奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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契りの青龍偃月刀

 

 西門を背にしてる愛紗たちは兵を引き連れて、東に向けて進軍を開始。

 

〈愛紗〉「進めーっ! 足を止めるな! 一気に奴らを押し出せ!」

 

〈盗賊〉「来やがったな……どけどけ! 落とすぞ――っ!!」

 

 すると城壁の上に配置されてる賊に動きがあった。あれは……岩!?

 

〈愛紗〉「む!? 散れっ! 散開だ! 岩が落ちてくるぞ!」

 

 盗賊たちが動き出したところの愛紗たちを狙って、落石攻撃を仕掛けた。事前に察知した愛紗の指示でどうにかかわしたが、出鼻をくじかれる形となる。

 

〈愛紗〉「小癪な真似を……! 麋竺、麋芳、頼むぞっ!」

 

 これ以上頭上から攻撃されたら、如何に愛紗たちでも厳しいだろう。一秒でも早く、城壁を制圧しなければ!

 

〈一刀〉「うおぉぉぉーッ!」

 

〈盗賊〉「ぐはッ!」

 

 俺も剣を握り、兵に混じって盗賊たちと戦う。叩きつけた剣の腹が盗賊の頭を打ち、昏倒させた。

 この世に来てからまださほど日数は経過してないが、元々剣道の修行はしてたし、護身用として愛紗たちから手ほどきは受けてる。しかし、素人上がりの俺の実力じゃ、せいぜい一度に一人を相手するのが精いっぱいだ。目に見える範囲の敵の数は、こちらと互角ではあるが、砦内から続々と増援が湧いて出てくる。

 しかし戦況は、ある二人の活躍でこちらの優勢に進んでる。

 

〈麋竺〉「えいやーっ!」

 

〈麋芳〉「とぉーっ! それそれーっ!」

 

〈盗賊〉「うわああああッ!」

 

 麋竺が太鼓のような、タンバリンのような特殊な武器を両手に、麋芳がトンファーに似た武器を振り回して、盗賊を片っ端から薙ぎ倒してく。二人の猛進によって、何人かの賊が城壁から転落していった。

 二人とも、強い……! 特に連携に関しては愛紗と鈴々以上で、互いの死角を完璧に補完し合って、相手の攻撃を寄せつけない。平野では物量に押されてしまったようだが、こういう狭くて大量展開できないところだと、独壇場のようだ。

 

〈麋竺〉「んっ! ちょっと待ったー!」

 

 麋竺と麋芳を先頭に快進撃を進めてた俺たちだが、麋竺の指示で一旦停止した。見れば、通路の先で盗賊たちが弓を番えてる。このまま進んでたら狙い撃ちにされてた。

 

〈麋竺〉「弓兵、前へ!」

 

 それに気がついた麋竺は素早く兵を入れ替え、弓兵を前列に立たせる。

 

〈麋竺〉「よし! 射てーっ!」

 

 練度ならこっちが上。麋竺の号令で一斉に放たれた矢が、盗賊たちの身体に突き刺さった。

 

〈盗賊〉「ぐわぁッ!」

 

〈麋芳〉「今の内に……っと!」

 

 敵の陣形が崩れた隙に、麋芳は補給部隊を動かして矢を行き渡らせ、再び射撃を浴びせる。

 

〈盗賊〉「ぐわああぁぁぁぁぁ―――――ッ!!」

 

 波状攻撃によって盗賊の弓部隊は壊滅し、射撃を封じたことで麋竺たちが再度盗賊たちに飛びかかっていった。

 

〈麋竺〉「それそれそれーっ! やられてばっかりだと思うなよー!」

 

〈麋芳〉「荷物を持っていったのなら、お代をいただかないとね~」

 

 俺たちの怒涛の攻撃で、城壁の上の盗賊たちは戦意を喪失していた。

 

〈盗賊〉「クッソー! 逃げるぞ!」

 

〈盗賊〉「逃げるってどこへ!? 前は敵だし、裏門は……!」

 

