〈孝矢〉「あっれ……ここにもいねーか」
〈ピグ〉「あっちの方、探してみるんだな」
今日は穏に、みんなから戦の報告書を回収するよう頼まれて、ピグを連れて城を回ってる。こいつの腹が籠代わりだ。
あと祭さんと粋怜の分で終わりなんだが、さっきから見つからねぇ。部屋にも食堂にもいねぇし、どっか二人で出掛けてんのかとも思ったが、門の衛兵は誰も見てねぇって言うし。出掛けてたんならまだ言い訳も立つが、そうじゃなかったらサボりって思われるかもしれねぇからな……。
そんな感じで城の庭を回ってたら、
「うううむ……! 実に美味、実に美味じゃのぉ!」
「でしょー? 結構奮発したんだから味わって飲んでちょうだいね?」
「言われずとも分かっておる! ……ぷっはーっ! しみじみと美味い!」
「いやいや、絶対分かってないでしょ……」
こ、この声……この会話は……。この城で、こんな調子で話す人は決まってる。
〈孝矢〉「行くぞピグ」
〈ピグ〉「アイアイ、なんだな」
声のする方に行ったら……案の定、祭さんと粋怜が飲んだくれてた。
〈祭〉「うむうむ、厨房から提供されたこのつまみも大変美味じゃ」
〈粋怜〉「やっぱ魚は干物よね~。まぁ、提供されたんじゃなくてかっぱらってきたんだけど」
〈孝矢〉「……何してんだ」
後ろから声を掛けたら、祭さんがビクッと振り向いた。
〈祭〉「む!? ……何じゃ、驚かせよって! 孺子なら孺子と名乗れば良かろう!」
〈粋怜〉「いやいや、今のは割と真っ当な疑問だったと思うんだけど?」
〈祭〉「ん? そうか? お主が言うのならそうなのかもしれんな……ぐびぐび……まぁ見れば分かるじゃろう?」
〈ピグ〉「酒盛りなんだな、やっぱし」
〈粋怜〉「せいか~い」
まぁたこの人たち、酒飲んでるし……。働いてねぇ時はずっと飲んでるって言われても、オレぁ疑わねぇぞ。
〈孝矢〉「何で庭で飲んでんだ?」
〈祭〉「何を無粋なことを言っておるのじゃ。この空を見ても何も思わぬのか?」
〈孝矢〉「空?」
〈ピグ〉「今日は雲一つない、とてもいいお天気なんだな」
〈祭〉「じゃろう? つまり、そういうことじゃ」
言わずとも分かるだろう、なんて目はやめれ。
〈タイタス〉『はぁ……別に快晴でなくとも、いつでも飲んでいるでしょうに』
〈祭〉「うむ。酒盛りに向かぬ天気はないからな。雨の日は、陰鬱な気分を吹き飛ばすのに良い。そして、このように晴れ渡った空の下で飲む酒は言わずもがな、最高じゃ」
祭さんの足下にゃ、既に酒瓶が三本も転がってる。
ったく……その内肝臓が潰れても知らねーぞ。
〈粋怜〉「と、いう訳で、最高のお酒、孝矢くんもいっちゃわない?」
〈孝矢〉「いらねぇ。それよか、報告書出してくんねぇ?」
〈粋怜〉「報告書?」
〈孝矢〉「こないだの戦闘のだよ。全員分回収してくれって頼まれてんだ」
〈ピグ〉「お二人の分でお終いなんだな」
〈祭〉「むぅ、ああ、そんなことを頼まれていたような気もするのう。粋怜は覚えておるか?」
〈粋怜〉「あー、書きはしたけど今は流石に持ってないわね。部屋に戻らないと」
〈孝矢〉「だよな」
〈祭〉「もちろん儂もじゃ」
〈ピグ〉「じゃ、持ってきてほしいんだな」
〈祭〉「待たんか。まだ酒が残っておるのが、見て分からんのか?」
酒盛り終わるまで出さねぇ気かよ……。まぁ、提出期限は特に言われてねぇけどよ。
