視察を終え、日が傾いていく中、鎗輔と華琳は待ち合わせ場所である、突き当たりの門の前に到着する。ほどなくして他の二組もやって来て、合流したのだが……。
〈華琳〉「……どうしてみんな、そろいもそろって竹籠を抱えているのかしら」
鎗輔のみならず、春蘭も、秋蘭も、別れる前にはなかった竹籠を持参していることに華琳が突っ込んだ。
まずは秋蘭が弁明。
〈秋蘭〉「今朝、部屋の籠の底が抜けているのに気づきまして……」
〈華琳〉「……なら、仕方ないわね。どうせ秋蘭のことだから、気になって仕方なかったのでしょう?」
〈秋蘭〉「は。直そうとは思っていたのですが、こればかりは何とも……」
〈華侖〉「あたしは季衣と香風にお土産を買ってきたっすよ!」
華侖が吹き戻しを吹きながらそう述べた。
〈華琳〉「そう、喜んでくれるといいわね。……で、春蘭と栄華は? 何か山ほど入れているようだけれど……」
春蘭の籠には、何故か大量の衣類が詰め込まれている。
〈春蘭〉「こっ、これも……季衣の土産にございます!」
〈栄華〉「え、ええ……。それと、香風にも」
妙に歯切れが悪い二人。一体、何をしていたのか。
〈華琳〉「……そう。土産もいいけれど、ほどほどになさいね」
〈栄華〉「ええ。そうしますわ」
〈秋蘭〉「で、どうして東雲も籠を背負っているのだ?」
〈鎗輔〉「……ちょっとした弁償です……」
〈秋蘭〉「弁償? 話が見えぬが……何か事情があるのだな」
〈鎗輔〉「ええ、はい……」
籠を持っている理由を聞くと、華琳が本来の目的について問うた。
〈華琳〉「それで、視察はちゃんと済ませたのでしょうね。籠なり土産なりを選ぶのに時間を掛け過ぎたとは言わせないわよ」
〈華侖〉「もちろんっす!」
〈栄華〉「お、お任せ下さいまし……」
何故か栄華は声が震えている。
〈華琳〉「ならいいわ。帰ったら今回の視察の件、報告書に纏めて提出するように。……鎗輔もね」
〈鎗輔〉「えッ、ぼくもですか?」
〈フーマ〉『一緒に見て回ってただろ』
〈華琳〉「こういう資料は質もだけれど、色々な視点からの報告が大切なのよ。その点で言うなら、あなたたちの視点が最も重要になるわ。……分かったわね?」
〈鎗輔〉「……分かりました」
鎗輔がうなずいていると――不意に、覚えのない声が一同に掛けられた。
「そこの、お若いの……」
〈華琳〉「……誰?」
振り返ると、道端に布を目深に被った人物が腰を落としていた。顔は見えず、低くしわがれた声は老婆のようにも、若い男が無理に作っているようにも聞こえる……年齢も、性別も不確かという、奇妙な雰囲気であった。
〈栄華〉「何ですの? 占い師?」
〈春蘭〉「怪しいな……。よもや、貴様が目撃情報のあった不審人物かっ!」
〈華琳〉「……二人とも、控えなさい」
春蘭が身構えるが、華琳は何かを感じ取ったのか、それを制した。
〈春蘭〉「は? ……はっ」
春蘭が構えを解くと、占い師らしき人物は華琳に向かって、こう告げ出す。
〈占い師〉「強い相が見えるの……。稀にすら見たことの無い、強い強い相じゃ」
〈華琳〉「あら、一体何が見えると? 言ってごらんなさい」
〈占い師〉「力の有る相じゃ。兵を従え、知を尊び……。お主が持つは、この国の器を満たし、繁らせ栄えさせることの出来る強い相。この国にとって、稀代の名臣となる相じゃ……」
〈春蘭〉「ほほぅ。良く分かっているではないか」
華琳が持ち上げられて、春蘭が気を良くするが、
〈占い師〉「……国にそれだけの器があれば……じゃがの」
〈栄華〉「……どういうことですの?」
