私が目を覚ますとそこは…。
「知らない天井…ではありませんね」
元ネタは知らない、昔のアニメの真似をしようかと思ったけど、ここ…医務室には、実技講習でキゼツした時に何度かお世話になっているので、当然この天井も知っている。いえ、そのままボケてもいいけど、言った後に絶対恥ずかしくなるやつだ。恥をかきまくりの私だって、わかってて恥をかきに行くほど図太い性格じゃない。
……とか思っていたら。
「うーん。せっかくネタをするなら、最後までやらないと意味がないと思うんだが」
そんなことを言われてしまった。……って、え?
「やあ。目が覚めたようだね」
「あ、ダ・ヴィンチさん…」
そう。ベッドの横にはダ・ヴィンチさんが椅子に腰かけて、私のことを見ていた。「私の事はダ・ヴィンチちゃんと言って欲しいんだがね」とか言ってますが、なんかどうしてもさん付けになってしまいます。
「え、えっと? 私達、時空の崩壊に巻き込まれて…?」
私はさっきまでのことを思い出そうと、一生懸命記憶を掘り起こしていると。
「ああ、みんな無事に回収されたよ。キミのサーヴァントや、所長も含めてね」
「所長、消滅しなかったんですね!」
よ、良かった~。
「さすがに、あの瓶から出すわけにはいかないがね。代わりの肉体に関しては、所長の細胞片を探し出して、ホムンクルス作製とクローン技術の応用を使って復元させる予定だよ。時間がかかるとは思うが」
そ、そんな事が出来るんだ。魔術師の技術も侮れません。
「……さて。えり君。……いや、エリュシア君と言った方がいいのかな?」
「えりでお願いします。今の私はあくまで、桂木桂一と麻里の娘、桂馬の妹のえりですから」
私がエルシィに戻るのは、にーさまに言われたときだけです。
「では改めて、えり君。キミが最後のお目覚めだ。立香君は数分前にこの部屋から出て行ったが、キミはどうするんだい?」
私が最後…。なんだかお寝坊キャラみたいでハズカシーです。って、そーじゃなくって。
「えっと、とりあえずみんなに会いたいので、探しに行こうかと思います」
「そうか。なら管制室へ行くといい。立香君はそちらへ向かったみたいだからな。それから、キミはまだ目覚めたばかりだ。無理はしないように」
「はい!」
そう答えた私は、医務室を出て行った。
管制室の前にたどり着き、中を覗き込んだ私。って、ええっ!?
ななな何故か、立香さんとマシュさんが抱き合ってますっ! なんかバックに、白百合の花が見えるよーな!?
「こほん!」
あ。ロマンさん。その咳払いに、我に返ったお二人が慌てて身体を離す。
「まずは生還をおめでとう、立香君。それにえり君」
「えっ?」
驚いた立香さんが振り向いて、私のことを見つけた途端に赤面する。
「えっと、えり。今の見てた?」
「はい。バッチリと」
「ちっ、違うんだよっ! あれはマシュが無事だった喜びと、感謝の意味で抱きしめてただけだからっ!」
「はいっ。そーゆー事にしておきます」
「えりっっっっ!」
私がちょっとだけからかって言うと、立香さんの顔が更に赤くなる。少し可愛いですね。
「……えっと、いいかな?」
「「あっ。……はい」」
私と立香さんは跋が悪そうに返事をした。いえ、私の場合は確実に、跋が悪くです。
「では改めて。君達のお陰で、マシュとカルデアは救われた。無事、という状態ではないけど、所長もね」
本当に。これでオルガマリーさんが欠けてたら、私も立香さんをからかってたりなんか、とても出来なかったと思います。
「しかし、新たに七つの特異点が発見された。冬木とは比べものにならない、時空の乱れだ。
この七つの特異点にレイシフトし、歴史を正しい形に戻す。それが人類を救う、唯一の手段だ」
にーさまがレフ教授にそんな事言ってましたけど、改めて考えると、とんでもなく大変なことですよね?
