若葉ちゃんにぴったりな怪獣は何かと考え、ならこいつならどうだと思い、それにこいつならあの剣を若葉ちゃんに与えられるなと考えました
「王」は目覚めた。海の底で深き眠りについていた王は瞼を開き唸りを上げる。王は悟ったのだ、この星に迫る危機に。そして同時に王はこう思った 「どうでもいい」、と。
王は守護神であるが同時に憎悪と恨みの化身 怨霊神でもある。その身はかつては
そして王は王の座を奪われ、自らを信じた家臣達を失い、愛しい者達と引き離された。そして贖罪と来世の救いを払いのけられ、王は怒りに身を任せ魔道へと堕ちた。そして同じく王ながらも「源氏」という者達に滅ぼされ海に沈んだ若き王を龍神と化し、その肉体を取り込んで魔王となった。
王は自分を認めなかった者達にその憎悪と怒り、恨みをぶつけ都を焼き払った。このまま我が国など、世界など滅んでしまえと願った。だが、そんな王でも捨てられなかったものがある…それが彼を王として認め、慕った民とその民が住む場所…四国。
唯一王を王と認め、慕ってくれた愛すべき者達。それを王は捨てる事が出来なかった。王が完全に魔道に堕ちなかったのはその者達がいたからだろう。世界は滅ぼしたい、だが四国だけは護りたい。そんな矛盾に王は揺れ動いた。
そんな王に天の神と地の神は話を持ちかけた。怒りを鎮めれば王を四国の守護神にすると。王は神々のその言葉を聞き怒りを鎮め四国を守護する神となったのだった。
故に王は四国以外が滅ぼうが一切気にしない。寧ろ四国以外など滅べ、と笑っていた。だが四国の民を見捨てる事は出来なかった。王は四国のみを愛している、故に王は動いた。目指すは四国…
王が向かったのは神々の地 出雲…つまり島根。そこに四国の民の気配を王は感じたのだ。王は急いだ、自分が治める
島根県にあるとある神社。そこで修学旅行で島根県に来ていたとある中学校の生徒達が境内でキャンプファイヤーをしたり、晩御飯を食べていたりと楽しんでいた。
「やはりうどんと親鳥は美味いな」
「島根に来ても食べるのはうどんなんですね…」
「当然だ。うどんは国民食だからな」
そう言ってうどんを啜り、親鳥の骨付鳥にかぶりつくアメジストの様な紫の瞳に薄茶色の髪をポニテールにした少女
「それはそうと若葉ちゃん。さっきクラスメイトの方に聞いたんですが…これを見てください」
「ん?」
うどんを啜る若葉の前にひなたはスマホを突きつけてある画像を見せる。その画像は…
「……何だこれは?」
「何でも今日香川に現れた謎の巨大未確認生物…らしいですよ」
「……合成か?それとも何かのCMか?」
ひなたのスマホに映っていたのは巨大な黒い生物や虫の幼虫に似た姿をした二体の怪獣の画像だ。若葉はこれを合成写真か何かかと問い、ひなたが首を横に降る。
「いいえ、どうやらそれ本物のようですよ?さっきネットの方で検索したら…ニュースにもなっていたようですし」
「……馬鹿らしい。この世にこんな巨大な生き物がいる筈ないだろう。それにいたとしても何処ぞの研究員やら専門家が見つけている筈だ」
「……ロマンがないですねえ若葉ちゃんは」
「私はそういった類はあまり信じないんだ。妖怪だとか神だとか、天使みたいな存在は信じないし、UFOだとかUMAみたいな存在も信じないからな」
若葉はあくまでその画像は偽物だと決めつけ、うどんを啜る。そんな幼馴染に溜息を吐くひなた。そんな時だ、キャンプファイヤーを楽しんでいた生徒の一人がふとこんな声を漏らした。
「あ、あれなんだ?」
男子生徒の一人が指差した先には白く発光する謎の光が空の上に浮かんでいた。
「UFOか?」
「え!?マジかよ!ヤベェ写真とろ!」
「飛行機じゃないわよね…じゃあ隕石?」
生徒達が謎の光を見てそうざわざわと騒ぎ出す。若葉とひなたは黙ってその光を見つめていた。
「……若葉ちゃんがUFOなんていない!て断言してから来るなんてタイミングいいですねぇ」
