似たもの同士
初恋
の雑3作品
仲良きことは
「それでね、兄さんが…」
「ゆりゆりってさ、お兄さんとすっごく仲いいよね」
「…えっと、そうですか?このくらいなら普通じゃ…」
「普通の女の子はもうちょっと仲悪いよ。ウザイうざいって」
「…もしかして、いっつも兄さんの話するときやけに微笑ましげなのって」
「可愛いな、とは思ってるよ。…ゆりゆりをこんなにするなんて、どんなお兄さんなのかなぁって」
「ただいまー」
玄関の扉が閉まる音で聞こえてはいないだろうがそう声をかけた。
声にも扉にも返事が無かったので誰もいないのかと思ってリビングへ。
しかしながらソファーには制服のままのわが妹がいた。
「ゆり、いたんだ」
「兄さん…」
言葉に振り返ったゆり。
少しだけおぼろげな表情に見えた。
ソファーで陰になって見えない手元を。背中側からのぞき込んでみる。
「っ!だめ、」
手元にあったのはいつものように本ではなく、スマートフォン
ゆりは妙に焦って、スマホのバックライトを消した。
消える直前にちらっと見えたのは、
『 兄 うざい 検索結果 約300万件 』
「……そういう時代になったか」
高校一年生、ようやっと年頃の女の子らしくなったのかな、とそのまま後ずさりして距離をとる。
ふむふむ、とうなずいてその場で回れ右、自分の部屋にでも退散しようとして
「ちが、…まって!」
背後から伸びた手が俺の体を抱きすくめ、
「あ、ひゃあ⁉」
「ゆり⁉」
その手はすぐに離れてどしんと堕ちる音がした。
振り返ると、ソファの背もたれを越えようとしたゆりが、越え切れずに引っかかってでろーんと垂れ下がっていた。
「…それで、普通の女の子はこんなに仲良くないって」
「まあ…ふつうは隣に座ったって密着はしないかな。そんなに相談とか、会話も多くはないと思う」
「うう…ほ、ほかには何か…」
「趣味の話なんてなかなかしないし、妄想の話なんてしないだろうね。太るから半分食べてって同じ箸で仲睦まじくカップラーメン啜ったりはしないし、舐めてる棒付きの飴が気になってもちょっと舐めさせてとは言わない。疲れてたって兄の膝枕で本読みながら寝落ちはしないし、風の戦士ごっこなんかも…」
「…私と兄さんの思い出は、許されないものだった…?」
「許されないとまでは言わないけど…ふつう、小学生ぐらいまでじゃないのかな、そういうのは」
「…しょ、小学生レベル?」
「中学生になってくると、兄貴がウザイみたいな話が増えてくるんじゃぁないかな。思春期特有の発達段階のアレコレで、社会との同調とかを意識して周りに合わせてウザイウザイって言う人が多いと思う」
「ええ…その程度でお兄さんをキライって言うなんて、女の子達絶対損してますよ…」
「そのくらいの年齢になると兄貴もウザイ人間になり始めるからなぁ…言い方は悪いけど、兄貴も妹もちょっと変人じゃないと関係はうまくいきにくい」
「へ、変人って失礼な!」
「……そうじゃな、言い方が悪かったかのう。おぬしは、選ばれしものじゃったんじゃよ。世界の流れに負けたりせず、自分自身を貫くことができる。それは、戦士には大切な素質じゃ」
「……だから、私はずっといじめられてきたって言うんですか?戦士になるためだけに?こんなに、ずっとつらかったのに、みんなと笑えたらそれだけでよかったのに、じゃあ何のために私は…戦士なんて目指したの?」
「…そういうところが変人」
「言い返せません…」
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似たもの同士
日曜日。ゆりが突然「今日、時間ありますか?」なんて聞いてきた。
本屋巡りでもするのかと聞いたら、ゆりのお友達が一度会ってみたいと言ったそう。
話すだけならいいかと着の身着のまま外出しようとしたら、ゆりにちゃんとしてくださいと言われて、本とかの資金を削って買わされた服で着せ替え人形に。
財布も持たされて、また強請られるのかと思案しつつ待ち合わせらしい駅前のショッピングモールへ。妹よ、兄に用事があったらどうしたのだ。用事なんてまあないけど。
フードコートまで引っ張られて、とりあえずとタピオカを買わされた。席に着く。並んでいる人は多かったが意外と回転率はよかった。
