特異点F ~元・ポンコツ悪魔の人理修復~   作:猿野ただすみ

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現実(リアル)女をだましてやったんだよ。
バーカ!!


藤丸立香の憂鬱

~ディアナ~

---桂木さんが過去へと旅立ったあと、こちらでも事態は動いていました。

サテュロス。その存在を知ったのは全てが解決した後ですが、古き悪魔の名を冠したその組織は、新地獄の暗部そのものであり、ヴィンテージですらその末端でしかないそうです。

この者達の目的は、私達女神を捕らえ、アルマゲマキナに使用された兵器を復活、再び戦争を始めることでした。

私達は、時が来るのを待ちながら宿主の内に潜んでいましたが、原因はわかりませんが、敵に私達の事が知られてしまいました。

私達は協力者の方によって助けられ、桂木さんを呼び戻すための装置、[渡航機]へと向かいましたが、そこで異変が起きます。世界から何も無くなってしまったのです。

 

 

 

「何も無くなった、ですか?」

 

マシュさんの問いに、私は首を縦に振る。

 

「本当に何も無い、真っ白な世界でした」

「なんだか[精神と時の部屋]みたい」

 

精神と時の部屋? 藤丸さんは、何の話をしているのでしょう?

 

「ええと、[精神と時の部屋]というのはわかりませんが…。ともかくそこに存在したのは、私を含めた[ユピテルの姉妹]の宿主と、十年前の桂木さんの魂が入った現在の桂木さんの体。そして壊れた[渡航機]だけでした」

「それは[渡航機]が壊れ、[過去]と[現在]が繋がらなくなったために[現在]が消失したという事?」

「おそらくは」

 

オルガマリーさんの質問に、やはり首を縦に振りながら肯定をした。

 

『ま、待ってくれ』

 

ロマニさんが困惑した表情で待ったをかける。

 

『確かにしばらく前に、日本で高魔力反応が現れて高レベルの時空振動が現れたのを確認したけど、次の瞬間には全くの正常値に戻っていたことがあった。……いや、データを遡っても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あくまで僕達の記憶にのみ残っている現象だったんだ。だから、その話が真実なのは間違いないだろう。

だけどそれならば何故、[現在]が消失したのに君達は存在していたんだ?』

 

それはもっともな意見です。実際あの時は、私達も疑問に思っていたことですから。

 

「それはエルシィさんが、私達の存在を維持してくれたからです」

「ま、待ちなさい! いくら悪魔だからといって、消失した世界に存在を維持させるだなんて、魔法レベルの奇跡よ!?」

『そのエルシィという悪魔の少女は、とても優秀だったのかい?』

 

その質問に答えようとすると、通信の向こうから桂木さんが答えた。

 

『いや。エルシィはポンコツ悪魔だぞ。ドジでのろまで、すぐに地獄の常識で物事を進めようとする、厄介事を撒き散らすバグ持ち悪魔、略してバグ魔だ』

「に、に~さま~…」

 

えりさんが不満の隠った声で桂木さんを呼んでいますが、ここは敢えて無視をしましょう。

 

「エルシィさんのことは後で触れましょう。話を続けさせてもらいますね」

 

 

 

---消失世界で私の姉、ウルカヌスによって、[渡航機]の核であるオーブを修復し、過去の桂木さんと連絡をとり合いました。桂木さんは残っていた作業を進め、私達はそれを待っている。

その間にもちょっとした騒動はありましたが、それは些細なことですね。

桂木さんは作業を終え、私達は桂木さんの魂を呼び戻します。そして繋がった歴史(セカイ)は存在を取り戻しました。

私達は満を持して戦いの狼煙を上げ、地獄の反乱分子を制圧します。あ、命は奪っていませんよ? 宿主の精神衛生上宜しくありませんし、無駄な殺生は好みませんから。

こうして騒動は収まったのですが、桂木さんが目を覚まさなかったのです。

この時桂木さんは、精神世界にいました。その相手はエルシィさんです。

駆け魂を回収し、女神(わたしたち)を復活させ、現在(いま)過去(むかし)を繋ぎ、全てが終わった桂木さんにエルシィさんが伝えたのは、エルシィさんの正体がラスボスだったという事でした。

