プリキュアオールドスターズ ~プリキュア5の同窓会~ 作:おじ
「みんな、いくよ!」
「Yes!!」
そのかけ声をきっかけに走り出した五人の心は、一瞬たりとも油断できない緊迫した状況にも関わらず、弾んでいた。
全身に力が漲り、視界が晴れる。風を切って走る爽快感、足を前に出して新しい地面を踏みしめる心地よさ。忘却の彼方に消えかけていたみんなの笑顔が、隣を向けばそこにある。
喜びとは、こういうものだった。体の内側から溢れだす、まるで幸せと抱擁を交わすような豊かな温もり。世の中の理不尽とシステム化された利己主義的な社会を受け容れたうえで、人生とは素晴らしいものだと思える寛大さ。それが一時のものに過ぎないとしても、渇いた土に注がれた水は少なからず成長を促すだろう。
雨の日は雨粒を嫌い、晴れの日には太陽を嫌う。雪が降れば交通機能が麻痺すると文句を垂れる。大人になると、どうして何もかも自分にとって不都合な事象として捉えてしまうのか。努力が報われず、希望が叶わなかったときはその原因を捏造する。高い地位とより多くの収入を求め、現状に不満を抱く。そんな生き方が、果たして楽しいだろうか。
雨に濡れたらシャワーを浴びて、服を乾かせばいいだけなのに。お気に入りの傘を差して、水たまりに長靴で飛びこめばいい。傘と長靴を買う金があり、自分で洗濯をする能力があるにもかかわらず、大人はそれを拒むのだ。わざわざ不自由な環境に身を置いて、自由になりたいと嘆く。自分の選択に責任を伴わない。
壁にぶつかったとき、それを乗り越えられないものだと決めつけ、挑戦を諦める。経験に基づいた判断だとしても、そんなものを成長とは呼ばない。知ってしまった己の限界――才能や努力の限界。挫折から逃れるためには、妥協や諦念が必要だった。傷つかないための、生きる術として。
そうやっていつの間にか、慰めを喜びと思い込むようになった。自分の人生には起こらないドラマチックな出来事を画面越しに眺めて、架空のハッピーエンドを共有することで偽りの心を満たす。自分より劣悪な環境で苦しんでいる人を見て、幸福を錯覚させる。純粋さを失い、卑怯なやり方ばかり覚えて醜くなる過ごし方は、間違いなく退化である。
天気のいい日は汗をかいて爽やかな風を肌に感じる。雪が積もったなら、大人だからといって雪遊びを我慢することはない。汗疹や霜焼けの心配は、明日の自分にさせたらいいのだ。不快な痒みも、楽しかった思い出に変わる日がきっとくる。
どんなに頑張ってみても、越えられない壁はある。ずり落ちて尻もちをつき、途方に暮れることがあるかもしれない。ここが行き止まりと考えて障害物のない他の道を探すか、もう一度だけ挑戦するか。大きな岐路に立たされる。
卒業証書や受験の願書、合否の通知は最早その役目を終えた。切符はただの通行証であり、行先は書かれていない。ただし、有効期限はある。それは見栄とか世間体というもので、焦燥感を煽るためのものだ。
やがては決断を下さなければならないときがくる。そのときを一人で迎えるか、友と迎えるかで結果は変わってくるだろう。励まし、支えてくれる親友。相談に乗ってくれて、弱音を吐ける存在。高め合える仲間。
誰も余計な口出しはしない。考え抜いて出した結論に、納得してくれる。だけど、もしも……頑張って、頑張って、壁を乗り越えられたとき、みんなはどんなに喜んでくれるだろうか。みんなが壁を越えたとき、どんなに嬉しく思えるだろうか。想像しただけで口元が緩む。この気持ちこそ、大切に育まなければならなかったのだ。
人生の意義を見失い、ふらふらとさまよい歩いたって仕方がない。自分たちの進む先に苦難が待ち受けていると分かっていて尚、その道を選ぶ人生にこそ価値がある。