なんかブームになってたけどついついタイミング逃して飲んだことは無かったんだよなこれ。ミルクティーというか、紅茶があまり好きじゃないんだけどそれ以外の飲み物もあって、りんごソーダみたいなやつを頼んだら炭酸のふくらみともつもつしたタピオカで満腹感がある。芋が原材料だったよな。豚骨ラーメンとカロリーが同じだって聞いたこともあるが、これだけでカロリーが賄えるなら一食ぐらいは抜けるかもしれない。ゆりは、点滴でも良いなんて言ってはいたが、飲み物感覚のこれはずいぶんとありでは?業務スーパーとかで冷凍のタピオカが売っているらしいし、ストローも百円均一で買える今、タピオカは新たな食事の一種として「兄さん、起きてください」
ゆりにむぎっと頬を引っ張られた。
「もうすぐきますから」
ゆりは視線を日曜日の買い物客に這わせると、何かを見つけて手を振った。
何か、は失礼か。おそらくお友達ちゃん。長めの黒い髪とマフラーがかわいい。メガネがチャームポイントかな。ゆりより日向に近そうな見た目をしている。
「ゆりゆり~」
「さよちゃーん」
立ち上がったゆりはさよちゃんの手を取るとちょっとの間きゃいきゃいとして、それから座った。いかにも女子高生らしいのではないか。
四人掛けのテーブル席で、普通はこういうときアウェーなさよちゃんを気遣ってそっち側に座ると思うんだけど、ゆりは当たり前のように俺の隣に座った。
ちょっとだけ椅子を寄せてきた。
「えっと…これが例の兄さんです」
「あっどうも、七尾百合子の兄です。いつも妹がお世話になっています」
「こちらこそ、百合子ちゃんにはいつも仲良くしていただいて…深瀬さよと言います」
「……」
「……」
「あ、あれ、さよちゃん、何か聞きたかったことがあるんじゃ…?」
「いや、一度見てみたいとは言ったけどちょっと見てみたい以上の意味はなかった。正直冗談レベル」
「…うちの妹がすみません」
「いえ、いつも百合子ちゃんには笑顔にさせていただいています。本当に楽しくって」
「あの、なんで二人とも三者面談の保護者と先生みたいな…もうちょっとほら、ハートフルなかんじでいいじゃないですか」
「ばか、ゆり、妹の知り合いなだけの女子高校生だぞ?ゆりの友人関係に変な軋轢生まないように、社交辞令で流してくれるならそれに越したことは無いだろ」
「先生みたいな…って、いっつも丁寧語なゆりゆりに言われてもねぇ。時折ちょっと、この距離感でいいのか不安になるし」
「なんでそんな…だ、騙されないですからね!どうせ二人して私をからかってるとかそんな…」
「いや初対面初対面。名前すら、というか存在を認識してなかったから」
「あたしもだよ。それに…お兄さん、あんまり似てないんだね。そんなに仲いいから見た目もそっくりなのかなって思ってたけど…義理の兄だとか?」
「いえ、ちゃんと血はつながってますけど…」
「……『あんまり似てないね』その言葉がを聞いたとき、またか、と言う言葉が一番に思い浮かんだ。百合子が生まれてからずっと、母を除けば俺が一番そばにずっといたというのに。百合子の兄であれるのは俺だけなのに。ただ母の血が濃く出たか父の血が濃く出たか。髪の色が少し違うだけで
「あ、よくわかった。これはゆりゆりのお兄さんだわ」
「それにしても…お兄さん、カッコいいね。ほれちゃいそうだよ」
「さよちゃんも、麗しい見た目で…ゆりなんかよりお淑やかなんだろうね。付き合うなら君みたいな人がいいな」
「あら、お口まで上手なの…?……ちょっと連絡先を…」
「ま、待って下さい、あれ、さっきまでもっと距離ありましたよね?なんでそんな急に」
「ゆり、愛とか恋は人間関係は人それぞれだぞ」
「そうだよ〜ゆりゆりが言ってた通り、ハートフルにしてんじゃん」
「そ、それはそうですけど…!」
「大丈夫だって、盗ったりしないって。…ゆりゆり、大好きだもんね、お兄さんのこと」
「なっ…!そんな、兄さんは兄さんであって大好きとか恋人とかそんな関係じゃなくてでも血の繋がりと兄妹の関係を超えた禁断の愛とか運命に遮られた恋とか興味なくはなくて兄さん優しいしきっと優しくてくれるしきっと今まで通り、そして期待した通りに
「ゆり〜、もどってこいー」
「ゆりゆり〜、お兄さんと2人きりにしないでー、気まずいからー」
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初恋
「ゆりゆり、誰か男の人とお付き合いしたことある?」
「無いです…」
「あーやっぱり…」
「やっぱりってなんなんですか!…一応私アイドルですからね。彼氏とかいたらすきゃんだるですよ」
「あたしね、彼氏いるんだけど」
