奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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劉備一行、薊へ旅立つのこと

 

〈兵士たち〉「はぁッ! はぁぁッ!」

 

〈愛紗〉「腕で振り回すのではない! 足と! 腰を入れるのだ! そんな気合いでは勝てる戦にも勝てんぞ!」

 

〈兵士たち〉「はいッ!」

 

 俺がこの三国志に似た世界に来てから、数週間ばかり。俺たちが留まってる街の城壁の外に広がる平野で、愛紗が何十人かの兵士たちを相手に、槍の指導をつけてた。

 俺たちは今も、初めの街に留まってる。もちろん、ただ滞在してるだけじゃない。盗賊や怪獣の襲撃で警備の兵が倒れ、逃げ出してしまった役人の代わりが来るまでの、用心棒兼義勇兵の指南役を果たしてるのだった。

 

〈一刀〉「お疲れさま、愛紗」

 

〈タイガ〉『今日も精が出るな』

 

 兵士たちの指南の合間に、愛紗にタイガと声を掛ける。

 

〈愛紗〉「ああ、ご主人様、勇者様。どうなさいました?」

 

〈一刀〉「……何か、その呼び方も板についてきたね」

 

〈愛紗〉「……似合いませんか?」

 

〈一刀〉「いや、くすぐったいって思うだけ。それより桃香、見なかった?」

 

〈愛紗〉「桃香さまなら、いつものところでしょう」

 

〈一刀〉「そっか、了解。あ……兵士さんたちの訓練はどう?」

 

〈愛紗〉「まぁ、最初の頃よりは形になったと思いますが……まだまだですね」

 

〈一刀〉「……愛紗基準で考えるのは、なかなか大変だと思うよ」

 

〈タイガ〉『愛紗の実力はかなりのものだからな。色んな戦士を見てきた俺の目からしても、大きさの違いを抜きにすれば、上位に食い込むぜ』

 

〈愛紗〉「ありがとうございます」

 

 褒められた愛紗が、タイガにふと尋ね返した。

 

〈愛紗〉「そういえば、勇者様は武器をお使いにならないのですか?」

 

〈タイガ〉『えッ、俺?』

 

〈愛紗〉「勇者様は素手で戦われていますが、危険とは思われないのでしょうか? 私からすると、いささか疑問でして」

 

 そういえばそうだ。ウルトラマンの戦闘は、腕から光線が出るとはいえ、基本徒手空拳だ。テレビ番組なら、撮影の都合といえばそこまでだが、これは現実の戦闘。愛紗の言う通り、武器を使った方が安全ではある。

 そのことについて、タイガの回答は。

 

〈タイガ〉『戦闘の基本は己の肉体だからな。究極的には、自分の身体が一番信頼できる武器だ』

 

〈愛紗〉「確かに、武器に最も必要なのは信頼性ですが」

 

〈タイガ〉『ウルトラマンのレベルまで頑強な肉体になると、基本は素手の格闘で、牽制や決め技に光線技を用いるのが一番安定した戦い方になるのさ。まぁ、武器を使ってなかった訳でもないけどな』

 

〈一刀〉「そんなこと言って、武器を扱うのが下手だからなんじゃないか?」

 

〈タイガ〉『なッ!? そんなことないからな! ホントだからな!』

 

 俺のからかいの言葉にタイガがムキになるので、俺と愛紗は思わず噴き出してしまった。

 

 

 

 街外れの畑まで来て、桃香の姿を見つける。

 

〈一刀〉「ああ……いたいた」

 

 桃香は農家の人たちに混じって、畑仕事の真っ最中だった。

 

〈桃香〉「あ、ご主人様、勇者様ー! 倉庫のお手伝いは終わったの?」

 

〈一刀〉「何とかね……」

 

〈タイガ〉『全く、あれくらいでクタクタなんて情けないぜ。もっと身体を鍛えな。そうじゃないとこの先、この世界で生きてくの、相当しんどいぜ?』

 

〈一刀〉「言われなくたって分かってるって……」

 

〈桃香〉「でも、不思議だよね、ご主人様。算術はわたしや愛紗ちゃんよりずっと詳しいのに、読み書きとか、牛や馬を使うとかは全然出来ないって」

 

