特異点F ~元・ポンコツ悪魔の人理修復~   作:猿野ただすみ

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たかが情報にムダな演出が多すぎるんだ、お前ら。


女神ですが、なにか?

~えり~

私達は、発見した学校の中に入ることにしました。校舎の中は、私が通う舞島学園よりもわかりやすい構造です。

 

「造りはしっかりしてるようね。遮蔽物もあってそれなりに身を隠すことも出来るし、屋上に出れば監視もしやすい。身を隠すにはまあまあってとこかしら。一旦侵入されると制圧されやすいのが欠点だけど」

 

ふわぁ、オルガマリーさん、凄いです。私にはそんな分析、とてもムリですよ~。

 

「そこはキャスターに任せましょう。先程私に、『結界を張ってくる。念には念をってやつだ』と言付けをして行きましたから」

「ちょっと、何を考えてるの!? そういう事はまず、指揮官である私に言うものでしょう?」

「いえ、私に言われても…」

「貴女もよ、アーチャー! 言付けを承けたのなら、早急に報告するべきでしょう!」

 

オルガマリーさん、また怒ってます。あんなに怒って、疲れないんでしょーか?

 

「……すみませんでした」

 

ディアナさんは、不承不承といった感じで謝りました。

 

「おいおい、何ケツの穴の小せぇ事言ってんだ。リーダーならドッシリと構えてりゃいいんだ」

「な…、ケ、なっ!?」

 

突然姿を現したキャスターさんのセリフを聞いて、オルガマリーさんは顔を真っ赤にしてます。でも、これは怒りと言うより。

 

「キャスター! 女性に対して、その言葉選びは何ですか!!」

「うん、アーチャーが正しい!」

「私も先輩と同意見です」

「キャスターさん。もう少しデリカシーを持った方がいいですよー?」

 

私達のバッシングを受けて、少しヘコんだ顔をするキャスターさん。

 

「俺が悪いのかよ…」

 

はい!

 

「ハァ、もういいわ。それより随分と早かったわね?」

「ああ…、結界っても、侵入者の感知くらいなもんだからな。だが、霊体化した相手でも感知できる優れものだぜ」

 

キャスターさん、凄い自信です。出来る男、って感じです。

 

「そう。それなら、貴女達の話をじっくりと伺うことも出来るわね?」

 

そう言って私達を見るオルガマリーさんは、悪魔のような笑顔を湛えていました。

 

 

 

 

 

「さて、話してもらおうか。えりとアーチャーの秘密とやらを」

 

教室の椅子に腰かけた立香さんは、不敵な笑みを浮かべながら言った。立香さん、にーさまみたいです。

 

「何で藤丸が仕切ってるのよ!」

「えっと、ノリ?」

『ハハハ、立香君はノリがいいね』

「ロマニ、貴方まで!」

 

何だか姦しいですねー。ロマンさん、男の人ですけど。

 

「所長、落ち着いてください。それよりもお二人に話を聞きましょう」

「ッ! そうね。こんな些細なことで目くじらを立ててる場合じゃなかったわね。

だけどマシュ。話を聞くのは、この二人にだけではないわ」

「え、所長。それはどういう…」

『もちろん、ボクも関係者だからな』

 

画像越しににーさまが言うと、マシュさんが、あっという表情になった。

 

「桂木は、随分と潔いのね」

『ある程度の情報開示をしなければ、信用は得られないだろ? ゲームでも、ここで選ぶべき選択肢は、秘密を明かす一択だ』

 

さすがはにーさま。こんな時でもゲーム準拠ですか。

 

「貴方、何をふざけて…!」

「いえ、にーさまはリアルと関わるときは、大体ああですから」

「……本当に?」

「はい」

 

まあ、慣れてないと、ただの気味の悪い人ですからねー、にーさまは。それでも今は、ゲームをしていない分、かなり真剣なんだと思います。

 

「わかりました。桂木の事は、深く考えない方がいいようね。

では早速、説明してほしいのだけど」

「それでは、私から始めましょう」

 

そう言ってディアナさんは、軽く咳払いをしてから説明を始めました。

 

「私は天界の住人で、真名をディアナと言います」

 