出来上がってる祭さんたちを相手にしても時間の無駄なんで、ここは退くことにする。
〈孝矢〉「じゃあ、後で部屋まで行くから、そん時ちゃんと出してくれよ」
〈祭〉「何じゃ、そんな手間を掛けんでも、儂らにつき合えば良かろうが。さぁそこに座れ。粋怜秘蔵の酒じゃぞ」
〈粋怜〉「孝矢くんはどっちのお酒で飲みたいのかなー?」
〈タイタス〉『やめて下さい、孝矢は仕事中です。二人が非番中にどうしていようが勝手ですが、他人を巻き込まないで下さい』
〈祭〉「相変わらず堅物よのう。この黄蓋と程普につき合えんなどとは言語道断じゃぞ。無礼な奴じゃ」
〈粋怜〉「それは置いといて、実際私と祭に誘われたって言えば、昼間からお酒飲んでても怒る人なんかいないわよ」
まぁ、この二人の酒盛りにつき合うのは最早接待の領域だしな……。
〈孝矢〉「けど、いつも言ってんだろ。オレ酒は弱えぇって……」
〈祭〉「かーっ、全く男のくせに情けないのう! 酒も鍛錬と同じで、積み重ねんことには強くならんぞ! つべこべ言わず、美味い美味いと飲んでおれば良いのじゃ!」
祭さんがなみなみと注いだおちょこを、無理矢理オレに握らせてくる。
〈孝矢〉「しょーがねぇなぁ……」
こりゃあもうつき合わねぇことにゃ、収まりがつきそうにねぇ。オレたちは観念して、酔っ払い二人を接待することになった。
オレは酒盛りにつき合いながら、近況を祭さんと粋怜に話す。
〈祭〉「はっはっはっ! 雷火の論語の講義を受けるとは、孝矢も孫家に仕える人間らしくなってきたのう!」
〈粋怜〉「雷火先生も、良くも悪くも相変わらずねぇ」
〈孝矢〉「けど気づいたら寝ちまっててよぉ。怒ってんじゃあねぇかってヒヤヒヤしたもんだぜ」
酒が入って、上気したオレはすっかり口が軽くなってた。
うぅ、気分がやったらフワフワする……やっぱオレ、すぐ酔っちまうわ。
〈祭〉「案ずるな孝矢。雷火も講義中に居眠りされるのは慣れているからの。大して気にしておらんじゃろうよ」
〈孝矢〉「だといいけどよー……つかピグ、あん時起こしてくれよなーお前が」
〈ピグ〉「ピグだってその時、おねむだったんだな、やっぱし」
〈孝矢〉「バッカおめー、ロボットが寝る奴あるかよ! この目覚まし時計以下のポンコツめ」
〈ピグ〉「あッ、悪口言ったんだな! この科学警備隊の傑作ロボットを、何だと思ってるんだな!」
〈孝矢〉「おめーのどの辺が傑作なんだってんだよ~ヒック」
〈タイタス〉『孝矢、一度水でも飲んで酔いを醒ませ。そんな顔を赤くして……』
〈祭〉「何を言うか、むしろ全然飲んでおらんではないか! さぁ、もっと――」
「おやおや、将軍二人で城に飲み屋でも開くつもりか?」
後ろから聞こえた高圧的な声に、酔いが一気に醒めてった。
〈祭〉「ぬぬっ、お主は……!」
〈孝矢〉「ら、雷火さん……!」
ギギギと振り返った先に……雷火さんが仁王立ちしてた……。
〈雷火〉「如何にも。……全く、若いのを捕まえて昼間っから酒盛りとは良い身分じゃのう」
〈粋怜〉「まぁまぁ、雷火先生、私たち今日は非番よ?」
〈雷火〉「何をとぼけたことを言っておるか。非番であろうとお主たちは下の者の模範となるべき宿老じゃろうが。それが二人して昼間から台所でくすねてきたつまみで酒をやるなど……言語道断!」
雷火さんは祭さんと粋怜をガミガミと叱る。