〈占い師〉「お主の性、今のひび割れた国の器では収まり切らぬ。その野心、器の内に留まることを知らず……溢れた野心は、国を浸し、野を侵し……いずれ、遥か地の果てまで名を轟かせる、類い稀なる奸雄となるであろう」
奸雄、という言葉に、秋蘭と栄華が目を鋭くする。
〈秋蘭〉「貴様! 華琳さまを愚弄する気かっ……!」
〈栄華〉「それ以上を口にするならば、容赦は致しませんわよ!」
〈華琳〉「秋蘭! 栄華!」
しかし言われた華琳当人から制止された。
〈秋蘭〉「……し、しかし華琳さま」
〈華琳〉「構うことはないわ。私が遥か後の世まで名を残すという予言は、既にされているもの」
それを言った当人――鎗輔は、驚いた顔で占い師を見つめていた。
治世の能臣、乱世の奸雄……それは月旦評で知られる許劭が曹操に告げた言葉だ。それと同じことを、目の前の占い師は唱えた。偶然だろうか? それとも、この人が許劭なのか。しかしもしそうなら、正体を隠している理由がないが……。
〈占い師〉「それから、そこのお主……」
〈鎗輔〉「……え? は、はい」
占い師の矛先が自分に向いたので、鎗輔はハッと我に返った。
〈占い師〉「お主の行く先には、多大な艱難辛苦が待ち受けておる……。恐らくは、お主の想像を優に超えるものじゃ……。時には、心が張り裂けんばかりの思いもするやもしれん」
〈鎗輔〉「は、はぁ……」
〈占い師〉「じゃが、苦難を乗り越えた先に、補って余りある栄光を掴み取れることじゃろう。諦めぬことじゃ……」
〈鎗輔〉「あ、ありがとうございます……」
〈占い師〉「ただし」
占い師が言葉を区切り、重々しく告げる。
〈占い師〉「大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬようになされ。さもなくば、待つものは破滅と離別に変わる……。くれぐれも、用心なされよ?」
〈鎗輔〉「えッ……? は、はい……」
鎗輔への予言を端から聞いていた華侖は、秋蘭と春蘭に囁く。
〈華侖〉「……この人、鎗輔っちに苦難に立ち向かえと言ってるっすか? それとも逆らうなって言ってるっすか? どっちなんすか?」
〈秋蘭〉「私にも分からん……。どうも、要領を得ない内容だな……」
〈春蘭〉「華琳さまによく従い、どんな時も支えよという意味だろう。しっかり働かねば、わたしが首と胴をいつでも離ればなれにしてやるからな!」
〈鎗輔〉「き、気をつけます……」
己なりの解釈をした春蘭の忠告に頭を下げる鎗輔。一方で、華琳は占い師に怪訝な目を向けていた。
自分の評価だけならまだしも、鎗輔への予言は、彼の事情を知っているとしか思えないような内容だ。占いの力か? それとも……この占い師も、何か特殊な事情を抱えているのか……たとえば、天の国に関わりがあるといった……。
――占い師の予言を聞いている華琳たち一行の様子を、建物の陰から密かに監視している、ローブ姿の怪人物がいた。
ローブの男は懐から、この世界には概念も存在しない武器――銃を取り出し、左腕を銃架にして、照準をぴったりと――鎗輔の頭に合わせた。
〈フーマ〉『!?』
鎗輔の胸元のフーマが、一瞬銃口が反射した光に気づき、叫んだ。
〈フーマ〉『伏せろ鎗輔ッ!』
〈鎗輔〉「え?」
〈華琳〉「っ!!」
鎗輔が反応するより早く、事態を察した華琳が彼の腕をぐいと引いて無理矢理姿勢を下げさせた。
〈鎗輔〉「わッ!?」
かがんだ彼の頭上を、光弾が横切る。外れた光弾は延長線上の壁を穿った。
〈鎗輔〉「えッ……!?」
突然の事態に騒然となる一同と、周囲。
〈栄華〉「な、何事ですの!?」
〈華侖〉「何か飛んできたっす! 矢!? 針!?」