「マスター適正者は君達を除いて凍結、所持するサーヴァントは、マシュとディアナだけだ」
それを聞いて、立香さんとマシュさんの顔に影が差す。もちろん私も、似た表情になってると思う。
と、そこで。
「おい待てロマン。もうひとりいるだろ」
「桂木君!?」
「にーさま! ……えっ? もうひとり?」
瓦礫の裏から現れたにーさま。でも、もうひとりって?
「……おい、このバグ
「……あ!」
そーでした! ここにはもうひとり、マスター適正者がいました!
「わかった様だな。という訳で、ボクに着いてこい。確認したいことがある」
「えっ、あ、はいっ!」
言われて私は、にーさまを追いかけて管制室を飛び出そうとした。けど、にーさまは急に立ち止まって振り向いた。えっと、いったい?
「それから、サーヴァントもあとひとり、ダ・ヴィンチを忘れてるぞ?」
「「「あ」」」
私とロマンさん、マシュさんは、思わず声を上げてしまうのだった。……ダ・ヴィンチさん、さっきまで一緒だったのに、忘れてしまってすみませんでしたっ!
にーさまに連れて来られた場所は、ひとつの扉の前。おそらくこの中に、もうひとりのマスター適正者の方がいらっしゃるんですね。
「桂馬くん、ここで何するの?」
立香さんが尋ねる。そう。あの場所にいたみんなが着いてきたのだ。
「まずは確認をする。ロマン。ここの防音はどの程度ある?」
「え? ええと、扉の前で宴会を開いても、中には全く聞こえないくらい高い防音性だけど」
「なら大丈夫だな。えり」
「ふぇっ!?」
思わず、天理さんの口癖が出ちゃいました。
「駆け魂センサーのスイッチを入れろ」
「……! はいっ」
そういう事ですか。私はセンサーを取り出して、スイッチをオンにする。すると。
ドロドロドロドロ…
「にーさま!」
「センサーが反応した。つまり中の人物、緑川理香の中には、駆け魂…
「「「!?」」」
にーさまの言葉に、皆さんの表情が緊張の面持ちに変わる。
「……だが、ボクはこの攻略をやらない。理香の攻略に、恋愛要素は必要ないからな」
「え? それではいったい、誰がやるんでしょうか?」
マシュさんが尋ねると、にーさまはロマンさんと目配せをして。
「よし。お前ら、話し相手になってこい!」
「えっ?」
「あわわわ~!?」
私と立香さんはにーさまに背中を押され、何故か開いた理香さん?の部屋の、扉の向こうに飛び込んでしまった。
「にーさま!?」
「桂馬くん!?」
私と立香さんが声を上げたものの、扉は既に閉じている。
「えっ!? な、何!?」
驚く声にそちらを見ると、ベッドの上に腰かけて、ブランケットを抱きしめた女の子がいた。この人が理香さんですか。……っていうかまさか、私達が攻略しろって事でしょーか。
「……あ。あなた達、桂木えりと藤丸立香!」
「え?」
「私達をご存知なんですか?」
これはちょっと、予想外です。
「ディアナと桂馬くんが話してた、駆け魂とかヴィンテージの事件を聞いてたから」
ああ、なるほど。え? という事は、攻略についても聞いてたって事ですよね? それで、どうやって駆け魂を出せとゆーのでしょうか?
「それであなた達は、どうしてここに?」
「あ、ええ~っとぉ…」
私が言いあぐねていると、立香さんが。
「桂馬くんが、『話し相手になってこい』って言って、強引に押し込まれた」
「ああっ、そーなんです! どうして話し相手なのかはわかりませんけど、ホントいきなり!」
……さすがに、理香さんの中の駆け魂の事は、黙っていた方がいいですよね?
「話し相手って、どういう事?」
「さあ? 何の指示も受けてないし、女子会みたいのでいいんじゃない?」
「女子会!」
思わず私の声が跳ね上がる。
「……えり?」
「ああっ、すみません。実は女子会には憧れてまして。いえ、悪魔時代にもハクアとそういう事はしたことあるんですけど、恋バナはありませんし、勉強や仕事に関することで慰められることの方が多かったですから」
そう。もっとワイワイした感じの女子会も、体験してみたかったんです!
