奥特曼†夢想 ‐光の三雄伝‐   作:焼き鮭

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Alien

 

 捕獲されたクカラッチ星人は、城の地下にある牢獄の中へ連れ込まれた。

 椅子に縛りつけられたクカラッチ星人を相手に、取り調べ役に抜擢されたのは、最も異世界に詳しい鎗輔とフーマ。その警護につけられたのは春蘭と秋蘭だ。

 

〈春蘭〉「見れば見るほど、虫の首だな……。気味が悪い」

 

〈秋蘭〉「こいつは何者なのだ?」

 

 秋蘭の問いに、フーマが答える。

 

〈フーマ〉『簡単に言や、宇宙人だな』

 

〈春蘭〉「うちゅう……じん?」

 

〈秋蘭〉「……これも天の国の人間ということか。フーマのような……」

 

〈鎗輔〉「そういうことになりますね……」

 

 理解の早い秋蘭にうなずいた鎗輔とフーマが、PALに会話内容を録音させながら、取り調べを始める。

 

〈鎗輔〉「クカラッチ星人ティボラ……と言いましたか。どうして、あんなことをしたんですか?」

 

〈ティボラ〉『……ウルトラマンフーマ、それと相棒の人間。お前らにゃ、賞金が懸かってるんだよ』

 

〈秋蘭〉「賞金……だと?」

 

〈ティボラ〉『正確には、トライスクワッドにな』

 

〈鎗輔〉「……誰がぼくたちを賞金首にしたか、その辺りの経緯を詳しくお願いします」

 

 鎗輔に促され、ティボラが証言し出す。

 

〈ティボラ〉『俺はヴィラン・ギルドに属する宇宙人だ。ある日、ギルドのネットワークに、トライスクワッドを抹殺した奴に莫大な懸賞金を出すっつぅ募集が出てきた』

 

〈春蘭〉「……びらんぎるど? 何だそれは」

 

〈フーマ〉『ここで言う賊だよ。俺がいた世界の、犯罪の温床でな。俺たちも手を焼いてた。……あの怪獣はどっから持ってきたんだ?』

 

〈ティボラ〉『募集にゃあ、手段の怪獣は向こうが手配するってあった。実際、応じた俺はモンスアーガーを与えられて、ここに行くよう言われたんだ』

 

〈秋蘭〉「……他に仲間は、どれくらいいる。黒幕の名は?」

 

〈ティボラ〉『分かんねぇ』

 

〈春蘭〉「何だと!? ふざけているのか貴様ぁっ!!」

 

 激昂した春蘭が、大鉈を振り下ろしてティボラの足元を穿った。

 

〈ティボラ〉『ひッ!?』

 

〈鎗輔〉「し、春蘭さん……!」

 

〈秋蘭〉「姉者、落ち着け。……どういう訳か、仔細に話せ」

 

〈ティボラ〉『ヴ、ヴィラン・ギルドは固定の組織じゃねぇ! 仕事の話が持ち上がる度に、メンバーが集合と離散を繰り返してるんだ! だから何人集められてんのかとか、誰が仕事取り仕切ってんのかとか、俺みてぇな下っ端にゃ明かされねぇってのは珍しくもねぇんだ!』

 

〈秋蘭〉「……よくそれで組織として成り立っているな。顔すら分からん奴の指示に従うとは……」

 

〈フーマ〉『情報網が高度に発達した世界ならではの犯罪組織だよ。そのせいで実態が掴みづらくて厄介だ』

 

〈鎗輔〉「……おおまかな経緯は分かりました。では、あなた自身の、犯罪の動機を話して下さい」

 

〈ティボラ〉『そ、それは……』

 

 途端に口ごもるティボラを、春蘭が鉈をちらつかせて脅す。

 

〈春蘭〉「さっさと話せ! 隠し立てすると、ただでは済まんぞ」

 

〈ティボラ〉『……ち、ちょいとばかし金に困っててよ……。前金も出るっつぅ破格の条件だったし、小遣い稼ぎにでもやってみようかなって……』

 