〈一刀〉「計算は一緒でも、字は天の国と違うからなぁ」

 

 言葉は不思議なことに通じるが、文字の方は違った。同じ漢字圏だから何とかなるんじゃ……なんてのは甘い考えだった。意味が違うことだって珍しくないから……。

 しかし数学は万国で通用する。ここだと算術が出来る人材は貴重だから、出来る仕事がない訳でもなかったのは幸いだ。必要最低限の字も合間合間に覚えていってるので、手伝えることは少しずつ増えてる。

 みんなも、もしもの時のために、数学は勉強しておこう!

 

〈一刀〉「桃香のところも、大変そうだな」

 

〈桃香〉「でも、この辺りのお野菜はもうすぐ収穫できそうなんだ。そうなったら、食べ物の事情はもうちょっと楽になると思うんだよね」

 

〈一刀〉「……何か、馴染みすぎてない?」

 

〈桃香〉「あはは……。愛紗ちゃんたちと旅に出る前は、筵を織ったり畑仕事をしてただけだしねぇ」

 

 なるほどな……。劉備も、皇帝の血筋とは言われてても、いわゆる没落貴族で、平民と同じ生活をしてたというしな。

 

〈桃香〉「でも……これでいいのかなぁって思っちゃうよね」

 

〈一刀〉「ま、次のお役人が来るまでは、ここを守るのが仕事だよ。焦っても仕方ない」

 

〈タイガ〉『ああ。事を急くのは危ないぜ。俺も、とんでもないことになったもんだ……』

 

 ため息交じりのタイガの言葉には、妙な実感がある。ウルトラマンだし、色々あったんだろう……。

 

〈一刀〉「……この後は、確か広陽郡というところを目指す予定なんだよな」

 

〈桃香〉「うん。白蓮ちゃん……あ、わたしのお友達で、公孫賛さんって言うんだけど、その子が薊の都にいるって噂を聞いたから、次はそこに行ってみるつもり」

 

 公孫賛……確か大陸の北の方で活躍した人だったな。遂に桃香たち三人以外の武将と出会うことになるのか。

 

〈鈴々〉「あ、お姉ちゃんたち! こんなところにいたのだ!」

 

〈桃香〉「どうしたの、鈴々ちゃん」

 

〈一刀〉「まさか、また賊か怪獣か?」

 

〈鈴々〉「そうじゃないのだ。何か次のお役人さんが着いたから、お姉ちゃんたちにも来てほしいって!!」

 

〈一刀〉「……えッ、もう来たの? もっと掛かるって話じゃなかった?」

 

 電話もネットもない世界、情報の伝達手段は全てアナログだ。人の移動だって、馬の走る以上の速度は出ないし、それを考えれば、この時期に次の役人が来るっていうのはかなり早い。

 

〈桃香〉「襲われてる報告は早くからしてたって言うし、刺史さまも急いで動いてくれたんじゃないかな」

 

 愛紗たちの話じゃ、役人は軒並み腐敗してるってことだったけど、そんな世の中でもちゃんと仕事してる人はいるんだなぁ。

 

〈鈴々〉「お姉ちゃんたちは先に行ってて! 鈴々は、愛紗を捜してから行くのだ!」

 

〈一刀〉「愛紗なら兵士の訓練してたぞー」

 

〈鈴々〉「分かったのだ!!」

 

 鈴々が走ってくと、俺と桃香は連れ立って、城壁の内側に向かっていった。

 

 

 

 そして役人が来てるという部屋の近くの廊下で、愛紗と合流したのだが……何故か、鈴々が一緒ではなかった。

 

〈愛紗〉「全く、鈴々はどこに行ったのだ!」

 

〈一刀〉「俺、兵士の訓練してたってちゃんと行ったぞ!?」

 

〈桃香〉「もうしょうがないよ。三人で挨拶しよう!」

 

 あんまり待たせたら失礼だ。やむなく、俺と桃香と愛紗だけで入室していく。

 

〈桃香〉「すみません! 遅くなりましたー!」

 