「………」
何でUFO完全否定してから来るのかと若葉は俯く。そんな若葉を見て写真を撮るひなた。
「……ねえ、あの光…こっちに近づいて来てない?」
「……あ、本当だ」
だんだんとUFOが空から地上に近づく…というより若葉達がいる神社に向けて降下していると全員気づいた。
「!お、お前達…!とりあえず逃げ……」
UFOを見て呆気にとられていた教師の一人が危険を察して生徒達に逃げる様に言おうとするが…その言葉がちゃん言い終わる前にUFOから複数の光線が放たれ、そこから装甲甲冑を装備し拳銃や警棒を持った無数の兵士達が現れ、生徒達や教師達を取り囲んだ。
「!?こいつらは……!?」
突然現れた兵士達に若葉は近くに武器になりそうな物を探そうとするが、若葉の動きを見た兵士の一人が若葉に拳銃を向け、もう一人が若葉のクラスメイトの一人に銃口を向ける。
「くっ……動くな、という事か」
「若葉ちゃん……」
若葉もひなたと一緒に兵士達に取り囲まれ、兵士達に誘導され他の生徒や教師達と共に一箇所に集められる。そしてUFOが地面すれすれの所で静止し、UFOからロボットが現れる。
「やあ、初めまして偏狭な星のお猿さん…おっと、言い間違えました。地球人の皆さん」
「……宇宙人?」
「YES、その通り。わたくしはチブル星人 ゼブマ。チブル星の最高の頭脳にして宇宙の偉大なる科学者です」
否、ロボットではない。チブローダーというパワードメカに乗った大きな頭に短い3本の手足を持つ珍妙な宇宙人…チブル星人 ゼブマが若葉達ににこやかに、されど傲慢に話しかける。
「ああ、心配しないで欲しい。別にわたくしは君達を殺しに来た訳ではないのだよ。私は他の宇宙人の様な脳筋ではないからね」
「な、何をしに来たんですか?」
教師の一人が勇気を振り絞ってゼブマに話しかけてみる。するとゼブマは不気味な笑みを浮かべる。
「ミスターの質問に答えよう。実はわたくしは宇宙生物…怪獣同士の合成にはまっていてね」
「は、はぁ?」
「でもねぇ、中々知能が高くなくてね…そこで考えたのだよ。そこそこ頭脳が高くて、調教しやすそうな生物の頭脳を取り入れれば扱いやすく出来るのではないかとね」
「そ、そうですか…それが私達と何の関係が?」
「いい質問をしてくれたミスター。わたくしは君達 人間の脳味噌が欲しいんだよ」
『!?』
ゼブマの言った一言に凍り付く一同。ゼブマはさも気にしていない様に笑いながら言葉を続ける。
「人間ていう生き物は我々チブル星人と比べると非常に馬鹿で、阿保で文明が遅れた猿だが…他の宇宙人よりは捕まえやすいし、何より痛めつければ言う事を聞く。特に子供なんかが実験材料に適してると私は思うんだ」
ゼブマは人間を実験材料、もしくはモルモットとしか見ていない。全員が察した。もしこいつに捕まれば死ぬより恐ろしい目に合わされると。
「ああ、チブロイド達。もし抵抗した場合は心臓を撃ち抜いてくれ。最悪脳さえあればいい、どうせこの猿達の脳以外の怪獣の餌になるからな」
そう兵士達…傀儡怪人 チブロイドに命令するゼブマと創造主の言葉に頷くチブロイド。だが、こんな暴挙は見逃せる筈がないと一人の教師が立ち上がる。
「ま、待ってくれ!それなら僕が実験材料とやらになる!だから子供達だけは…」
見逃してくれ、そう言いかけた教師の肩に銃弾が命中し鮮血が舞った。
「がぁ!?」
「!?せ、先生!?大丈夫ですか!?」
チブロイドに銃で撃たれ、肩を押さえる教師に駆け寄るひなた。それを見てゼブマが舌打ちする。
「チッ、下等でクズで脆弱で猿に似たゴミが。このわたくしと話しただけで不愉快なのに…対等に話そうなんておこがましいんですよ」
先程の紳士じみた態度から豹変し、ゴミを見る目で若葉達を見るゼブマ。そう、彼は他のチブル星人と同じく自分以外を見下す傲慢な性格なのだ。
「貴様ーーーッ!」