 まごついてる間に、麋竺と麋芳の同時攻撃が残りの賊に降りかかる。

 

〈麋竺〉「これで……っ!」

 

〈麋芳〉「おしまい!!」

 

〈盗賊〉「ぐふッ!!」

 

 最後の一人を沈めた二人が、俺に振り返って駆け寄ってきた。

 

〈麋竺〉「お兄さん。城壁の上、確保したよー!」

 

〈麋芳〉「奇襲ってすごいねー!」

 

〈一刀〉「いや……すごいのは二人だよ。普通に強かったんだな」

 

 感心する。個の実力でもそうだし、指揮や判断も的確だ。流石、大商人の子ともなると、荒事の対処もよく鍛えられるのだろう。

 

〈麋竺〉「だって、ホントに強いんだもん! えっへん!」

 

〈麋芳〉「すごいなら、もっといっぱい褒めてくれていいんだからねー?」

 

 自慢げに胸を張る二人。背丈だけじゃなく、こんなところも鈴々に似てるや。

 

〈一刀〉「なら、二人は他のみんなと周囲の警戒を頼むよ。下は……」

 

 地上を見下ろす俺たち。愛紗たちも順調なようで、すさまじい勢いで賊を薙ぎ払い、既に東門近くまで追いやってた。

 

〈麋竺〉「はわぁ……。関羽さんたち、やっぱりすごいねぇ」

 

〈麋芳〉「電々たちも、いつか張飛ちゃんみたいに強くなれるかなぁ?」

 

 一見すると、何の問題もなく愛紗たちの優勢だ。しかし……。

 

〈一刀〉「……あれ、何でだ?」

 

〈麋竺〉「どうしたの? 関羽さんたち、普通に勝ってるよ?」

 

〈麋芳〉「そうだよ。張飛ちゃんも、すっごく強いのに」

 

〈一刀〉「いや……何で連中、門を開けて逃げないんだ?」

 

 作戦通りではない。盗賊たちは東門に追い込まれはいるが、誰も門を開けようとする気配がない。まさか、奪った荷物のために命を捨てる気だとは思えないが……。

 怪訝に感じてると、東門の外を覗き込んだ麋竺が大声を出した。

 

〈麋竺〉「あーっ! お兄さん、壁の外、大きな岩がたくさん転がってる!!」

 

〈一刀〉「な……ッ!?」

 

 見れば、東の門扉の前には無数の大岩がうず高く積み重なってた。

 

〈一刀〉(そうか! この関所と街道が使われなくなった理由って……!!)

 

 これじゃあ、門を開けられる訳がない。東門に追いつめられた盗賊たちは、死に物狂いで戦う以外になくなってしまったのだ。

 完全に失策だ……! もっと偵察しておけば……!

 

〈麋竺〉「お兄さん、どうするの?」

 

〈麋芳〉「関羽さんたちなら、全部やっつけられそうだよ?」

 

〈一刀〉「それはそうかもしれないけど……」

 

 しかし、昼からろくに休んでる時間がなかった。愛紗たちだって、体力が無限に続く訳じゃない。もしものことがあるかもしれない……。

 

〈一刀〉(今からでも下に降りて、応援に向かうか……!?)

 

 どうするか悩んだ、その時のこと。白みつつある夜の闇の中を、天に向かってひと筋の白い線が駆けた。

 

〈一刀〉「あれは……!」

 

〈麋竺〉「劉備お姉ちゃんの鏑矢だ!」

 

 後方を警戒してる桃香からの合図だ。矢が一本の時は、敵が向こうの門を開けた時。二本は敵の増援。

 しかし、放たれた矢は三本だった。

 

〈一刀〉「三本の打ち合わせなんてしてないぞ!?」

 

 桃香の意図が読めずに動揺した俺に、麋芳が指を指し示した。

 

〈麋芳〉「お兄さん、あっち! あっちに明かりが見える!」

 

 その先は退路の西門の先。その方向に、松明らしき灯りがいくつも揺らいでた。

 敵の増援か!? だが、桃香からの矢は三本……。

 

〈一刀〉(そうか……あれは……!!)