 その時には、もう街の人と役人との話は終わったみたいだった。

 役人と思しき人は、意外にも俺とそう変わらない年齢くらいの、眼鏡を掛けた女の子だった。まぁ、もう驚くようなことじゃないけど。

 

〈???〉「お気になさらず。あなた方が、この街を守るのに尽力して下さった……劉玄徳殿ですね?」

 

〈桃香〉「ふぇっ!? わたし、お名前って名乗りましたっけ?」

 

〈???〉「ああ……失礼しました。お名前は伯珪殿から伺っていたもので」

 

〈桃香〉「伯珪……」

 

 伯珪は、確か公孫賛の字だ。

 

〈桃香〉「あの……公孫賛さまって、今何のお仕事をしてるんですか?」

 

 それに、眼鏡の子と一緒にいる、ポニーテールの女の子が意外そうに答える。

 

〈???〉「え? 伯珪さん、今幽州の刺史だよ?」

 

〈桃香〉「……ええええええっ!?」

 

〈一刀〉「え……桃香、知らなかったの!?」

 

 刺史というのは、郡どころか州のトップだ。つまり幽州の人間で、公孫賛より偉い人はいないということ。それを知らないなんて……。

 

〈桃香〉「だ、だって街の人はみんな刺史さまって言うだけだったし。まさかそんなに偉くなってるなんて思わないよぅ。てっきり、州の役人とか、将軍とかになってるんだろうなぁって……」

 

〈愛紗〉「桃香さま……」

 

〈一刀〉「桃香……」

 

〈桃香〉「あうぅ……」

 

〈???〉「あはは。面白いねぇ、劉備さん」

 

〈???〉「まぁ、伯珪殿もまだ刺史に任命されて間もありませんし。名前が知られていないのも仕方のないところでしょう」

 

 眼鏡の子が慰めるように告げて、椅子から立ち上がった。

 

〈戯志才〉「名乗るのが遅れました。私は戯志才と申します。各地を巡り、見識を深める旅の途中で……今は伯珪殿のお世話になっている者です」

 

〈馬岱〉「馬岱だよ。同じく伯珪さんの食客で、今は戯志才さんたちの用心棒って感じかな」

 

 眼鏡の子とポニーテールの子がそう名乗った。馬岱は、確か「ここにいるぞ!」の人で……戯志才はどんな人だったか。かなり序盤に出てくるような人だったような……。

 

〈桃香〉「じゃあ、戯志才さんがこの街の新しいお役人さま?」

 

 しかし、戯志才は否定する。

 

〈戯志才〉「いえ、私もただの客分ですので。役人は……」

 

 本当の役人として出てきたのは、戯志才と馬岱よりも更に小柄の女の子だった。

 

〈程立〉「程立と申しますー」

 

〈桃香〉「あ……はい。よろしくお願いします」

 

 こんなに小さい女の子が、正規の役人なんて……。よく分からない世界だ。

 

〈戯志才〉「それと、彼女の補佐がいるのですが、彼女には既に引き継ぎの作業に入ってもらっています」

 

〈桃香〉「ええっ!? もうお仕事ですか?」

 

 驚く桃香。そりゃあそうだ。さっき到着したって聞いたばかりだぞ。

 

〈程立〉「恥ずかしがり屋さんなのでー」

 

〈馬岱〉「そうなんだよ。たんぽぽも旅の間、一回も話したことがなくってさー」

 

〈一刀〉「どうしてそんな子が補佐に……?」

 

〈戯志才〉「古い知り合いから、社会勉強に連れ出してくれと頼まれまして。対面の仕事以外では優秀なのですが……」

 

〈程立〉「……ぐー」

 

 何故か、急に程立が立ったまま寝た。の、のんきな……。

 

〈戯志才〉「風。起きて下さい。話はもう終わりましたよ」

 

〈程立〉「……おおっ。で、どこまでお話ししましたかー?」

 

〈戯志才〉「特に進んでいませんよ。で、ここからが本題なのですが……」

 

 そう前置きして、戯志才は俺たちにあることを告げた……。

 

 

 

 それから数日後、俺たちは戯志才や馬岱と一緒に、啄郡と広陽郡をつなぐ街道を馬で進んでた。

 