〈春蘭〉「何ぃぃぃっ!?」

 

 ますます激怒する春蘭が鉈を振り上げた。

 

〈鎗輔〉「春蘭さんッ! 落ち着いて……!」

 

〈ティボラ〉『ひぃぃ!? 正直に話したじゃねぇかよ!!』

 

〈春蘭〉「何が小遣い稼ぎだ! その身勝手でどれだけの人間が犠牲になるか、考えなかったのか!? 貴様のような腐った輩は、我慢ならん……!」

 

〈秋蘭〉「待て、姉者……!」

 

 今にも斬り捨てそうな春蘭を制止する秋蘭。

 

〈春蘭〉「止めるな、秋蘭! こ奴がしでかしたこと、死罪は免れんっ!」

 

〈秋蘭〉「それを決めるのは華琳さまだ……。今のこれは虜囚、我々の一存で刑を定めることは許されん」

 

〈春蘭〉「ぬぅ……!」

 

 春蘭がしぶしぶ剣を引くと、ティボラは身を乗り出して、鎗輔に懇願し出した。

 

〈ティボラ〉『な、なぁあんた……もう命狙わねぇからさ、許してくれよ! ここから出すよう取り計らってくれ!』

 

〈鎗輔〉「……!」

 

〈春蘭〉「き、貴様、ぬけぬけと……!」

 

〈秋蘭〉「姉者……! もっとも、貴様とてあまり図に乗るようならば、懲罰を打診することも辞さんぞ」

 

 流石にティボラの図々しさには、秋蘭も許容できなくなってきていた。

 

〈ティボラ〉『よ、よく考えてくれよ! ここで俺殺したって、何の解決にもなんねぇぞ!? 俺みてぇな奴は、これからも続々と出てくるだろうさ……。そ、そうだ、俺を雇わねぇか!? 情報集めてきてやるよ! その方が建設的だろ? な? な? 頼むからさぁ……!』

 

〈鎗輔〉「……」

 

 必死に命乞いするティボラを前に、鎗輔は黙ったままであった――。

 

 

 

 ――以上の録音を、PALは華琳の前で再生し終えた。事の重大さから、この話は執務室にて、鎗輔と取り調べに立ち会った春蘭、秋蘭の間でのみ行われている。

 

〈華琳〉「……また、随分な厄介事が降りかかってきたものね」

 

 流石の華琳も、宇宙人が鎗輔たちの命を狙って襲来してきた、という事態には頭が痛そうであった。

 

〈秋蘭〉「それで華琳さま、この怪人の処遇ですが……」

 

〈春蘭〉「華琳さま! 今すぐにでも打ち首にしましょう! 既に用意は出来ております!」

 

 血気に逸る春蘭が主張するのをなだめる華琳。

 

〈華琳〉「少し落ち着きなさい、春蘭。……鎗輔。命を狙われた身からの意見を聞かせてちょうだい。処刑か、あるいは解放か」

 

 鎗輔は少し考え込んでから、顔を上げて答えた。

 

〈鎗輔〉「……この宇宙人の言うこと、一理はあると思います」

 

〈春蘭〉「東雲! 何を馬鹿なことを……!」

 

 事実上の死罪の反対に、春蘭だけでなくフーマまでも苦言を呈した。

 

〈フーマ〉『鎗輔。非情になれとは言わねぇけど……そりゃ流石に甘すぎるぜ? あんだけのことした奴を、無罪放免なんてよぉ……。絶対また同じことするぞ、あいつは』

 

〈華琳〉「ええ。今の会話だけでも、腐った性根が透いて見えたわ。そんな輩が、まともに恩義を返すはずがない。何度も欲に流されて、手を汚すでしょうね。今度は、実際に命を落とすかもしれない。あなたも……巻き込まれる人たちも」

 

 他人が巻き込まれると言われて、鎗輔も揺らぐが、それでも反論した。

 