 

 

 

「『……は?』」

「え、ちょっと待って? そのエルシィって子がラスボスって、その子が黒幕だったって事?」

「あの、理解が追いつかないのですが」

 

ああ、桂木さんから説明を受けたとき、私と天理もこの様な感じでしたね。

 

「この場合は、桂木さん的な言い回しで言うラスボスですね。つまりゲームで最後に戦うボス、という意味です。

……エルシィさんは、サテュロスが復活させようとしていた兵器から、ドクロウ・スカールが悪魔に転生させた存在だったのです」

 

皆さん唖然としています。まあ、気持ちはわかりますが。

 

「先程の、エルシィさんが私達を維持できたのも、その兵器が持つ莫大な魔力を利用しての事ですね。ハッキリ言って、アルマゲマキナの時にそれを倒すのではなく封印をしたのは、まともに戦うにはあまりにも危険な存在だったからです」

「そ、それで、エルシィはどうなったの?」

「この世界を気に入ってくれたエルシィさんは、桂木さんとの契約を解除して、兵器とはならずエルシィさんとして消えました。一部の関係者以外、悪魔達でさえエルシィさんを憶えている者はいません」

 

消えたと聞いて、みんなが神妙な面持ちで黙り込む。

 

「これが私達に起こったことです。

因みにえりさんが身に着けているのは、エルシィさんが残した地獄の道具です。えりさんが上手く扱えるのは、えりさんの魔力の質がエルシィさんと極めてよく似ているからですね」

「悪魔とよく似た魔力って…」

 

オルガマリーさんがどう突っ込むべきか、わからずにいます。私だってわかりません。

 

「さて、話は最初に戻ります。私が神話にあるディアナそのものではない理由ですが、私がディアナの名を継いだ巫女である事も然る事ながら、私自身がディアナの霊基の一部を取り込んで顕界している為なのです」

『なっ、霊基の融合だって!?』

『人格はどうなってるんだ?』

 

人格…、考えてもみませんでしたが。

 

「そうですね…。普段は巫女である私だと認識してますが、戦闘の時には神話の方のディアナが三割ほど出てきます。

記憶に関しては、私の記憶にディアナの記憶が加わって、更にギリシャ神話とローマ神話を同一視する影響で、アルテミスの逸話が混ざっている…というか汚染されている感じですね」

「だから『出典が違う』だったのかぁ」

 

藤丸さんが、ようやく納得出来たとばかりに頷いた。

 

「あのー、ディアナさん。天理さんはどうなんですか?」

「天理は影響を受けていません。そもそも霊基を取り込んでいるのは私であって、天理ではありませんから」

 

えりさんの疑問に答えてから、私は更に説明をする。

 

「私は神とは言っても、力の殆どを使い果たし、天理の体に住まわせてもらっている状態です。ある程度力も戻り、頭上の輪と翼を取り戻しましたが、全盛期には程遠いと言わざるをえません。

そして、サーヴァントとして呼び出されるほどの知名度や伝承もありません。ですが、私が受け継いだ名前が縁となって、神話にある女神の力の一部を取り込むことによって、ようやく顕界する事が出来たというわけです」

 

そう、私はサーヴァントとしては、出来損ないです。事実、受け取った宝具以外は、彼の女神の技能を私の技能レベルに落とし込んでいるに過ぎず、後は自分自身の技能で騙し騙し闘っているに過ぎません。

ですが、それが闘わない理由にはなりません。むしろ、人類史の危機に闘うための力を得たことは、嬉しく思います。……天理には申し訳ありませんが。

 

「……わかりました。若干納得のいかないところもありますが、貴方達の話を信じましょう。

他に確認したいことがある者はいる?」

 

オルガマリーさんが確認をとると。

 

『ああ、それじゃあ僕から』

 

ロマニさんが名乗りを上げ、ひとつ咳払いをし。

 

『貴女達女神の宿主として、鮎川天理、中川かのんの名前が挙がっていたけど、後の四人はひょっとして、高原歩美、九条月夜、汐宮栞、五位堂(ごいどう)結で合っているかい?』

 

な、ロマニさんはどうしてそれを!?