しばしの沈黙。そして。

 

「「『えええええ!?』」」

 

オルガマリーさん、ロマンさん、マシュさんがとても驚いてます。

 

「えっと…、みんな、なんで驚いてるの?」

「先輩、わからないんですか?」

「天界の住人でディアナと言えば、ローマ神話の大神ユーピテルの娘、ディアーナでしょう!」

『立香君には、ギリシャ神話のアルテミスと同一視されている女神、と言った方がわかりやすいかな?』

 

なる程、そーだったんですかー。……って、私まで感心してどうするんですか。

それで、立香さんはと言うと。

 

「……ええっ!? それじゃアーチャーって女神様なの!?」

 

どうやら今まで、理解が追いついてなかったみたいです。何だか親近感が持てますねー。

 

「確かに私は、人間が言うところの神です。しかし同時に、ローマ神話の女神ディアナそのものではありません」

「え? どういうこと?」

『立香君。我々が召喚するサーヴァントは、様々な偉業を為した英雄の霊、英霊だ。それよりもランクの低い幻霊では、現世に留めるための力がないし、ランクの高い神霊では、召喚そのものが出来ないんだ。……普通ならね』

 

あ~、サーヴァントの召喚について習ってたときに、そんな事言ってたような気がします。

 

『だけど、神格を大きく削り、人間の体に降ろせば、理屈の上では召喚も可能になってくる。

女神ディアナ。貴女は人間の少女、鮎川天理の体に宿る形で顕界した、デミ・サーヴァントではないのですか?』

 

ロマンさんの推測にディアナさんは、軽く微笑んでから言った。

 

「そうですね。ある種のデミ・サーヴァントというのは間違ってはいませんね。

けれど、私と天理の関係は、デミ・サーヴァントのそれとは違います」

 

オルガマリーさんは少し考え込んで、ディアナさんに尋ねます。

 

「……どういうことなのか、説明してくれるかしら?」

「はい。少し古い時代からになりますが…」

 

そう前置きして、ディアナさんは語り始めました。

 

 

 

 

~ディアナ~

---今から300年以上前の事です。冥界では、天界と人間界の三界を制覇しようとする古悪魔(ヴァイス)と、それを阻止しようとする新悪魔の争い、アルマゲマキナが勃発しました。

熾烈を極めた争いは古悪魔が優勢に進んでいきますが、新悪魔達は切り札として、天界に助けを求めてきました。

それに応え志願したのが、私達[ユピテルの姉妹]です。

 

 

 

「ユピテルの姉妹、ですか?」

 

シールダーの少女、マシュさんが尋ねてきました。とはいえ、これは予想の範囲内ですが。

 

「[ユピテルの姉妹]とは、(いにしえ)の天界の王の子供達の血と名を受け継いだ、天界の巫女達です。私はディアナの名を受け継ぎました」

「なる程な。それで『ディアナ』そのものじゃねぇ、ってわけか」

 

キャスターは感心した様に言ってますが、どこか確信めいているようにも感じます。

 

「……あれ? でもさっき、ランサー相手に『出典を異にする妹』とか言ってなかったっけ?」

 

藤丸立香さん、でしたか。あの状況でも、聞くべき事は聞いているようですね。ですが。

 

「それは後ほど。今は話を続けさせてもらいますね」

 

そう断りを入れ、私は続きを語り始めた。

 

 

 

---私達[ユピテルの姉妹]は新悪魔達に力を貸し、古悪魔達と戦いました。そしてアルマゲマキナ最終決戦の地、グレダ東砦にて、私達姉妹が人柱となって古悪魔達を封印したのです。

こうして冥界には平穏が訪れるはずでした。しかしそれは、上辺だけのモノだったようです。

それから300年後の現在、……この時間軸から1年後の7月に冥界の…、現在は新地獄と呼ばれているそこで活動する違法組織、[正統悪魔社(ヴィンテージ)]によって封印の一部が破られ、地上、人間界に古悪魔達の魂が逃げ出し、同時に私達姉妹も解放されたのです。

その時、新地獄と人間界を結ぶ道に迷い込んでいたのが、当時7歳の天理と桂木桂馬さんでした。

 

 

 