〈秋蘭〉「あそこだっ!」
〈???〉『やべッ! しくった!』
秋蘭が指差した先では、狙撃に失敗したローブの男が慌てて身を翻して逃亡するところであった。
〈春蘭〉「逃がさんっ! 待てぇぇぇぇぇ――――――っ!!」
すぐに春蘭と秋蘭が追いかけていく。華侖と栄華は、咄嗟にかわしたので倒れ込んだ鎗輔と華琳を助け起こす。
〈華侖〉「華琳姉ぇ! 鎗輔っち! 大丈夫っすか!?」
〈栄華〉「お姉様、お怪我はありませんか!?」
〈華琳〉「私は大丈夫よ。鎗輔も、何ともないわね?」
〈鎗輔〉「は、はい。ありがとうございます……」
通りを往く人たちもざわついている中、華琳はふと背後に振り返った。
〈華琳〉「……いない……!」
先ほどまで話をしていた占い師がいつの間にか、影も形もなくなっていた。
〈???〉『くそぅッ!』
〈春蘭〉「待てぇぇぇぇ―――――――――いっ!! ほんとに逃げ足早いなっ!」
〈秋蘭〉「弓があれば、足を射抜いてやるのだがな……!」
春蘭と秋蘭は、裏路地を走って逃げるローブの男を追い回している。が、二人の足を以てしても、男はなかなか追いつけないほどに速かった。
しかし、その行く手に騒動を聞きつけた季衣と香風が兵を連れて駆けつけてくる。
〈香風〉「見つけた……!」
〈季衣〉「止まれっ! もう逃げ場はないぞーっ!」
〈???〉『やべぇッ!』
〈春蘭〉「おおっ、季衣! 香風!」
〈秋蘭〉「いいところに来た!」
挟み撃ちの形となったローブの男が停止すると、春蘭が一気にスピードを上げ、タックルを決めた。
〈春蘭〉「でぇぇぇ――――いっ!」
〈???〉『ぐわぁッ!』
そのまま引きずり倒した男のフードに手を掛ける。
〈春蘭〉「怪しい奴め! 顔を見せろぉっ!」
そして露出された顔に――全員が驚愕した。
〈春蘭〉「な、何ぃぃぃっ!?」
〈秋蘭〉「あの、顔は……!?」
〈季衣〉「に……人間じゃない!?」
〈香風〉「化け物……!」
思わず手を放した春蘭から逃れ、立ち上がったのは――複眼と触角を持つ、虫に酷似した頭部の怪人。
昆虫宇宙人クカラッチ星人は、懐からアンテナの伸びた通信機のような機械を取り出した。
〈クカラッチ〉『こうなったらぁ……! 出てこいッ、モンスアーガー!!』
クカラッチ星人の命令が、怪獣コントローラーを通して電波で発せられた。
陳留の城壁の外の地面が急激に裂け、地中から巨大生物が這い出てくる。
「ガアアオウ!」
全身が赤い装甲で覆われた、細身の恐竜型怪獣。城壁よりも頭高が高いモンスアーガーが陳留の街を覗き込むように首を伸ばしてくる。
〈市民〉「うわああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!」
〈市民〉「怪物だぁぁぁあああああああああッ!!」
怪獣の出現に、街中でパニックが発生する。華琳たちも思わず身を固める。
〈華琳〉「怪獣……!」
〈華侖〉「わわっ!? こっち見てるっすよ!」
クカラッチ星人によって呼び出されたモンスアーガーの狙いは、当然鎗輔だ。
対する鎗輔も、判断が早かった。タイガスパークのレバーを操作して待機状態にする。
[タイガスパーク、スタンバイ]
〈鎗輔〉「フーマ!」
すかさずフーマキーホルダーを掴んで、右手に握り直す。キーホルダーからのエネルギーをスフィアがキャッチ。
『ハァァァァ……フッ!』
〈鎗輔〉「Buddy Go!!」
突き上げたスパークから閃光が生じ、鎗輔の肉体を作り変えていく。
[ウルトラマンフーマ、変身完了]
「セイヤッ!」
