天使と不死身の殺され愛   作:放仮ごdz

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どうも、久々の更新で大晦日にこんなものを上げてる馬鹿の放仮ごです。FGO/TADが年内に書き終われないと悟ったから四時間でこれを書きました。深夜テンションなので拙い部分は許して。

過去作「東方ウィザード」などでお馴染みキリエとロードで恋愛を書いてみたお話。


七星霧依という女

 現実は小説より奇なりと言うが、少なくとも小説には夢がある。現実ではないから、抱いた幻想は決して壊れない。理解不能の展開だろうと、あとから説明されるから、訳が分からず悩み続けることはない。本人さえ理解できてないややこしい女なんて、小説のヒロインだけで十分だ。だが少なくとも。

 

 

「おはよう。そして死ねえ!」

 

 

 出会いがしらに鋼鉄バットで撲殺してくる女を俺はヒロインとは認めない。

 

 

「…痛いだけなんだが」

 

「これでも無理か。どうやったら死んでくれるのよ道也君」

 

 

 側頭部への激痛と共にへし折れた首を両手で掴んで元の位置に戻しながら睨み付けると、血に濡れた鋼鉄バットを片手でぶらぶら揺らしている美少女は不服そうに頬を膨らませる。一見可愛いが言動で台無しなんだよなあ…。

 そう、この一つ年上の先輩は美少女だ。綺麗な紫がかった銀髪をグラボブレイヤーとかいうもみあげ部分を流したショートカットなんていうあまり見ない髪型にした、学校指定のブレザーを身に着けて胸元に銀細工の十字架のネックレスを下げた端整な顔立ちの、俺より少し背が低いが女性の中では高身長と言ってもいい少女は、鋼鉄バットをもう一度振りかぶると今度は正面から殴りつけてきた。無駄に綺麗なスイングで叩き込まれたバットを右腕で受け止め、折れた右腕を押さえて治しながら溜め息を吐く。本当に痛いだけなんだから、勘弁してくれ。

 

 

「生憎、寿命が来るまでは無理だな。いい加減諦めてくれ七星先輩」

 

「ちっ。不死身だなんて本当に卑怯な怪物ね?」

 

「好きでこんなんじゃない。生まれつきだ」

 

「この世に生を受けたことを後悔するがいいわ!」

 

「とっくに後悔しているよ、アンタみたいなのに目を付けられたんだからな」

 

 

 血塗れの顔をハンカチで拭いながらいつもの様に返すと、あからさまに舌打ちしたあと憎悪に満ちた黒い笑みを浮かべるこの世のものとは思えない絶世の美少女。実際この世の理から外れた人らしい。

 ――――七星霧依(ななせ キリエ)というこの女、容姿端麗の完璧超人で模範的な我が高校の生徒会長なのだが、問題が一つある。前世が天使だと思い込んでいる痛い人で、それでいて人で無い者を毛嫌いしているのだ。彼女の言い分曰く「神様は私がちゃんと使命を果たせなかったから撤回したのよ!本当は異形を駆逐したいと思っていたはずなのよ!だから私はやりとげるの!」らしい。馬鹿なんじゃないかな。

 

 

「それはそうと急ぐわよ。死ななかった以上、遅刻したら許さないんだから」

 

「どの口が言うんだ先輩…」

 

 

 そう言って血を拭ったバットを鞄に仕舞って学校への道をスタスタ早歩きで歩いて行く生徒会長に追従する。…人通りの少ない場所でだけ襲ってくるのはいいことなのか悪いことなのか。入学早々体育館裏に呼び出されたりしたし悪いことだな、うん。

 やることをやったら即座に生徒会長の言動になる公私混同しない裏表の激しい人で、糞真面目で嫌いなものは嫌いと言える、なら聞こえはいいが真面目すぎて融通が利かず、頑固で思い込みが激しい。どっかのラノベのヒロインみたいな女だが絶対死んでも認めねえ。

 

 で、そんなのに目を付けられた俺は小さい頃から骨折ぐらいの怪我なら数秒で治ってしまうというよくわからん体質で…普通なら即死するような重傷を負っても治ってしまう、つまり不死身…らしい。ここまで死なないとは、入学早々この人に呼び出されて不意打ちで脳天かち割られるまで知らなかった。知らない方が幸せだったかもしれない。何度も殺されて蘇生する羽目になってるのだから。

 それからずっと目を付けられてて勝手に行動を共にされている一ヶ月。どうも家が遠いってのにわざわざ遠回りしてまで俺のアパートまで迎えに来るんだからたまったもんじゃない。変に騒がれるぐらいなら、としぶしぶ毎朝登校を共にしているが…見張っているつもりなんだろうか。

