奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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街にいる祭!!

 

〈孝矢〉「あー……この前はしっちゃかめっちゃかで大変だったぜ」

 

〈タイタス〉『何がしっちゃかめっちゃか、だ! 穏にあんなことをして……いや、されてと言うべきかもしれんが……とにかくけしからんッ!』

 

〈孝矢〉「そう言うなよ。オレだってな、腹くくってんだぜ。いつかはやらなきゃいけねぇことじゃん」

 

〈タイタス〉『むぅ……まぁそうなのだが……』

 

〈孝矢〉「……つっても、一番恐ろしいのは……『孫子』が全部で八十二巻もあることなんだがな……」

 

〈タイタス〉『あと八十一回も、あんなことがあるのか……』

 

 なんてことを話しながら、オレたちは城下町の目抜き通りを歩いてた。

 最近訓練詰めのオレだが、ずっと城にこもりっ切りってのも良くねぇってタイタスが言うんで、息抜きがてらに街を散策することにした。

 オレとしても、街に繰り出すのは嫌いじゃねぇ。自分が守ってるとこがどんなに活気づいてんのかをその目で見ると、やる気も湧いてくるぜ。

 

「わははははははっ!!」

 

 あちこちで賑やかな声がする通りだが、特に目立つでっけぇ笑い声が先の料亭から起こった。

 

〈孝矢〉「……何か、聞き覚えのある笑い声だったな」

 

〈タイタス〉『今のはもしかしなくとも……』

 

 近くまで寄ってって、料亭の中を覗いてみると……。

 

〈祭〉「はっはっはっ、それはお主が悪いわ。もう少し旦那に気を遣ってやらんか?」

 

〈女〉「ええ~、あの助六に~?」

 

〈祭〉「拗ねておるのよ。可愛いもんではないか」

 

〈女〉「あの禿げ頭で拗ねられてもねぇ」

 

〈祭〉「かっかっかっ!」

 

 やっぱ祭さんだ。たくさんのおばさん客に混じって談笑してる。まぁ、他の人たちが飲んでるのは茶っぽいのに、祭さんだけ酒っぽいのは、らしいっちゃらしい。

 

〈タイタス〉『ふむ……随分と馴染んでおられる様子だな』

 

〈孝矢〉「それが何かおかしいか? 別に普通じゃね? 歳だってそう離れちゃいねぇだろうし」

 

〈タイタス〉『孝矢。きみは日頃祭殿と当たり前に接しているから実感が薄いかもしれないが、あの人はこの孫呉の重鎮の将軍なのだぞ。市民からしたら、雲の上の人でもおかしくはないのだ』

 

 ああー、言われてみりゃ……。祭さん、普段がアレだから忘れちまいそうになるけど、すっげー偉いんだよな……。

 

〈孝矢〉「けど、孫呉って割と気さくな人多いじゃん。炎蓮さんとか雪蓮とか」

 

〈タイタス〉『確かに、王からしてそうではあるが』

 

〈祭〉「……おお?」

 

 話してたら、祭さんがこっちに気づいた。

 

〈祭〉「南出ではないか。何をしておるのじゃ?」

 

〈孝矢〉「あー、ちょっと散歩だよ。そんで祭さんの」

 

〈タイタス〉『孝矢、公覆殿だ』

 

 タイタスに小声で注意された。

 

〈孝矢〉「あー……公覆さんの声が聞こえてよ」

 

 オレの方を向いたおばさんたちが、祭さんに尋ねる。

 

〈女〉「あら、どちらさん?」

 

〈女〉「黄蓋さまのお知り合い?」

 

〈祭〉「応。儂が今、可愛がっておる孺子よ」

 

〈女〉「んま! 黄蓋さまったら隅に置けませんわね! いつの間に、こんな若い子を捕まえたの……」

 

 祭さんがおかしな紹介をしたせいで、おばさんたちは興味津々にオレに注目してきた。

 

〈女〉「少し目つきが悪いけれど、そこが野性味あっていいじゃないですか~」

 

〈女〉「おまけになかなかにたくましい身体つき!」

 

〈女〉「ちょっとお裾分けして下さいよ~」

 

〈祭〉「阿呆。お主には亭主がおるじゃろうが」

 

〈女〉「あんな禿げなんて」

 

〈女〉「ほらぁ、お兄さん。こっちに来て一緒にお茶しない?」

 

〈孝矢〉「いやぁ、ちっと休憩してるだけなんで……」

 

〈祭〉「何を遠慮しておる。こいつらはこの後、家事がある故、酒にはつき合わんのじゃ。ちょうど良かったわい、お主がつき合え」

 

〈孝矢〉「こんな昼間だってのに……」

 

 祭さんにゃいつものことだけどよ。

 

〈祭〉「戯けが。酒に昼も夜もあるか! 儂はいつだろうと飲みたい時に飲む!」

 

〈女〉「黄蓋さま、よくそれでお役目が務まるわねぇ」

 

〈女〉「誰かに怒られたりしませんの?」

 