「多分えりは、女子会に夢を見すぎだと思う」
そうでしょうか?
「……悪魔時代?」
……あ。
「そういえば理香さんは、引き籠もっていたんですもんね。知らなくても仕方がありません。
実は私、エルシィ…エリュシア・デ・ルート・イーマ自身なんですよ」
「……え?」
「にーさまと本当の家族になりたくて、悪魔の体を捨てて人間の体になったんです」
「ええっ!?」
理香さん、相当驚いてますね。って、当たり前かぁ。
「それも含めて、お話しよう?」
立香さんが上手く話題を話し合いに持ってきた。こういうの、私には無理なので、非常に有難いです。
で!
「えっ? えりってマッピーとクラスメイトなの!?」
「はい。マッピーさんって、松宮宏子さんですよね? 舞校祭の準備の時、カフェをやるんだーって、
「いや、怒野とか麻美って言われてもわかんないんだけど。というか、その怒野って人だけ、なんで苗字?」
「怒野さんは、下の名前を知らないんですよー。にーさまなんか、『モブ子でいいだろ』とか言う始末です」
「モブ子はさすがにヒドいって!」
ああ、これです。私は女子会で、こーゆー事をしたかったんです!
「……私もコミュ力高い方だと思ってたけど、えりのコミュ力って半端ないね?」
「え? そーですか? 私は、立香さんのコミュ力って凄いなーって思ってましたけど?」
「……二人とも、充分コミュ力高いから。……その、引き籠もってる私に、これだけ会話させてるし」
あ。また少し、気持ちが沈んでるみたいです。う~ん、でも、どうすればいいんでしょうか。
「ねえ。理香はどうして引き籠もってるの? 精神衰弱状態で、ってのは聞いたけど、その理由は知らないんだよね」
あ…。言われてみたら、確かに。というか、それが心のスキマの原因ですよね? うう、駆け魂隊の悪魔だったのに、どうして気づかなかったんだろう…。
「……きっと二人には、凄くくだらないことだと思うよ?」
「別にいいよ、くだらなくたって。だって悩みなんて、周りはくだらないって思っても、本人にとっては重要な問題だって事の方が多いもんじゃない?」
「そうですね。にーさまが以前、真剣に悩んでたことは、ギャルゲーの優先度を決めることでしたから」
「うん、ありがと。それに比べれば、全然くだらなくないと思う」
やっぱりにーさまの悩みは、理香さんからしてもくだらなかったようです。
そして、理香さんの話を聞いて。
「……あの、それのどこがダメなんですか?」
「えり!?」
「それ、本気で言ってるの!?」
なんだか、理香さんと立香さんに突っ込まれちゃいました。
「えっと、理香さんの悩みって、魔術を習ってもさほど成長もしない、魔術師としては不出来だった。それで自信をなくして、自分がここにいるのは間違いじゃないかと思い始めた。ですよね?」
「そ、そうだけど…」
「充分、重大な悩みだと思うけど」
あれ? 理香さんはまだしも、立香さんは気づいてらっしゃらないのでしょうか。
「あの、魔術に関して言えば、私と立香さんも似た様なものですよ?」
「え…」
「ああ、うん。えりって時々、クリティカル攻撃してくるよね」
? 私、戦闘はニガテなんですが?
「……いや、わかってないならいいや。でも、確かに私には魔術の才能は無いけど、えりは空飛んだり分身作ったり消えたりしてたじゃない」
「いえ、あれは羽衣の機能のおかげです。駆け魂隊の悪魔なら普通に使える能力ですよ?