 

 合図の意味を理解して、愛紗へと叫ぶ。

 

〈一刀〉「愛紗ーッ!」

 

〈愛紗〉「ご主人様! こいつら、存外に抵抗が激しく……おのれ、早く逃げろと言っているのに!」

 

〈一刀〉「門が岩でふさがってるんだ! 反対側! 西門を開ける!」

 

〈愛紗〉「よろしいのですか!?」

 

〈一刀〉「ああ、多分大丈夫だ! 二人も無理しないで、流れに乗って出ていいからね! 鈴々も、悪いけどもうひと仕事頼む!」

 

〈鈴々〉「分かったのだ!」

 

〈愛紗〉「なら私が先行する! 背中は任せるぞ、鈴々!」

 

 愛紗たちは直ちに反転し、通路を引き返して西門へ走り出した。

 

〈一刀〉「俺たちも反対側まで急ごう! 麋竺、麋芳!」

 

〈麋竺〉「うん!」

 

〈麋芳〉「任せて!」

 

 全速力で城壁の上を走ってく俺たち。たどり着いた西門の上から見えるのは、門扉を開けて脱出する愛紗たち。

 そして、入れ替わるように砦内に突入していく、馬岱たちの部隊の姿だった。

 

 

 

〈一刀〉「桃香、馬岱!」

 

 朝日がゆっくり昇り、谷間の関所に日光が差し込む頃になって、ようやく桃香たちと合流することが出来た。

 

〈桃香〉「ご主人様、良かった……! みんなは?」

 

〈一刀〉「麋竺たちは荷物の確認をしてる。愛紗はその護衛。鈴々は……」

 

〈鈴々〉「くー……むにゃむにゃ」

 

 俺の背中におぶさってすっかり寝入ってる鈴々に、桃香も馬岱も苦笑を浮かべた。

 

〈桃香〉「ふふっ。夜通し戦ってたもんね」

 

〈一刀〉「でも、馬岱が応援に来てくれて助かったよ。これ……戯志才の差し金だろ?」

 

〈桃香〉「そうなの?」

 

〈馬岱〉「へぇぇ、やっぱり気づいてたんだ」

 

〈一刀〉「そりゃ、あれだけ出立の準備をしてて気づかないってのもね。それに、ここの関所の事情も想像ついてたんじゃないの?」

 

〈馬岱〉「みたいだよ。で、たんぽぽに助けに行ってあげろってさ。素直じゃないよねぇ」

 

〈戯志才〉「素直じゃなくて悪かったですね」

 

 噂をしてたら、本人が姿を見せた。

 

〈馬岱〉「げっ、来た」

 

〈戯志才〉「既に出立の予定は過ぎていましたから」

 

〈一刀〉「お陰で助かったよ、戯志才。俺たちの策じゃ、途中でどうしようもなくなるところだった」

 

〈戯志才〉「あなた方を無事に薊までお連れするのが、私の役目ですから。ここで皆さんに何かあると困りますので」

 

 おお……リアルでツンデレが見られるとは。

 

〈麋芳〉「あっ! 劉備お姉ちゃん、お兄さん!」

 

〈桃香〉「麋竺ちゃん、麋芳ちゃん! 荷物は無事だった?」

 

〈麋竺〉「うん! ぜーんぶ大丈夫だった!」

 

〈麋芳〉「みんな劉備お姉ちゃんたちのお陰だよ! 本当にありがとね!」

 

 俺たちには満面の笑みの二人だが、戯志才と目が合うと、

 

〈麋竺・麋芳〉「「……べーっ!!」」

 

〈一刀〉「こらこら、戯志才だって俺たちを助けに来てくれたんだから、そんな顔しないの!」

 

〈麋竺〉「えーっ。だったら最初っから協力してくれたら良かったのに!」

 

〈麋芳〉「けちー!」

 

〈戯志才〉「ケチで結構です」

 