みんなが傍にいてくれる。それだけで、目の前の怪物に誰一人として臆することなく向かっていけた。恐怖や不安より、みんなと一緒にいられる喜びの方が勝った。共に戦う仲間のいる心強さ。敵の力がどんなに大きくても、打ち破ってみせる。全員がその意気だった。
そして、五人が揃った喜びを噛み締めていたのは彼女たちだけではない。
「プリキュア! 頑張るミル!!」
物陰に避難している身であり、さっきまで動けないほどのダメージを負っていたことも忘れて、ミルクはプリキュアを応援した。ナッツたちの心配をよそに、飛んだり跳ねたりしながら喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。
キュアドリームたちが目の前をびゅんびゅんと通り過ぎる中、ミルクの瞳に映る景色が緩慢に流れるひと時があった。
そこに妖精が隠れていると気づいていなかったのか、大きな声援に驚いたキュアアクアの表情から凛々しさが薄れ、小さく口をあけて目を丸くした顔は子どもっぽい印象になる。彼女は照れくさそうに微笑み、ミルクに頷いてみせた。
一瞬の出来事ではあったが、たしかにミルクは彼女の瞳に自分の姿が在るのを認めた。それがたまらなく嬉しくて、胸の奥から込み上げてくる喜びをどうにか発散したくて、ミルクの応援にはより熱が入るのだった。
声はどんどん大きくなる。ナッツとクレープ、全快でないにしても回復したココとシロップの声援も加わったからだ。混沌とした意識の底に沈み、重力を感じない世界に漂っていたブンビーを呼び起こすには十分すぎる騒がしさだった。
「あぁっ! 大暴落だ!!」
悲痛な叫びとともに跳ね起きたブンビーの脳は、まず夢と現実の認識を正常に処理することから始まり、全身の鈍痛に刺激されて、気を失うまでの記憶を取り戻した。やたらと盛り上がっている妖精たちの間から顔を出し、恐る恐る広場の様子を伺う。
「なっ……、プリキュアが五人に!?」
とりあえず驚いてはみたものの、心のどこかでこうなるのではないかと期待していた。“ひとりでプリキュア”なら、ドリームコレットを奪うのにあれほどまで苦労はしなかっただろう。
数で有利なだけの、寄せ集めの集団ではない。それぞれに違った強さがあり、目指す夢があった。やがてそれは絶望の闇を退けるまでの大きな力となり、彼の生き方をも変えた。
“ひとり”や“ふたり”ではない、彼女たちはプリキュア5。五人でいることに意味があるのだ。
――何かの為に自分自身を犠牲にするなんてくだらない。
戦闘中にミルキィローズが口にした言葉、昔の彼が言い放った台詞。あの頃の自分は年ばかりとって何も分かっていなかった。
ザケンナーに向かっていくプリキュアたちの後ろ姿を見て、ブンビーは小さく笑う。自分が犠牲になったつもりはないし、何かを犠牲にした覚えもない。ただ、全力で困難にぶつかっていく彼女たちのひたむきな姿を見られたなら、それでいい。
「頑張れ、プリキュア」
一言ずつ噛み締めるように、彼は呟いた。
小さな虫を一匹、家の中で見つけたとする。
壁にひっついてじっとしているだけなら、有害な種でないかぎりは放っておいてもいいという気になる。ところが、そいつはわざわざ視界の隅を飛び回り、不快感を煽る。そして、ティッシュに潰されるのだ。
しばらくするとまた一匹、目に留まる。つまり、どこかに巣や侵入経路があり、やつらはそこから際限なくわらわらと湧いてくるわけだ。その大元さえ突き止めてしまえば、一斉に駆除することができる。
だから、彼女たちが自らを名乗ったとき、ガンバリーナはほくそ笑んだのである。
「プリキュア5……つまり、これで頭打ちってわけだね」
底の知れない作業ほど気が滅入るものはない。次から次に現れる新たなプリキュア。どこまでもしぶとく、折れる見込みのない彼女たちに困窮するばかりであったが、もう何も心配することはない。
