私たちは3人で   作:ゴマフアザラシ

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第1話 廃ビル

 

 

 記録―――2018年5月 埼玉県さいたま市 見芥町3丁目廃ビル

 

 

 

「で、恵にはここ行って欲しいワケ。まあ2級だし余裕でしょ・・・どうした?」

「い、え。なんでもないです」

「んー・・・何かあるならスッキリしてから行った方がいいよ」

「・・・中学の時の友人が、よくここに入り浸っていたので。ちょっと」

 

 

 見芥町三丁目、廃ビル。この近辺には複数の廃ビルがあるものの、指定されたビルは間違いなく友人の秘密基地だ。家にも帰らず学校にも行かず、ずっと3階のソファに寝転がっていた友人。卒業式の日すらあいつはそこにいた。

 流石に高校くらいはきちんと通っているんだろうか。結局、進路希望調査書は自分で出したようで進学先は最後まではぐらかされてしまったし、卒業してからは全く連絡が取れない。まあそうか、あいつは携帯を持っていないのだから。

 

 

「あー、うーん。恵、行くのやめる?」

「?どうしてですか?」

「女子高生らしき女の子が1人、3日程前にここに入ったまま出てきてないそうだ。死んでる可能性が高いから細かくは伝えてなかったんだけどね」

「っ!?な、なんで、どうして直ぐに誰かを派遣しなかったんですか!?」

 

 

 こんな話をしている場合じゃない。この話が本当で、入った女子高生が本当に友人なら、いや、そうでなくとも今すぐ助けに行くべきだ。早く、一刻も早く。

 

 

―――――3日程前にここに入ったまま

 

 

 間に合う、のか・・・?

 

 

 

「恵だって知ってるでしょ?この界隈はいつだって人手不足。ここの呪霊は地味にレベル高めだからその辺の呪術師だと難しいし、暴れる訳でもないから優先順位は低め。後回しにされるわけだ」

「人が1人、死ぬかもしれなくても・・・ですか」

「小を捨てて大を得る。いつの時代もそうだよ、胸糞悪いけどね。僕だってこの件を知ったのはついさっきだし。で、行くの?行かないの?」

「行きますよ、当たりまえです」

 

 

 友人が生き延びてくれている事を願って、慣れた廃ビルに足を踏み入れた。

 

 

 ――――――

 ――――

 ――

 

 

「玉犬」

 

 

 ズズズ、と陰から見慣れた式神が出てくる。こいつは優秀だ、直ぐに呪いを見つけてくれる。今回も数秒足らずで反応し、階段に向かって唸った。上か。

 2階に上がり、3階に上がった。玉犬について進んでいくと慣れ親しんだ金属製の扉が見える。・・・友人がいつもいた部屋、ソファがあるあの部屋だ。

 ギィィ、と軋んだ音をたてながら扉を開ける。そこに居たのは、呪霊。部屋の向こう半分を埋め尽くす程の巨体を持った呪霊だった。が、まあこの位なら祓える。手を動かして鵺を出そうとした瞬間。

 

 

「・・・伏黒?」

「っ!?しゃ、ばな・・・!?伏せろ!」

 

 

 背後から友人の声が聞こえた。反射で振り返ってしまったが、呪霊からの攻撃が飛んできて身体を捻りながら避ける。そうだ、謝花、謝花はきちんと避けられたか!?式神で護る余裕が無かった!

 

 

「あ・・・うそ、だろ」

 

 

 もう一度友人を見ると、そこには首を境に上下に別れた友人の姿があった。

 

 

 首が両断された友人に近づく余裕も無く、呪霊の猛追が始まった。呪霊のサイズも俺を囲むように広がって友人の姿が見えなくなる。くそ、くそ、くそ!俺は友人1人守れないのか、何が2級術師だ!

 友人の悲惨な姿がなんども脳裏をよぎり、頭がボヤボヤする。駄目だ、俺まで死んだら駄目だ。まずはこいつを祓って、それで・・・。

 

 

 

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

 

 

 

 

 突如、聞き慣れた声の叫びが聞こえた。

 

 

「頸斬られた、頸斬られちゃった!私人間だもん悪いこと何もしてないもんなんで頸斬られなきゃいけないの!許さない許さない許さないんだから絶対に!私強いんだから!あんたみたいな不細工に負けないんだから!私負けてないんだから!私本当は強いんだから!!!」

「謝花・・・?お前、なんで、」

「伏黒どいて!その不細工殺す!!私強いもん私強いもんちょっと油断しちゃってただけだもん!本当なら頸なんて斬られないんだから!面倒だから放置してたけど殺してやる殺してやるんだから細切れにしてやるんだから!」

 

 

 巨大化した呪霊の隙間から友人を見ると、友人は自分の生首を持って自分の首の上に置いていた。どういう事だ、あいつは普通の人間のはずだろ?呪力だって全く何も感じない。どうして、どうして、あいつは何者だ?

 ・・・今、考えることじゃない。

 

 

「死んだことも分からないくらい一瞬で殺してやる・・・!」

 

 

 そう言うが早いか、友人の背中から飛び出た帯状の布が呪霊を細かく刻んでいた。呪霊が反撃する暇もなくボロボロと崩れていく。・・・終わった、のか?謝花がこの呪霊を祓った?いや、まず今の布はなんだ、謝花は何故首を斬られて生きている?なぜ、なぜ、なぜ?

 

 

「ううう、なんなのあの不細工・・・私の頸を斬り落とすなんて・・・もっとなぶり殺せば良かった・・・」

「・・・謝花、聞きたいことがあるんだが」

「私もあるよ。何あれ?」

 

 

 お互いに聞きたいことが多すぎる。まずはここから出て、五条先生と合流しなければ。

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