(麋竺・麋芳)「「ぶー」」

 

 そろって頬を膨らます二人に、思わず苦笑。戦いが済んで、すっかり気を緩めてたが……。

 

〈タイガ〉『なぁ、一刀……』

 

 急にタイガが呼び掛けてきたので、こっそり話の輪から外れて返答する。

 

〈一刀〉「どうしたんだ? タイガ。みんなの前で……」

 

〈タイガ〉『さっきの東の門……何か、おかしくなかったか?』

 

〈一刀〉「え? おかしいって……」

 

〈タイガ〉『あんなたくさんの岩が積もってたのに……左右の崖は、崩れたようには見えないんだ。あれだけの岩が、どこから出てきたんだ?』

 

 言われてみれば……。あんな膨大な落石があったのなら、それらしい跡がはっきりと見て取れるはずだ。しかし、そうではなかった。これは……。

 その原因は、すぐに分かることとなった。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

〈桃香〉「な、何!?」

 

 突然どこからか起こった、耳をつんざく咆哮に、俺たちはそろって身構えた。

 その直後、東側の崖の岩壁が、内側から崩壊した!

 

〈麋竺〉「ええーっ!?」

 

〈麋芳〉「な、何あれー!?」

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 そして岩壁の中から、巨大生物が岩を蹴散らして現れる!

 二足歩行の獣のようでいて、俺の知ってる動物のどれもに似てない、ずんぐりとした奇抜な容貌。全身の皮膚は蛇腹状になってて、筋骨は遠目でも分かるほど隆々としてる。白目の中に小さい瞳孔が、ギョロリと動いてこちらを凝視した。

 

〈馬岱〉「う、うわぁぁぁーっ! 怪物だよぉぉ!!」

 

〈戯志才〉「巨躯の怪物……! また……!」

 

 あれは……俺でも名前を知ってる、とても有名な怪獣だ! その名も……。

 

〈タイガ〉『レッドキングだ! 戦いの振動と、日光で目を覚ましたな!?』

 

 そうか……東門の大量の大岩は、あいつの仕業か!

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 レッドキングは蹴り一発で、人間の力では破ることなど出来ない堅牢な砦を易々と粉砕し、踏み越えてこちらに向かってくる。

 

〈桃香〉「うわわっ!? こっち来るよぉ!」

 

〈戯志才〉「撤退! 総員、西へ向けて逃げるのです!」

 

 戯志才が素早く兵士たちに指示を飛ばす。けど、麋竺たち隊商は夜通しの行軍と戦闘で、逃げるだけの体力が残ってないはずだ。やることは一つ!

 

〈愛紗〉「ご主人様! 桃香さま!」

 

〈桃香〉「愛紗ちゃん!」

 

 すぐに俺たちの下へ駆けてきた愛紗に、背負ってる鈴々を託す。

 

〈一刀〉「鈴々を頼む!」

 

〈愛紗〉「かしこまりました! 鈴々、起きろ!」

 

〈鈴々〉「んー……むにゃむにゃ……」

 

〈愛紗〉「……こんな状況でまだ眠っているとは、のんきな……」

 

〈桃香〉「ご主人様、勇者様、がんばって!」

 

 桃香の声援を背に受けながら、混乱に乗じて岩陰に身を潜める。

 

〈一刀〉「行くぞ、タイガ!」

 

〈タイガ〉『ああ!』

 

[カモン!]

 

 タイガスパークのレバーを下げて起動し、タイガキーホルダーを手に取る。

 

〈一刀〉「光の勇者、タイガ!」

 

 タイガのエネルギーをスパークでリードし、握り締めた。

 

〈一刀〉「バディーゴー!」

 

 タイガを握った右腕を、高く突き上げると、スパークから発した閃光が俺の身体を作り変えていく!

 

[ウルトラマンタイガ!]