ただ、私はその、落ちこぼれだったので…。ハクアに羽衣制御のコツを教えてもらって、ようやくマトモに使えるようになったんです」
「あ…、なんかごめん」
謝る立香さんに、私は笑顔で返した。
「それに今の、人間としての私には、やっぱり魔術の才能はありませんよ。何しろ、地獄で習ったものと術式が似ている[解析]が、何とか使える程度ですから」
お陰で、魔術師の家の結界を解析できたけど。
「それじゃあ二人は、どうして特異点であんなに…」
「どうしてと言われましても…。レイシフトに巻き込まれたから、私が出来ることを精一杯がんばっただけですよ?」
「そうだね。私は魔術なんて使えないから、ただ、マシュに寄り添ってあげるくらいしか出来なかったけど」
私達の話を聞いて、理香さんはポカンとしている。
「がんばった…だけ? 自分に出来ることを?」
「はい!」
「そうだよ」
聞き返した理香さんにそう答えると、呆然とした表情のまましばらく沈黙して、そして。
「……ハッ。アハハハハハ…!」
「ええっ!?」
「ちょっと、理香?」
突然笑い出した理香さんに、今度はこちらが唖然とします。
「はは…。驚かせてごめん。ただ、私の悩みの答えって、凄く単純だったんだなぁって思って」
そんな理香さんの表情には、さっきまでの陰りは無くなっていて。
「そうだよね。魔術の才能が無いなら上達するまでがんばればいいし、それで駄目でも、自分が出来ることを活かしてがんばればいいんだ。考えてみたら部活だって、そうやってがんばってきたんだから」
そう言って理香さんは、勝ち気な笑顔を浮かべる。それはどことなく、歩美さんにも似ている気がした。
と、その時。
ボヒュッ!
理香さんの体から飛び出したモノ。
「えっ!? な、何!?」
当の理香さんが驚く中、慌てはしたけど
「拘留ビンッ!」
勾留ビンを大きくしてフタを開け、
「駆け魂拘留です」
しばらくの沈黙が過ぎて。
「駆け…魂?」
理香さんが呟くように言った。
「はい。理香さんは駆け魂に取り憑かれてたんですよ」
「え? でも、桂馬くんは、『ボクは攻略しない』って…」
「うん、私達にも言ってた。でもその後、こうも言ったよ。『理香の攻略に恋愛要素は必要ない』ってね」
立香さんがそう説明すると、段々と理香さんが、おっかない顔になってきた。
「っっっ桂木いいいいいっ!!!」
呼び方が苗字呼び捨てになってます。これは、相当怒ってますね。
立ち上がった理香さんが出入り口へ向かう。そして扉が開くと、そこにはにーさまとロマンさん、マシュさん、更に、いつの間にかやって来ていたダ・ヴィンチさんがいました。
「どうやら元気になったようだな、理香」
「『元気になったようだな』じゃないっ! あと、理香って呼ぶなっ!」
理香さんがまるで、歩美さんのようです。
「桂木! あんた、よくも騙したわね!」
「騙してはいないぞ? それに、どうするかを決めたのはオマエ自身だろ?」
「く…!」
ええと、そこら辺の事情はよくわかりません。
「とはいえ、勘違いするように仕向けたのは事実だし、ボクも悪かったとは思っている。
だけどあの段階では、駆け魂に憑かれているかの判断は下せなかった。その状態で下手に不安を与えたら、駆け魂がいた場合、余計に悪化する可能性が高かった上に、駆け魂攻略に手間取ったことは間違いないだろう。だからあの時は、ああするのがベストだったんだ。すまなかったな」
な、なるほど。そういう事だったんですかー。
「……桂馬くんは、ズルいね」
そう、理香さんは言ったけど、呼び方が名前にくん付けに戻ってるので、納得はしてるのでしょう。
「……コホン。あー、緑川君。早速で悪いけど、精密検査をさせてくれないか。精神面は解決したようだけど、長いこと引き籠もってた弊害がないか確認したいんだ」
「え、あ、はい」
ああ、そうですよね。引き篭もりって事は、運動もしてない不摂生な生活です。精密検査は必要だ。
