その日少女は怪獣に出会った   作:暗愚魯鈍

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さて最初に言っておきますが…この小説だと高嶋ちゃん達は既に中二です。つまりぐんちゃんは既に中3です…そう、あの肥溜めみたいな村で15年も住んでるんです、つまり原作よりも悲劇にあってる筈です…しかも高嶋ちゃんみたいな友人ができずに…つまり、原作よりもやばー状態です、そんな彼女にあのウルトラマンがやって来たら?

そんな風に考えたぐんちゃん闇堕ち編です、でも僕はぐんちゃん大好きですからね!?若葉ちゃんと同じくらい大好きです!ぐんちゃんがこんな酷い事するわけないだろ!だとかぐんちゃんは闇堕ちしない!て方はすみません



少女は闇へと堕ちた

少女は何もかもが嫌いだった。他人の笑う声も、他人の幸せそうな顔も、自分にはないものを見るのが苦痛だった。

 

「…………………」

 

暗い部屋の中を照らす光は少女が持っているPSPの画面の光だけ、少女の黒瞳(こくどう)には画面の光景しか見えていない。PSPのボタンを押す音だけが静寂の空間に響いていた。

 

少女は両親が嫌いだった。育てもせず愛情を注いでくれなかった両親を憎悪した。母親は自分と父親を捨てていなくなった。父親は子供が大人になったみたいな性格で自分の事しか考えていないような人間(クズ)だ。

 

そんな両親を持っていたからか、彼女は幼い頃から酷い虐めと差別を子供達ならず大人達からも受けていた。自分は何も悪くないのに、こんな親から産まれたくなかったのに、誰もが自分を見下し嫌悪し蔑んでいた。

 

「………」

 

嫌な事を思い出し少女は指先で耳に触れる。耳には一生消えない傷跡がある。小学生の頃同級生達に無理やり髪を鋏で切られた際、耳も切られたのだ。

 

幸い聴覚に異常はなく耳が切り落とされる事がなかったが…誰も助けてくれなかったし心配もしてくれなかった。先生も父親も…誰も心配してくれなかった。耳だけではない、身体中虐めで受けた傷が無数にある。

 

「……………」

 

中学校には行っていない。どうせ行った所で虐めに会うだけだ。義務教育だか何だか知らないが教科書や靴を隠されたり燃やされたりするのだから勉強できない。なら行く意味がない。父親も高い金を払わずに済むと考えてか何も言ってこない

 

少女の日常といえばゲームをする事だけだ。ゲームはいい、嫌な記憶を忘れられるから。食事は自炊、米くらいは炊ける。彼女の1日の過ごし方は部屋で眠るかゲームをするか、パソコンで検索するかの繰り返しだ。

 

「……飽きた」

 

此間買ったゲームはもう全クリした。裏ダンジョンや隠しダンジョン、アイテムフルコンプも達成したし、飽きて当然だ。だが、新しいのを買うとなると外に出なくてはいけない。だが外に出ると村の人達の嫌な視線を受ける事になる。

 

自分は何も悪くないのに何故こんな仕打ちを受けなければならないのか。PSPを壊さんばかりに強く握りしめる。その瞳は世界に対する憎悪と絶望、あらゆる負の感情が混沌の如く混ざり合った眼だった…

 

そんな彼女の闇に同調する様に、一人の悪魔が魔の手を伸ばした。

 

『怖い顔をしているねお嬢さん。よかったら私が悩みを聞こうか?』

 

「え…?」

 

声が聞こえた、父親は仕事に行っている筈なのに、自分以外この家にいる筈ないのに。彼女はPSPから視線を外し声が聞こえた場所を見る。目を向けた場所にあったのはパソコンだ、電源をつけていなかったのに勝手に電源がつき、その画面が紫色に染まりそこに赤い五芒星が描かれ…青黒い手が五芒星から現れた。

 

「……!?」

 

思わずPSPを床に落として彼女はパソコンから飛び出した手を見入る。

 

「……あなたは、誰?」

 

怯えながらも少女はそう呟いた。

 

『そうだね、まずは自己紹介だ。私はトレギア(・・・・)

ウルトラマン(・・・・・・) トレギア(・・・・)だ。さあ、次は君の番だよお嬢さん。君の名前は?」

 

「わ、私は…(こおり) 千景(ちかげ)…」

 

『郡 千景…いい名前だ。では千景。本題に入ろうか』

 

「本題……?」

 

トレギアと名乗った謎の人物に少女…千景は戸惑いながらもトレギアの話に耳を傾ける。

 