毒がなくとも、血を吸わなくとも、虫がそこに存在していることが気に入らないのだ。数なんて関係ない。多ければ多いほど憎い。すべてを駆除しなければ心の平静は取り戻せない。
いつまで増殖を続けるのかというたった一つの懸案事項が取り払われた今、ガンバリーナは体の内から気力が沸々と湧いてくるのを感じていた。とっくに枯れたものだと諦めていたが、存外、現役を退くには早すぎたかもしれない。
「四人も五人も変わらない!」
むやみやたらに生み出せるだけの黒い球を放ると、ガンバリーナは悦楽に浸った。一方的な破壊ほど心を満たせるものはない。無邪気ゆえに残酷だった幼少期、アリの巣を見つけては棒で穿って崩壊させていた。小さく弱い生き物をいじめると、自分の強さを実感できる。世界の征服者、全能の神にでもなったような気分。
目障りな虫は潰してしまえ。いつまでも彼女の力が尽きることはなかった。どこまでも醜く、しかし気持ちの面では若返っていくガンバリーナの怒涛の攻撃は、プリキュアのみならずザケンナーにまで及んだ。
主人から浴びせられた流れ弾により、ザケンナーは体勢を大きく崩す。ドリームたちはその隙を逃さず、怪物の懐に攻め入った。
「小賢しい!」
正面から黒い球が飛来しても、彼女たちは怯まずに進む。仲間を信じて駛走する彼女たちの勢いは、そんなものでは止められない。
言葉にしなくても、心が通じ合う。喧騒の中に在っても、呼吸を感じる。みんながどこにいて、どう動こうとしているのか手に取るように分かった。
作戦も打ち合わせも必要ない。大事なのは、みんながそばにいてくれること。それがプリキュアの力となる。
「プリキュア・サファイアアロー!!」
先陣を切るドリームたちがちょいと首を傾げると、後方から放たれた水の矢が頬を掠めていき、黒い球と激突した。相殺された二つの力が小さな爆発を起こすと同時に、戦場は砂と煙に包まれる。
やがて疲労により冷静さを取り戻したガンバリーナの目が、水の渦巻くエネルギーによって形作られた弓矢と、渇ききった空間に潤いを与えるキュアアクアの姿を砂塵の中に捉えたのは、やみくもに連発した黒い球が一つ残らず撃墜された後だった。
彼女の操る水流は美しく、そして華麗に大気中の塵芥をなぎ払った。
「四人が五人になっただけじゃない」
宙に浮かぶガンバリーナに矢先を向けて、弦を引き絞る。
「一人が五人になったのよ!」
狙いを定め、矢を放つ。はずみで水しぶきがとび、雫がアクアの頬を濡らした。彼女はそれを手の甲で拭いながら、標的へと飛んでいく矢を見送る。自尊心や社会への軽蔑によっていつの間にか濁っていた心はすっかり清められ、澄んだ瞳で仲間の背中を見つめていた。
「そうかい。だけど……」
真っ直ぐな軌道でガンバリーナの体に到達した水の矢は、闇を貫く寸前で失速した。すんでの所で黒い球を防御用に転じた彼女は、サファイアアローを打ち消すと、言い負かしたつもりでいる若者に屁理屈で対抗した。
「今のあんたは、一人だよ!!」
後方に残留して援護に徹していたキュアアクアの注意は、前衛のドリームたちに向けられていたため、自身に迫る危険には反応が遅れた。振り向いたときには、どこからともなく伸びてきたザケンナーの巨大な手が彼女を握り潰そうとするところだった。
ところが、魔手はアクアから遠ざけられた。手首に相当する箇所を受け止めたキュアミントが、彼女の体ふたつ分はある不気味な手を少しずつ押し返していたからだ。
「かれんは一人じゃない!」
一人で戦って敗れたとき、こまちはどんな気持ちだっただろう。作家になる夢を諦めたとき、諦めきれなかったとき、どんなに苦しんだのだろう。親友なのに何もしてあげられなかった自分を、かれんは責めた。再会の場を設けてくれたこまちを突き放した、あの一言。あまりにも残酷な、心無い態度だった。
にもかかわらず、キュアミントは彼女を守るために体を張ってくれている。果たして自分に、その価値があるのか。そんなことを考えている間にも、二つの黒い球が接近していた。