「ええっ!? 桂馬くん!?」

 

藤丸さんは桂木さんの名を聞き、とても驚いているようですね。オルガマリーさんとロマニさんも声には出さないものの、その表情を見れば同様に驚いているのがわかります。

 

『ああ。もっとも、その時ボクは気を失ってたから、ディアナの事を知るのは、ずっと後だけどな。

因みに余談だが、天理の誕生日は1月3日だから、この時はまだ6歳だ』

「細けぇよ!」

 

全く、キャスターの言うとおりですよ。今更ですが。

 

「……話、続けますよ」

 

 

 

----古悪魔達に囲まれていた二人を助けるため、私は天理の体に入り込みました。とはいっても同化したわけではなく、天理を宿主として間借りしている状態ですが。

私は桂木さんを抱え逃走し、無事地上へ逃れることが出来ました。

その後、ヴァイスの大脱走の際に起きた地震によって、天理の家と桂木さんの家が倒壊していたため、天理と桂木さんは別々の地への引っ越しを余儀なくされます。

二人が再会したのは、十年後の事でした。

 

 

 

「……これが、私と天理の出会いの顛末です。後は…、桂木…桂馬さんの話の後にしましょう」

「……何故、桂木なの?」

 

オルガマリーさんがおかしな事を聞いてくる。

 

「それは、これから先の話は、私達は途中から関わったことなので…」

「そうじゃなくて! 何故、我々の疑念の渦中にある、桂木えりの話ではないのかと聞いているの!」

 

ああ。そういう事ですか。けれど、もしえりさんに話を振ったら、余計なことまで口にしそうなんですが。

 

『それは、これから話す出来事に巻き込まれた中心人物が、ボクだからだ』

「え?」

 

なる程。確かに間違ってはいませんね。巻き込まれた中心人物は桂木さん。まあ、実は天理も一枚噛んでいたみたいですが。

 

『それに、えりに長い話をさせてみろ。話がとっちらかって、中々先に進まなくなるぞ?』

「うえぇ!? にーさま、ヒドいです~!」

 

こちらも、まあ、間違ってはいませんね。

 

『と言うわけでボクから話をさせてもらう。

……だがその前に、ディアナ。今もお前と天理は一緒なのか?』

 

そういえば、その説明はしてませんでした。

 

「はい。今は私が表に出てますが、天理と代わることも出来ますよ。……代わりますか?」

『そうだな。紹介も兼ねて代わってもらえるか?』

「わかりました」

 

私は頷いてから、天理と体の主導権を切り換えた。

 

 

 

 

~桂馬~

天理の体が輝いたかと思うと、背中の翼が一瞬にして消えた。

 

『あ、あの、初めまして。鮎川天理です』

 

モニター越しの天理が、みんなに挨拶をしている。

 

『え、えーと、その…』

 

ごそごそ

 

プチッ、プチッ…

 

『(気泡緩衝材を潰し始めた!?)』

『(天理さん、相変わらずですねー)』

『(ってゆーか、英霊になってもプチプチ持ち歩けるの?)』

『(自分を構成する大事な要素なら、有り得なくもねぇが…)』

『(それは、大変奥が深い話です)』

 

なんかコソコソ話してるけど、バッチリ聞こえてるぞ? あと天理。プチプチがお前を構成する一部って言われてるけど、いいのか?

 

「あー、天理。もういいからディアナに代われ」

『ふぇ!? あ、うん。

…………あの、桂馬くん』

「ん? なんだ?」

『頑張ってね』

「頑張るのはえり達なんだが。だが、まあ、ありがとう」

 

ボクがお礼を言うと、天理ははにかむように笑った。……天理は、辛くはないのか? だってボクは…。

 

『桂木さん?』

 

いつの間にか天理と入れ代わったディアナが、ボクに声をかける。

 

「……いや、何でもない。

さて、いつまでも待たせるわけにいかないな。それじゃあ話すぞ。ボクが巻き込まれた出来事を」

 

そう言ってボクは、あの出来事を、駆け魂狩りと女神探し、そして全ての始まりのことを語り始めた。




始まった【神のみ】説明回。次回はダイジェストで【神のみ】本編です。
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