一気に空高く飛び出したフーマが、モンスアーガーの皿のようになっている頭頂部目掛け、まっすぐ飛び蹴りを仕掛ける。
「ハァッ!」
「ガアアオウ!」
だが先制攻撃は、モンスアーガーが回した手の甲によって防がれた。そして弾き返されるフーマ。
〈華侖〉「あぁっ! 防御されたっす!」
〈栄華〉「惜しいですわね……!」
しかしフーマは軽やかに着地。ザッと足で土をかきながら、反転してモンスアーガーと向き合った。
〈季衣〉「あっ、フーマ兄ちゃんだー!」
怪獣の出現、それとフーマの登場に、季衣たちも一瞬目を奪われていた。
だがすぐに秋蘭が我に返る。
〈秋蘭〉「虫男がいないぞ!」
〈春蘭〉「何ぃ!? いつの間に……!」
〈香風〉「逃げ足の速い……」
クカラッチ星人は一瞬の隙を突いて、この場から逃げ去っていた。秋蘭と春蘭は手早く部下たちに指示を出す。
〈秋蘭〉「まだそう遠くへは行っていないはずだ! 手分けして捜すのだ! 香風は私について参れ!」
〈香風〉「了解……」
〈春蘭〉「季衣はわたしとだ!」
〈季衣〉「わっかりました!」
〈春蘭〉「おのれ怪人め! 華琳さまの街で狼藉を働いて、ただで済むと思うなよ!」
一方のクカラッチ星人は、モンスアーガーとフーマがにらみ合っている場面がよく見える建物の屋上に上って、コントローラー越しにモンスアーガーに命令を飛ばした。
〈クカラッチ〉『モンスアーガー! ウルトラマンをたたんじまえッ!』
「ガアアオウ!」
モンスアーガーは肩を怒らせ、腕を前に突き出しながらフーマに突撃していく。対するフーマは、すぐにぶつかり合おうとはしなかった。
〈鎗輔〉『「まずは、怪獣を街から遠ざけて!」』
〈フーマ〉『ああ!』
フーマは素早い動きでモンスアーガーから逃れつつ、手招きして挑発する。
〈フーマ〉『へへッ、捕まえてみろ鈍亀!』
「ガアアオウ!」
モンスアーガーはフーマに釣られて、陳留からどんどんと引き離されていく。十分距離を離したところで、フーマも攻勢に転じた。
「セイヤッ!」
「ガアアオウ!」
得意のスピード戦術でモンスアーガーの周りを駆け回り、翻弄。モンスアーガーはそれについていけるほど素早くはなかった。
背後を取ったところで、フーマが光の手裏剣を作り出す。
〈フーマ〉『食らえ! 極星光波手裏剣!』
無防備な背面に、手裏剣を繰り出すが――。
装甲に当たった手裏剣は、キンッ、と乾いた音を立てて呆気なくはね返った。
〈フーマ〉『何!?』
〈鎗輔〉『「硬い……!」』
「ガアアオウ!」
振り向いたモンスアーガーのパンチが、フーマを大きく弾き飛ばす。
〈フーマ〉『ぐわッ! 細い身体のくせに、結構なパワーだぜ……!』
「ガアアオウ!」
追撃しようとしてくるモンスアーガーから逃れ、フーマは相手の周囲をグルグル回りながら、八方より光波手裏剣を浴びせ続けた。
「セイヤッ!」
だがどこから食らわせても、手裏剣はモンスアーガーに傷を負わすことなく全て弾かれる。
〈フーマ〉『駄目か……! どこにも隙がねぇぜ……!』
〈鎗輔〉『「これじゃ、先にエネルギーが尽きるよ!」』
警告する鎗輔。フーマもうなずき、モンスアーガーの正面で立ち止まって攻撃の手を変更する。
〈フーマ〉『チマチマやってても埒が明かねぇ! どでかいの決めてやれ!』
〈鎗輔〉『「分かった!」』
[セット]
鎗輔がスパークを操作して、左手の中指に香風リングを召喚する。
[香風リング、エンゲージ]
〈フーマ〉『断空戦烈斧ッ!』
エネルギーを巨大戦斧の形にして、射出。回転する斧がモンスアーガーの装甲に真正面から激突。
「ガアアオウ!」
だが、砕けたのは斧の方であった!