〈粋怜〉「あらら」
〈雷火〉「あららではないわ、馬鹿者。非番なら非番でやることがあるじゃろうが」
〈祭〉「しかしじゃな、このような晴れの日に誰にはばかることなく堂々と酒盛れるというまたとない機会をみすみす逃すというのは……」
〈雷火〉「やかましい。祭、貴様は気が抜けすぎじゃ。もし仮に、今、我らが攻め入られたらどうするつもりか」
〈祭〉「その時は無論、酒瓶ではなく弓を取り、雄々しく応戦してやるつもりじゃが?」
〈雷火〉「と言いながら干物を口に運ぶ者に果たして防衛戦がこなせるかのう。分かったら宴は終わり。解散じゃ、解散」
手を鳴らしてオレたちを散らそうとする雷火さんに、祭さんと粋怜はぶー垂れてる。
〈雷火〉「早くせんか! 孝矢、お主もお主じゃ。タイタス殿は代わりの者がおらんというのに、お主が左様にたるんでおってどうするか」
〈孝矢〉「す、すいやせん」
〈雷火〉「全く、少しは己の立場の責任感が湧いたかと思えば……世話の焼ける男よ。祭も粋怜も、若いのにあまり迷惑を掛けるでない。大人げないであろうが」
あっちこっちを叱責する雷火さんの様子をながめて、ついこんなことを聞いてた。
〈孝矢〉「……気を悪くしねぇでほしいんだけどさ……雷火さんっていくつなんだ?」
〈雷火〉「何じゃと?」
〈孝矢〉「見た目からは全然判別つかねーからさ……あッ、もちろんいい意味でだぜ!? 若く見えるっていうか、何つぅか……」
雷火さんは色々ミスマッチだからな……。体格はまんま子供だが、口調と威圧感は大人のそれだ。祭さんたちも遠慮なく叱るし、実際いくつぐれぇなんだって、今更ながらに疑問に思った。
まぁ冥琳だってよく祭さん叱るし、別に歳食ってるから叱るんでもねぇだろうけど……。
〈粋怜〉「雷火先生、私たちよりずっと年上よ」
〈孝矢〉「……何!?」
〈祭〉「うむ、儂より年長じゃな」
〈孝矢〉「マジで!?」
〈雷火〉何じゃ、奇声を上げよって。こ奴らの言っていることは本当じゃぞ?」
〈孝矢〉「粋怜はともかく、祭さんより上なのかよ!?」
〈ピグ〉「おったまげなんだな、やっぱし……」
ってことは、この城で雷火さんより上の歳の人間、ほとんどいねぇってことじゃん!
〈祭〉「……何故じゃろうな、遠回しに儂がけなされているような気がするんじゃが」
〈粋怜〉「あらあら可哀相に。……ま、孝矢くんが私たちのことをいくつだと思ってるのかはその内確認したいところだけど」
〈雷火〉「どうやら納得したようじゃな。分かったら、これからは一層年長者に敬意を払うように」
〈孝矢〉「は、はぁ……けどなぁ……やっぱ、とてもそんな風にゃ……」
〈タイタス〉『まぁ、気持ちは分かる。私とて少し信じがたい……』
〈ピグ〉「これぞ人体の神秘なんだな」
〈粋怜〉「確かに、この体型じゃあねぇ」
〈祭〉「言われてみれば……雷火は出会ってから何一つ変わっておらん気がするのう。よもや本当に童……あるいは妖の類ではあるまいな?」
〈雷火〉「そんな訳がなかろう!」
やべ、怒らせた。
〈雷火〉「いい加減下らん話も飽きたじゃろう。とっとと酒瓶を持って撤収せい! 庭の景観が乱れるわ!」
〈祭〉「ぬぅ……仕方あるまい。粋怜、酒宴は日を改めるということで良いか?」
〈粋怜〉「はいはーい、了解。今度は邪魔が入らないところでひっそりとやりましょう」
〈孝矢〉「あッちょっと、報告書――」