〈祭〉「はっ! 儂は孫呉の宿将じゃぞ? この儂に文句を言える奴など、城におるものか!」

 

〈女〉「流石は黄蓋さま♪」

 

 よく言うぜ……。

 

〈祭〉「おい、孺子。早うこっちへ来んか! 金なら心配するな、儂が奢ってやる」

 

〈女〉「お姉さんも奢っちゃうわよ♪」

 

〈女〉「ほら、いらっしゃ~い。黄蓋さまとの関係をじっくり聞かせてもらうわよ」

 

〈孝矢〉「しょーがねぇなぁ……」

 

 祭さん一人だけならともかく、他の人たちの手前。ここですげなく立ち去ったら、祭さんの恥になる。軽くつき合うつもりで輪の中に入ってった。

 ……しかし、祭さんにつき合って軽くで済む訳もなかった。

 

〈孝矢〉「う、うぅっぷ……も、もう夜かよ……」

 

〈タイタス〉『孝矢、大丈夫か……? 全く祭殿は、加減をご存じない……』

 

 おばさんたちは日暮れ前には帰ってったが、オレは無理矢理につき合わされ、解放された時にゃ完全に日が落ちてた。あの人が無理に飲ませてくるんで、超気分悪りぃ……。

 祭さんは料亭に残ったが、まだ飲むつもりかよ……。あの人マジでザルだな……。

 

〈タイタス〉『ほら、せめて城まで帰るのだ。道端で寝てしまっては、物盗りに遭うぞ』

 

〈孝矢〉「お、おう……」

 

 タイタスに励まされて、どうにか城まで帰れたが、廊下の途中でぶっ倒れちまって、タイタスに呼ばれたピグに部屋まで連れてってもらう羽目になったのだった……。

 

 

 

 そんなことがあって数日後。たまたま祭さんにつき合って買い物に出た時に、ふと言ってみた。

 

〈孝矢〉「ところでよ。祭さんって、どこにでもいるよな」

 

〈祭〉「む? 突然何じゃ?」

 

〈孝矢〉「いや……何か、出掛けると祭さんの姿を見ること多いなーって思ってよ」

 

 街で祭さんの姿を見掛けんのは、何もあれが初めてじゃなかった。武器屋で弓の吟味をしてることもあったし、市場で行商人から直接陳情を聞いてたこともあったし、漁師たちから意見聞いてたり、城壁の補修工事してる人夫たちを励ましたりもしてた。とにかく、外出たら祭さんが、ってケースが多いのは確実だ。

 

〈孝矢〉「誰かが言ってたけどよ、よく自分の役目もやれてるよな」

 

〈祭〉「はっはっ、そっちはいささか疎かにしておるからの」

 

 疎かにしてんのかーい。

 

〈タイタス〉『いや、それは駄目でしょう……』

 

〈孝矢〉「いやーでも、だからって遊んでるって訳じゃあねぇよな」

 

〈祭〉「うん?」

 

〈孝矢〉「色んな人に声掛けて、細けぇ意見も耳に入れて……そーいうのってやっぱ、この国のためにやってんだろ?」

 

〈タイタス〉『確かに、市井に直に触れる姿勢は、見上げたものですね』

 

 オレとタイタスでそう言うと、祭さんはちょっときょとんとしてから、

 

〈祭〉「はっはっはっ!!」

 

〈孝矢〉「な、何で笑うんだよ」

 

〈祭〉「お主たちは考え過ぎじゃ」

 

〈孝矢・タイタス〉「『え?」』

 

〈祭〉「儂は何も特別なことをしておるつもりはない。この地に住まう者として、思うがままに生きておるに過ぎんよ。申す通りに領民の話には耳を傾けておるが、それも偉そうに陳述を受けているつもりはない。ただ、一人の黄蓋という人間として彼らと話をし、力になりたいと思っておるだけなのじゃ」

 

 つまり、今までのことはみんな普通にやってたことって訳か? 確かに、ごくごく自然な振る舞いだったが……。

 

〈祭〉「まぁ、孫呉の将軍としては、もっと上段に構え、威厳を以て領民に接するべきかもしれんがの。今更、この生き方は変えられん」

 

〈孝矢〉「あー……まぁ、オレも祭さんは今のままでいいって思うわ」

 

〈祭〉「ふふっ、そうか?」

 

〈孝矢〉「偉そうにすんのは、もう冥琳たちがいるしな」

 

〈祭〉「はっはっ、確かにそうじゃの」

 

〈タイタス〉『私も、祭殿が何とおっしゃられようとも、その生き方は素晴らしいものと思います』

 

〈祭〉「世辞はよせ。儂は呉の民として、呉の地に生きるのみよ」

 

 いや、タイタスの言う通りだ。街の人たちは祭さんに完全に心を許してるみてぇだった。冥琳や雷火さんたちじゃ、どうしても委縮しちまうだろう。

 こんな風な生き方をする人が上にいるから、呉の結束力は強えぇんだろうな。

 

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