そして理香さんは、ロマンさんに連れられて行ってしまいました。
「……それで桂馬くん。私とえりを理香の部屋に押し込んだ真意は?」
あ、そうです。にーさまは、どうしてあんなこと…。
「そうだな。第一に、ボクは人の心がわからない。いや、オマエなら『本当の意味ではわからない』とか言いそうだから、言い直そう。ボクはリアルの人間の心を、理解してやれない。あくまでゲームからの受け売りだ。
まあ、ちひろと付き合い始めてから、何となくはわかってきたつもりだが、リアル対応するには付け焼き刃過ぎるからな。恋愛による攻略以外には自信がないんだ」
そう言えばにーさまは、出会った頃からそんなこと言ってましたね。
「第二に、年齢的にも立場的にも同じ立ち位置にいる、お前達の方が向いてると思った。ボクが会話で仲良くなろうとすると、どうしてもギャルゲーの会話になって、恋愛へのルートに入りやすくなるからな」
「……よー言う」
立香さんは呆れてますが、それが事実なのがにーさまの凄いところなんですよねー。
「言っておくが、お前達のコミュ力の高さを見込んでの事だぞ? どういった形で話が進むのかは、前述通りの理由で予測も出来ないが、最終的には理香の悩みを聞くだろう事は予想できた。そしてそれを解決できるのは、同じ立ち位置でありながら、成否を問わずにミッション遂行出来たお前達しかいないんだよ」
「……何だか、桂馬くんが何を狙ってたのか、わかった気がする」
ええっ! 立香さん、凄いです!
「……おい、立香。そこのバグ妹がわかってないようだから教えてやれ」
「はわっ!? に、にーさま、バラさないでくださいよぅ」
にーさまはイジワルですぅ。
「……これはあくまで私の予想だよ? 桂馬くんが私達にやらせたのは、理香に本来の自分を思い出させることだったんだよ」
「本来の自分、ですか?」
「うん。ついさっき桂馬くんに突っかかっていったことでもわかるけど、理香って勝ち気で負けず嫌いなんだと思うんだ」
言われてみれば、確かにそうかも知れません。
「そんな子なら、今までだって壁にぶつかっても、それをどうにか乗り越えようと努力してきたと思うんだ。それこそ、努力で補えないところは他の方法を模索してでもね」
理香さん自身も、先程仰ってましたね。
「でも、多分駆け魂の影響で、その努力が出来なくなっていた。あるいは空回りしていた。そこでいつもとは違って挫けてしまった。
だから桂馬くんは、同じレベルで、かつミッションクリアをした私達との会話の中で、本来の自分の在り方を思い出させようとした。そんなとこかなって思ったんだけど、どう?」
そう言って、にーさまを見る立香さん。
「……ああ、そのとおりだ。理香が負けず嫌いなのは、陸上部での成績がよい上に、勉学も中の上とロマンから聞いて予想が出来た。歩美なんかは好きなことには全力だが、苦手を克服する気はない性格だから、同じ負けず嫌いでもある意味対照的だな」
歩美さん、なんかディスられてるよーな。
「そしてこの手の『がんばる』女子は、猪突猛進タイプではなく試行錯誤タイプが多い」
「お馴染みのゲーム理論だね?」
「ああ。ちなみに歩美は猪突猛進タイプだな。
それはともかく、『考える事』が苦でないなら、本来なら他のやり方を模索していたはずだ。それが駆け魂の影響で出来ていないなら思い出させればいい。それに打ってつけなのが、能天気でがんばることが取り柄のえりなんだ。が、如何せんポンコツだから、それを補える存在が必要だった」
ポンコツはヒドいです~。いえ、自分自身、否定は出来ませんけど。
それはともかく、この先はさすがに私でもわかります。
「それが立香さんだったってワケですね? 確かに、お話をする流れも、引き籠もった理由も、どちらも立香さんから話を持っていってました」
「そういう事だ」
私のサポートまで考えてるなんて、さすがにーさまです!