〈粋怜〉「それは今言うと更に話がややこしくなるから! ちゃんとやっとく、やっとくわよね、祭?」
〈祭〉「うむ、お主が案ずることではないぞ! さらばじゃ!」
祭さんと粋怜は、雷火さんから逃げるようにピューッと走ってった。
〈雷火〉「――して、報告書とは?」
うん、遅かったわ。
〈孝矢〉「実は、穏にな……」
〈雷火〉「なるほど。それであの飲んだくれどもに捕まった訳じゃな」
〈孝矢〉「いやー、参っちまうよなーマジで」
〈雷火〉「参っちまう、ではないわ、全く。そのような誘いを頑としてはねのけることであ奴らの目も醒めようというに」
〈孝矢〉「すんません……」
〈雷火〉「まぁ、簡単な仕事でも立派な仕事じゃ。お主もやれることをやっているようで何より」
〈孝矢〉「あ……どうも、ありがとうございます」
何か、褒められたよ、あの雷火さんに……。いつも怒られてばっかだから、ちょいと調子狂うぜ。
〈雷火〉「そうでなくては以前の授業の甲斐がないからの。ピグはとりあえず、今ある分だけでも穏に届けてやれ。わしはまだ孝矢と話をするでな」
〈ピグ〉「了解しました、なんだな」
ピグを先に穏のとこに行かせてから、雷火さんがオレに向き直った。
〈雷火〉「……して、仕事といえば」
〈孝矢〉「何だ?」
〈雷火〉「炎蓮さまに命じられた務めの方はちゃんと励んでおるのか?」
瞬間、ギョッと固まるオレ。
〈孝矢〉「それってあの……天の御遣いの血のことか!?」
〈雷火〉「それ以外にも何か頼まれておったのか?」
〈孝矢〉「い、いや……」
〈雷火〉「では、さして驚くこともなかろう。して、どうなのじゃ?」
〈孝矢〉「そ、そいつはそのぉ~……」
〈雷火〉「何を言い淀む。――まさかまるで相手にされておらんのか?」
〈孝矢〉「い、いや、んなこともねーって思うぜ!? ちゃんと、みんなと仲良くやってるし……。けどやっぱ、そーいうのって繊細なもんだし……?」
言い繕ってたら、雷火さんの眉間の皺がどんどん深くなってく。
これは……雷火火山の噴火の兆候だぜ……。
〈雷火〉「何じゃその返事は……。以前にも言ったが、ここにはタダ飯食らいを置いておく余裕はないのじゃぞ?」
〈孝矢〉「だから最近は特に頑張ってんじゃん、色々と……」
〈雷火〉「だからと、炎蓮さまの言いつけをないがしろにして良いことにはならんわ。もちろん見境なくは論外じゃが、いつまでも何の進展も無しでは炎蓮さまもお許しにならんぞ?」
〈孝矢〉「そ、そうっすよね……」
〈雷火〉「……あるいは、まるで失念しておったが、お主、天の国にこれと決めた女子、もしくは伴侶がおるのか?」
〈孝矢〉「えあッ!?」
〈雷火〉「だとすれば、流石に不貞を強要することは出来ん。一度皆で話し合いを――」
〈孝矢〉「いねぇいねぇ! 年齢が彼女いない歴っす!」
〈雷火〉「左様か。いらぬ心配をして損したわ」
誤解は解けた。……ただまぁ、自分で言って悲しくなったが。
〈雷火〉「……であるならば、何も遠慮することはなかろう。何を手をこまねいておるのじゃ?」
〈孝矢〉「こまねいてるってんじゃ……。ただ、身体目的にみんなとつき合おうだなんて失礼じゃん? 人権とか、色々問題も……」
自己弁護してたら、雷火さんが首をひねった。
〈雷火〉「……ふむ?」
ん? 何かおかしなこと言ったか、オレ?