『私はね、君を退屈から救いに来たんだよ』

 

「……え?」

 

退屈から救いに来た。それがどういう意味か千景には分からなかった。画面の奥に赤く光る双眼が浮かび、その赤い目が千景を捉えた。

 

『君は選ばれた人間だ、君には世界を変える力がある。そう、私はね、君を導く為にやって来たんだ』

 

「……選ばれた、人間?世界を変える、力?」

 

『そう。君が望めば世界中の人々から愛され、必要とされる…勇者(英雄)になれる』

 

愛される、必要とされる。その言葉に一瞬目を見開く。それはまるで誕生日プレゼントを手渡された子供の様な純粋で輝く目…だが、すぐにその光は消え、俯く千景。

 

「……無理よ、私なんかがなれる筈ない。だって私は誰からも必要とされてないもの」

 

自分は今まで誰からも愛された事がなかった。そんな自分が英雄になれる?そんな夢みたいな話ある筈がないと断言する。だがトレギア(悪魔)の囁きは止まらない。

 

『そんな事はない!自分を卑下しないでくれ千景。君は英雄になれる器だ、誰もが君という英雄を待ち望んでいる!これから起こる災厄を救うのは君なんだぞ千景』

 

「……災厄?」

 

『そうだ。この星は時期に怪獣と呼ばれる存在に脅かされる恐怖の惑星と化す。人間達は怪獣に蹂躙され、死に絶えるだろう…そんな人間達を救うべく立ち上がるのは……君だ。君こそが世界を救う英雄なのだよ郡 千景』

 

トレギアは千景こそが英雄なのだと熱弁する。千景はその話を、トレギアの言葉を聞いて少しづつ心を開かせつつあった。嘘か本当か分からないが今まで誰も必要としてくれなかった自分を必要だと言い、こうまで自分の事を語ってくれるトレギアが嘘をついていると思えなかったのだ。

 

『だが千景。君が英雄になる前に少しやっておかなければならない事がある』

 

「……やっておかなければいけない事?」

 

『そう、この村の人々に関してだよ』

 

「………」

 

『君は勿論知っているだろうがこの村の人々の心は(よど)み、穢れきっている。とても救いようがない害虫以下のクズだ。そんな奴らが君が力を持ったと知ったら…どんな反応をすると思う?』

 

「!」

 

千景がこの世界で最も嫌悪している場所、そして人間達。そいつらが千景が英雄になれる力を持っていると知ったらどんな反応をするかとトレギアが呟き、千景は目を見開く。

 

『君に媚を売って甘い汁を啜ろうとするか、最初は媚を売っていたが掌返しして化物扱いして迫害するか…そこら辺だろうね』

 

「ーーーーッ!!」

 

トレギアの言葉には説得力があった。確かにこの村の奴らならやりかねないと、千景はその事を想像し腑が煮えくりかえるかと思った。

 

「……ふ、ざけるな……!私を散々な目に合わせておいて力を持ったら尻尾を振るなんて…許さない!そんなの絶対に許さない!」

 

『そうだ。私もこんな村の奴らを救う必要はないと考えている…こいつらは害虫だ。駆除しておいた方がいい』

 

激昂する千景を見てニンマリと笑うトレギア。そして一区切りついて彼はこう告げる。

 

『さあ、私に願え千景。力が欲しいと、自分の環境を変える力が、見下していた奴らを見返す力が、復讐する力が欲しいと。その願いを私が叶えてあげよう。何故なら私は君の願いを叶えにやって来たのだから…さあ、私の手を取るんだ』

 

「…………」

 

そう言って手を伸ばすトレギア。まさに悪魔の誘いだった。千景は心の奥底で理解はしていた。この誘いに乗れば自分は高台から身投げする様に堕落していくだろうと。それは身を滅ぼす誘いだと。

 

(……でも、この誘いを断って…私は何を得ると言うの?)

