奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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対決!錦帆賊!!

 

 ――空に昇った太陽が照らし出す長江の流れに乗って進んでいくのは、孫軍の艦隊。

 その様を、小高い丘からながめているのは――腰に日本刀を挿した青年。白翼党との戦の際、孝矢の前に突如現れた謎の人物、西園寺楯だ。

 

〈西園寺〉「……」

 

 彼は甘寧率いる錦帆賊の艦隊が待つ水域へ進軍していく孫軍の艦隊を、険しい目つきで観察し、ぽつりと独白した。

 

〈西園寺〉「やはり、この世界の呉も争いを起こそうという訳か……」

 

 

 

 翌朝、オレたちは陣を引き払って出港した。今度は兵力一万五千、約五十隻の大艦隊だ。

 けど、水上での錦帆賊との練度を考慮すると、これでも互角には遠いってのが穏の見解だ。オレたちの勝利は、穏の策に懸かってる。

 まぁそれはいいんだが……。

 

〈孝矢〉「うッ……おえぇ~……!」

 

 オレは旗艦の甲板の上で、絶賛船酔い中だった。うっぷ、気持ち悪りぃ……。

 

〈明命〉「孝矢さま、大丈夫ですか?」

 

〈小蓮〉「顔が真っ青だよ?」

 

〈孝矢〉「わ、悪りぃ……オレ、こんなでっけー船に乗ったことねぇからさ……。ゆ、揺れが……」

 

〈タイタス〉『本当に大丈夫か……。だから朝食は控えめにした方がいいと言ったのだ。いつもの調子で食べるから……』

 

〈孝矢〉「うッ! ち、ちょいと失礼ッ!!」

 

 吐き気が限界に達して、オレは口押さえて船の縁まで全力疾走する羽目になった……。

 

 

 

 数分後。

 

〈孝矢〉「ふ~……すっきりしたぜ」

 

〈タイタス〉『いや、もう治ったのか。あれだけひどい船酔いが……』

 

〈孝矢〉「ああ。吐くもん吐いたらな」

 

〈タイタス〉『単純なのは精神だけではないのだな……』

 

 ほっとけよ。

 しかし、周りを見りゃあ船酔いしてんのはオレだけじゃねぇ。結構な数の兵士がゲーゲーやってるぜ。

 

〈孝矢〉「孫軍が水上に慣れてねぇってのはマジなんだな。これで大丈夫なんかな?」

 

〈タイタス〉『賽は既に投げられた。もう引き返すことは出来んのだ』

 

 そーだなぁ……このまま進むしかねぇか。

 っと、戦が始まる前に……もしものことがあるから、言うことは全部言っとかねぇと。

 

〈孝矢〉「そうだ、タイタス。これ見てくれ」

 

〈タイタス〉『何だ? ……それは!』

 

 取り出したのは、雪蓮リングみてぇな指輪だ。ただ、これの装飾は九節棍と穏の髪形を組み合わせた、別の物だ。

 

〈孝矢〉「この前、穏との……あー……勉強会の時にナメクジ怪獣が出てきたことあったろ。そん時のドタバタの中で、気がついたらこれがあったんだ」

 

 そん時の騒動ですっかり忘れてたが、多分こいつは、雪蓮の時みてぇに穏から出てきたもんだと思う。

 

〈タイタス〉『ふむ、雪蓮だけでなく穏からもか……。一度ならず二度までも、不思議なことだ』

 

〈孝矢〉「こーいうの、他にもあんのかな?」

 

〈タイタス〉『分からんが……何か出現する条件でもあるのだろうか』

 

 二つ目のリングに首を傾げてたら――船首の方から銅鑼の音が響いた。

 

〈見張り〉「前方に敵船団ッ!!」

 

〈孫権〉「総員、配置につけっ!!」

 

〈孝矢〉「やべッ!」

 

 一気に船上が慌ただしくなる中、急いで孫権のとこへ走ってった。

 

〈孝矢〉「仲謀!」

 

〈孫権〉「南出。具合は良いのか?」

 

〈孝矢〉「ああ、もう大丈夫だ。明命たちは?」

 

〈孫権〉「もうみんな、自分の船を指揮している。敵はもう水平線上だ」

 

