天使と不死身の殺され愛   作:放仮ごdz

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待ってた人はいるのかわかりませんがお待たせしました。サイコパスヒロイン書くの楽しいので、需要があると嬉しい。新ヒロインである幼馴染、鈴鳴愛真が登場。楽しんでいただければ幸いです。


鈴鳴愛真という女

 なんでみんな疲れているのに、ゆっくり休むことができないんだろう。眠いのに何で仕事に勤しむのだろう。眠らないとどうなるのかわかってないのかな。私のお母さんは眠らなかったせいで、二度と起きることがなくなったのに。お父さんは苦しみから解放されたんだよ、って言ってたけど。

 

 小さい頃は今より病弱で、たまに体調が良くなる時以外は床に伏せっていた私にとって、眠りとは苦しみから唯一逃れることができる「救い」だった。苦しむぐらいならずっと寝ていたい、そう思っていた。だから、お母さんが眠りについて、私はそれを心から喜んだんだ。私以外の人々にとっても、眠り()は救いなんだ。苦しむのは悪いことなんだ。

 

 だから私は、みんなが救われるにはどうすればいいかを知るために精一杯勉強した。私も医者になるのだとそう言ったらお父さんは喜んで勉学書を与えてくれた。お父さんは外科医術に精を出していたけど、それじゃ駄目だと判断した私は薬学を勉強した。将来の夢が薬剤師になり、小学生になる頃には自信作の薬が完成していた。苦しんでいた動物たちや、病院で出くわした「寝られない」と困っている人たちに試供品として薬を処方し、効果もちゃんと出ていることに満足していたある日。幼馴染だった君に、相談されたんだ。

 

 

 でも私の力が足りずに君はすぐに目を覚ましてしまって。君は何度も悪夢に魘されて。それまで救えていたのが嘘の様に救えなくて、それから君を眠らせるために研究に没頭して。あれからもう十年経つ。君は優しいからいつも満足してくれるけど、まだ約束を果たせてない。

 

 10歳の時に離れ離れになって、それから五年間も君に薬を処方できないっていう罪悪感に押し潰されそうで。手紙にも何度も綴ったけど、電話で何度も謝ったけど、君は笑って許してくれた。大好きな君が今も苦しんでいるだろうと思うと夜も眠れなくて苦しかったけど、自分に薬を服用することは全部を無責任に投げ出すことだから、できなかった。他の人に処方するのは心配だったから動物たちで試して研究し続けた。いつか、君に再会できると未来に希望を持つことにしたんだ。

 

 そんな時、高校生になる頃に君が隣町の高校に通うってことをお手紙でくれて。お父さんにお願いして無理に入学したけど再会できて、本当に嬉しかった。前みたいに私を頼ってくれて、嬉しくて。でも、五年も研究して改めて処方した自信作は、君には全然効かなくて、でも睡眠不足で苦しんでいる君を救いたかった。

 

 でも安心して。昨晩、お父さんが疲れていたから、君には悪いけどお薬を処方したの。大成功だった。みんな大騒ぎだったけど、お父さんはお母さんと同じように救われたよ。これなら君を救える、そう思うと約束の時間を待つ間、浮足立った。いつもは走れない足も、私の気持ちを表す様に軽くてスキップで向かった。ああ、楽しみだな。君を救えたら世界中のみんなを救えるよ。私がみんなに永遠の眠り(救い)を与えるんだ。そして心配事が消えた私もぐっすり眠るの。すごく、楽しみだなあ。

 

 

 

 

 

 

 安心してね、道也君。

 

 

             私が責任を持って、

 

 

                       君と世界を救って見せるから。

 

 

 

――――「こんにちは道也さん。昨日ぶりですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七星先輩に小突かれた後頭部を押さえながら返事を返すと、嬉しそうに微笑むイトマ。絵になる美しさに見惚れていたら、また小突かれる。…無視しよう。

 

 

「いつも助かる、イトマ」

 

「ううん、私が好きでやっているし、それに約束だから。気にしなくていいよ道也さん。…それよりも、なんで生徒会長が一緒に…?」

 

「えっと、それはだな…」

 

「この近辺で猟奇事件があったって聞いてね、個人的に調べにきたの。この駅についたら彼と会って、貴方がここに住んでると聞いてついてきたの」

 

 

 嘘八百を笑顔で並べる先輩に思わず感心してしまう。猟奇事件ってのは確かここ最近この辺りで起きている、野生ペット問わずに動物が大量に急死しているという事件だ。ニュースによると血塗れとかではなく、眠る様に息を引き取っていて死因が心臓発作というぐらいで原因も不明なんだとか。10年近く前にもこの辺りで同じような猟奇事件が、それも動物だけでなく人間が何人か死んだ事件があったとかで同一犯もしくは愉快犯かと関連性が疑われている、らしい。当時この町に住んでいたが、正直あまり覚えてない。

 

 

「…でも、道也君と一緒にいる理由にはなりませんよね?」

 

「そうね。でも、一緒にいちゃいけない理由もないんじゃない?」

 

 

 ジト目で睨んでくるイトマに物怖じせず上から目線でマウントを取ろうとする先輩。…なんなのかわからんが、大人げなくないか?