 

心の闇が囁いた、この誘いを受けるべきだと。トレギアの言う事が本当なら自分は変われる、新しい自分になれる。悪魔の誘いを蹴飛ばして得られるのは闇の誘いに打ち勝ったと言う偽善じみた個人的な優越だけだ。そんなものでは自分の環境は変えられない。

 

(私はまだ何もしてない、生まれてから何もしてない。誰かに愛されたい、誰かと一緒に笑いたい、誰かと遊びたい、自分の思う様に行きたい…そんな極平凡な事をしたい…でも、こんな村に居たら、この村の奴らといたら…一生叶わない)

 

思い出す、自分の耳を裂いた同級生の悪意に染まった笑みを、汚らわしい物を見るような目で自分を見る大人達を、自分を見捨てた母親の冷たい顔を、風邪をひいて寝込んだ自分を心配しなかった父親の声を…

 

(私の人生は破綻してる。私は何も悪い事してないのに…一生このままなんて嫌よ、私は…誰かに愛されたいの。なら……)

 

村人達は実に幸せそうだ、千景を自分達より下に見て悦に浸って実に幸せそうだ。村人達は常に笑っている。自分以外に優しくして、笑い合い、助け合い…千景を除け者して嘲笑う事で村人全員で幸福な生活を送っている。

 

(……そうだ、皆私から幸せを奪ってたじゃない…なら、私が今度はあいつらから幸せを奪っても問題ないわよね?)

 

この瞬間、少女の魂は闇に堕ちた。

 

「…ええ、分かったわトレギア。なってやるわよ…貴方が言う英雄て奴にね」

 

『……ふふっ。その言葉を聞きたかった』

 

トレギアの手を握る千景。トレギアは悪魔の様に微笑んだ気がした。そして千景がトレギアの手を握っているとふと、握った手に何か現れた。

 

「?これは……?」

 

それは青い縦長の青い機械だった。不思議そうにそれを見つめる千景。それを見てトレギアが微笑む。

 

『それはバトルナイザー。君が使役する君だけの仲間が収納された機械さ。その中には既に三体の怪獣がいる…君の命令を忠実にこなす最強の神がね』

 

ーーークウウウウウゥゥゥゥゥゥッ!!ーーー

 

ーーーピポポポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォン!!ーーー

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォォン!ーーー

 

機械から三体の怪獣の…否、悪しき神々(・・・・・)の咆哮が部屋に響いた。三つの枠にその神の姿が映る…それを見て千景は放心し…そして笑みを浮かべた。

 

「……この子達が私の…仲間?私だけの?」

 

『そうだ。君だけのお友達(仲間)だよ千景。それに怪獣達だけじゃない。私もサポートしよう。私達は君を否定しない、君だけの仲間さ』

 

いつの間にかトレギアはパソコンから千景の部屋に等身大で現れていた。そして微笑む様に千景に顔を近づける。

 

『さあ、力は手に入れた。後は君の栄光の道を遮る虫ケラを潰すだけだ…出来るね?』

 

トレギアのその言葉に千景は不気味に見える笑みを浮かべて顔を縦に振った。

 

 

「…………」

 

千景は数週間ぶりに家から外に出た。燦々(さんさん)と太陽が世界を照らし、手で日差しを遮る千景。だが、千景にはそれが太陽がまるで新しい自分を祝福しているのだと考え、にっこりと笑う。

 

「……見つけた」

 

千景の視線の先には二人の少女が楽しそうに歩いていた。千景はその二人を知っている、確か自分の事を「淫売の子」と呼んでいた奴らだ。そんな相手を見つけ、千景は笑みを浮かべた。

 

「久しぶり、元気だったかしら?」

 

二人が振り向く、そしてゴミを見る様な目を千景に向ける。自分達に親しげに話しかけたのが自分達が常日頃見下している人物だったのだ、不快になるのも当然。だが、同時に疑問に思った、郡 千景とはこんな明るく自分達に話しかけるのかと、それに…何故か千景の笑みが不気味で、二人は怖くなった。だが、自分達が見下している相手に萎縮するなどプライドが許さない、二人は睨む様に千景を見る。

 

「淫売の子が私達に何の用よ」

 

「い大した用じゃないわ。すぐに終わるから」

 

不気味な笑みを浮かべたまま千景はそう告げる。そして次にこう言った。

 

「よかったわね、貴方達みたいな人間でも私の役に立てて」

 

そう言って千景は懐からバトルナイザーを取り出した。バトルナイザーの一つの枠が怪しく光る。

 

「出て来なさいイリス(・・・)。食事の時間よ」

 

ーーークウウウウウゥゥゥゥゥゥッ!!ーーー

 

「「え?」」

 

グサッ、と二人の少女の胸に何かが刺さった。二人が胸に目を向けると胸に触手が突き刺さり服が赤に染まっていた。そして少女達が何か言う前に彼女らの身体は干からび木乃伊と化した。

 

「ふふふ…どうイリス?こんな汚いゴミでも少しはお腹の足しになったかしら?」

 

ーーークウウゥゥゥッ……ーーー

 