 孫権が指した先の水平線に、数え切れねぇ数の船団の姿があった。

 いやぁ、長江ってマジに広いな。何十もの船が横並びになっても、端から端に届かねぇ。日本じゃ見られねぇ光景だぜ……なんてのんきなこと言ってる場合でもねぇ。錦帆賊は兵力はこっちの半分ぐれぇでも、船の数じゃ明らか上回ってるぜ。一隻毎の乗組員がこっちより少なく済んでるってこったな。

 

〈孫権〉「ほとんど全ての船が出撃しているようだ。甘寧らしい……全力で我らにぶつかるつもりだな」

 

〈孝矢〉「ああ……」

 

〈穏〉「それでは仲謀さま、手筈通りに……」

 

〈孫権〉「よし!」

 

 穏の呼び掛けで、孫権が指揮を執り出す。

 

〈孫権〉「合図を送れー! まずは周泰が敵船団に突撃するっ! 尚香にも突撃の準備をっ!」

 

 銅鑼が鳴らされ、明命の船が突出して敵船団にまっすぐ進み出した。

 いよいよオレの、初の水上戦の始まりだ。明命の叫び声が、火蓋を切って落とした!

 

〈明命〉「掛かれぇええ――――――っっ!!」

 

〈周泰隊〉「「「おおおおお―――――ッッ!!!」」」

 

 

 

 こっちの船団と錦帆賊の船団の距離がどんどん縮まって、いよいよ射程圏内に入る。

 

〈明命〉「突撃ですっ! 敵は賊軍! 頭目さえ倒してしまえば、勝利はこっちのものですーっ!」

 

〈小蓮〉「全速前進! 周泰を援護するよーっ!」

 

 こっちの前衛の明命、シャオの率いる三十隻が敵船団に突撃を掛けてく。河の上流を取ってるのはこっちだから、分もこっちにあると思うとこだが……。

 

〈孝矢〉「……速えぇな……!」

 

 錦帆賊の船はどれも逆流も物ともせずに、味方の船の横腹を突くよう回り込んでく。

 船の大きさはこっちが上なんだが、その分機動力は向こうに分があるみてぇだ。……いや、逆流であんだけ動ける操船技術……やっぱ練度で大きく水を開けられてるってことか。それに船の数も多い……。明命たちは早くも敵との交戦を始めたが、こいつは苦しい戦いになりそうだ……。

 

〈明命〉「面舵いっぱぁいっ! 敵を回り込ませては駄目ですっ!」

 

〈兵士〉「周泰様! 左舷から敵の艨衝!」

 

〈明命〉「面舵もっと切れ―――――――っ!!」

 

 明命の大型船が敵の突撃船をかわそうとするが、よけ切れずにとがった船首を横腹に食らった!

 

〈明命〉「うひゃあっ!!?」

 

 敵の船首が突き刺さって、船に穴が開く。

 

〈明命〉「負けるなー! こっちも体当たりで沈めろー!」

 

 だがその姿勢のまま敵船にぶつかってって、サイズ差の有利を活かして敵船にダメージを与える。

 この時代じゃ射程の長げぇ武器なんか限られてくるから、船の戦いもこんな感じのインファイトが主で、そっから敵の船に乗り移っての白兵戦に移行する。

 白兵戦なら孫軍だって負けはしねぇと思うが、船がダメージ食らい過ぎて航行不能になったら途端に不利になる。敵の増援をかわす術をなくしちまうからな。それに、浸水したらやがて沈んじまう。

 

〈兵士〉「周泰様、敵の艨衝が次々とッ!」

 

〈兵士〉「敵が乗り込んできますッ!」

 

〈明命〉「白兵戦の準備――――っ!!」

 

 案の定、明命の船は次々に突撃を食らって、半壊して動けなくなったとこに大勢の錦帆賊に乗り移られてる。

 明命の船団は元々輪を囲って防御態勢を敷いてたが、錦帆賊にすぐに切り裂かれ、明命の船はあっという間に敵に囲まれちまったんだ。

 

〈小蓮〉「周泰が危ない! もっと急いでっ!」

 

〈兵士〉「しかし、尚香様! 進路を敵船に阻まれ……」

 

〈小蓮〉「もっと矢を撃って! 何のために、こんな立派な矢倉のある船に乗っているのよっ!」

 

〈兵士〉「は、はいッ!」

 