〈馬岱〉「いやはや。話が早くて助かったよー」

 

〈桃香〉「わたしたちもこれから伯珪ちゃんに会いに行こうと思ってたから、こっちこそ助かったよ」

 

 戯志才の本題というのは、何てことない、桃香たちを公孫賛の待つ幽州の都・薊に案内することだった。渡りに船とはこのことだ。

 

〈馬岱〉「でも、街の人たちからすごく残念がられてたね、劉備さん」

 

〈桃香〉「うん。ああ引き留められると、残っても良かったかなぁ……ってちょっと思っちゃうね」

 

 苦笑する桃香。同じ州とはいえ、電車や自動車なんて便利なものはないんだ。郡を跨ぐだけでも命懸け。違う土地にいる人に、平民が易々と会いに行くなんてことは、出来やしない。土地を離れる人とは、それが今生の別れかもしれないんだ。

 

〈戯志才〉「とはいえ幽州刺史の伯珪殿の麾下に入れば、あの街に戻る場面もあるでしょう」

 

〈愛紗〉「そうです。まずは我らも、もっと力を手に入れないと」

 

〈桃香〉「そうだね……。わたしたち、五人だけだもんね」

 

 愛紗が鍛えてた兵たちも、ほとんどが同行したいと申し出てくれたんだけど、街を放置する訳にはいかない。みんな、守りに残してきたのだった。こっちとしても、苦しい判断ではあるが……。

 

〈戯志才〉「五人……? どう見ても、四人しかいませんでしたが」

 

〈桃香〉「あっ……!?」

 

〈一刀〉「ああいやいや、四人で合ってますよ! 嫌だなぁ、桃香ったら」

 

〈愛紗〉「し、しっかりなさって下さい、桃香さま」

 

〈桃香〉「あ、あははは! ごめんね!」

 

 冷や汗垂らしてごまかす俺たち。俺が天の御遣いってことは、いずれは広く喧伝するつもりだけど、それは危険を呼び込むことにもつながる。今の状況ではそれをはねのけるには非常に厳しいので、しばらくは伏せることにしたのだ。タイガが俺たち以外の人の前でしゃべらないのも、それが理由だ。

 戯志才や馬岱が悪い人だとは思わないけど、噂ってどこからどう広がるか分からないからな……。少なくとも薊に着くまでは、タイガのことは気取られないようにしないと……。

 

〈戯志才〉「……まぁ、大陸を舞台に旗揚げしようというのなら、四人が五人でも差はありませんが。力なき思想に、意味はありませんからね」

 

〈馬岱〉「でも戯志才さんだって、頭は良いけど別に戦える訳じゃないよね?」

 

〈戯志才〉「別に腕っ節だけが力ではありません。思想無き力は、ただの暴力です。……必要最低限のことも出来ないのは、それ以前の問題ですが」

 

〈一刀〉「お、おう……」

 

 戯志才が覚めた目を向けたのは、俺の方。

 

〈馬岱〉「……そうだねぇ。馬に乗ったことない人なんて、初めて見たよ……」

 

〈一刀〉「い、一応は乗ってるだろ……!!」

 

 俺の跨る馬は、この五人の中で最後尾。乗馬はこれが初めてなので、ついてくだけで必死なのだ……。

 

〈馬岱〉「それは掴まってるって言うんだよ。ねぇ?」

 

〈愛紗〉「ええ。これからも乗る機会は多いでしょうし、街にいる間に訓練しておけば良かったですね」

 

〈桃香〉「あ、あはは……。ご主人様、薊に着いたら練習しようね」

 

 うう、恥ずかしい……。話題をすり替えよう。

 

〈一刀〉「え、ええっと……そういえば……さ。結局、新しいお役人の……もう一人って、どんな人だったの?」

 

〈愛紗〉「結局桃香さまも、もう一人には挨拶できなかったのですよね?」

 

〈桃香〉「そうだけど、程立さんも次に来る時までには人見知りを治しておくって言ってくれたから」

 

〈馬岱〉「話したことはないけど、すっごくかわいい子だから楽しみにしとくといいよ」

 