「そう、まだ足りないのね。大丈夫よイリス。まだまだ村人()はたくさんあるんだから…」

 

千景がバトルナイザーに向かってそう囁くと目を横に向ける。視線の先には惨劇を見ていた村人の男がいた。

 

「ひっ………!」

 

男は千景から背を向けて逃げ出した。それを見て千景はくすりと笑う。

 

「私達から逃げられると思ってるの?」

 

彼女は嗤う、今度は自分の番だと。今まで受けた屈辱を返す番だと。

 

 

それから起こった事は特記する事はない。バトルナイザーから現れた触手が千景が住んでいた村の人々の体液(生き血)を吸い取り木乃伊にし皆殺しにした。ただそれだけだ。

 

正しく死屍累々、男も女も子供も大人も老人も、千景を虐げていた連中は全員死んだ。それは哀れであり、因果応報だった。なにせ何の罪もない少女を優越感の為に虐げていたのだ…その死に方は同情しそうだが彼らがやっていた行いを考えると罰が下ったのだと言うしかない。

 

「……終わってみると呆気ないものね」

 

バトルナイザーを手で弄りながらそう千景が呟く。自分を長年苦しめていた元凶を呆気なく鏖殺して何処と無く退屈そうだった。

 

『お疲れ千景。どうだい自分を虐げていた奴を殺し尽くした感想は?』

 

「……なんて言うのかしらね、簡単に殺しちゃったてところかしら。よく考えればもっと苦しめて殺すべきだったかしら」

 

『確かに…君にした行いを考えるとただ殺すだけなんて生温かったかもしれないねぇ』

 

トレギアとそう残虐な会話を行う中、彼は心の中で笑みを浮かべていた。

 

(ふむ……私のイスキュロス(・・・・・・)ダイナミス(・・・・・)の後押しもあるだろうが…このマイナスエネルギーは間違いなく彼女の心の底から溢れるもの…ふふ。まさか人間の少女からこれだけのマイナスエネルギーが発生するとは…余程辛い人生を歩んでいたんだろうな)

 

トレギアには対象の怒りや憎しみといった負の感情を増幅する凶暴化促進光線がある。それを千景に使って凶行に走らせたのだが…これを使わずとも凶行に走っていただろうとトレギアは内心で笑う。

 

『もう君の道を遮る者はいない。さあ、千景。私と共に世界を救……む?』

 

急に地面が揺れ始めた。それに少し戸惑うトレギアと千景。そして地面が爆発した様に土塊が吹き飛び土煙が舞う。そして地中から一匹の赤い怪獣が姿を現したのだった。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!!!ーーー

 

「……トレギア、あれは何?」

 

『あいつは確か……婆羅護吽(バラゴン)。四国の地を守護する護国聖獣(守護獣)の一柱さ』

 

そのパグ犬に似て少し愛嬌があって可愛いとも言える額に大きなツノが生え、左右には(ヒレ)が耳の様に生える赤い怪獣の名は地の神 バラゴン。普段は小豆島のマグマの中に潜んでいるがトレギアと千景の怪獣達の邪悪な波動を感じ、ここまでやって来たのだ。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!!ーーー

 

自分がやって来たからにはもう悪事は許さない!そう言わんばかりに雄叫びを上げるバラゴン。それを鬱陶しそうな目で千景がバラゴンを睨む。

 

「……つまり敵て事ね」

 

『そうだ。あの怪獣は君を危険視して殺すだろう。さてどうする?』

 

「決まってるじゃない。折角手に入った力を手放すわけないじゃない」

 

千景はバトルナイザーを構える。そして三つの枠が怪しく輝く。

 

「行きなさいイリス(・・・)スペースゴジラ(・・・・・・・)ゼットン(・・・・)

 

ーーーバトルナイザー・モンスロードーーー

 

ーーークウウウウウゥゥゥゥゥゥッ!!ーーー

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォォン!!ーーー

 

ーーーピポポポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォン!!ーーー

 

機械音が響き赤い光がバトルナイザーから流星の如く放たれる。光の中より現れたのは三体の禍々しい怪獣達。

 

一体は4本の自由自在に蠢く触手が生えた黄色に光る単眼持つ怪獣。超古代文明の人間が誕生させた超遺伝子獣の変異体である美しくも邪悪な風貌の邪神…柳星張(りゅうせいちょう) イリスという守護神 ガメラと対になる破壊の邪神。

 