 明命に続いてたシャオの船団も、錦帆賊に纏わりつかれて思うように動けねぇでいた。いくら矢を射かけてもかわされ、こっちも右舷に突撃を食らった。

 

〈小蓮〉「きゃ――――っ!!」

 

 操船じゃあ完全に負けてる……! 明命たちの船は既にどれも航行不能、白兵戦に持ち込まれて、持久戦に陥ってた。

 

〈孫権〉「強い……!」

 

〈穏〉「はい、とんでもない強さですね……」

 

 孫権たちの船団二十隻は後方に控えててまだ無傷だが、仮に前衛が突破されたら、それも時間の問題だろう。それほど、オレの想像を超えるほどの実力差が錦帆賊とはあった。穏の言った通りだ……!

 

〈明命〉「たぁーっ! てあぁーっ!」

 

〈小蓮〉「撃てぇーっ!」

 

 白兵戦では明命、シャオは刀や弓の攻撃で並みいる錦帆賊を近寄らせてねぇが、有利取れてるのはその二人ぐれぇだ。揺れる船上での身のこなしも、錦帆賊の方に分がある。これでいつまで持つか……。

 

〈孝矢〉「シャオと明命は大丈夫か……!? あんま長引いたら、物量に押し切られちまうぜ!」

 

〈穏〉「あともう少し……!」

 

〈孫権〉「……」

 

 味方の船が一隻、また一隻と沈んでくが、孫権がにらむ先は、乱戦から離れて待機する十隻ほどの敵の船団。その一点から目を離さねぇ。

 

〈孫権〉「興覇はまだ動かないか……」

 

〈孝矢〉「あそこにいんのか? 甘寧」

 

〈孫権〉「恐らくな。こちらの本隊が控えたままなので、興覇も慎重になっているようだ」

 

 しばらくは戦況を静観してた船団だが……やがてその十隻も、明命たちの方へ進み出した!

 

〈孝矢〉「動き出したッ!」

 

〈穏〉「長期戦には持ち込ませず、前衛を一気に叩いてこちらを釣り出すつもりのようですね。ここまでは想定通りです!」

 

〈孫権〉「ああ……」

 

 孫権は動じねぇ態度を取ってるが、目の色は不安そうだ。

 策はあるとはいえ、それも明命たちがどんだけ敵を引きつけてられるかに懸かってるからな。

 

〈孫権〉「……」

 

 戦いが続くにつれ、明命とシャオたちの旗色は悪くなるばかりだ。

 

〈孝矢〉「あぁッ……! 遂に明命の船が沈められちまった……!」

 

〈穏〉「明命ちゃん、どうかご無事で……」

 

 明命の船が沈没し、ろくに浮いてるのがシャオの船だけになっても、孫権は沈黙を貫く。

 その内に――シャオのとこに甘寧が直接現れ、部下たちとは次元の違げぇ強さでシャオを追いつめ出す。

 

〈孝矢〉「くぅ~……!」

 

 もう今からじゃ間に合いもしねぇが……見てるだけなのがこんなにも苦しいなんて……!

 だが、シャオの船の甲板に、明命が泳いで乗り上がってくのが見えて歓喜させられた。

 

〈孝矢〉「明命だ! 脱出に成功したみてぇだな!」

 

〈穏〉「良かったぁ。明命ちゃん、無事だったんですね~♪」

 

 けど、明命が加勢しに行っても、甘寧の強さは圧倒的だ。どうにか食い下がるのがやっとのありさま。もういつ斬られてもおかしくねぇ……!

 

〈孫権〉「――よし、今だ!」

 

 そこで遂に孫権が指示を出した!

 

〈孫権〉「面舵! 敵の根城に向かって、全速前進!」

 

 

 

 昨晩の軍議の中で、穏はオレにこう聞いてきた。

 

〈穏〉『ねぇ孝矢さん、錦帆賊は本当に手強い相手ですが、それでも決して無敵ではありません。では、勝つために何をするべきでしょうね~?』

 

〈孝矢〉『う~ん……』

 

 穏の出した問題に、オレはこう答えた。

 

〈孝矢〉『打者が滅茶苦茶強えぇんだったら、敬遠するとこだがな』

 

〈穏〉『敬遠? 孝矢さん、それは何のお話ですか~?』

 