 

『なるほど。ボクの家で言っていた、魔力の高い六人の中に、天理とかのんが入っていたんだろ。そして残りの四人が、歩美、月夜、栞、結だったって訳だ』

 

ああ、そういう事でしたか。確かに同じ六人で、その内の二人が女神の宿主なのですから、容易に想像が出来ますね。

 

『その通りだよ、桂木君。それで、実際どうなんだい?』

『答えるその前に、なんでそんなことを聞く? かのんは、後でバレて追求されるよりもマシと思って名前を出したが、他の四人は一般人だし、プライバシーだってあるからな』

 

か、桂木さんが他人を思いやっている!? そんな…、何か凶事の前触れですか!?

 

(ディアナ。いくらなんでも、桂馬くんに失礼だよ?)

 

う…、確かに天理の言うとおりですね。ですが、以前の桂木さんでは考えられないのは事実です。

 

『確かに桂木君の言うとおりだ。ただ、以降もサーヴァントの召喚を続けていくことになったら、他の女神達も召喚される可能性もあるし、予め聞いておこうと思ってね。ほら、君達の説明って、なんだかフラグっぽかったじゃないか』

『ぐっ、確かに。説明で名前の上がった人物が後々登場するのは、ゲームの展開上よくある事だからな』

 

またゲームですか。まあ、ゲームに留まらず、物語では確かに有りがちですが。

 

『仕方がないか。ああ、確かにその四人が女神の宿主だ。上から順に、ウルカヌスが月夜、アポロがかのん、ディアナが天理、ミネルヴァが栞、マルスが結、そしてメルクリウスが歩美、以上だ』

『わかった。ありがとう、桂木君』

「それでは、私もいいでしょうか」

 

次に名乗りを上げたのはマシュさん。勿論と、私は軽く頷いた。

 

「あの、それではえりさん。姿を消したり、ディアナさんそっくりの動く人形を作ったりと、その羽衣はどういったものなんでしょう?」

「あわわっ!? は、羽衣ですか? えっとこれは、なんでも出来る凄い羽衣なんですっ!」

 

えりさん…。

 

『落ち着け、えり。お前いま、物凄く頭の悪いこと言ってるぞ?』

「あうぅっ。お、落ち着け、私…。

ええと、これは正式には[新魔布]と言って、電魔ナノマシンのゲルを帯状にした物らしいです」

「意外と科学的!?」

 

予想外の[ナノマシン]という単語に、驚きの表情を浮かべるオルガマリーさん。斯く言う私も、天理と十年間一緒にいなければ、科学的な単語についていけなかったと思いますが。

 

「なんでも魔力のロスが無いので、僅かな魔力でも扱えるそうです。組み込まれてる魔法…、あ、魔術でしたっけ? とにかく、その中でも簡単なものなら、普通の人間にも使えるみたいですよ?」

『ああ。実際ボクも、その羽衣で透明化したことがあるからな』

 

成る程。ヴァイスよりも能力の低い新悪魔が、それを補うために魔法科学を高めていった様ですね。

 

「えっと、こんな回答でいいでしょーか?」

「あ、はい。ありがとうございます、えりさん」

 

どうやらマシュさんには納得してもらえた様ですね。

 

「ねえ。キャスターには何か聞きたいことある?」

「いいや。そもそも、それ程興味があるわけでもねえしな」

 

藤丸さんの問いに、本当に興味なさそうに答えるキャスター。藤丸さんは軽く頷いて、画像越しの桂木さんに視線を向け。

 

「それじゃあ最後に、凄く個人的なことだけど」

 

そう前置きをして藤丸さんは尋ねた。

 

 

 

 

 

~立香~

私はディアナや桂馬くんの話を聞きながら、モヤモヤしたものを感じてた。でもこれは、今の私達には関係ない話。そう思って黙ってたけど、話が終わって、質問する人も他にいないんだから、聞いちゃってもいいよね?