〈鎗輔〉「ですから……解放とまで行かなくとも、ここで拘置したままにしておくのはどうでしょうか。フーマ以外の宇宙人の知識、情報はぼくとしても興味がありますし、有用かもしれません。……そうは思いませんか?」

 

〈華琳〉「……情報を対価に、命を保証して利用するという訳ね。それなりに上手い落としどころを考えるじゃない」

 

 そう評しながらも、華琳は鎗輔の表情から――たとえ悪性宇宙人だとしても、『人間』を殺めたくはないという本心を見抜いて、内心ため息を吐いていた。

 

〈華琳〉「秋蘭、春蘭も、それでいいかしら?」

 

〈秋蘭〉「はっ」

 

〈春蘭〉「華琳さまのお決めになったことならば……」

 

 春蘭も従ってはいるが、明らかに不承不承であった。

 

〈春蘭〉「だが、東雲……わたしはやはり処しておくべきだと思うからな! その甘さ、いずれ貴様の足元をすくうぞ! 覚えておけ!」

 

〈鎗輔〉「……気をつけます」

 

 口では応じながらも、心から受け入れている様子ではない鎗輔に、華琳はやはり肩をすくめるのであった。

 

 

 

 鎗輔たちを解散させた後、華琳は一人、城の廊下を歩いていた。

 

〈華琳〉「全く……鎗輔にも困ったものだわ。命を尊ぶのは人として正しいことかもしれないけど、それも行き過ぎると……天の国の道徳観はそこまで温いものなのかしら……」

 

 ため息交じりに寝室に向かう途中であったが――廊下の突き当たりの曲がり角から、不意に声がした。

 

〈???〉「天の御遣い……あいつを持ち上げずに、あくまで一人の人間として扱うか……」

 

〈華琳〉「っ!?」

 

 咄嗟に身構える華琳。見れば、曲がり角の陰で、覚えのない男が腕組みして壁に寄りかかっていた。

 

〈???〉「なかなか賢明だな。だが……あの力は、お前のような汚い野心まみれの女が利用していいものじゃあない。後悔したくなかったら、野心など捨てて分相応に生きることだな。ちっぽけな人間として」

 

〈華琳〉「何者っ!」

 

 侮辱を受けたことよりも、城内に不審な男が紛れているということを警戒する華琳。

 だが男は言うだけ言うと、曲がり角の向こうへとダッと逃げていく。

 

〈華琳〉「待ちなさいっ!」

 

 危険も顧みず、華琳はそれを追いかけていく。

 

 

 

〈柳琳〉「鎗輔さん、ご無事で何よりです……! 報告を聞いてから、ずっと心配してました」

 

〈鎗輔〉「ありがとう、柳琳ちゃん。それでわざわざ捜しに来てくれたの?」

 

 廊下の先では、鎗輔と柳琳が話し合っているところだった。

 

〈柳琳〉「それもありますが……一つ、お知らせしたいことが。鎗輔さんたちが出掛けている間に入ってきた情報です。明日の朝議で伝えられることになってますが、早くお耳にされたいと思いまして」

 

〈鎗輔〉「何? まさか……」

 

〈柳琳〉「幽州と、揚州。それぞれに一人ずつ、フーマさんと似た特徴の巨人が目撃されたそうです。つまり、天の御遣い……鎗輔さんのご友人の安否の情報です」

 

〈フーマ〉『タイガと旦那! 無事だったんだな!』

 

〈柳琳〉「ええ。随分とご活躍されてるみたいですよ」

 

〈フーマ〉『そっかそっか。わざわざ知らせに来てくれてありがとな、柳琳』

 

〈鎗輔〉「うん。柳琳ちゃん、ありがとう。嬉しいよ」

 

〈柳琳〉「ふふっ……どうぞお構いなく」

 

〈フーマ〉『鎗輔、お前の友達だってきっと無事さ。あの二人がついてるんならな。ま、旦那はともかく、タイガはちょっと心配だけどな~』

 