もう一体は黒き巨体に白い水晶に似た結晶体が両肩から背中にかけて生え尻尾と背びれも結晶化している怪獣…怪獣王の細胞が結晶生物と恒星の爆発エネルギーを吸収して誕生した戦闘生命…宇宙凶悪戦闘獣 スペースゴジラというモスラとバトラと因縁がある厄災の邪神。

 

最後の一体は細長い黒いフォルムに所々黄色に発行する部位がある昆虫に似た人型に近い姿の怪獣。伸縮自在の翼に尻尾、突起状の腕を持つ無機的な怪獣…光の巨人を終わらせた(殺した)終わりの怪獣の究極体…宇宙恐竜 ハイパーゼットン(イマーゴ)という滅亡の邪神。

 

この怪獣達こそ千景の相棒達。いずれも並みの怪獣とは一線を画する怪獣達である。そんな強大な敵を前にしてもバラゴンは臆する事なく三体を睨む。守るべき場所を脅かす敵を前にバラゴンは逃げる事は決してない。

 

ーーーピポポポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォン!ーーー

 

ハイパーゼットンは胸の発光体から暗黒火球と呼ばれる一兆度を超える火球を放つ。それだけで並大抵の敵を滅ぼす技、それを数発もバラゴンに放つ。それに対しバラゴンはその身で火球を受ける。バラゴンの身体に火球が炸裂する。

 

ーーーシュイイイィィ!ーーー

 

『ほう、ゼットンの火球を耐えるか。中々やるじゃないか』

 

バラゴンはなんと一兆度もあるゼットンの暗黒火球を耐えきったのだ。なにせバラゴンは普段マグマの近くに生息しているので火炎系の攻撃には非常に強いのだ。その耐久性はゴジラ(怪獣王)の熱線を耐える程だという。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!!ーーー

 

今度はこちらの番だとバラゴンが吠える。バラゴンは口から一億度は優に越す赤い炎を放つ。スペースゴジラがフォトン・リアクティブ・シールドと呼ばれるバリアを展開し、赤炎をバラゴンへと跳ね返す。

 

ーーーシュイイィィィ!ーーー

 

それに対しバラゴンは穴を掘って地中へと潜り赤炎を避ける。そして海中を泳ぐかのように地中を自在に駆け巡る。そして三体がどこにバラゴンが潜んでいるのかと考えたその直後、巨大な地響きが鳴り響き三体が立つ地面が陥没し三体は落とし穴に落ちた様に地中に落下する。

 

ーーークウウウウウゥゥゥゥゥゥッ!?ーーー

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォォン!?ーーー

 

ーーーピポポポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォン!?ーーー

 

「!?」

 

『おや……可愛らしい見た目と違って中々やるじゃないか』

 

地の神の名の通りバラゴンは陸上と地中での戦いに長けたエキスパートなのだ。イリス達の足元の地面を掘る事で空洞を作る事で地盤沈下を誘発する。これぞバラゴンの真価である。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!ーーー

 

「…やってくれるわね。ゼットン!テレポートで背後に回り込んで刺し殺してやりなさい!」

 

ーーーピポポ・・・ゼェットォォォン!ーーー

 

ゼットンはテレポートでバラゴンの背後へと移動、鋭い腕で刺し殺そうとするがバラゴンは鰭をパタパタと羽ばたかせる…すると風が発生しバラゴンを中心に竜巻が形成され、風の防壁に阻まれゼットンの腕は弾かれた。

 

ーーーゼェットォォン!!?ーーー

 

バラゴンは漢字での表記は婆羅護吽と書く。護とは守護のこと、吽とは阿吽…つまり狛犬。守護する狛犬という意味だ、なら婆羅とは何を意味するのか?これは婆羅(バラン)という怪獣の名を指す。とある集落で婆羅陀魏山神(バラダギサンジン)と崇拝されている神と同一視されている。その神の力は風を操る力なのだ、そう。バラゴンは地の神でありながら火と風を司る怪獣でもあるのだ。

 

ーーーシュイイイィィィ!!ーーー

 

バラゴンは気流を操り空へと走る様に駆け上がる。そして上空から赤炎を吐きイリス達を攻撃する。

 

「……調子に乗るな!」

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォォン!ーーー

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!?ーーー

 

千景がバトルナイザーを強く握るとスペースゴジラが力強く咆哮し、赤色の光線 コロナビームを発射、上空を滑る様に駆け巡っていたバラゴンに命中し火花を散らしながら地上へと落下する。

 

