特異点F ~元・ポンコツ悪魔の人理修復~   作:猿野ただすみ

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お前を、ボクの妹として認める



それぞれのプロローグ
桂木えり


~えり~

 

私は桂木えり。舞島学園高等部に通ってます。特技はお掃除とお料理。成績は、あまり良くはないですが、学園生活は充実してます。

そんな私はある日、街中で声をかけられました。その人は人理がああとか適正がどうとか言ってましたが、ハッキリ言って私にはよく判りません。唯一、魔術という言葉には些か興味を引かれましたが、私は謝ってその場を立ち去りました。

それでその話は終わったと思ってたんですけど、数日後、その人はふたりの男性を連れ立って、家までやって来たんです。

ひとりは、モスグリーンのジャケットに同色のシルクハットを被った、長いチリチリの髪の毛の人。名前はレフ・ライノールさん。

もう一人は色の薄い赤い髪の毛の、フワッとした雰囲気の人。名前はロマニ・アーキマンさん。Dr.ロマンって呼ばれてるみたいなので、ロマンさんって呼ぶことにします。

三人が通されたリビングには、私とお母さま、にーさまがいます。というかにーさま、お客様が来てもゲーム続けてるのは、流石というか何というか…。

 

「すまないが、お嬢さんとだけお話しさせていただきたい」

 

レフさんがお母さまにそう言うと、お母さまはコクリと頷いた。……? 何だかおかしいです。お母さまだったら、私の心配をして必ず何かを言ってくると思うんですけど。もしかして、何かの術でしょーか?

 

「……その話、ボクも同席したいんだが」

 

にーさまも違和感を感じたようです。だって、現実(リアル)には興味がないにーさまが、わざわざそんなことを言ってきたんですから。

 

「いや、すまないが、この話は…」

「えりの能力に関係した話だろ?」

「!!」

 

レフさんの言葉に被せるように言ったにーさまの発言に、三人が動揺するのが判る。というか、私の能力ですか!?

 

「ボクは、えりが特別な力を持ってることを知ってる。お前たちが目をつけたものと同じかどうかは知らんが、何も知らない母さんと違って聞く権利はあると思うんだが?」

「あのー、出来れば私も、にーさまに同席してもらいたいです。……ええと、私、あまり頭が良くないので」

 

私がお願いすると、レフさんがうーんと考え込む。

 

「まあ、いいじゃないか、レフ。これから話すことを口外しないって約束できるんなら」

「む、うむ、そうだな。……君は約束を守れるかね?」

 

ロマンさんのお陰で考えを軟化させたレフさんが、にーさまに尋ねる。

 

「ああ。むしろ、えりよりも口は硬いと思うぞ?」

「な、にーさま、ヒドいです~!」

 

文句を言う私を見て、ロマンさんがアハハと笑ってます。ううー、にーさまのばかぁ…。

 

 

 

 

 

内密の話ということで、私たちはにーさまの部屋に移動しました。ただ、私を勧誘してた人はお母さまに、当たり障りのない事情を話してるみたいです。

もっとも、にーさまに言わせると、

 

「捏造話の間違いだろ」

 

という事みたいですが。

 

「おおー、これはすごいねー」

 

部屋に入ったロマンさんは、中にあるモニターパネルやゲーム機、ゲーム椅子を見て感嘆の声を上げる。

 

「……さて、話してもらおうか。お前たちの目的とやらを!」

 

ゲーム椅子に座り、くるりとこちらを向きながら言うにーさま。無駄にカッコいいです。

 

「私は技術者なので、難しい方向へ話が進んでしまいかねないな。ここはロマニに任せることとしよう」

「な、ヒドいぞレフ!

ハッ! もしかしてこのために、僕を指名したのか!?」

 

どうやらロマンさんは、レフさんに指名されてここへやって来たみたいです。

 

「そう目くじらを立てないでくれ。私は友人である君を、それだけ高く評価しているのだから」

「まったく、ズルいな、レフは」

 

そう呟いたロマンさんは、小さくため息を吐いた後、軽く咳払いをしてこちらに向き直った。

 

「それでは僭越ながら僕、ロマニ・アーキマンから些細を説明させてもらうよ。

まず僕たちは、[人理継続保障機関フィニス・カルデア]からやって来た」

「じんり、けいぞく…?」

 

何だかいきなり、難しい言葉が出てきました。

 

「人理継続は、人類の将来的な存続と言ったところだろう。それを保障、つまりその環境や状況を守る機関が、フィニス・カルデアという組織なんだ」

 

ほえ~、さすがにーさまです。

 

「君、桂木桂馬君だっけ? 素晴らしい理解力だね」

「ふっ。ゲームの中では小難しい名前の組織なんて、ざらにあるからな。これくらいの読解など大したことじゃない!」

 

にーさまはこんな状況でも平常運転ですね。レフさんとロマンさんは呆れてるけど、私は安心します。

 

「ええと、それじゃあ続けるよ?