「……なんですか、その目は。どうやら立場で物が分かってないみたいですね…いいでしょう。わたくしの恐ろしさを教えてあげましょう」
若葉がゼブマを睨む。それを見てゼブマは気分を害しUFOから光を放ち、ある装置を神社の境内に出現させる。
「なんだ…?」
それは六つのカプセルに似た容器が収められた装置だった。五つの機械には何かの肉片や細胞が安置されており、最後の一つには青色の宝石が収められていた。それが若葉には悍ましい何かに見えた。
「ふふふ…これは合成装置。五つの怪獣の細胞と一つの鉱石から新たな怪獣を誕生させる機械です」
「かい、じゅう?」
「おっと、無知で愚かな猿共に説明するのを忘れていました!まずはこれから誕生する新生命の素材となる怪獣達についてご説明してあげましょう!」
そう自慢するかの様にゼブマは笑いながら合成装置にいれた肉片や細胞について説明し始める。
「まずは一番右端にある細胞は超古代怪獣 ファイヤーゴルザ!その隣にある肉片が超古代竜 メルバ!中央にある甲殻が宇宙海獣 レイキュバス!一番左の目玉が奇獣 ガンQ!そしてその隣の黄金のカマが宇宙戦闘獣 超コッヴ!そしてとある地球で取れるエネルギー鉱石 ビクトリウム!これから私の最強の怪獣が誕生するのです!」
そう嬉々として説明するゼブマ。若葉にはゼブマが言った言葉全てが理解できなかったがそれが背徳かつ道徳に背いた行為だとは理解できた。同時に危険を察した。
「さあ!感動しなさい!これが新たなる生命の誕生の瞬間!精々ミジンコ程もないその低脳な頭でこれから起こる奇跡に平伏しなさい!」
そうゼブマが言うとカプセルの中の肉片達が様々な光を放つ。ファイヤーゴルザは赤色、メルバが黄色、ガンQは紫、レイキュバスはピンク、超コッヴはオレンジ、ビクトリウムは青色の光を上空に向けて放って光が重なり合う。
「さあ、生まれ出でよ最強の合体怪獣!ファィイブキングゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」
光が収束し、それが街へと落下。そして光の球が消えるとそこには巨大な怪物が立っていた。
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!ーーー
それは文字通りの
「見ろ!あれが私の最高傑作!完璧な殺戮兵器!至高なる我が僕
培養合成獣 ファイブキング。それがこの怪獣の名である。ファイブキングは咆哮を轟かせながら街を見渡し、邪悪な笑みを浮かべて建物をその右腕を振るい破壊する。ファイブキングはまだ生まれて間もない赤子だが怪獣としての本能で理解しているのだ。街を壊せと、何故なら自分は邪悪なる化身 怪獣なのだから、街を壊すのか道理なのだと。自分の本能のまま街を破壊して欲望を満たせと理解していた。
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!ーーー
「暴れろファイブキング!貴方の凄さをこの下等生物達に見せつけるのです!」
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!ーーー
ゼブマはそうファイブキングに命令し、ファイブキングは指示通りに超コッヴの下半身から光弾をガトリングガンの様に発射。更にはレイキュバスの鋏から炎と氷が合わさった光線を、ガンQの目からはガンQビームを、頭部からはゴルメルバキャノンを放ち街を破壊し炎上させる。
「やめろ!」
「アヒャヒャ!聞こえませーーん!」
若葉が叫ぶがゼブマは嘲笑するのみ。チブロイド達が拳銃を向けていては歯向かう事も出来ない。若葉にはただゼブマを睨む事しか出来ない。
「…その目気に入りませんねぇ。ファイブキング。やっぱりこいつらを実験材料にするのはやめです。ここで殺してしまいましょう」
