プリキュアオールドスターズ ~プリキュア5の同窓会~   作:おじ

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6.この森で、妖精はバスを降りた

 巨大な鳥の着地によって、大きな砂埃が舞い上がる。

 

「到着ロプ」

 

 タラップのように変化した翼から全員が降りたのを確認すると、シロップは人間の姿に変身した。

 

「お疲れさま、シロップ」

「このくらい何ともないって」

 

 それぞれ人間の姿になった妖精たちは、美しい湖畔を眺めながら人間界の空気を存分に味わう。

 

「ここは変わらないな」

 

 楽しそうに空を飛びまわる鳥たちを見て、ナッツは言った。

 妖精のままでいるクレープは軽い身のこなしでココの肩に飛び乗り、二人に尋ねる。

 

「ココとナッツが人間界に来るのは、いつ以来クク?」

「そうだなぁ……。こまちとかれんが卒業したくらいからみんなも集まらなくなって、ぼくとナッツは国が復興した後はまったく来られなくなったから……」

「最後に来たのは八年前だ。うららの卒業式を見て、それからは来ていない」

 

 呆れたようなため息を吐いたクレープは、ナッツハウスを見て納得する。

 

「道理でずいぶん廃れてるクク」

 

 エターナルのパルミエ王国襲撃後、再び人間界で暮らすことになったココ達にかれんが貸してくれたばかりの状態にナッツハウスは戻っていた。

 埃や汚れが目立ち、木材は痛んでいる。しばらく誰にも使われていなかったようだ。

 

「手入れが必要だな」

「そうですね。私に任せてください」

 

 張り切るくるみをよそに、シロップは落ち着かない様子でココに尋ねた。

 

「なぁ。ちょっとぶらついてきていいか?」

「えっ、シロップはナッツハウスの掃除手伝ってよ」

 

 国王であるココ達にやらせるわけにはいかないが、一人では一日かかっても片付きそうにない。そんなくるみの憤りを、ココは笑顔で制した。

 

「いいんだよ、くるみ。みんな久しぶりにやりたいことがあると思って、早めに到着するようにしたんだから」

「俺も行きたい所がある」

 

 ナッツはそう告げながら、すでに町の方へ歩きはじめている。

 

「日暮れまでには戻る」

「じゃあ、おれも行ってくる」

 

 こうして森の中に消えて行った二人を見送って、ココは申し訳なさそうに後頭部を掻いた。

 

「それじゃあ、ぼくも」

「ココ様まで!?」

「ナッツハウスの掃除は後からみんなでやればいいよ。くるみも会いたい人がいるんじゃないのか」

「でも……」

 

 迷っているくるみに、ココの肩からクレープ王女が命令する。

 

「人に楽しんでもらうためには、まず自分が楽しむことが必要クク」

「そう、みんなの同窓会だ。くるみ一人が何かを我慢することはないんだよ」

 

 それを聞いて、くるみの表情が明るくなった。

 

「では、お言葉に甘えて……」

 

 くるみは二人にお辞儀をすると、駆け足でその場を後にした。

 そんな彼女とは対照的に、ココの足取りは重い。小さなかばんにクレープを隠したものの、どこに行って誰と会うべきなのかはっきりしないままだ。

 

 行きたい場所があり、会いたい人がいる。自分の本当の気持ちを分かっていながら、会いに行っていいのか迷いながら彼はとりあえず町へ向かう。

 

 

 

 ナッツハウスの扉が開き、割烹着姿のかれんが外に出てきたのは、ココの後ろ姿が見えなくなってすぐのことだった。

 

「気のせいかしら。たしかに誰かの話し声が聞こえたと思ったんだけど……」

 

 彼女は扉を閉め、埃だらけの空間に身を投じる。

 

「本当にあれから誰も使ってないのね」

 

 りんからのメールに、日時と場所は書かれていなかった。

 

 主催者がのぞみなのだからまだ何も考えていないということも十分に考えられるが、ちょっとした衝撃や動揺で変身が解けてしまう妖精を、人が集まりやすいお店に連れて行くことはないだろう。

 そんな異常時の対応をふまえても、彼女たちの同窓会にふさわしい場所はこのナッツハウスくらいだろうと、かれんは見当をつけたのだった。

 

 懐かしみながら掃除をしていると、小さく動く物体を目の端で捉えた。

 その正体は蜥蜴だった。長い舌と湿った皮膚、神経過敏を疑わせるすばしっこい動き。彼女は小さな悲鳴をあげて壁際まで後ずさる。思わず手放したほうきが、棚と壁の隙間に倒れた。

 引っ張り出そうとすると、先端が何かに引っかかる感触があった。

 

「何かしら」

 

 感覚だけを頼りに、埃と一緒に引っ張り出す。

 昨日までの彼女なら、それを見て誰かの忘れ物が放置されたままになっているのだと思ったかもしれない。

 

 しかし、こまちに見せてもらったばかりで、それをただの携帯電話と勘違いするわけがなかった。

 

「どうしてこれが……」

 

 かれんは数年ぶりであり、今日だけで二度目の再会となったキュアモを手に取った。

 

 

 

 時計塔の展望台に、奇妙な黒い穴が発生した。

 

 それはのぞみ達にとって十年もの歳月が流れ、どんなに科学が発展しようとも解明しようのない現象だった。

 

「ここがプリキュアの世界かい……」

 

 中年にしてはあまりにもエネルギーに満ち溢れたその女性は、街を見渡して感覚を研ぎ澄ませる。

 

 彼女の放つ邪悪なエネルギーとは反対の、希望の力。

 弱々しいが確かに感じたその力に、彼女は反応した。

 

「プリキュアかどうか、まずは試させてもらおうかね」

 

 専業主婦として家庭を支えてきたブランクはあるものの、彼女にとってこの程度のことは軽いウォーミングアップに過ぎない。

 

「ザケンナー!!」

 

 暗闇から生み出されたザケンナーは、微かな光のエネルギーを目指して飛んで行った。

 もし、それがプリキュアでなかったとしても、そんなこと彼女の知ったことではない。

 

 

 

 初めは気のせいかと思ったが、すぐに彼らは楽観的な考えを改めて最悪に備えた。

 

「そんな……」

 

 巨大な鳥の姿で空を飛びながら、シロップは信じられない思いだった。

 

「まさか」

 

 信号待ちの人混みの中で、ナッツは呟く。

 

「どうして!?」

 

 近道しようと公園を横切っていたくるみの足は、自分でも気づかないうちに止まっていた。

 

 サンクルミエール学園を望むことのできる丘の上で、ココは確信を得た。これは気のせいではない。

 

「何か出た!」

 

 

 

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