しかし、アクアが弓を引くまでもなく、それらは火炎の球と光の鎖によって空中で爆発した。煙の向こうに、ウインクをするルージュとレモネードが見えた。
「私もみんなもいるわ。一人になんか絶対させない!!」
「こまち……」
ミントが巨大な手を押し退けようとしたとき、新たに影から伸び出てきた手がその上にのしかかり、二倍の重量がミントに覆いかぶさった。
「わからないね。さっきから仲間の盾になって、損な役回りばかり。あんたが辛い目に遭うのは、誰のせいだい?」
重なり合った手の上に出現すると、ガンバリーナはわざと乱暴に着地した。年老いた小柄な女性が乗ったところでミントにかかる負荷が大して変わるはずはなく、むしろ低減した。
キュアアクアも一緒になって、怪物の手を受け止めたから。
「それがこまちの優しさよ! 私が一番よく分かってるわ」
こまちが書きたいと話してくれた、プリキュアの物語。今がその最終章なのだ。彼女の描く登場人物はきっと、どんなに絶望的な状況でも諦めたりしない。希望に溢れてきらきらと輝き、ページを捲る度に読む者の心を躍らせる。水無月かれんが読みたいのは、そんなお話。秋元こまちに書いてほしいのは、幸せな結末だった。
医学と文学。進路を違えたからといって、別々の道を歩むことはない。目指すゴールは異なれど、それが同じ場所に用意されている偶然だって時にはあるのだ。一人の人間が経験できること、学ぶ機会のあるものは限られている。視野を広げ、人生を豊かにするためには、たくさんの友が必要だった。
学校を卒業するのとは違い、人とのつながりに終わりなんてない。こまちが清々しい気持ちで物語を締めくくれるように、最後の文章にピリオドが打たれるまで、戦い抜かなければならないのだとかれんは思った。
「五人一緒なら!」
ミントとアクアは力を合わせて、上に乗っているガンバリーナごと巨大な手をひっくり返した。
「なんでもできる!!」
ドリーム、ルージュ、レモネードの三人も怪物の本体に強烈な一撃を与え、ザケンナーを打ち倒していた。その巨体は影という沼にずぶずぶと沈んでいき、遂に跡形もなく消滅した。
「五人揃っただけで、どうしてそんな……」
すっかり不利な状況に追い込まれたガンバリーナは、腰を抜かしたままの恰好で壁に行き止まるまで後退る。日が傾きはじめ、背の高い建物によって広場には大きな影が差していた。彼女の表情は、プリキュアの立っている位置からではよく見えない。そこに張り付いているのは畏怖か、それとも決して拭うことのできない怨嗟なのか。
「あれだけ痛めつけたのに、なんで戦えるんだい……」
一人ならきっと、諦めていた。事実、ミルキィローズとブンビーがやられて一人になったとき、キュアドリームは立ち上がれなかった。だけど、りんが名前を呼んでくれたから。うららが、こまちが、かれんが来てくれたから。
夢原のぞみは何度でも、立ち上がることができた。
「みんながいるから、頑張れる。みんながいるから、強くなる!」
威勢を失い、影の中で体を小さくするガンバリーナの姿は、憐憫の情を抱かせるほど不愍だった。ドリームの隣には、みんなが並んで立っている。対して彼女には、何もない。
そう、憎しみ以外は。
「じゃあ、みんながいなくなったら?」
にたりと笑って暗闇と同化したガンバリーナに、プリキュアは解きかけていた警戒心をより強めた。次の瞬間、彼女たちの足下に広がっていた黒い影が意思をもったように蠢き、太陽の光を覆い隠さんとする勢いで天に向かって地面から飛び出した。キュアドリームを攫って。
「ドリーム!」
濁流に揉まれながら必死にもがくドリームの努力も虚しく、身体は沈んでいくばかり。視界は真っ暗、呼吸も満足にできず、上と下の区別もつかない。
「みんな!!」