通称カルデアの目的は桂木君が言ったとおり、人類史の存続。

擬似地球環境モデル・カルデアスと近未来観測レンズ・シバによって、過去の事象から100年先の未来までを推測、人類の火が絶えていないことを証明して保障する。

……と、ここまではいいかい?」

「は、はい、何とか…」

 

要するに、過去のいろんな出来事から未来に起きる可能性を導き出して、100年後も人間は栄えているのかを確定させるって事ですね。

……あれ? でも、物凄いコンピュータでも、可能性を導き出せても証明や確定は無理なんじゃ?

……あ。

 

「どうやらえりも気がついたようだな。流石にポンコツでも、元なんたらだ」

「はい! ……って、ポンコツ言わないでくださいっ!」

 

そりゃあ確かに、私は落ちこぼれでしたけどー。

 

「ちょっといいか。君たちは何に気がついたのかね?」

「ああ。そのカルデアスやシバっていう物は、魔導だか魔術だか魔法だかは知らないが、そういった類いを応用して創られているんだろう?」

 

レフさんの質問に、にーさまが答えた。

 

「へぇ。因みにどうしてそう思ったんだい?」

 

ロマンさんが興味深げに私たちを見る。

 

「ヒントになったのは、リビングでの出来事だ」

「はい。お母さまは私たちをとても大事に思ってくれてます。だからレフさんにあの様に言われても、ちゃんとした説明を受けて納得しなければ、首を縦には振らなかったはずです。

でも、催眠術に必要な行程は見られませんでした。ということは、魔力的な何かを使った術で思考を操作したんじゃないかと思ったんです」

 

ああ、何でしょう。私が専門的な知識で解説する日が来るなんて、思ってもみませんでした!

 

「……なるほど。一般家庭の生まれで魔術に関する知識は無いものの、魔力といったものを経験的に知り得ていたということか。なかなか興味深い話だ」

 

ホントは元々知っていたんですが…。流石にそれは、言わない方がいいのかな? レフさんもそれで納得してるみたいだし。

 

「話を戻すよ。

現所長オルガマリー・アニムスフィア指揮の下、あらゆるシミュレートを行い、カルデアスは確かに100年先の未来まで、人類の火が灯っているのを確認していた。

ところがある日を境に、その灯が急速に減少していったんだ。

早急に調査を開始し究明に努めた結果、2004年の日本のある地方都市に、観測できない特異点が現れたことが判明した。我々はそれが異常の原因と定め、実験段階にあったレイシフトシステム、……まあ、タイムマシンみたいなものだと思ってくれ。その実用運行の開始、及び送り込むための適正者の選定を開始したんだ」

「それに引っかかったのがえりってわけか」

「ああ、そういうことだね」

 

ふえぇ、結構大事になってきました。

 

「魔術師側からは38人、頭数を揃えるために一般枠で10人選ばれることになったんだけど、実はちょっと問題が起きてしまってね。

現在、最後のひとりを捜しているんだけど、ここに来て一般枠のひとりが精神的に参ってしまったんだ。僕が下した診察結果はドクターストップ。

それで最終審査まで残っていた君を、スカウトすることになったんだ。ミッションまでは残り少ないからね」

 

つまり、穴埋め要員って事ですか。そうですよねー、私は何処へ行っても落ちこぼれですよねー…。

 

「えりが一旦弾かれたのは何故だ? 理由によっては、ボクは断固反対する」

 

にーさま…。

 

「えり君は、我々が想定したレイシフト適性の基準を、僅か1%下回っていたんだよ。それでも今回彼女に声をかけたのは、その魔力量とマスター適性の高さが、このまま切り捨てるのには惜しかったからだ」

 

レフさんの説明に、私は少しだけ嬉しくなった。それってつまり、少しは期待されてるって事ですよね?