〈鎗輔〉「はは、ありがとう。でも、またこれから忙しくなるし、確認に行くのはしばらくは難しいかな……」

 

 そう話し込んでいると、この場に華琳が駆け込んでくる。

 

〈柳琳〉「お姉様……どうされましたか? こんな夜更けに、そんなに急がれて……」

 

〈華琳〉「あなたたち……今ここを、怪しい輩が通らなかった?」

 

 突然聞かれ、面食らう鎗輔たち。

 

〈鎗輔〉「いいえ……?」

 

〈PAL〉[誰一人通りがかりませんでした]

 

〈フーマ〉『俺が気づかない訳ねぇぜ』

 

〈華琳〉「そんな……! 確かに、こっちへ……」

 

 ハッと、横の窓に顔を向ける華琳。

 

〈華琳〉「まさか……窓から……」

 

 怪訝な顔の鎗輔たちに構わず、思考する華琳。

 扉を開ければ音がするはずだから、逃走経路としては窓しかない。だが、屋根伝いでもこちらに察知されることなく逃げおおせるとは、普通の人間の仕業ではない。あれは何者だったのか?

 クカラッチ星人とかいう宇宙人の仲間だろうか。しかし、それならばわざわざこちらに接触して、何もせずに逃げていく理由が分からない。

 謎は深まるばかりであった。

 

 

 

 ――陳留の宿屋の一室では、通りの端で歌を披露していた、旅芸人の三姉妹が本日の稼ぎを数えて、落胆していた。

 

〈???〉「……はぁ。陳留に来ても、実入りは今一つね……」

 

〈???〉「あーあ。こんなんで、大陸一の旅芸人になれるのかなぁ」

 

 どっとため息を吐く三女と次女を、長女が慰める。

 

〈???〉「ほら、二人とも、気にしないの。明日はきっと、いいことあるってー」

 

〈???〉「天和姉さんは気楽でいいわねぇ……」

 

〈???〉「えー。ちーちゃんもれんほーちゃんもひどーい」

 

〈???〉「それより、何か新しい策を考えないと、本当に行き倒れよ? もう宿泊費もあまりないのだから……」

 

〈???〉「ちょっと、せっかくこんな都会まで来たのに、また田舎回り!? ちぃ、絶対ヤだからね!」

 

〈???〉「私だって嫌よ……。ちゃんとした大きな都で有名にならないと、田舎なんて回ってもたかが知れてるもの」

 

〈???〉「もう、二人とも辛気臭いなぁ……」

 

 先行きが見えない明日に悩む妹たちに、長女は嫌気が差している様子。

 

〈???〉「あーあ、誰かすっごい後援者がついて、大陸中を歌って回ったり出来ないかなー」

 

 次女が冗談交じりに、願望をぼやいた時――。

 

『その言葉……聞き留めたぞ』

 

 いきなり、部屋中におどろおどろしい声音が響いた。

 

〈???〉「え? え……!?」

 

〈???〉「ちょっと、何今の!?」

 

〈???〉「もぉ、れんほーちゃーん。変な声出さないでよー」

 

〈???〉「私じゃないから……!」

 

〈???〉「じゃあちーちゃん?」

 

〈???〉「違うわよっ! 天和姉さん、とぼけてないで……ひっ!?」

 

 気がつけば、部屋の中が闇黒に閉ざされていた。しかし不思議なことに、互いの姿ははっきりと見えている。

 

〈???〉「ちょっとちょっと! どうなってるのこれー!?」

 

〈???〉「暗ーい! お姉ちゃん、暗いのきらーい」

 

〈???〉「天和姉さんはちょっと黙ってて……」

 

 そして三人の前に、暗闇の中から、二つの赫い輝きが現れる。

 

〈???〉「な、何なの……!?」

 

〈???〉「妖……!?」

 

〈???〉「ほえ~……何か、すっご~い……」

 

 闇の中に浮かぶ、ひどく吊り上がった双眸のような赫い輝きは、確かに言葉を発した。

 

『お前たちの願い……叶えてやろう』

 

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