 

「桂馬くんって彼女いたよね? ちひろって言う」

「ええっ!?」

 

あ、所長もやっぱり驚いた。うん。これが普通の反応だよね。むしろ普通に、「そうなんですか?」って表情で桂馬くんを見るマシュの純粋さの、何たることや。くうぅ、なんだか無性に庇護欲をかきたてられるんだけどっ! 守ってあげたい、キミの笑顔っ!

……いけない、(思考)が逸れた。

 

「桂馬くんは彼女がいるのに、()()()()()してたの? いくら、悪魔と契約してたからって。だったら、ちひろって子があまりにも可哀想…」

「それは、違うよ」

 

気がつくと、ディアナの翼が消えてた。つまりこの子は。

 

「えっと、天理?」

「小阪さんは、桂馬くんに選ばれたんだよ」

 

選ばれた?

 

「ヴィンテージにみんなが襲われたとき助かったのは、私と高原さんと、あと一人。その人が小阪さんだよ」

 

……え?

 

「小阪さんも駆け魂が入っていた子で、女神の宿主候補の一人だったんだ。実際は違ったけど」

 

そう言えばさっき、五人の中から四人を探すって…。私は桂馬くんを見る。

 

『ちひろは、駆け魂の攻略の時も女神捜しの時も、攻略に失敗した女子だ。

駆け魂の時は、ちひろの心のスキマを読み違えた。女神捜しの時には、ちひろに攻略の記憶があって恋愛が続いてると思ってたが、なんて事はない。最初の攻略以前から、ボクのことが好きだったんだ』

 

桂馬くん、表情は変わってないのに、なんだか辛そうに見える…。

 

『最後の女神の宿主再攻略のためとはいえ、そんなちひろをボクは、ヒドい言葉で振ったんだ』

「もういい! もういいよ、桂馬くん!

……ごめん、桂馬くん。桂馬くんは充分に辛い思いをしてるのに、私の浅はかな考えで桂馬くんのこと…」

『別に構わないさ。それにもしかしたら、誰かにちゃんと聞いてほしかったのかも知れない。ちひろ本人に、こんなこと言えやしないからな』

 

そうだ。彼女は攻略の記憶が無いんだ。

 

「あー、ンンッ!」

 

私が項垂れてると、所長がわざとらしい咳払いをして。

 

「もう、これといった質問も無いみたいね。それではアーチャー・ディアナ、桂木桂馬及びえり兄妹(きょうだい)に対しての聴き取りを終了します」

 

そう言って、所長は強引に話を()()()()()()()()

 

 

 

 

 

それからしばらく経って。私は廊下の窓から外を眺めながら、ため息をひとつ吐く。

 

「先輩」

 

そんな私に、マシュが声をかけた。

 

「先程のこと、気にかけているのですか?」

「まあ、ね。桂馬くんはいいって言ってくれたけど、やっぱり気にしちゃうよ」

 

最後に笑顔を作って見せたけど、上手く笑えた自信はない。

 

「……桂木さんは、どんな想いで駆け魂というものを追い出していたんでしょうか」

「うん?」

「命がかかっていたから、やはり恐怖なのでしょうか? それとも、理不尽故の憤り?」

 

マシュの疑問に思考を巡らせて。

 

「私にはわかんないや。知り合ったばかりだし、気持ちを汲むことも出来ないよ。

……でも、もっとわかんないのは、えりだね」

「えっ? えりさんですか?」

 

少しだけ驚いた表情で、私を見るマシュ。

 

「えりにはね、きっと大きな秘密があるんだよ」

「そうなんですか?」

「うん。だってさっきの話の中で、悪魔の道具に関わるとき以外、えりの名前は一切挙がってないんだよ? あんな道具を受け取ってるくらいなんだから、駆け魂の攻略の時にも関わってたはずなのに。

……何より、えりにはちゃんと記憶があるみたいだしね」

「あ…、言われてみれば」

 

ハッとした表情のマシュ。

 

「多分、所長とDr.ロマンも気づいてるんじゃないかな。今思うと、最初に桂馬くんが言った『()()()()()情報の開示』って、隠し事はあるよって意味もあったのかもね」

 

ホント、今更だけどね。

 

「お二人で何を話されているのですか?」

「あ、ディアナ…、って、真名で呼んじゃってもいいのかな?」

 