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!ーーー
ファイブキングは地響きを鳴り響かせて若葉達の元へと近づく。そして低い唸りを立てて若葉達を上から見下ろす。
「さあ!こいつらを殺してしまいなさい!」
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!ーーー
「くっ………」
「若葉ちゃん……」
ゼブマはテレポート機能を使い、自分だけUFOの中へと帰還し、ファイブキングに若葉達を鏖殺しろと命令を下す。その言葉に従いファイブキングはゴルメルバキャノンを放とうとし生徒達は死を覚悟して眼を瞑る。その時だった。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!!ーーー
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!?ーーー
「な、なにぃ!?」
地中から新たな怪獣が出現し、その怪獣が顎から雷撃を発射しファイブキングに命中。火花を散らしながらファイブキングは吹き飛ばされゼブマは眼を見開いた。
「わ、私のファイブキングが!?ば、馬鹿なありえん!」
ゼブマは最高傑作が一撃で吹き飛ばされた事に激しく混乱する。対して謎の怪獣は金切り声の様な不気味な咆哮を轟かせる。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!ーーー
「……龍?」
若葉が呟いた言葉通り、その怪獣の姿は龍に酷似していた。龍というよりかは蛇。血の様に紅に染まった眼に赤く輝く結晶体の角、腹には六個の紅い眼に見える模様。背中には翼にも見える突起物が。血の池地獄の様に真っ赤に染まった体色には所々黄金の様に輝く金色の箇所がある。
その姿はまるで日本の皇祖神たる天の神の女神の象徴たる蛇を表しているかの様。そしてその翼は妖怪の王たる天狗の如し。そして最強の怪物 八岐大蛇を連想させる威圧感。正に王。若葉はそう感じた。
「ええい、忌々しい。たかが野良の怪獣が調子に乗りおって…蹴散らせファイブキング!」
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!ーーー
ファイブキングは憤怒の咆哮を轟かせ、ゴルメルバキャノン、ガンQビーム、炎と氷の光線、光弾の速射を放ち怪獣に放つ。怪獣はそれを避けるそぶりすら見せずファイブキングの攻撃に命中…その身体には傷一つなかった。
「ば、馬鹿な!?あれだけの攻撃を食らって無傷だとぉ!?」
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!?ーーー
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!!ーーー
気が済んだか?と言わんばかりに怪獣は低く唸ると肩を怒らせファイブキングへと突進。ファイブキングは後方へ後退りゴルメルバキャノンを至近距離で放つがやはり傷一つつかない。
「なんて硬い身体なんでしょう…」
ひなたはただ圧倒された。他の者達も同じくその怪獣の強さに圧倒されていた。
ーーーキィイイィィャァァッ……ーーー
ふと怪獣が若葉達の方を向いた。そして首を動かし早く逃げろと言っている様な仕草をする。
「逃げろ、と言っているんでしょうか?」
「……そうかもしれんな。よし、あの怪物が何かは知らんが皆逃げるぞ!」
若葉の声を聞い全員がその場から逃げ出そうとするとチブロイド達が拳銃を向ける。
「ここから逃げられると思っているのかお前達!私は今猛烈に怒っている!お前達に八つ当たりしたい程になぁ!」
絶対に逃すかと叫ぶゼブマ。その声を聞きチブロイド達が