 

 

「あー、先輩?俺、そこの銀行で今日の学食代を引き出してくるから先に向かって―――」

 

「あらそれは大変ね。私もついていくわ」

 

「なんでだよ」

 

「逃げられたら昼に襲えないじゃない」

 

「あ、はい」

 

 

 逃げた所でこの先輩なら地獄の底まで追ってきそうだから逃げるつもりは毛頭ないのだが…この女、暇さえあればずっとついてくる。端的に言えば俺のストーカーだ。しかも堂々とついて来ようとする性質の悪いストーカーだ。警察に逃げ込もうものなら俺の頭を疑われるだけだろう。自分を殺した相手から逃げてます、なんて誰が信じるというのか。

 

 

 満面の笑みを俺に向けながらぴったり横についてくる先輩を連れてこの町で一番デカい銀行に入る。周りがざわついてるがこの先輩、美少女だから目立つんだよな…さっさと引き出してとっとと出よう。そう考えながら前に視線を向けると、そこにはあっけらかんとしているなんか縛られた老若男女さまざまな人達と、目だし帽を被ったあからさまに強盗な三人の男達がそこにいた。

 

 

「「「………」」」

 

「………お邪魔しました」

 

「ちょっと待てや兄ちゃん。自動ドアに貼って置いた「本日休業」の紙は見えんかったのかなあ~?!」

 

 

 入り口に近いところに突っ立っていた小男に銃を向けられ、すごまれたので見てみると確かになんか紙が貼ってあった。シャッター閉めたら逆に不自然だからあんなもんですまそうとしてたとか馬鹿なのかな?せめて鍵は閉めとけ、そしてそれに気付かない俺も馬鹿。俺に(悪い意味で)夢中で気付きもしない先輩もホント馬鹿。とりあえず何とか逃げようそうしよう。

 

 

「いやー、ちょっと考え事してまして。邪魔ならさっさと出るんで。警察に連絡なんかしないし、なんならこの女置いていきますんで」

 

「いい度胸ね道也君」

 

「彼女置いてくとか男の風上にも置けねえなああん?!おめえも人質の仲間入りだよオラァ!」

 

 

 まあただ死なないだけの高校一年生な俺にはどうすることもできず。先輩も何も抵抗することなく鋼鉄バットを没収され、手足を縛られて転がされる。こんなときまで優等生モードを保たなくてもいいと思うんですがねえ?本性出したらなんとかできただろう、先輩…

 

 

「なんか失礼なことを考えているみたいだけど。さすがの私も拳銃持ちの大の男三人を相手に誰も犠牲にしないで助けるとか無理よ。人を救うのが天使なのに、悪人倒すために無垢の人々を危険に晒しちゃ駄目でしょ?」

 

「さいですか」

 

 

 そういやこの人、自称天使だったな。めんどくせえ…。でもこんなお粗末な銀行強盗、窓をカーテンで覆っていようが外から異変を察知した誰かが通報しているはずだ。それまでこの男たちをできるだけ刺激せずにやり過ごせば助かる筈だ。だが忘れていた、この女は糞真面目だということに。

 

 

「そもそもねえ。私達を簡単に入れてしまうぐらいちんたらしていてお粗末な強盗を企てて実行に移すなんてなんて馬鹿なのよ。警察が来ることもわからないのかしら」

 

「なんだとアマァ!」

 

 

 縛られているってのにこの女は真っ向から強盗共に蔑んだ視線を向けた。銃を向けられようと決して怯まない。自分が時間を稼いで囮になろうとしているのか、万が一にも他の人間に手出しさせないために。何か考えがあるんだろうな。理不尽ではあるが、その正義感だけは本物、か。…その正義に否定され続ける俺ってなんなんだろうな。

 

 

「浅はかで無知な人間をどうして神はこの世にお生みになさったのかしら。悪人なんて愚かなだけで何の役にも立たないじゃない」

 

「言わせておけばぁあああ!そんなに神が好きなら神の元に送ってやるよお!」

 

「っ…!」

 

 

 激高した男が銃の引き金に手を掛ける。その瞬間、初めて少女の顔に焦りが見えて、その時察してしまう。この女、無策で挑発していたのだと。考えるより先に体が動いていた。そりゃそうだ、この人は自分が天使の生まれ変わりだと思い込んでいるただの人間で、そして・・・

 

 

「させるか!」

 

「まとめて地獄に送ってやるよお!」

 

 

 少女を庇うように前に飛び出すと同時に、引き金が引かれた。目前に迫る弾丸に、ゆっくりとなった世界の中で死の恐怖が襲う。生き返るとしても、死ぬのは、怖い。それでも、それでもだ。そうだ、こんな俺を殺そうとする女でも……不覚にも、俺の初恋だった女の子なんだ。絶対に殺させない!