〈孝矢〉『野球の話だが……あー、まぁ要するに、強えぇ奴が敵にいんのなら、まともな勝負はしねぇですかしちまうってこったな』

 

 オレぁ敬遠、好きじゃなかったけどな。勝負から逃げるってのは性分じゃなかった。

 

〈穏〉『ふふふ~、考え方としては合ってますね~』

 

〈孝矢〉『……そっか、こーいうこったな。錦帆賊には正面からじゃなく、別の角度から違げぇとこを攻撃すんだ』

 

〈小蓮〉『それって、どーいう意味?』

 

〈孝矢〉『船の戦いで超強えぇ錦帆賊に、船の上で戦おうとすんのが間違いなんだよ』

 

〈明命〉『でも、じゃあ、どこで戦うおつもりなんですか?』

 

〈孝矢〉『錦帆賊もずっと船の上にいる訳にはいかねぇだろ? 補給のためにも、帰港しなきゃいけねぇ』

 

 それでシャオたちもピンと来たみてぇだ。

 

〈小蓮〉『あっ、そっか! 港を叩けばいいんだ! そしたら錦帆賊は、補給が出来なくなっちゃう!』

 

〈明命〉『補給が出来なくなったら、ご飯が食べられません! お腹が空けばいつまでも戦ってはいられませんね!』

 

 敬遠は強打者をいなして、次の打者を打ち取ることで相手チームに点数を取らせねぇ作戦だ。この考えを応用して、敵の主力を足止めしてる内に、重要拠点を潰して機能をストップさせちまうって策だ。

 

〈穏〉『大正解で~す♪ 補給を断ってしまうのは戦の常道! お勉強の成果が出ていますね~、いいですよぉ孝矢さん』

 

〈孝矢〉『いや~、それほどでも』

 

〈孫権〉『だが穏。もし狙いに気づかれたら、錦帆賊の機動力のことだ、すぐに守りを固められてしまうだろう』

 

〈穏〉『はい、分かっています。ですから、囮となる船団には、こちらの戦力の大部分を投入します』

 

 大胆な穏の策に、みんなビックリだ。

 

〈小蓮〉『ええっ、それ大丈夫なの?』

 

〈明命〉『ほとんど船を囮にして……もしも先に沈められたら、後がなくなりますよ?』

 

〈穏〉『ですが、これくらいの奇策でなければ勝利を得るのはまず不可能です。策の成功は、囮役となるお二方々がどれだけ敵の注意を引きつけられるかに懸かっています~』

 

 責任重大な役目を授けられて、明命も穏も一瞬ひるんだが――すぐに引き受けた。

 

 

 

 つぅ訳で、オレたちは明命たちに引きつけられてる錦帆賊の船団の横を素通りして、奴らの拠点にまっすぐに進路を取ってた。

 

〈孫権〉「急げーっ! もっと櫂を漕げっ!」

 

 孫権の大声が、船の漕ぎ手たちを叱咤してスピードを出させる。オレは錦帆賊の船の様子を監視してた。

 

〈孝矢〉「……仲謀! やっこさん方、こっちの狙いに気づいたみてぇだぜッ!」

 

 敵船の数隻が明命たちの船から離れて、大急ぎでこっちの進路に回り込もうと追いかけ出してきた。先頭の船にゃあ甘寧の姿がある。

 他の船にも連絡は行ってるはずだが、すっかり乱戦状態になるまで待ったのが功を奏して、上手いこと伝わってねぇみてぇだ。大半は素人目からでも分かるぐれぇ、動きが明らかに鈍いぜ。

 

〈甘寧〉「おのれっ、仲謀っ! 決戦の約束を交わし、我らを河におびき出しっ……その隙に空き家に押し込もうとはっ! この卑怯者がぁっ! これが天下に名高い孫呉の戦かっ!?」

 

 突出してる船から、甘寧が罵声を浴びせてきた。それに穏が言い返す。

 

〈穏〉「はい! これが戦ですよっ! 戦とは、騙し、謀り、欺くことっ!」

 

〈甘寧〉「黙れぇええっ! 恥を知れっ! 味方をあれほど犠牲にし、船を、兵を失って……それで得た勝利に、一体何の価値があるっ! 無様な勝利は敗北にも等しいっ!」

 