と、こちらも今更ながら、こっちへやって来たディアナに尋ねる。

 

「ええ、構いませんよ。聖杯戦争なら兎も角、現段階において真名を伏せる意味は薄いですから」

「あの、ですがキャスターさんは…」

「彼はこの聖杯戦争の生き残り。どこでセイバーやあちらのアーチャーの耳に入るか、わかりませんからね」

 

そっかぁ。聖杯戦争のサーヴァントとカルデアのサーヴァントじゃ、立場も変わってくるんだね。

 

「それで…」

「ああ、ゴメン。何を話してたか、だよね。

桂馬くんに悪いことしたね、って事と、えりにはどんな秘密があるんだろ、って事」

「先輩!?」

 

マシュが慌てるけど。

 

「大丈夫だよ。きっと二人は……ううん、天理も含めて三人は、こんなこと想定済みだと思うから。……えりはどうだか知んないけど」

「えりさんはむしろ、よく誤魔化せたと感心していると思いますよ」

 

苦笑いを浮かべながら、ディアナが答える。

 

「ディアナさん、随分とあっさり認めるんですね?」

「私も桂木さんも、もちろん天理も、誤魔化しきれるとは思っていませんから。

ですが勘違いしないでください。先程の話で隠していることはありますが、嘘偽りは一切有りませんから」

 

真剣な表情で言うディアナに、今度は上手に出来た、……と思う笑顔を浮かべて私は言った。

 

「二人が嘘ついてるなんて思ってないよ。信用を得るため、とか言って嘘ついたら、信用どころの話じゃなくなっちゃうし、桂馬くんはともかくディアナは、嘘をつくには真面目な性格してそうだから」

「う…、確かに姉妹達からは、生真面目で重い女と言われましたが…」

 

オウッ、私、英霊…じゃなくて神霊の心にクリティカル攻撃しちゃった!?

 

「えっと、なんかゴメン」

「……いえ、気にしないでください。

それよりも、えりさんの事です。藤丸さんはえりさんの秘密を知りたいのですか?」

「……うん、知りたいよ? でも、無理矢理聞き出そうとは思わないかな。必要に迫られれば仕方がないけど、誰にだって隠しておきたいことはあるからね」

 

私も話したくない黒歴史はあるし、きっとマシュや所長、Dr.ロマンにだって、何か秘密はあるだろう。

 

「ありがとうございます、藤丸さん」

 

そう、お礼を言ってくれたんだけど。んー…。

 

「……藤丸さん?」

「えっと、私のことは『立香』って呼んでほしいな。ほら、藤丸だと男の子っぽいじゃない?」

 

所長には不発だったお願いをディアナにしてみた。すると一瞬目を丸くして、すぐにクスリと笑う。

 

「そうですね、わかりました。それでは『立香さん』と呼ばせてもらいます。

……天理も了解したそうです」

 

そう言えば天理も、苗字にさん付けで呼んでたね。

 

「さて、それでは失礼します。えりさんの事、本当にありがとうございます」

 

ディアナはお礼を重ねて去っていった。どうやら、えりの事を気にして接触してきたみたいだね。もしかしたらこの後、所長にもお伺いをたてるのかも知んない。

 

ふう…

 

私は一つ、息を吐く。

 

「いつまでも気にしてたって、しょうがないよね。まずは休んで、次の戦いに備えなくちゃ」

「! ……そう、ですね」

 

戦いって言葉に、過剰に反応するマシュ。でも、仕方がないよね。闘うのはマシュだし、そのマシュは、戦いは素人同然なんだから。

 

「大丈夫だよ、マシュ。キャスターやディアナもいるし、所長だってついてる。頼りないけど、私やえりもいる。カルデアでは、Dr.ロマンや桂馬くんも色々頑張ってくれてる。

マシュ一人で戦わせたりなんかしない。だから、きっとなんとかなるよ!」

「先輩…。はい!」

 

力強く返事をするマシュに、私は優しく微笑みを返した。




今回は結構長くなってしまいました。その訳は、次の話に持ち越したくない、と言うか、次の話のメインが伏せ字になってるあの子だからです。
次回、伏せ字の子の名前、解禁です。
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