 

 

 

 

あ、死んだ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思って目をつぶって数秒。俺は、生きている。死んでもいない。あまりの痛みについに昇天したのか?と目を開ける。そこには、白い羽毛が目の前一杯に広がっていた。

 

 

「なにやってんのよ、馬鹿」

 

「な、な、ななななな……!?」

 

 

 倒れ込んだ俺を抱える細腕に、見上げてみると息をのむ。絶世の美少女の呆れた顔がそこにはあった。ドアップは心臓に悪いぞ。バサッという音とともに羽毛の壁が取り除かれると、そこには銃を構えたまま驚きで固まっている小男。他の男二人も、唖然としてこちらに視線を向けている。見れば人質たちも同様だ。撃たれても死なない俺…じゃなくて、後ろ…?

 

 

「なに勝手に死のうとしているの、許さないわよ」

 

「はあ?アンタは俺を殺したいんだろう?なら、放っておけば…」

 

「馬鹿ね。私が貴方を殺したいの。だって愛してしまったんだもの。責任とって殺さなきゃ、神様に顔向けできないわ」

 

「何を言って…」

 

 

 見れば、羽毛の壁は七星先輩の背中と繋がっていて。それは、まるで天使の様な白い翼だった。いや、まるでじゃない。本当に、天使…?七星先輩は何時になく目をギラギラさせながら恍惚の表情を浮かべて俺を抱きしめてきた。なにがなんだかわからないんだが!?

 

 

「この姿を見られちゃったならしょうがないか。輪廻転生って知ってる?私とあなたは以前、愛し合っていたの。なのに貴方は異形の者だということを隠していて…私、許せなくて殺したの。でも貴方以外を愛せなくて、でもその繰り返しで。やっと、やっと人間として再会できたと思ったら今度は前世の体質引き継いでいるんだもの。だから私が責任を持って殺すの。だって愛してるんだから」

 

 

 そう言いながら翼を広げ、強盗達を吹き飛ばすと簡単にノックダウンしてしまう。でたらめすぎる…さらに羽が舞い、それが強盗達や人質達の頭に触れると消えて眠りについた。慌てる俺に、安心させるように一指し指を立てて笑う少女。確かにその姿は、天使の様だった。

 

 

「彼等から私達の記憶は消したわ。あとは警察に任せましょう。遅刻してしまうからさっさと学校に行こう?」

 

「…七星、先輩。アンタは…一体…」

 

「学校以外ならキリエでいいわよ。私は貴方を私以外の手で殺させない。これからも殺し続けるから覚悟しなさい、八坂道也君(ワタシノカミサマ)

 

「ええ……」

 

 

 どうやらこの女は非日常な存在で俺のヒロインらしいが、それでも俺はこの女をヒロインとは認めない。




・七星霧依/キリエル・セブンスター
容姿端麗の完璧超人で模範的な、道也の通う高校の生徒会長。高校二年生で17歳。趣味はピアノと野球とチェーンソーアート。
 その正体は仕える神様の願いを勝手に自己解釈して自分の使命にして暴走した結果追放された挙句、罰として永遠に不老人間として生き続ける堕天使。不死ではないが死んでも同じ容姿、同じ人格で生れ落ちる拷問に近い罰だがそれでも神は分かってくれると信じ続ける狂信者だが、あまりにも長い時間を人間社会で生き続けたため精神を病んでいる。
 ある時、心の拠り所にして愛した少年があろうことか自分が消すべし(と思い込んでいる)異形の者だと発覚して思わず殺してしまい輪廻転生する度に人間かどうか確認して殺し続けているサイコパス。
 正義を愛し、悪を憎む勧善懲悪の心の持ち主だが、その「悪」は異形という人間ではない存在も含まれ、人々の間で語られるなどして表に出て来た「異形」は全て駆逐して歴史の闇に葬った。天使としての力はないが、記憶操作のために翼だけ出せる。


・八坂道也
入学早々キリエに一目惚れし校舎裏に呼び出されて期待して向かったら殺されて不死身な体質が発覚してそれから付け狙われる可哀そうな高校一年生。前世は人に化けて交流していた蛇神の化身。蛇は「再生、永遠」を示すため、不死身だと言わんばかりの超再生能力を持つ。例え頭蓋骨を粉砕されてもすぐ復活する。死んだらすごく痛いためできれば死にたくない。苗字の八坂は某守矢神が由来。




純愛ですね(にっこり)。ねずみ年を迎えるのに天敵の蛇の話を書いてるとか馬鹿なのかな。感想をいただけると嬉しいです。ではよいお年を。
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