぞ」
鬼のように一本角が頭から突き出た、キレてるような面の謎の巨人は、腰の鞘から剣を抜いて、中腰に構える……って、あれまさか日本刀か!? ここ中国なのに!
巨人は地面に水平にしてググッと引いた刀を、バットのフルスイングのように――ちょッ、えッ、マジか!?
〈サイオーガ〉『おぉあッ!!』
ブンッ! と轟音を立てて振り抜かれた刀から光刃が飛んで――タイタスとバルタン星人両方を一辺に攻撃したッ!
「ヌオォッ!?」
「フォォォォッ!!」
――タイタスとバルタン星人を纏めて斬り裂いた怪巨人に、祭たちはそろって驚愕した。
〈祭〉「あの化け物も攻撃しおったぞ!」
〈粋怜〉「白翼党の手の者ではないの……!?」
〈炎蓮〉「……」
〈祭〉「タイタス殿は……南出はどうなったのじゃ!?」
タイタスたちは斬撃が巻き起こした土煙に隠れ、どうなったのかが見えない。
〈雪蓮〉「孝矢ぁぁぁっ!!」
〈冥琳〉「前に出るな、雪蓮! あれに目をつけられたらどうなるか……!」
〈雪蓮〉「だけど……っ! 斬られたのよ!?」
〈冥琳〉「落ち着け……! タイタス殿のお力を信じろ……!」
冥琳がなだめている内に、土煙が晴れていく。大きく息を呑む雪蓮。
バルタン星人は、予期せぬ攻撃をまともに食らって、耐えられずに消し飛んでいた。
「……ムンッ!」
しかしタイタスは、すんでのところで筋肉を隆起させて防御を固めたことで、耐え抜いていた。
〈雪蓮〉「……ふぅぅ……」
〈冥琳〉「言っただろう。タイタス殿はげに頼れる方だ」
タイタスの健在に、雪蓮はもちろん、冥琳も内心安堵していた。
……はー……死ぬかと思った……マジで攻撃された……。タイタスが丈夫で、ホント助かったぜ……。
にしても、あいつは何だ……。白翼党じゃあねぇみてぇだが、敵なのか……? 今襲われたら、本気でやべぇぞ……。
〈サイオーガ〉『……』
謎の巨人がチャッ、と刀の柄を握り直すと、タイタスが反射的に身構える。
――だが、巨人はそのまま刀を鞘に納めただけだった。
「ムッ……」
これ以上攻撃する気はねぇみてぇなので、タイタスも警戒を緩めたが……そこで遂にスターシンボルの点滅が切れた。
「ウゥッ……」
エネルギーを使い果たしちまったことで、タイタスの変身が解けて、身体がしぼんでオレの姿に戻ってった……。
宇宙忍者パワードバルタン星人
白翼党の伝道師の命令によって孫軍を攻撃した、マルチバースの一宇宙におけるバルタン星人。いくつもの惑星を滅亡させた凶悪な宇宙人であり、命を奪うことに関して一切の躊躇いがない。衝撃波や光弾、口吻からの毒ガスなど、様々な武器を駆使して敵を苦しめる。