「……そ、そうなんですかー?き、気にはしてませんけど、話くらいなら聞いても」
「だーいじょうぶ、ゆりゆりの愛するお兄さんじゃないから」
「あ、愛してなんていません!…あ………今の言葉は、無かったことに」
「ん。……でね、ゆりゆりのお兄さんに劣らずいい人なんだけどね、社会人なんだよね、その人」
「高校生と社会人の恋…?出会いはなんてことなかったのになんだかんだで関係は続いて、積み重ねられた縁はもう切ることなんて出来なくて、年齢の差も、世間からはそういう目で見られても俺はやっぱりお前のことが…」
「いい?」
「ごめん」
「……でさ、大人の男の人だからそれなりにさ、そういうこと、したそうじゃん?」
「…まあ、それは…」
「一応、さ。あたしまだ16だし、そういうの、考えてくれてるのかもしれないけどさ、なにもしてくれないんだよね」
「……正直、高校生なんて遊びで、ぽいっとできる人もいると思いますけど」
「そこは心配してないよ。ゆりゆりのとこのプロデューサーさんだし」
「……今、なんて?」
「ただいまー」
玄関の扉が閉まる音で聞こえてはいないだろうがそう声をかけた。
声にも扉にも返事が無かったので誰もいないのかと思ってリビングへ。
「…おかえりなさい」
ソファーにはゆりが居た。
振り返らなかったので、きっと本でも読んでるんだろう。
正面に回り込んで本の表紙を覗く。
『初めてのキス、出会いはいつ?』
『欲しいのは甘酸っぱさ?それとも濃密な夜?』
『壊れるほど愛したい?蕩けるほど愛されたい?』
意外なことに、ゆりが読んでいたのは物語では無くティーン向けの雑誌だった。珍しい。
見出しにそれっぽいフォントが踊っている。
面白そうな内容なのでゆりの背中にまわって、肩のあたりから手元を覗く。
『年の差の恋、何から、いつから?』
開かれているページにはそう書かれていた。
アンケート結果が置いてあって、それに対する考察が述べられている。
何歳差か、とか、いつ手を出されたのか、とか。
見開き3ページくらいの特集記事は、後半のページに進むにつれて結構深い、際どいところまで書いていた。生々しい。
今時の女の子はこんなんなのか、と思っていると、
「…兄さん、キスとかしたことありますか」
「…どうしてまたそんなことを?」
「さよちゃんに相談されたんです。彼氏さんに、どういう風にしたらいいのかなーって」
「……無くはない。けど、参考になるのかなぁ」
「…年の差のとかは気にしなくても」
「そうじゃなくて、そもそも関係が違うというか」
「?…外国の人と、挨拶で、みたいなことですか?」
「……ちょっと待ってて、アルバム持ってくる」
「あ、アルバムに載ってるんですか?」
「覚えてないか。これ。ゆりの初めてのキス、俺なんだけど…」
「え⁉︎…こ、これって3歳くらいですよね?…の、ノーカンです!」
「流石に参考にならないよなぁ」
「じゃ、じゃあキスは今はいいです。デートとかは…」
「本屋デートとか図書館デートとかなら語れなくはないけど」
「それって私じゃないですか!」
「本ばっか読んでる人間に現実世界の経験聞くのは間違ってるんだよなぁ」
「…ちなみに、お泊りとか、…したことは?」
「時々膝を占領されたままソファーで女の子と寝てる話でもする?」
「私じゃないですかぁ…ハグとか、頭撫でたりとか、」
「正直そうすると機嫌良くなるっていう打算のもとにやったりはするけど、抱きしめること自体も嬉しかったりはする」
「同居とか、お風呂とか、食事とか……」
「ゆりは、そういう経験は?」
「本読んでるだけの人に期待しちゃダメです」
「兄さんにも相談してみたけど、本読んでるだけの人間達じゃ力にはなれませんでした…」
「お兄さんに?…なんか手間かけて悪いね」
「楽しそうに話してたので多分気にしてませんよ。雑誌を元に話をしたんですけど…キスもデートもハグもなでなでも同居も食事も、夜とかお風呂も、私との経験しか無くて参考にならないって言ってました」
「ゆりゆりがついに幻想に溺れた話」
「今回のは私も兄さんも妄想入ってないです」
「本当に?…やっぱり仲良いね」
「兄妹だから、普通ですよ」
「……ゆりゆり、普通じゃないよ」
短め
なぜ俺の妹はゆりじゃないんだ
これから
ミリは何書くか構想(妄想)はないけど、シャニはアルストロメリアとか、デレは…ちひろさんとか志希ちゃんとか?
本職はポエム風シリアスもどきなのでギャグ系は少なめ
蛇足
天井社長×はづきさん
誰か書いて