プリキュアオールドスターズ ~プリキュア5の同窓会~ 作:おじ
ドツクゾーンのとある民家では、今日も怒鳴り声が家の外にまで響いている。
「いい加減に働きなさい! このドラ息子!」
「何だよ。勝手に部屋入ってくんなって言ってるだろ!」
太陽の恩恵を受けにくい地形であるため、昼間から薄暗い部屋の中でパソコンに向かっていた息子は、母に対してだけは強気でいられた。
「平日の昼間からアニメなんて見て! 少しは兄さんのジャアクキングを見習ったらどう?」
「うるさいな。死んだやつのこと持ち出すなよ」
彼の兄こそドツクゾーンの支配者ジャアクキング。町一番の成功者として一族も鼻高々であったが、十年ほど前に殉職してしまっていた。
「どうして兄弟でこうも違うんだろうね。兄さんは世界を滅ぼそうとしていたっていうのに」
「いいからさっさと出て行けよ!」
かっとして扉の方を振り向いたはずみで、パソコンに接続していたイヤホンの端子がはずれ、軽快な音楽がパソコンから流れる。
「まさか、これって……」
聞き覚えのあるメロディーに嫌悪感を顕わにした母は、息子をデスクの前から押しのけて画面に見入った。そこには、黒と白を基調としたコスチュームを身に纏い、その可愛らしい容姿からは想像もできないような熱い戦いを繰り広げる女の子のアニメが映し出されていた。
「これは……プリキュアじゃない! あんた、よりにもよってこんな……」
「別にいいだろ」
「いいわけないでしょ! プリキュアは兄さんの仇だよ!」
「何言ってんだよ。アニメと本物のプリキュアは別物だろ」
母親をパソコンの前から引き離すと、モニターの電源を切った。
「俺は兄さんみたいに死ぬのはごめんだ」
「いいかい、ムショクキング! さっさとプリキュアを卒業して、世界を滅ぼしに行くんだ!」
「嫌だ! プリキュアを見るのはやめないし、兄さんにできなかったことが俺にできるわけないだろ!?」
ほとほと呆れ果てた母は、踵を返し部屋を出た。
「もう知らないからね!」
力任せに扉を閉め、階段を降りる。それからは掃除も洗濯も手に着かなかった。順風満帆なはずの人生が、どこで狂ってしまったのだろう。
天井から微かに楽しそうな声が聞こえてきた。二階にいるムショクキングが、プリキュアのオープニングを歌っているのだ。
「プリキュア……ジャアクキングを滅ぼし、ムショクキングを堕落させ、自分たちはのうのうと暮らしよって……」
沸々とこみ上げてくる怒りは、やがて明らかな憎悪に変わる。どうしてこれまで我慢しなければならなかったのだ。彼女が見ていたドラマでも言っていた。やられたらやり返すべきなのだ。
「プリキュアさえいなければ……」
彼女は立ち上がり、玄関を出て飛び去った。
諸悪の根源であるプリキュアを倒し、円満な家庭を取り戻すために。