〈穏〉「勝利と敗北は違いますよ? 戦をするからには、どんな手段を使っても、勝つこと! それが全てですっ!」

 

〈甘寧〉「くっ……!!」

 

〈孫権〉「興覇、お前の負けだ! これまでお前のやってきたことは、所詮戦の真似事に過ぎん! 真の戦とは、こういうものなのだっ!」

 

〈甘寧〉「仲謀……!!」

 

 孫権もきっぱりと言い放った。炎蓮さんや雪蓮はこーいう策は好みそうにねぇが、孫権は二人ほどの武闘派じゃねぇ代わりに、より現実的な判断を下せるみてぇだ。

 更にオレたちが錦帆賊の拠点に着く前に、港の砦から火の手が上がる。

 

〈孫権〉「よし……!」

 

〈穏〉「別動隊の攻撃も成功ですね!」

 

 これも策の内だ。水上決戦に見せかけて、別動隊が陸路で拠点に向かってたんだ。そっちも到着したんだな。

 卑怯と言やぁ、まぁ卑怯だ。だが、命のやり取りは真剣なんだ。遊びじゃねぇ。真剣だから、勝つために死に物狂いになって、あらゆる手を尽くす。甘寧は戦に強くとも、そこが分かってなかった訳だ。

 

〈甘寧〉「仲謀! 貴様はどこまでもっ……!!」

 

〈孫権〉「興覇! これが戦術というものだ! 如何に錦帆賊が歴戦の兵であろうと、ただの蛮勇で軍師の策に勝つことは出来ん! 例えここで逃れようと、遠からずどこかで誰かに駆逐されよう!」

 

 孫権が堂々と声を張って、降伏を呼び掛ける。

 

〈孫権〉「興覇! 大人しく我ら孫呉に降れっ!」

 

〈甘寧〉「……ぐっ……」

 

 甘寧は返事に詰まってる。

 ここでこっちの船団を攻撃しても、その間に拠点を陥とされる。けど拠点を救いに行こうとしたら、背後を突かれる。完全に手詰まりの状態だ。

 孫権と甘寧。戦いの本質の理解の有無が、勝負を分けたな。

 

〈孫権〉「降れ、興覇!」

 

 再びの降伏勧告に、甘寧はどう返事するか――。

 だがその時、

 ドォォォ――――――――ンッ!!

 

〈孫権〉「!? 何だっ!?」

 

〈穏〉「な、何の音ですかぁ!?」

 

 いきなりの轟音に、船上が騒然となった。今回の戦は敵の殲滅が目的じゃねぇから、こんな爆音を出すような攻撃はしねぇはずだ。それに砦の方からじゃなかった。

 見れば、孫軍の船の一隻が半ばから真っ二つにへし折られ、ブクブクと沈没してた。何十人もの兵士が河に投げ出されてる。

 

〈孫権〉「何……!? 何が起こったのだ!?」

 

 仰天するオレたち。甘寧たちも唖然と目をひん剥いてる。

 ド―――――――――ンッ!!

 

〈穏〉「ま、また船が~!!」

 

〈孫権〉「どうなっているの……!?」

 

 こっちの船が一隻一隻ぶち破られて、次々に沈められてく!

 誰が船を破壊してる!? いや、あんな大船を真っ二つに引き裂くことが普通出来るか!? しかも、どこからも攻撃なんか飛んできてやしねぇ! あり得るとしたら中からか、下からだけだッ! 人間業じゃねぇぞッ!

 

〈孝矢〉「せ、潜水艦でもいやがんのか!?」

 

〈タイタス〉『そんなものある訳ないだろう! ……だが、何かが水中に潜んでいるのは確かだッ!』

 

 タイタスの言う通り、水面をよく見れば、でっけぇ影が動いてた。それが五隻目の船の下に潜り込むと、その船が砕かれて沈没してく。

 その後に影がせり上がってきて、甲羅みてぇなもんが水面を破って正体を晒した!

 

「グギャアアアア!」

 

 全体的に青っぽい肌の、凶悪な面のアザラシみてぇなバケモンだ!

 

〈孝矢〉「怪獣かよ! こんな時に!!」

 

〈タイタス〉『あれは確か、伝説の深海怪獣コダラー! 何故河にいるのだ!?』

 

 コダラーっつぅ怪獣は、今度はオレたちが乗ってる船に向かってきた!