「……何だか、桂馬くんの凄さがようやく実感できたよ。なんか、神がかり的っていうか…」
「当たり前だ。ボクはゲーム世界の神だからな」
普通なら呆れたり馬鹿にする所なんでしょうけど、毎回感心させられる私からすれば、やっぱりとしか言えない。
「ふむ、なるほど。桂木君が大口を叩けるだけの実力が、ようやく垣間見られたと言ったところか」
「あ、ダ・ヴィンチ。いたのか」
「……傍聴に徹していただけで、随分な言い様だね」
まあ、にーさまはボージャクブジンですからね。
「……あの、それではあまり発言していない私も、いないことになっていたのでしょうか?」
「マシュは立香の相棒ポジだ。隣り合ってることが多い分、印象には残る。モブとしてだが」
「モブ…」
ああ、マシュさんが少し落ち込んでます。
「さて、そんな事より」
「いや、にーさま。さすがにヒドいですよ?」
「そうだ、マシュに謝れ!」
「……よくわからんが、すまなかった」
心、込もってませんねー。
「で、話の続きだが、ダ・ヴィンチ。理香の精密検査には時間がかかるんだろう?」
「ああ、そうだろうね」
「なら、今日の所はこれで解散でもいいか? さっきロマンが何を言おうとしてたのかは、えりでもわかってるだろう」
私でもって…。
「なら、えりと立香が考える時間に振ってやってもいいと思うんだが?」
「ふむ。我々としては有無を言わさず手伝ってもらいたいのだけど、確かに考える時間は必要かも知れないね」
ダ・ヴィンチさん、本音が洩れてますよ?
「わかった。各自マイルームで待機していたまえ。ロマニには私から伝えておこう」
「……ありがとう」
にーさまが自分のこと以外でお礼を言った!?
「……お前達が非常に驚いてる理由が気になるが」
あ。立香さんも驚いた顔してました。理由は多分、一緒ですね。
「ともかく、今日の所は体を休めておけ。考える時間とは言ったが、気持ちは既に固まってるんだろ? なら、体調管理も大事な仕事だからな」
しょっちゅう夜更かししてるにーさまには、言われたくないなぁ。
「……桂馬くん、他人の気持ちは理解できないんじゃなかったっけ?」
「えりはカルデアに来る前に確認済みだし、立香はゲーム序盤のプレイヤーキャラっぽいからな。ふざけない限り、『いいえ』の選択は選ばないだろ」
「私、攻略側!?」
あー、なんかわかる気がします。特に、マシュさんに対しては。
「まったく、キミ達は見ていて飽きないよ」
ダ・ヴィンチさんが半ば、呆れてますね。こちらもわかる気がしますが。
「あー、えーと、ところで…」
「ん? どうした、立香?」
何か言いあぐねている立香さんに、にーさまが尋ねますが、それでもしばらく言いあぐねて、ようやく口にした言葉は。
「所長が居ない状態で話を決めちゃったけど、いいのかなぁ?」
『あ』
勾留ビンに入れられたまま放置されているオルガマリーさんのことを思い出した私達は、間の抜けたひと言を発したのでした。
今回はかなり長くなりました。次話は理香sideなので、攻略に対する説明が出来なくなる為、この様になってしまいました。
まあ、序盤や合間合間にあるネタを省けば、もう少しは短くなりますが、真面目な話だけだとつまらないですからね。
補足。
マッピー……松宮宏子。木梢町出身の女の子。メガネっ娘。理香の幼馴染みで中学時代のクラスメイト。現在は舞島市にある舞島学園に通っている。桂馬やえりのクラスメイト。
因みに愛称は、松宮なのでマッピー…ではなく、宏子を解体すると「ワ」「ナ」「ム」「子」となり、「ナムコ(バンダイと経営統合する前の社名)」の文字があるので同社のレトロゲーム「マッピー」となった(らしい。原作者談)。
怒野……桂馬やえりのクラスメイト。若木先生自ら公言するモブキャラ。でも読者受けのいい可愛い子。仮称・怒野モブ子(若木先生談)。
麻美……吉野麻美。桂馬やえりのクラスメイト。原作においてはモブキャラの一人だが、初出は小説版の攻略ヒロイン(原作時空では攻略の事実は無し)。茶道部に入っている関係で、マッピーに無理矢理駆り出された模様。