仲間を呼ぶと、咥内に流体が浸入して彼女は咽かえした。腕を伸ばしてみたら、微かに指先が外気と触れる。意識が朦朧とする中で、その一点にのみ神経を集中させ続けた。
「のぞみ!!」
影は彼女を呑みこんだあと、ゆっくりと大きな渦を発生させた。一瞬だけその中に見えた手を目指して跳んだキュアルージュの身体は、いとも簡単に弾かれる。墜落しながらルージュは尚も彼女の手を掴もうと懸命にあがいたが、遂に二人の手は届かず、ドリームの姿は闇に包まれて消えた。
やがて竜巻となった影が空に伸びると、薄暗い雲によって春の陽気は失われ、世界は沈黙した。小鳥のさえずりも、葉のざわめきもない。空気は重く、肌寒ささえ感じる。彼女たちのほかに生きているものの気配はなく、全てが無に帰したように思えた。
竜巻の動きは次第に緩やかになり、高く聳えたまま静止した。それがいつ襲いかかってくるかという緊張と、一刻も早くドリームを助け出したい焦り、最悪の事態を迎えたことによる動揺が四人の心に乱れを生じさせる。敵の次なる動きに彼女たちは過敏にならざるを得なかった。
「大変だ……」
思いもよらない展開に、ブンビーと妖精たちも言葉を失う。戦場の張りつめた雰囲気は応援すら躊躇わせた。
みんなでつないだ希望のバトンが、落ちる音がした。さっきまですぐそこにあったはずの勝機が、手の届かないところにいってしまった。そんな心持だった。
隠れていることしかできない自分の無力さが、情けなくて悔しい。全員が下を向いていた。ブンビーの足下には、ぬいぐるみのように小さな妖精。夢や希望、喜びの象徴である彼らの哀しげな表情からは、つい目を背けたくなってしまう。
ところが、ココだけは違った。彼はまだ希望を捨てていない、強い眼差しでブンビーを見上げている。
「頼みがあるココ」
その言葉に、ナッツたちも彼を振り向く。彼はキュアドリームを呑みこんだ影の渦を指さした。今やその影は不可解な挙動をみせ、全体が波打ったり揺らめいたりしながら何らかの形体に変化しようとしていた。
「あれに目がけて、ココを投げてほしいココ」
「ココリン!? なにを言い出すクク?」
クレープの心配をよそに、ココはすでに覚悟を決めている様子だった。今さら彼が出ていったところで何ができるのか。とても承服しかねる提案であったが、彼の弱さはきっと彼自身が一番よく分かっているだろう。そのうえで彼が望むのなら、拒む理由などない。
「しかし……」
影は怪物の姿になりつつある。プリキュアは相手の出方を窺っているが、じきに激しい戦闘が再開されるだろう。それでも、ココは不安を少しも顔に出さず、真剣な瞳で訴えていた。ドリームを助けたいと。
「……もう、どうなったって知らないよ!?」
半ばやけくそ気味にココの身体を抱え上げると、ブンビーは建物の陰から二、三歩だけ飛び出して振りかぶり、影のてっぺんに届かせる勢いでココを投げた。中小企業のサラリーマン生活では発掘されることのなかった隠された才能が遺憾なく発揮され、狙ったとおりのポイントにココは着弾した。
変形中で液状のように溶けていた怪物の体はココを弾き返すことなく、そのまま吸収する。ほどなくして、異物の混入などなかったかのように巨大ザケンナーは復活した。
「おや、一体どうするつもりだろうね。自分から飛び込んでくるなんて」
怪物の頭の上にガンバリーナは出現した。しばらく暗闇の中に身を浸していたおかげで、体調がいい。眩しくてうっとうしい太陽も奪ってやった。回復しただけでなく、闇の力が強まったのを実感できる。
「よくものぞみを……」
戦闘態勢に入る四人のプリキュアを見下ろして、ガンバリーナは意地の悪い愉悦を覚えた。チームで戦う彼女たちに、仲間の大切さを教えてもらうことにしよう。一人の存在がどんなに大きいか。
「さて、地獄のおでましだよ。プリキュア5?」
皮肉たっぷりに、彼女は言った。