「シュアッ!」

 

 俺から変身したタイガが宙を舞いながら、大勢の兵士に襲い掛からんとしてたレッドキングの真正面に、堂々と着地した。

 

「ハッ!」

 

 みんなをかばってレッドキングに立ちはだかったタイガの背を、麋竺たちが驚愕して見上げた。

 

〈麋竺〉「な、何なに!? またおっきいのが出てきた!!」

 

〈麋芳〉「巨人!? それとも、仏様!?」

 

〈馬岱〉「何か角生えてるっ!」

 

〈戯志才〉「巨人……! やはり、あの時のものとは違う……!」

 

 レッドキングはタイガが現れるや否や、両手の指をポキポキ鳴らして、戦意があり余ってるのを見せつける。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

「タァッ!」

 

 突進してくるレッドキングに、タイガが真正面からぶつかっていく。真後ろには桃香たちがいるんだ。下手によけることは出来ない。

 だが衝突すると、俺たちにすさまじい衝撃が襲い掛かった!

 

〈一刀〉『「うわぁッ!?」』

 

〈タイガ〉『くッ……! 何てパワーだ……!』

 

 ただぶつかり合っただけなのに、これだけのダメージをもらうなんて……流石は怪獣の中の怪獣だ。純粋なパワーに計り知れないものがある……!

 

〈タイガ〉『正面からぶつかり合うのは、あんまり得策とは言えないが……』

 

〈一刀〉『「けど、下がることは出来ないぞ!」』

 

〈タイガ〉『分かってる。何とか、やるしかないか!』

 

 それでもタイガは果敢にレッドキングに挑んでいき、相手の攻撃をかいくぐりながら隙を突いて、みぞおちなどの急所を突いていく。

 

「セヤッ!」

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 幸い、レッドキングは発達した筋肉が仇となって、小回りが利かないみたいだ。打撃はどれも大振り。技巧を凝らして攻撃していけば、決してどうにもならない相手じゃない。

 ジリジリとタイガが押してくが、後ろに下がったレッドキングはいきなり足下に手を伸ばした。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 東門をふさいでた、大岩の一つを軽々と持ち上げる。まさか!

 

〈一刀〉『「危ない、タイガ!」』

 

 警告した時にはもう遅く、レッドキングが岩を力の限りに投擲してきた!

 

「ウワッ!」

 

 投擲攻撃をボディに食らい、短く悲鳴を上げるタイガ。あの腕力から投げられる岩はかなりの速度で、ウルトラマンの身体でも無視できないほどの凶器に変わる。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 しかもレッドキングは次々に岩を拾っては投擲してくる。このために、あれだけの数の岩を積んでたのか……!

 

〈タイガ〉『ぐッ……! これじゃ近づけねぇぜ……!』

 

 岩の雨を叩きつけられて追いつめ返されるタイガ。時間の経過に加えてダメージが蓄積して、カラータイマーが赤く変わる……!

 

〈タイガ〉『こうなったら、ストリウムブラスターで……!』

 

〈一刀〉『「でも、こんなせまい場所で使ったら桃香たちが……!」』

 

 光線の使用を、俺はすぐに反対した。この峡谷は、タイガたちには狭い。ここで光線を撃とうものなら、桃香たちを巻き込みかねない。

 そのハンディキャップが、タイガが苦戦してる一因なのだ。

 

〈タイガ〉『けど、ここで俺が倒れたら結局同じだ……!』

 

 くッ……どうすればいいんだ……!? オーブレットやロッソレットを使っても同じことだし……。

 と思考を巡らせてると、あることを思い出した。

 

〈一刀〉『「そうだ! イチかバチか、アレを使ってみよう!」』

 

〈タイガ〉『あれって……まさか!?』

 

 タイガスパークを操作して、あるものを呼び出す。

 

[カモン!]

 

 俺の左手の中指に現れたのは……以前の戦いの時に入手した、愛紗から生じた指輪だ!

 

〈一刀〉『「頼むぞ……!」』

 

 これが使えるかどうか、使って何が起こるのかどうかは不明だ。分の悪い賭けだが……やってみる他はない! 祈る気持ちも込めて、指輪にタイガスパークをかざす。

 

[愛紗リング、エンゲージ!]