 

 

「……まあいいですが。それよりもごめん、道也さん。今ごたごたしていて…今日は薬を渡すだけで」

 

「どうした、なにかあったのか?」

 

「今朝、心臓発作でお父さんが倒れたの。無理が祟ったみたいで…」

 

「…へえ」

 

「栗人さんが!?」

 

 

 悲痛の面持ちで告げられた言葉に面食らう。子供の頃、お世話になったイトマの父親…鈴鳴栗人が亡くなった、だって?いきなり告げられたことに真実味が帯びないのはきっと、俺が毎日殺され続けているからってのもあるのだろう。俺を殺している張本人は不謹慎にも興味津々ですって顔をしているが腕を抓って黙らせる。だけどあまりにも衝撃的で…いつも通り笑っているイトマに、申し訳なくなってきた。

 

 

「……悪かった。俺のために待っていてくれたのか?」

 

「うん。約束は守らないと。お父さんもきっと許してくれる、他でもない道也君との約束だもの。道也君も気を付けて帰ってね。その薬があればお父さんみたいに寝不足で倒れることも無くなるはずだから…」

 

「あ、ああ。大切に使うよ。…また、学校で…いや、通夜でになるのか?」

 

「そうなる、のかな?そうならないといいんだけど…」

 

「どういうことだ?」

 

「ううん、なんでもない。じゃあまたね、道也君」

 

 

 そう言ってとてとてと上手く走れない足で急いで病院に戻って行くイトマを見送り、俺と先輩は帰路に着いた。

 

 

 

「心配だなイトマ…栗人さんの死、まさかさっき言ってた猟奇事件が関係していたりするのか?悪いウイルスとか?」

 

「どうだかね。死因は一緒みたいだけど。詳しく調べてみないと分からないけど警察発表では心臓発作で死んだ以外特に原因は分からないってあったし。…ねえ道也君。十年前もこの辺りで似たような事件が起きたのよね?」

 

「ああ、確かそうだ。最初に死んだのは確か、イトマのペットだったな。無表情で悲しんでたあいつを覚えている。生まれた頃から一緒だった老犬だった。母親、ペットに続いてまた家族を失ったのか…イトマも辛いだろうな」

 

「…それはどうでしょうね」

 

「は?」

 

 

 そう言うなり、ジーッと俺の手に握られたイトマの薬が入れられた袋に視線を向ける先輩。なんだ、何か気になる事でもあるのか?

 

 

「…十年前って言えば、まだ貴方がこの辺りにいた頃よね?正確には五年前越したんだっけ」

 

「そうだな。事件がぴたりと止んだのは、俺がイトマに薬をもらった時期だな、確か」

 

「なるほどね。大体分かったわ」

 

「なにがだ?」

 

「なんでもないわ、貴方には関係ないことよ。とりあえずその薬は没収」

 

「はあ!?」

 

 

 いつもと違う、真剣な雰囲気で俺から袋を奪い取る先輩に咄嗟に手を出すが、簡単に抑え込められたばかりか極まり肩が外されてしまう。骨折ぐらいならすぐ治る不死身でも再生できない激痛に悶絶しているうちに駆け出して離れていく先輩の、いつも俺から決して離れなかった彼女の異常な行動に思わず疑問の声が出る。

 

 

「なんのつもりだ!?嫌がらせか!」

 

「そうよ。貴方に安息の眠りは与えないわ。苦痛に塗れて永遠の眠りにつくのがお似合いよ!」

 

「そんな悪趣味にイトマの優しさを巻き込むんじゃねえ!」

 

 

 無理やり肩をはめ直し、ひらひらと見せびらかす様に袋を振り回しながら逃走する先輩を全速力で追いかける。昼過ぎの人通りが少ないまでもちらほらと人が見える商店街を駆け抜ける。通りがかりのおばちゃんに「あらあらまあまあ」などと優しい目で見られたがそれどころじゃない。

 イトマをこれ以上悲しませることなんか、できるわけがない!五年前とはいえこの辺の地理に長けている俺に不利を悟ったのか路地裏に入り込み、常人離れした速力で壁を駆け上がって屋根に乗り出した先輩を、フェンスに引っ掛かって傷だらけになりながらも追いかける。どうせすぐ治る体を気にしている余裕も無かった。

 

 

「ああもう、しつこいわね!そんなに心配しなくても、あとからちゃんと貴方にはガチャを引いてもらうから今日は大人しく帰りなさい!」

 