「雑魚キャラみたいな姿だったから油断してたわ…中ボスだったのね。イリス、スペースゴジラ、ゼットン。本気で殺すわよ」

 

ーーークウウウウウゥゥゥゥゥゥッ!ーーー

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォン!ーーー

 

ーーーピポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォン!ーーー

 

千景の指示を聞き三体の悪しき神は吠える。バラゴンは赤炎を放つ、それに対しイリスは4本の触手…テンタクランサーで赤炎を弾いて起動を逸らし、森の一部が炎上する。

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォォン!ーーー

 

スペースゴジラが突進する、120メートルはあろう巨体が30メートルしかないバラゴンに迫る。バラゴンはツノを向けて爆進するも体格差もありスペースゴジラの蹴りを喰らいボールの様に吹き飛ばされる。

 

ーーーシュイィィ……シュイイイイィィィ!ーーー

 

蹴飛ばされたバラゴンは呻きながらもスペースゴジラに立ち向かおうとして…急にバラゴンの体の一部が裂けた。

 

ーーーシュイィィ?ーーー

 

ーーークウウウゥゥゥッ!ーーー

 

イリスが触手から放った超音波メスによりバラゴンの身体が切り裂かれたのだ。驚くバラゴンの頭上にゼットンがテレポートで現れ、腕を振り下ろしバラゴンのツノを破壊する。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!?ーーー

 

ツノを破壊され思わず後ずさるバラゴン、だがイリス達は容赦なくバラゴンを袋叩きにする。ゼットンは至近距離からの暗黒火球、スペースゴジラは接近しながらのコロナビーム、イリスは4本の触手から超音波メスを放ちバラゴンを痛めつける。

 

ーーーシュイイイイィィィ……ーーー

 

悲痛な声を上げるバラゴン、もしここに彼の戦う姿を見ているものがいたとしたら可哀想と同情する者や頑張れと応援する者がいただろう。それぐらい容赦ないリンチを受けるバラゴン。だがバラゴンの眼は死んでいない、まだ戦う事を諦めていない。

 

火球で牙を折られ、鰭を強引に()がれ、ゼットンの腕の一撃で手足を折られ、スペースゴジラの蹴りで内臓が潰れ、イリスの触手に左目を潰され、身体から赤い血が流れても、バラゴンの戦意は折れない。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!!!ーーー

 

バラゴンは聖獣だ、国を守護する神だ、自分がここで負けてしまえば、イリス達が罪のない人を蹂躙するだろう、トレギアという悪が良からぬ事をするだろう、それに何より。

 

バラゴンの瞳にたった一人の少女の姿が映った。邪悪に唆されて闇に堕ちかけている少女。人間の悪意に飲み込まれ希望を失った少女。本来なら自分の様な正義の怪獣を使役し他にいる仲間達と共に世界を救う役割を担う少女。そんな彼女が闇に堕ちてはダメだ、なんとしても救ってみせる。地の神(自ら)の名にかけて、彼女を闇から救い出す。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ!!!!ーーー

 

バラゴンが吠えた。彼の口に莫大な熱量が集まっていく。その熱量は今までの炎と比較にならない。

 

『大技を出すつもりか』

 

火炎を口に収束させバラゴンはキッとイリス達を睨むと口から赤炎を放射。更に風を操る力を使い、火力を上昇される。その赤い炎は並みの怪獣なら骨すら残さぬ程の熱力を秘めていた。正に乾坤一擲、最後の力を振り絞った渾身の一撃。

 

ーーーピポポポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォンーーー

 

そんなバラゴンの決死の一撃を、ゼットンはバリアを展開する事で完全に防いでしまった。バラゴンの想いの詰まった全力の一撃を邪神は呆気なく防いでしまったのだ。

 

「……()りなさい」

 

ーーークウウウウウゥゥゥゥゥゥッ!!!ーーー

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォン!!!ーーー

 

ーーーピポポポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォン!!!ーーー

 

イリスは4本の触手から超音波メスを重ねて放ち、スペースゴジラは極太のコロナビームを放射、ゼットンは太陽の如く輝く巨大な暗黒火球を、三体の怪獣の三つの技がバラゴンへと放たれた。一発だけでも死に絶える一撃、それが三つ。間違いなく喰らえばバラゴンは死ぬだろう。

 

ーーーシュイイイイイイィィィィィ……ーーー

 

爆裂があった。バラゴンの弱々しい声は爆音に掻き消されその身体が爆煙に包み込まれた。

 

 