〈一刀〉「え、そうだったの!?」

 

〈桃香〉「ご主人様……?」

 

〈愛紗〉「馬に掴まるのに必死でも、そこには反応するのですね」

 

〈一刀〉「え、あ、いや……あはは」

 

 愛想笑いする俺の胸元で、タイガが呆れてため息を吐いたのが伝わってきた。くそぅ……。

 

〈戯志才〉「……時に、あなたは随分と見慣れない格好をしていますね」

 

 不意に、戯志才が俺に話しかけてきた。

 

〈一刀〉「えッ、そ、そうでしょうか」

 

〈戯志才〉「劉備殿たちから主人と仰がれているからには、高貴な身分と窺いますが」

 

〈桃香〉「そ、そうなんですよ! さる事情で、詳しいことはお教え出来ないんですけど、わたしたちにとってすごく大事なお人でして……」

 

〈戯志才〉「……話は変わりますが、先ほどの街で、御仏の化身とも噂される巨人が、怪物から街を守ったという話を聞きました。もちろんご存じですよね?」

 

〈愛紗〉「……それが何か?」

 

 少し身構える愛紗。戯志才が、何か探りを入れてるかもしれないと感じたのだろう。

 

〈戯志才〉「その巨人は銀色の身体で、角が生えていたとか……」

 

〈愛紗〉「ああ、その通りだが……」

 

〈戯志才〉「……」

 

〈愛紗〉「……?」

 

 戯志才は何かを考え込みながら、俺に流し目を送った。どうにも掴めない反応に、俺たちは怪訝な顔になる。

 何だ……? もしかして、天の御遣いについて何かを知ってるのか……?

 そこまで考えが及んだところで、街道の向こうから、人の怒号と鉄と鉄のぶつかり合うような激しい音が聞こえてきた。

 

〈一刀〉「ん? この音って……」

 

〈愛紗〉「誰かが戦っているようですね」

 

 そこに、先の様子を見に行ってた鈴々が慌てて戻ってくる。

 

〈鈴々〉「大変なのだ! 向こうで、隊商が襲われてるのだ!」

 

 その一報で、桃香たちの顔つきが急速に変わった。

 

〈桃香〉「……戯志才さん!」

 

〈戯志才〉「入り用なら、我らの兵を半分お貸ししましょう。存分にお使い下さい」

 

〈愛紗〉「話が早いな。助かる」

 

〈戯志才〉「馬岱殿は残りの半分で、我々の警護と周辺警戒をお願いします。賊の伏兵がいるかもしれません」

 

〈馬岱〉「えーっ。たんぽぽも戦いたーい!」

 

〈愛紗〉「なら馬岱、戯志才、後方は任せたぞ! 行くぞ鈴々!」

 

〈鈴々〉「分かったのだ!」

 

 戯志才はこういう事態も想定してたのだろう、兵の半分がすぐに進み出て、愛紗と鈴々について走り出していった。

 

〈桃香〉「ご主人様、わたしたちも行こう!」

 

〈一刀〉「お、おう……!」

 

 その後に続く俺と桃香。速度を上げる馬に振り落とされないよう、もっとしっかりとしがみついた。

 

 

 

 俺と桃香が到着した時には、愛紗と鈴々が、顔が瓜二つの二人の女の子を捕らえてる賊と対峙してた。

 

〈???〉「助けてぇー!」

 

〈愛紗〉「貴様ら! その娘に何をする気だ!」

 

〈チビ〉「さらった娘に何するかなんて、一つしかねぇだろ!」

 

〈アニキ〉「それとも、一つ一つ細かく聞かせてほしいのか? うん?」

 

〈愛紗〉「こっ、このゲスが……! 容赦はせんぞっ!!」

 

〈アニキ〉「お前らも仲間に加えてやるよ!」

 

 賊のリーダー連中の発言に怒り心頭の愛紗を先頭に、こちら側の兵団が鬨の声を上げて賊にぶつかっていく。賊の集団も戦意剥き出しに、迎え撃つ構えだ。

 遂に、この世界で、人と人の戦闘に初めて立ち会うことになる……!

 


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