〈香風〉「……!」
見届けた香風がガーン……! と青ざめた。
〈フーマ〉『今のも効かねぇのか!?』
〈鎗輔〉『「か、硬すぎる……!」』
モンスアーガーのあまりの防御力に、衝撃を禁じ得ないフーマたち。
「ガアアオウ!」
今度はモンスアーガーが合わせた両手から巨大光弾を発射し、反撃してきた。
「ウワアアアァァァァッ!」
光弾の爆発の規模から逃れ切れず、吹っ飛ばされ地面に叩きつけられるフーマ。胸のカラータイマーが点滅し、残り時間が少ないことを報せる。
しかし、モンスアーガーの攻略手段が見えてこない。
〈フーマ〉『このままじゃ、タイムアップだ……!』
〈鎗輔〉『「くッ……! 完璧な生態の生き物がいるはずない……。必ずどこかに、弱点があるはずだけど……」』
鎗輔のつぶやきで、フーマがハッと思い返した。
〈フーマ〉『待てよ……あいつ、最初の攻撃は腕で防御したのに、それ以外は全部そのまま受け止めてやがった……』
最初のキックで狙った場所は、頭頂部。皿のようになっている部分だ。
〈フーマ〉『あそこだッ! きっと、あそこだけ頑丈じゃねぇんだ!』
〈鎗輔〉『「だけど、そう簡単に撃ち抜けるとは思えないよ……!」』
鎗輔の言う通り。モンスアーガーも己の弱点を理解しているからこそ、頭頂部の守りには重点を置いているのだ。
〈フーマ〉『任せとけ! 作戦がある。まずは、奴の気を引きつけるんだ!』
〈鎗輔〉『「気を……! だったら、これで!」』
[セット]
鎗輔が再びスパークを操作して、今度は華琳リングを召喚した。
[華琳リング、エンゲージ]
〈フーマ〉『覇王絶手裏剣ッ!』
投擲された鎌刃の手裏剣がフーマの意思によってコントロールされ、モンスアーガーの周囲を飛び交いながら装甲を斬りつける。
「ガアアオウ!」
これではやはりダメージを与えられないが、モンスアーガーの注意を逸らすには十分であった。
「ハァッ!」
作り出した一瞬の隙に、フーマが高く飛び上がって空中に浮遊。モンスアーガーの頭頂部が見下ろせる位置に着く。
「セイヤァッ!」
そして腕より無数の光刃を連ねて作り出した長剣、スラッシュソードを出し、それを鞭のようにしならせながら振り回して、モンスアーガーに振るう!
風を切って一閃した光刃が、頭頂部の皿を粉砕した!
「ガアアオウ!!」
その途端、どんな攻撃でもびくともしなかったモンスターが激しく苦しみ、横転。そのまま粉々に爆発四散した。
〈華侖〉「うわー! やったっす、勝ったっすよー!」
〈栄華〉「全く……危なっかしいですわね」
一瞬の内の逆転劇に華侖が諸手を挙げて歓喜し、栄華はふぅと息を吐いた。
華琳もまた、飛び去っていくフーマを見上げながら、安堵の微笑を浮かべていた。
〈クカラッチ〉『ちくしょう……失敗かッ!』
一方で、モンスアーガーの敗退を悔しがる者もいた。呼び出したクカラッチ星人である。
〈クカラッチ〉『しょうがねぇ……一旦どっかに身を隠して、それでこれからどうするかを考え……』
今後の行動を思案しながら、その場を離れようとするが、
〈春蘭〉「見つけたぞっ!」
〈秋蘭〉「左右に展開! 逃げ道をふさぐのだ!」
そこに春蘭たちが駆けつけ、兵士たちが広がってクカラッチ星人を包囲しようとする。
〈クカラッチ〉『やべぇ!』
直ちに踵を返し、包囲が完成する前にと逃走を図るクカラッチ星人だが、
〈季衣〉「逃がすかー! ちょりゃあ―――っ!」
〈クカラッチ〉『ぐぎゃあッ!?』
季衣の投げつけた鉄球が背中に当たり、ばったり倒れ込む。
〈春蘭〉「今だ! 取り押さえろーっ!」
〈香風〉「もう逃がさない……」
〈クカラッチ〉『ぐッ……は、放せ……!』
即座に春蘭、香風らが飛びかかり、上から抑えつける。クカラッチ星人は悪あがきするも、春蘭たちの規格外の腕力には宇宙人の膂力でも抗えなかった。
こうして鎗輔の暗殺未遂を働いた宇宙人は捕獲され、城の牢獄へと連行されていった。
昆虫宇宙人クカラッチ星人
陳留にて、鎗輔の暗殺を謀った宇宙人。頭蓋の骨格はスペースビースト・アラクネアに酷似しているが、両者の関係性は不明である。
破壊獣モンスアーガー
どこかの星が、宇宙戦争用に作り出した怪獣兵器の一種。偽りの自然環境で星間移動している生命体を誘き寄せるトラップの役割を果たすメラニー遊星に配備されており、遊星に降り立った者を襲って始末するようプログラミングされている。全身が非常に強固な装甲に覆われているが、唯一頭頂部の皿状の部分だけが脆い。
クカラッチ星人がけしかけた個体は、どうやらメラニー遊星の一つにいたものを何者かが捕獲したもののようだ。