殺した。そう千景は思った。自分の怪獣(仲間)は無敵だ。そんな怪獣達の最強の一撃を3発も喰らい生きている筈がない。そう千景は思っていた。

 

……生きている筈がないのに、爆煙が薄れ、煙の中にうっすらと浮かんだ影に、千景は目を細めた。

 

「……」

 

バラゴンは死んでいた。原型こそ留めていたが身体中が焼け爛れ、骨が露出している箇所が所々見られ、見るだけでも痛ましい姿の遺体となっていた。だが、死してなおバラゴンは四つ脚で大地に立ち、もう光の宿す事のない眼を開きイリス達を睨んでいた。最後までバラゴンの戦意は折れなかったのだ。

 

ーーークウウウウウゥゥゥゥゥゥッ……ーーー

 

ーーーギィガアアアオオォォォォォォン……ーーー

 

ーーーピポポポポポポポ・・・ゼェットォォォォォォォォン……ーーー

 

そんなバラゴンを見て三体の怪獣は思わず後ずさってしまう。自分達よりも弱い筈なのに、もう死んでいるのに、その遺骸を見て恐怖を感じてしまう。

 

「……戻りなさい」

 

千景は顔を少し歪めながらイリス達を回収する。千景は何か思う様にバラゴンの遺体を見つめていた。

 

『さて千景。この村の人間も皆殺しにしたし、邪魔な怪獣も殺した…これで君の邪魔をする奴らは全員消えたかな?』

 

トレギアはそう千景に問いかける。これで邪魔者全て殺したかと。その問いを聞いて千景は目を閉じ…こう告げた。

 

「いいえ、まだよ。まだ一人、殺してない人間がいる。それに何処にいるか分からないけど…まだ殺してやりたい奴がいるわ」

 

『そうか、いい殺意だ。そんな君にこれをプレゼントしよう」

 

まだ殺していない奴がいる。その言葉を聞きトレギアは邪悪に嗤い、ある物を闇の中から出現させた。

 

 

「なん、だこれ……!?」

 

千景の父はいつもの様に夜遅くまで酒を飲んで帰ってきた。そして破壊の限りを尽くされ荒れ果てた村を見て酔いが覚めた。

 

「何が起こったんだ!?地震か火事か!?いやそんな事より…僕の家は!?明日から何処に住めばいいんだよ!?野宿なんて嫌だぞ!」

 

父親は娘の心配はおろか、村の人々の心配もせず、ただ明日から何処に住めばいいのかと叫んだ。そんな父親を嘲笑う様に悪魔が背後から忍び寄った。

 

『……娘どころか他人の心配もしないとは…私が見てきた中でも君ほどの自己中心的な宇宙人(人間)はいなかったぞ』

 

「!?だ、誰…て、ば、化け物!?」

 

父親はトレギアの姿を見て腰を抜かす。そんな情けない姿を見てトレギアはため息を吐く。

 

『……あの地球人の小娘を利用している私が言える立場ではないかも知れないが…この村の人間といいお前といい…救いようがないな。確かヒルカワという男よりも醜悪でマイナスエネルギーの塊の様な人間だな。流石の私でも引いたぞ?』

 

「な、なんなんだお前は…!?お前が村をやったのか!?ぼ、僕も殺す気なのか!?やめてくれ!僕は死にたくない!見逃してくれ!」

 

土下座をしてまで必死に命乞いする父親、涙目になって叫ぶ様に金切り声を上げる男を見て流石のトレギアも気色の悪さで顔を歪めた。

 

『安心しろ、私はお前を殺すつもりはないさ。私は…だがな』

 

「!ほ、本当なのか…?」

 

父親はほっと息を吐く。良かった、自分だけはなんとか助かったのだと…だが、トレギアは笑みを浮かべる。

 

『ああ、見逃してやるとも……私は(・・)だがな(・・・)

 

「へ?」

 

父親がどういう意味かと考えた直後、後ろから足音が聞こえた。振り返ろうとする父親…直後だった、彼の右腕が宙を舞った。

 

「……へ?ぎゃああぁぁぁぁぁ!!?」

 

右腕が切断されたと気づいた直後、壊れた蛇口から水が大量に噴出する様に切断箇所から鮮血が噴水の様に吹き出た。痛みのあまり汚い声を上げ涙を流しながら右腕を抑える父親。喘ぎながらも父親は顔を上げ足音が聞こえた場所を見る…そこに立っていたのは彼の身近にいる人物だった。

 

「千景……?」

 

赤い鎌を構えた少女…千景は冷たい瞳で父親を見つめていた。

 