「お前、おかしいぞ!いつもは俺を殺すために絶対に離れないくせに!薬を毒とすり替えるにしてももう少しばれないようにするだろアンタは!」

 

「私のことを知って来てくれて嬉しいけど、今はそれが腹立たしいわね!この薬は私が使わせてもらうわ!だって貴方を殺せない寝不足で死にそうなんだもの!」

 

「嘘付けいつも元気有り余ってる癖に!」

 

「ぐっ…何で今日に限ってそんな情熱的なのよ!そんなにイトマさんのことが好きなの!?」

 

 

 逃避行中の問答で言い返せなくなったのか、真っ赤な顔で頓珍漢なことを叫んできた先輩に思わず呆ける。………俺がイトマのことを好き、だって?

 

 

「…子供の頃はそりゃあ、気にはなったが…」

 

「ふん!そうよね、私なんかよりも美人で気が利いて寄り添ってくれるものね!そんなに好きだったらイトマさんの側にいてあげたらいいでしょ!私もさすがに無関係の人間の側で殺そうとは思わないから最良の案じゃないかしら!」

 

「たしかに気にはなってたがな!」

 

 

 なんか知らんが、涙目で叫んでる勘違いしているこの女に一言言っておきたい。たしかにあんないい娘はそういないさ。俺の悩みにも真剣に悩んでくれて、五年前は確かに好意を持っていたと思う。だけどな。

 

 

「あの日、入学式で出会ったアンタに恋してしまったんだよ!あんないい娘を忘れらせるぐらいの衝撃、一目惚れって奴だ!責任取れ馬鹿野郎ーーー!」

 

 

 もう疲れてて頭が回らなかったがゆえに出てしまったこの馬鹿な告白に、真っ赤な顔でぐるぐる目を回していた先輩が雨どいに足を引っかからせて頭から落下、コンクリートの道路に叩きつけられたことでこの追跡劇は幕を閉じた。

 

 

「っはあ!?や、やろうじゃないし!私に恋するとか当り前だし!いきなり何てこと言い出すのよ道也君は!?ここで殺してやろうか!?いや、今殺す殺してやる!地べたにこすり付けてすり潰してやる!」

 

「…ほんと、黙ってりゃ美人なんだがな」

 

 

 上半身だけ持ち上げて混乱してあわあわしている先輩に思わず可愛いなと感想を思い浮かべながら疲れた足で飛び降りようとしてつんのめって頭から先輩の真横に転げ落ちる。その際首の骨が変な方向に折れてしまって軽くホラー映像になってしまったが、周りに誰も人がいない事幸いと先輩に戻してもらった。

 

 

「さてと、落ち着いたことだし話してもらえるか?」

 

「…何をよ」

 

「とぼけるな。アンタが変な行動をとるってことは、銀行強盗の時みたいな俺の命が誰かに奪われるときぐらいだろ。それでなんでイトマの薬を持っていったのかは知らないが」

 

「鋭いのかそうじゃないのかどっちかにしなさいよ。…わかったわ、全部話す。蛇みたいにしつこい男ね、まったく。せっかく貴方の知らないところで終わらせようと思ったのに、私の気遣いを無視するんじゃないわよ空気の読めない男ね」

 

「余計なお世話だ」

 

 

 呆れ顔の先輩に続きを促すと、立ち上がって服についた汚れを落として整えながら先輩は袋を突き出してきた。

 

 

「キリエさんは優しいから順を追って説明します、まずこれだけど。毒薬よ、それも劇薬。貴方を殺してしまうかもしれないほどのね」

 

「はあ?」

 

「で、多分猟奇事件の犯人はイトマさん。この薬を作る過程においての実験ってところかしら。父親まで殺したのはなんでか分からないけど。悪意がまるで見えなかったから私もあの光景を見るまで気付けなかったわ」

 

「ちょ、ちょっと待て。イトマが、殺人?…栗人さんを、殺した?」

 

「そうね。で、多分貴方は子供の頃に一度殺されてるわ」

 

 

 さらりと語られた真実に、理解が追い付かない。理解したくない、その言葉に俺の脳裏は真っ白になった。………そういうところだぞ、七星霧依。




なおこのサイコパス、純粋な人間である。

結月ゆかりが元ネタのキリエさんに続いて、イトマは容姿が初音ミク、そして悪ノPさんの楽曲「眠らせ姫からの贈り物」をリスペクト、イメージしたキャラとなります。七つの大罪シリーズが好きです。

不死身の道也を死んだように眠らせる薬って時点でお察しであった。自殺願望持ちの破滅系善意ばら撒きサイコパスヒロイン、イトマさん。彼女とキリエどっちがましなんですかねえ?私にもわからん。

感想と評価などをいただけると嬉しいです。次回もお楽しみに。
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