 

〈穏〉「ひゃああ~!? こっちに来ます~!!」

 

〈孫権〉「くっ……!!」

 

 兵士たちが慌てて櫂を手に取って逃れようとするが、船と水中の生物とじゃスピードが全然違げぇ。とても避けられるような動きを出せねぇ。

 

〈錦帆賊〉「ひゃははッ! お頭、見て下せぇ! あいつら、罰が当たったんですぜ!」

 

〈錦帆賊〉「汚ねぇ手なんか使うからだ!」

 

 オレたちの窮地を、錦帆賊が嘲笑う声がした。くッ、あいつら……!

 

〈甘寧〉「――馬鹿者どもっ! 貴様らそれでも、長江に生きる男か!?」

 

〈錦帆賊〉「えッ……!?」

 

〈錦帆賊〉「お、お頭……?」

 

 ん……? 甘寧が部下たちを一喝した……。

 

〈甘寧〉「最早これは戦ではなくなった! 天災を前に、敵も味方もあるものか! 人の死に対し、指を差して嗤おうなどと下衆の行い! 恥を知れっ!!」

 

〈錦帆賊〉「す、すいやせん……!」

 

〈甘寧〉「――すぐに櫂を取れ! 我々が怪物の前に出て、奴の気を引きつけるのだ!」

 

〈錦帆賊〉「ええぇぇッ!? そ、それはいくら何でも無茶……!」

 

〈甘寧〉「我らの船ならば小回りも利く! 早くするのだっ!」

 

 か、甘寧……! 拠点を陥とそうとしたオレたちを、救おうとしてくれるのか……!? ぶ、武人肌すぎんだろ……!!

 

〈孫権〉「来るな、興覇っ! 戦はまだ続いているぞっ!!」

 

 だが、それを孫権が止めた!

 

〈甘寧〉「仲謀!? 何を言う!?」

 

〈孫権〉「我らの勝利は、お前たちを孫呉に得ること! お前たちが死んでは、この戦の犠牲が無意味となってしまう!」

 

〈甘寧〉「まだそんなことを言っているのかっ! このままでは次に死ぬのは、他ならぬ貴様だぞっ!!」

 

〈孫権〉「私を見くびるな興覇!! お前を得られぬのならば……私はここで死ぬっ!! その覚悟で戦に臨んだのだ!!」

 

〈甘寧〉「なっ……!!」

 

 孫権が見せつけた覚悟に、甘寧が絶句してた。

 

〈孝矢〉「――言うじゃねぇか、仲謀! けど一つ、間違いがあるぜ」

 

〈孫権〉「何?」

 

 オレは孫権の横を通り抜けながら、船の縁へ――向かってくるコダラーへ走ってく。

 

〈孝矢〉「オメーも甘寧も、ここじゃ死なねぇのさッ!!」

 

 そして勢いつけて、船から思いっきりジャンプ!

 

〈孫権〉「み、南出孝矢っ!」

 

[カモン!]

 

〈孝矢〉「いっくぜタイタス!」

 

 船から水面へ跳びながら、タイタスキーホルダーを掴む!

 

〈孝矢〉「バディー……ゴー!!」

 

 叫びながら水の中に飛び込んだ直後に、コダラーの影が甲板に覆い被さる!

 

「グギャアアアア!」

 

 その間に、巨大化したタイタスが水中から飛び出した!

 

[ウルトラマンタイタス!]

「ムゥンッ!」

「グギャアアアア!」

 

 タイタスのダブルバイセップスの腕が、コダラーをはね返す!

 

〈タイタス〉『仲謀たちの勝負の邪魔はさせん! お前の相手は、私のウルトラマッスルだ!!』

 

 グッと胸筋を強調したタイタスが堂々宣言した!

 




 
伝説深海怪獣コダラー

 孫軍と錦帆賊の戦に突然乱入し、孫軍の船を襲った怪獣。滅亡した古代文明の伝説に「深海に閉ざされし者」として記されており、知的生命体の築く文明が地球環境を一定水準を超えて破壊すると、それを引き金にして目覚めて文明をリセットするという。陸上での動きは鈍いが筋力は恐ろしく高く、また受けた光線を倍にして反射する能力を持っている。この能力でウルトラマングレートを一度完全敗北させている。
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