〈雷火〉「う~む……。よもや、天の国では子作りに制限でも掛けられておったのか?」
〈孝矢〉「何でそーなる!?」
〈雷火〉「いや、男たるもの、一族の一層の盤石を整えるべく跡継ぎを作るのが当たり前のことじゃ。女もまた、その役割を当然理解し、己の身体を以て家の繁栄に協力する。子を成すという行為そのものは無論神聖かつ大切にされるべきことじゃが、もう少しこう、積極的というかじゃな……」
あー……分かった。こりゃ根本的な考え方が違げぇわ。炎蓮さんが特別豪放だったって訳じゃねぇ。この世界の人間の常識からだと、オレは性欲あんのかって風に見えるのか。
〈孝矢〉「制限があったんじゃねぇけどよ、天の国だと、オレぐれぇの歳で子供作ろうってのは普通じゃねぇんだよ。世間からの当たりも厳しくなるしよ」
〈雷火〉「いやいや、お主は子を成すにはちょうど良い年齢じゃろう」
〈孝矢〉「天の国じゃ、オレぁガキの範疇だよ。結婚だって、今じゃ三十からでも全然普通だし。晩婚化って奴? なぁタイタス」
〈タイタス〉『うむ』
〈雷火〉「晩婚……!? 三十で結婚じゃと……!? かようなことで、おのが身に何かあった時はどうするのじゃ? 天の国は戦は盛んではなかったようじゃが、病などはあるのじゃろ?」
〈孝矢〉「いや、病気で死んだ奴なんか、オレの周りじゃ聞いたことなかったぜ。大抵は医者掛かりゃ治るし」
〈タイタス〉『天の国はここより死亡率がぐっと低い上、平均寿命もはるかに長いのです。生物の生殖活動は、生命の危機に端を発するもの。つまり、生死の実感が遠ざかれば必然的に……』
〈雷火〉「急いで何人も跡継ぎを作ることもなくなるという訳ですか。孝矢の態度にも納得ですな」
タイタスの要点を纏めた説明で、雷火さんが大きくうなずいた。
〈雷火〉「しかしじゃ、お主のように年若くても、心が通じ合っている男女ならば、することはしているのじゃろう?」
〈孝矢〉「あー……そりゃそーなんだけどさー……」
〈雷火〉「どのくらいの割合で経験済みなのじゃ?」
〈孝矢〉「いや、それはちょっと詳しくねぇんで……」
んな週刊誌みてぇな質問しねぇでくれよ。
〈雷火〉「仕方ないのう。まぁ、そこは重要ではない。肝心なのは、お主の経験じゃ」
〈孝矢〉「ぐッ!」
〈雷火〉「……その様子を見る限り、天の国ではろくな経験を積まなかったようじゃな。先ほど、そのように言いおったな」
〈孝矢〉「やめてくれよ! みんなオレのこの目を怖がっちまってたんだよ! オレは悪くねぇッ!」
〈雷火〉「ふむ……お主の人相にそこまで威圧感があるとも思えんが……まぁそこは価値観の相違じゃな」
こんぐらいで、雷火さんは満足したみてぇだった。
〈雷火〉「天の国は天の国。ここは漢の孫呉じゃ。事情が違うのじゃから、せめて炎蓮さまに見限られぬ程度には励むのじゃぞ」
〈孝矢〉「うっす……」
うーむ……まさか天の国の性事情をこんなにも熱心に聞かれるたぁな……。まぁ、雷火さんの近くにいる現代人はオレしかいねぇんだから、興味の矛先は必ずオレに向くか。
〈孝矢〉「……ところで、色々聞いた雷火さんはどーなんだよ」
〈雷火〉「ん? どうというと?」
〈孝矢〉「雷火さんだって結婚してねぇって、炎蓮さんから聞いてんだぜ。好きな人とかいなかったのかよ」
〈雷火〉「……さて、どうじゃろうな。ま、いようがいまいが、左様なことはおいそれと他人に話しはせんがの」
〈孝矢〉「あッ、ずりぃ! オレにはしゃべらせといて!」
〈雷火〉「嫌なら答えなければ良かったじゃろうて。まぁ色々と参考になった。礼を言っておくぞ、孝矢。――ああ、祭と粋怜の分の報告書もきちっと回収しておくのじゃぞ。ではな」
〈孝矢〉「あッちょっと……!」
止める間もなく、雷火さんは歩いてってしまった……。
〈タイタス〉『してやられたな、孝矢』
〈孝矢〉「ああ……。けど」
〈タイタス〉『けど?』
〈孝矢〉「あそこまで聞いてきたってこたぁ、雷火さんってあれで恋愛に興味あるんじゃね?」
〈タイタス〉『さぁ……どうだろうな。単なる好奇心かもしれん。論語の件を見るに、知識欲の旺盛な人だからな』
んー……どうなんだろうな。人には子作り勧めといて、自分は……。そこんとこどう思ってんだろうか。謎だ。