19××年—————ピザカッターで武装したヤンキーたちは日本政府の判断により投下された対ピザカッター用兵器:P.cutにより己の魂とも言えるピザカッターを溶かされてしまった。
これにより野生のピザカッターも融解、のちに絶滅が確認された。
魂を失ったヤンキーたちは路頭に彷徨い、金髪のリーゼントを黒髪七三分けにしてしまった。
この事件により、日本のヤンキーの9割は消えたという。
残りの一割はピザで武装した外道な者であったため、すぐにイタリア警察の介入により取り押さえられた。
そんな過去最大の悲劇が訪れてから数十年、時代に似合わないロングスカートのヤンキーが体育館裏に1人。
目の前には——————野生のピザカッター。
じっと目を合わせた1人と1つはお互いに物珍しそうな目を向ける。
ふと、夕立が降り始める。
一瞬で草むらに隠れるピザカッター。
そう、錆はピザカッターにとって最大の天敵である。
濡れるヤンキーは化粧が雨に濡れて崩れ始めたことも気にせず、制服の上着をサッと脱ぐと即座にピザカッターに覆い被せた。
自身が濡れることをいとわないその行動に向けられるピザカッターの熱い視線は黒い制服に覆い隠されたのであった。
濡れたままにヤンキーは家路に着く。
しかし彼女とて現代のヤンキー、野生のピザカッターは見たこともない。
ならば何故1つのピザカッターの命を救ったのか?
理由は不明だが、ヤンキーとしての血がピザカッターとの縁のような何かを感じたのかもしれない。
彼女は家に帰れば親から糾弾を受けるだろう。
“上着はどうしたのか?”と。
しかしその答えを言うことは決して無い。
何故なら野生のピザカッターの存在を誰にも知られてはいけないから。
野生のピザカッターと関わり合うことは法律で禁じられているから。
もどかしい想いをその胸中に秘めながらも彼女はいつものようにぶっきらぼうに”なんだっていいだろ”と一蹴する。
そうしてベッドの上で、明日もまた会いに行こう、と決心したのであった。
それがたとえ、誰からも認められない存在だったとしても。
ピザカッターは驚いた。
彼女は今まで誰にも見つからないようにひっそりと生きてきた。
自分を産んだ直後に人間に連れ去られた両親に彼女はこう言い聞かされていた。
“人間は悪よ”
と。
彼女はそれを信じて16年間生きてきた。
成人も間近に気分が乗ってしまった彼女は気を抜いたのだろう、がさりと草むらから飛び出してしまった。
それだけならすぐに戻れば良かった話なのだが。
目の前には人間がいた。
彼女は絶望した。
両親と同じように連れ去られると確信し、身構えた。
しかし、相対したロングスカートの人間は違った。
物珍しそうに見るだけでなにもしてくることはなかった。
不意に、夕立が。
雨に紛れて逃げようと試みた彼女であったが、人間はあろうことが自身の衣服を覆いかぶせる事までした。
彼女は、悪と教えられた人間に助けられたのである。
目を丸くし、同時に確信をした。
“自身の生まれてきた意味は、この人に使われることである”
と。