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!ーーー
怪獣が金切り声に似た咆哮を轟かせるとその尻尾から虹色の光が浮かび上がる。その虹の光は若葉の元へと放たれ、彼女の目の前の地面に突き刺さった。
「!……これ、は…?」
彼女の目の前に突き刺さっていたのは一本の剣だった。その形状は蕨手刀で刀身は虹色に輝いていた。怪獣は低く唸る、それを使えと。
「………」
若葉はその剣を手に取る。この剣はスサノオ、ヤマトタケルと言った偉大な英雄が使っていた剣だ。そして日本の王が所持する三種の神器の一つ。正確にいえばそれの原点。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!!ーーー
自分の身は自分で守れ。そう言いたげに怪獣は唸るとファイブキングの方へと歩みを進める。若葉は一瞬だけその怪獣…王を一瞥し感謝の言葉を呟く。
「……感謝する
何故かその王の名をいつの間にか知っていた。あの怪獣の名は四国の守護神にして最恐の魔縁 大魔王獣
「はぁぁ……!!!」
若葉が天叢雲剣を振るう。たった一振りで地球上のあらゆる金属より硬い身体で出来たチブロイド達が両断される。
「な、な、な……!?そんな剣で私の手駒が!?」
天叢雲剣、とある蛇の神の尻尾より見つかった剣。その神鉄は万物を裂き英雄を英雄たらしめる神具。それに加えマガオロチの全エレメントを操る力が加わった、いわば「虹の聖剣」。機械兵如きの装甲など紙も同然だった。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!ーーー
マガオロチは大口を開き、口からマガ迅雷と呼ばれる電撃を放つ。それを見てファイブキングとゼブマは
(馬鹿め!ファイブキングには光線を吸収する能力がある。しかもその吸収した光線を二倍にして反射する!そのまま貴様は貴様の攻撃で死ね!)
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャ!!!ーーー
ファイブキングは左腕のガンQの部位からマガ迅雷を吸収。そのまま倍にしてマガオロチに反射した。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!ーーー
それに対しマガオロチはまたしても一切の防御や回避を行わず反射された自分の攻撃を喰らい、激しい火花が飛び散った。
「ゲヒャヒャヒャ!ザマァみろバーカ!この私に歯向かった罰だ!」
「そ、そんな……」
ゼブマが勝利を確信し、ひなたが絶望しかけた、まさにその瞬間。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!ーーー
「………ほぇ?」
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ?ーーー
爆煙が晴れるとそこには身体が
「……と、トリックだ。あいつはきっと何らかの攻撃の無効能力でも持っているんだ」
そうゼブマは判断した。そう思い込みたかった。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!ーーー
再びマガ迅雷を放つマガオロチ。今度もガンQの力で吸収し倍にして返すファイブキング。だがマガオロチはゆっくりと緩慢な動きで前に進み王者の風格を見せながら片腕で二倍になったマガ迅雷を防ぐ。
「……信じられない。自分の身体で防いだだと!?あの威力の光線をか!?」
別に難しい話ではない。光線を吸収だとか反射だとかそういう小細工ではない。ただ身体の強度が異様に高いだけだ。