 

「その1%は、許容できる範囲なのか?」

「そこは安心してもらっていい。元々基準は高めに設定していたのでね。

念には念を、というやつだよ。安全性には問題はない」

「そうか…」

 

そう呟いた後、にーさまは一旦考える仕草をして私に向き直る。

 

「えり、お前はどうしたい? ミッションがどんなものかは知らんが、送り込まれるのは特異点化した場所。最悪、命の危険だってあるはずだ」

 

命の危険。確かに、その通りです。

 

「待ちたまえ。確かに、そこにはどんな危険が待ち構えているか判らない。

しかし、メインで動くのはエリート集団であるAチームだ。えり君が配属されるであろうBチームは、後方支援に当たってもらう予定だよ」

 

レフさんが言うとおりなら、私は比較的安全な場所に配属されるみたいですが、にーさまはそれに納得してないようです。

 

「それはあくまで、前提条件だろ? 不測の事態なんていくらでも起きるものだ。

……最悪の事態を想定して行動するのは、ゲームじゃなくても当たり前のことだと思うが?」

 

にーさま、いつも慎重ですけど、今回はいつにも増してって感じです。それだけ、心配してくれてるって思っても、いいのかな。

 

「それを踏まえてもう一度聞くぞ。えり、お前はどうしたいんだ?」

 

私は少しだけ考えて。

 

「このミッションが失敗したら、人類は滅んでしまうんですよね?

影響が出始めるのって、いつ頃なんでしょーか」

「それは、はっきりとは判らないな。

もしかしたら我々が認知出来ていないだけで、すでに異変が起きている可能性もあるだろう」

 

レフさんの答えは、私が想像した以上に悪いものだった。それなら、私の答えはひとつだけです。

 

「にーさま。私はこの世界が大好きです。にーさまにお母さま、おとーさま。それから学校のみんな。全員私の大切な人たちです。

私は、そんな人たちの未来を守りたい。

だから。私はこの話、お受けしようと思います」

 

ハァ…

 

ひとつ、ため息を吐くにーさま。

 

「お前も、時々ヒロインっぽいこと言うんだよな」

 

半ば諦めたように言うにーさまは、だけどそれとは反対に、満足した表情をしてました。

 

「あの、それでにーさまにお願いがあるんですけど」

「ん? お願い?」

 

私はにーさまの耳元で、そのお願いを囁いた。

 

「……なるほど。まあ、条件次第では構わないが。

後はカルデア側が許可するかどうかだな」

 

まさか、にーさまがすんなりと受け容れてくれるとは思いませんでした。

 

「ふむ。その願いというのは何だね?」

 

尋ねるレフさんに、私よりも早くにーさまが答える。

 

「えりはボクに、一緒に着いてきて欲しいそうだ。

因みにボクは、月に50本の新作ギャルゲーを提供してくれるのなら、着いていくのもやぶさかではない。機種はPFPかPFーβ(ベータ)でたのむ」

「いや、待ちたまえ。流石に当事者以外は…」

「レフ。僕は構わないと思うよ」

「ロマニ!?」

 

ロマンさんの援護に、レフさんが驚きの色を浮かべた。

 

「考えてもみてくれ。一般枠で採用された彼女は、選考の段階で心身共に問題なしとされていたんだよ? 僕だってそう判断した。

だけど実際には精神衰弱を起こして、今では完全に引き籠もってるんだ。

なら、えり君の精神の安定となるなら、桂木君も連れて行くというのも選択肢としてはアリだと思うんだけどね?」

 

ロマンさんのこの意見が決定打となったのかレフさんも折れて、晴れてにーさまも一緒にカルデアへ行くことになりました。

 

 

 

 

 

「……それにしても、この舞島ってところは変わってるよね」

 

緊張を解いたロマンさんが、世間話をするように口を開く。

 

「魔術師は確認されてないのに、一流魔術師並の魔力を持った子が大勢いるんだから」

 

ドキリ!

 

私の、胸の鼓動が跳ね上がる。

 

「特にえり君を除いた六人は、レイシフト適正があったらスカウト間違いなかっただろうね」

 

うう~、それってやっぱり…?

 

「おい、ロマン。それってボクたちに話して大丈夫なのか?」

「いや、良くはない。……ロマニ、口を慎んでくれ」

「ああ、すまない。気をつけるよ」

 

にーさまのお陰で話は切り上げられたけど、もしかしてロマンさん、何か気がついてるんでしょうか?




あらすじにもの書いてありますが、原作【神のみぞ知るセカイ】が2010年(と言われている)の話だったのに対して、年齢設定を変えずに、2015年に原作の出来事があったように変更しています。
つまり、カルデアに勧誘される直前まで、新地獄と天界の事件に関わってたことになります。
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