「生きていたのか…?いや、そんな事よりも…何故僕の右腕を!?巫山戯るな!今まで育ててやった恩を忘れたのか!?くそ!この親不孝者!」

 

『……とことん救いようがないなこいつは…』

 

娘が生きていたことを喜ぶのではなく、何故自分の右腕を切断したのかと吠える父親を見てトレギアは屠殺される豚を見る目で彼を見つめる。

 

『まあいいさ、私としては彼女が手に入って上機嫌なんだ。最後に教えてやろう。あの鎌はギガバトルナイザーという私の先輩(・・)の扱っていた武器を再現した鎌だ』

 

かつてベリアルという悪の巨人がいた、その巨人の武器はギガバトルナイザーという兵器だった。それを再現したのが千景が持つ鎌だとトレギアは呟く。

 

『あれは今からお前の命を刈り取る死神の刃だ。喜ぶといい、娘の栄光の道の第一歩の生贄となるんだ、親として光栄の極みだろ?』

 

ジリジリと千景が鎌を持って父親に迫る。父親は千景から逃げようとするが恐怖で動けなかった。

 

「や、やめてくれ千景!殺さないでくれ!お、親を殺す気か!?」

 

「……ねえお父さん、私ずっとお父さんに言いたかった事があるの」

 

怯える父親に対し千景は笑顔を浮かべた。

 

「お父さんが私の事が嫌いだった様に…私も大嫌いだったわ」

 

そう言って大鎌を振り上げる千景、父親は察する。この後千景が何をするか、自分がどうなるかを。

 

「い、嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!死にたくない!死にたくない!やめてくれ千景!やめてくれ!僕は死にたくない!死にたくない!誰か、誰でもいいから助けてくれぇぇ!!!」

 

子供の様に泣き叫んで助けをこう父親、だが当然の如く誰も助けてくれない。誰も千景を止めてくれない。無情にも命を刈り取る死の刃が振り下ろされる…最後の瞬間まで彼は叫んでいた、死にたくないから…もし、少しでも娘を大事にしていたら、愛情を注いでいたら、こんな目には合わなかったというのに。同情の価値はない、全ては彼の自業自得、因果応報なのだから。

 

 

 

トレギア(悪魔)は微笑んだ。邪神達は嗤っていた。この日、勇者になる筈だった少女は闇へと堕ちたのだ。

 

 

 

 

 

 




バラゴンは強化してます。だって原作でもマグマの近くに住んでるからゴジラの熱線を耐えられる。て言ってたのに熱線1発で死んじゃったし、だから今作では一兆度あるハイパーゼットンの暗黒火球を数発以上耐える、リンチにあっても耐えると耐久面を強化、更に原作でも炎を吐く予定だったことから炎を吐から上、名前にもある婆羅(バラン)から風を操る設定を付け加えました(バランもアンギラスと同じく大怪獣総攻撃に出る予定だった…が、知名度の低さからキングギドラとモスラに変わられた)。つまり魔改造バラゴンてわけです

でも結局はやられてしまったバラゴンちゃん…あ、劇中では言ってませんがバラゴンはメスです(スーツアクターが女の人だから)。地の神て名乗ってるけど神樹様こと地の神本人てわけじゃないです。実力もガメラとかモスラ達ほどじゃないけどかなりの強豪…でもイリス達には勝てなかったよ。でもバラゴンの魅力を頑張って書いたので魅力を感じてくれたら嬉しいです


柳星張 邪神イリス
体長 99メートル
体重 199トン
必殺技 超音波メス

宇宙恐竜 ハイパーゼットン
身長 70メートル
体重 4万トン
必殺技 暗黒火球

宇宙凶悪戦闘獣 スペースゴジラ
身長 120メートル
体重 8万トン
必殺技 コロナビーム

トレギアが異世界より連れて来た怪獣達。イリスは対ガメラとして、スペースゴジラは対モスラ・バトラとして。それぞれ守護神達と因縁深い怪獣達であり、マガオロチは別世界では光の魔王獣としてゼットンを子として誕生させた。ハイパーゼットンはマガオロチの対。対守護神用の怪獣であり千景の忠実な怪獣達である

あのトレギアおじさんでもドン引きなぐんちゃんの村て…まあだから皆殺しにしちゃったけど後悔はない。ぐんちゃんを闇堕ちさせたのは少し後悔してる、反省はしないですが。さてこれからぐんちゃんがどうなるのか、是非お楽しみに

次回もお楽しみに!

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