そもそもマガオロチという怪獣は別宇宙では暴走した巨人にその尻尾を切り取られ、マガオロチが放ったマガ迅雷をその尻尾で防がれた。尻尾はマガ迅雷で爆発することはなく二度も雷撃を耐えきった。そう、マガオロチの身体は自身のマガ迅雷にも耐えうる強度を誇るのだ、たかだか二倍になったからといって破れるほどこの強靭な肉体は甘くない。
「く、クソが!聞いてない!聞いてないぞ!こんな辺境な星にこんな怪物がいるなんて!こうなったら!ファイブキング!戦略的撤退だ!」
ーーーゴ、ゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!ーーー
ゼブマの指示を聞き、ファイブキングはメルバの翼を広げ、空に輪っか状の稲妻が迸る暗雲を形成。飛翔しマガオロチから逃げようとする。
(あのフォルムから見てあの怪獣は空を飛べない筈です!なら逃げられ……)
マガオロチには翼がない、だから飛べない。そうゼブマが結論付けようとした。だが、マガオロチは大魔王獣。そんな安い理論は通用しない。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!!!ーーー
「……へ?」
ーーーゴシィィッゴガギィィッギィィッガギィアァァッイアヒャヒャヒャ??ーーー
『……は?』
「……最早何でもありか」
マガオロチが
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!!ーーー
別宇宙のマガオロチの子には
ーーーキィイイィィャァッ!!ーーー
黄金の翼を突起物から展開し、マガオロチは逃げようとしていたファイブキングに追いつきファイブキングの片翼をもぎ取った。
ーーーゴシィィィッ…ーーー
ファイブキングが何か叫ぶ前にマガオロチはマガ迅雷でレイキュバスの右腕を破壊した。ガンQの腕は既にマガオロチの右手で眼球を潰した。次に超コッヴの部位を破壊し、ファイブキングは地に堕ちる。
「ふ、ファイブキング!?」
両腕を破壊され、まだもがこうとするファイブキングをマガオロチは蹴り飛ばす。翼が片方ないからもう飛べない。両腕がないから攻撃できない。だがマガオロチは許さない。四国の民を危険に晒した奴は例外なく殺すつもりなのだから。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!!!ーーー
今までとは破壊力が比べ物にならないマガ迅雷を放ち、ファイブキングはせめてもの抵抗にゴルメルバキャノンを放つが軽々と押し切られ、ファイブキングの身体はマガ迅雷に身体や細胞を粉々に粉砕されながら爆散した。
ーーーゴシィィィィィィッゴガギィィィィィッギィィィィィッガギィアァァァァッイアヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!?ゴ……ィ………ッ…ゴガ……ィ…ギ…ッ…ガ…ギ…ア……ャ………ヒャ……ーーー
「ば、馬鹿なぁぁぁぁぁ!?私のファイブキングがぁ!?」
ファイブキングを撃破され発狂寸前なゼブマ。そしてふと若葉達の様子をモニターで見て…目を見開いた。
「ち、チブロイド達が全滅しているだとぉ!?」
若葉達を取り囲んでいたチブロイドは全て若葉が天叢雲剣で斬り裂き、スクラップにしていた。若葉は一切の傷はなく、天叢雲剣は返り血の代わりにオイルで刀身が濡れていた。
「……お前の玩具は品切れか?」
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ…?ーーー
若葉が挑発するように笑みを浮かべ、マガオロチが挑発した声を出す。怒りでゼブマの身体が震える。
「お、おのれぇぇぇぇ!!畜生以下の猿と獣が調子に乗りやがって!私はチブル星一の頭脳の持ち主!これで終わると思っているのかぁぁぁ!?」
ゼブマはそう怒り狂ったように叫ぶ。まだ何か策があるのかとひなたが顔を硬らせる。まさかファイブキング以上の怪獣を出すのか…?