 

 指輪から緑色の電流が発せられてスパークに吸収、俺の傍らに愛紗のビジョンが現れる。

 愛紗……俺たちに力を貸してくれ!

 

〈タイガ〉『お……おお!?』

 

 指輪の力を発動すると……タイガの手元が光り、長柄の武器となって実体化する。

 この形は……!

 

〈愛紗〉「あ……あれは!?」

 

 他ならぬ、愛紗が一番驚いてた。何故なら、

 

〈桃香〉「あれは……愛紗ちゃんの武器!」

 

 そう、タイガが手に握ったそれは、紛れもない青龍偃月刀なのだ。ただし、タイガの体格に合った超ビッグサイズ。

 

〈麋竺〉「ホントだー! 関羽さんとおんなじの!」

 

〈麋芳〉「だけど、すっごいおっきいよ! どこで買ったんだろ?」

 

 買ったんじゃあないけどな……。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 青龍偃月刀を手にしたタイガに、レッドキングがまたも大岩を投げつけてくる。

 

「ハァッ!」

 

 タイガは反射的に刀を振るい、大岩を見事に一刀両断した! 分断された岩は勢いを失って、タイガの足元に落ちる。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!?」

 

〈一刀〉『「やった!」』

 

 桃香たちに被害が及ぶことなく、岩の攻撃を無力化したぞ! と言うか、結構散々なこと言ったけど、タイガって普通に武器扱えるんだな! 見直した!

 

〈タイガ〉『これならいけるぜ!』

 

 タイガも勢いがついて、青龍偃月刀を愛紗のように堂々と構えて見得を切った。

 

〈タイガ〉『さぁ、来やがれ!』

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 レッドキングはムキになって岩を片っ端から拾って投げ飛ばすが、タイガがそれを全て斬って捨てる。

 

「ハァァァァッ!」

 

 すごい腕だ……曲がりなりにも岩石を、豆腐みたいにスパスパと! ウルトラマンが武器を扱うと、こんなにも頼り甲斐のある威力になるのか!

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!?」

 

 やがてレッドキングの周りに投げられる岩が一つもなくなり、慌てたレッドキングがしゃがんで探し回るが、無駄なことだ。隙だらけだぜ!

 

〈タイガ〉『今がチャンスだ! おおお……!』

 

 タイガが柄を強く握り直すと、刀身に虹色の光が集まる。一気に勝負を決める構えだ!

 

「ハァッ!!」

 

 地を蹴ったタイガが、咄嗟に顔を上げたレッドキングにぐんぐん迫り、刀を一挙に振り下ろす!

 

〈一刀・タイガ〉「『ストリウム逆鱗斬!!」』

 

 即興の技名とともに、レッドキングに袈裟斬りをお見舞い!

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

 

 身体に白い線が走ったレッドキングが、大爆発を起こした! 俺たちの勝利だ!

 

〈麋竺〉「わーい! やっつけたー!」

 

〈麋芳〉「電々たち、助かったよー!」

 

〈桃香〉「すっごくかっこいい! 勇者様! ご主人様ぁ!」

 

〈麋芳〉「えっ、ご主人様って?」

 

〈桃香〉「あっ!? ち、ちょっと間違えちゃったかな? あ、あはは……」

 

〈愛紗〉「桃香さま……」

 

 見事勝利を飾ったタイガの手元から青龍偃月刀が消え、指輪もスパークに帰っていった。タイガは両腕を上に伸ばして、峡谷から飛び去っていった。

 

「シュアッ!」

 

 これでひと安心だ。薊に向かおう!

 




 
どくろ怪獣レッドキング

 盗賊のアジトの側の崖の中に身を潜めていた怪獣。全身が筋肉の塊で、岩石を投擲する攻撃が得意。闘争心の他に好奇心も強く、日本アルプスに出現した個体が、廃棄されていた水爆を呑み込んでいてあわや大爆発という事態になったこともある。
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