「………逃げろ!」
UFOはそのまま光を放って宇宙へと高速で逃げ去った。
「…………逃げたな」
「………逃げましたね」
『…………逃げた』
ーーーーキィイイィィィィィャァァァッ……ーーー
マガオロチを含めた全員が絶句する。まさかあれだけ大見得切っておいて逃げるとか、流石に考えていなかった。
「くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!よくも私に恥を書かせてくれたな!地球人と蛇め!この借りは何億倍にして返してやる!」
宇宙空間でそう叫ぶゼブマ。
「そうだ!チブル星に帰って仲間と一緒に機械兵軍団を作り出してやる!そして培養合成獣の群れを形成して地球なんか滅ぼしてやる!」
そう強がるゼブマ。彼は母性に逃げ帰って仲間に頼み込んで地球を攻め込むつもりのようだ。
「あの小娘とか怪獣は楽には殺さんぞ!怪獣は死ぬまで解剖して実験材料に!小娘は家畜の餌にしてやる!精々今は勝った気でいろばーか!」
宇宙一の頭脳だとかチブル星一の頭脳とか言っている割には子供みたいな言葉しか出さないゼブマ。そう笑っていた彼だが突然UFO内に警報が鳴り響く。
「ん?なんだ?」
モニターに映し出された映像を見る。どうやらUFOの背後の映像のようだ、モニターにはゼブマが乗るUFOの背後に迫る雷撃が映っていた。
「………………………………………………ほぇ?」
そんな情けない声と共に、ゼブマはUFOごと雷撃に飲み込まれ消滅した。
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ……ーーー
「………遠距離射撃、凄いなお前は」
マガオロチは
ーーーキィイイィィィィィャァァァッーーー
「む?私達を四国に送り届けてくれる?いいのか?さっきから助けてもらってばかりだが」
ーーーキィイイィィィィィャァァァッーーー
「そうか、それなら頼む。何せこんな非常時だ、無事に四国に帰れるか分からんからな」
「……あの、若葉ちゃん?」
そう何かしらの会話をする若葉とマガオロチ、だが側から見ればマガオロチが何を言っているのか分からない。
「ん?どうしたひなた?」
「いや…その……分かるんですか言葉?」
「なんとなくな、言葉は分からないが…何故か理解できるんだ。ひなたは分からないのか?」
「ええ、全く」
ん〜と首を傾げる若葉。何故自分しかマガオロチの言葉を理解できないのかと首を傾げる。
「……まあいいか。とりあえずこいつ…マガオロチが私達を四国まで送ってくれるらしい。今すぐにでも送ってくれるらしいが皆は大丈夫だろうか?」
「……あの、どうやって四国まで行くんです?」
そもそもだ、島根から四国(香川)までどうやって運ぶというのか。全員が聞きたかった事をひなたが尋ねる。
「マガオロチの手に全員で乗る。そしてマガオロチが歩いて四国まで行くか、空を飛んで四国に行くかだな。因みに後者の方が早く着くらしいぞ」
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ!ーーー
『…………………』
若葉の言葉を聞いて硬直するひなた達。マガオロチが「どっち選ぶ?」と言いたげに低く声を上げる。
「……取り敢えず歩きましょう。私達の足だけで」
「え」
ーーーキィイイィィィィィャァァァッ…?ーーー
いや、空から落ちたら死ぬし、うっかり握られて潰れて死ぬのも嫌だし。それが若葉以外の全員の意見だった。若葉とマガオロチはしょぼんとする。
かくして四国の王は出雲の地にて民を助けた。王の従者となった少女は剣にて
ゼブマはタイガに出てきたマブゼの読み方を反対にしただけです。チブル星人て頭いいはずなのにどっか抜けてて傲慢な感じなのでそういう風に見えるよう頑張って書きました。マブゼのお陰で合体怪獣とかベリアル融合獣も出しやすくなったし、いやぁヴィラン・ギルドの存在は助かる
そして今回の怪獣紹介はこちらです
大魔王獣 マガオロチ
身長 70メートル
体重 8万トン
必殺技 マガ迅雷
この怪獣は純粋な怪獣、というわけではなくウーやジャミラと同じ人間が怪獣化したこの世界におけるマガオロチ。その人物とは日本史にも記される実在した人物 崇徳院その人。怨霊神とも大魔縁とも言われる彼だが、ゆゆゆの世界では八岐大蛇になったとされる天皇 安徳帝を取り込み、怪獣化し多くの街を焼き払った。その後天の神と地の神に説得され守護神となった。四国は大好きだがそれ以外は大嫌いと極端な性格
マガオロチ=崇徳院という設定はマガオロチの突起物が翼に見える+体色に金色が混ざってる(崇徳院の翼の色は黄金)。安徳帝が八岐大蛇だった理由は崇徳院の呪いという説から「あ、案外マガオロチとして出せるかも」というトンデモ理論。まあ、そうでもしないとマガオロチ味方にならないし、若葉ちゃんも天叢雲剣という原作の武器変える神具手に入られませんから
さて次回はぐんちゃんのターンです。
次回もお楽しみに!