ViVid Strike!ーアナザーストライクー 作:NOマル
町に到着し、少し散策するアキラとイリス。空は橙色に染まり、夜空に変わるのもあと少し。人通りも、段々と少なくなってきた。
「アキラ~、まだ~~?」
「もうちょっと先だ」
「えぇ~~……」
「ぐだぐだ言うなよ」
せっせと歩くアキラとは対照的に、イリスは見るからに疲れた様子を見せていた。
アキラは振り返り、重いため息をつくイリスの様子を見る。
その時、姿が見えた。
あれから何年も経ったが、その面影を忘れる事はない。濃い茶髪をポニーテールで纏め、やや鋭くなった目付きをした一人の少女。少ない人混みに紛れ、どこかへと歩いていく。
「……フーカ?」
その名を呟いた、アキラ。イリスは訳が分からず、首を傾げた。
「…………」
「どうかしたの?」
「悪いイリス、ちょっと寄り道する」
「えっ、アキラ!?」
気になってしまい、アキラは幼馴染の後を追いかける。イリスも慌ててついていった。
◇◆◇◆
――――弱いせいで何かを失うのは、もう嫌じゃ――――
夜に包まれた街中。建物の街灯のみが照らしている。
夜道を、一人の少女が歩いていた。歩みは止まらず、光ある町から、段々と遠ざかっていく。眼光は鋭く、表情は陰がかかっていた。
そして、少女の視線の先。
明るい町の外れにある広場。数台のバイクが待機しているそこは所謂、不良の溜まり場となっていた。ガラの悪い男達が
「っ!」
いきなり駆け出し、不良グループ達へと一直線に向かう。凄まじい早さで、一気に距離を詰めた。
漸く、リーダーを始めとしたグループは、少女の存在に気づく。リーダーは咄嗟に、持っていた飛び道具を構え、射出する。
だが少女は、それを持ち前の反射神経で回避。右手に、青色の淡い光が纏わせる。
「うぉあああああ!!」
雄叫びを上げ、リーダーの顔面に拳をぶつけた。廃車の窓ガラスも割れ、リーダーは一撃で倒れる。更に少女は、傍にいた不良の一人に、蹴りを入れる。
そして、廃車の上で立ち上がる。
「いい加減、こっちも迷惑しとるんじゃ!」
殴り込みに来た少女は、苛立ちを露にし、叫ぶ。
他の不良達も動き出した。一人が、バットを振りかぶり、勢いよく振り下ろした。だが、それは空を切る。廃車の表面が凹み、窓ガラスの破片が舞い散るだけに終わった。
少女は、すかさず一撃を入れ、次の攻撃に出る。ひたすら、殴る、蹴るの連続。背後からの奇襲も、何とか応戦する。
数十人の不良に囲まれながら、臨戦態勢を保っている少女。
「貴様らのせいで、せっかくありついた運送の仕事もクビ直前じゃ!」
「ざ、ざけんじゃねぇ!」
「元々は、てめぇが――――」
「殴りかかってきたのは貴様らじゃろうが!殴り返して何が悪い――――」
言い合いをしている少女。その背後に、鉄パイプを持った男が忍び寄る。少女はまだ気づいていない。
男は振りかぶり、振り下ろそうとする――――瞬間、一つの影が飛び出し、男めがけて飛び蹴りを食らわせる。顔面を蹴られ、男は吹き飛ばされた。
「ぶほぉっ!?」
「ぐあっ!」
「あがっ!」
近くにいた男達も巻き込み、地面の上を転がる。突如、現れた乱入者により、周りに動揺が生じた。
フーカも慌てて後ろを振り返る。ジャケットを羽織り、フードを深く被った少年が立っていた。よく見なかったが、バイクのライトに照らされ、その顔立ちを目にする。
「な、なんだこのガキッ!」
「そいつの仲間かっ!?」
その面影を、一度たりとも忘れる事はない。袂を分かってしまった“少女”と同様、幼馴染である少年が、そこにいた。
「アキラ、か……?」
「――――よう、フーカ」
名前を呟く少女――――フーカ。そんな彼女に声をかけるアキラ。
何年ぶりかの再会を果たした二人。驚く最中、アキラの背後に、不良の男が迫り来る。
「おらぁっ!」
「アキラっ!」
しかし、アキラは背後からの突進を、屈んで回避し、足を引っかける。そのまま男は前へ転び、アキラは蹴りを入れた。
アキラは止まらず、近くにいた不良に肘鉄をお見舞いする。
「このクソガキッ!」
特に大柄な男が、アキラに襲い掛かる。太い腕を振るうも、難なく回避していくアキラ。そして一瞬の隙をつき、腹に一撃、拳を入れる。
「ぐおっ!?」
それだけでは終わらない。
二撃、三、四、五、六と、連続で殴打。殴ると共に鈍い音と、呻き声が鳴る。次は顎をフックで殴り、相手はよろける。その場で屈み、宙返りしながら蹴り上げた。
巨体が僅かに浮き、ドスン!と地面に落ちる。
「う、嘘だろ……」
「あり得ねぇ……!」
信じられない、と言わんばかりに茫然とする不良達。幼馴染であるフーカも、驚きを隠せずにいた。
獰猛な獣を思わせる眼光で、睨みを利かせるアキラ。それに
跳躍し、前方にいた不良に、膝蹴りをお見舞いする。次に、隣にいた不良を殴り倒した。
「こ、このっ!」
掴みかかる男の手をかわし、逆に腕を両手で抱えるアキラ。
ゴギッ!と、骨が折れた。
「があああっ!!」
「や、やめろ――――」
腕を折った後、次の男を捕まえ、うつ伏せに倒れさせる。片足を掴み上げ、思い切り上へと持ち上げた。
「ああああああ!足がぁっ!!」
無理矢理脱臼し、悶え苦しむ。
殴りかかる者もいるが、アキラは腕を掴んで背負い投げ。地面に倒した直後、顔面に拳をぶつける。こちらは、鼻を折られた様だ。
カウンターを交えながらの戦闘。何らかの格闘術を身に付けているのが分かる。只者ではない、と悟ったのか、不良達の勢いも薄れていく。中には、骨折や脱臼の痛みに苦しんでいる仲間を見て、青ざめている者もいた。戦いに入れば、只ではすまない。
突然、サイレンが鳴り始める。見回りの警備隊が駆けつけた。
「来たか――――行くぞ、フーカ」
「ちょっ!?」
茫然としている幼馴染の手を引き、アキラはその場から逃走する。動揺している不良達の間を走り抜け、イリスと合流する。
「アキラ!お巡りさん、呼んどいたよ!」
「よくやった!逃げるぞ!」
予め、イリスに頼んでおいたのだ。時間稼ぎを成し遂げ、その場を後にする。
◇◆◇◆
三人は、暗い森の中を進んでいき、ゆっくりと立ち止まる。
フーカの手を取り、遠くまで逃げ切ったアキラ。イリスも疲れきったのか、息を荒くしている。
「はぁ……はぁ……もう、歩けない……」
「ここまで来れば、もう大丈夫だろ……」
「……アキラ」
ふと、名前を呼ばれた。
振り返るアキラ。息を整えたのか、フーカは無言で、こちらを見据えている。
数年ぶりに再会した幼なじみ。だというのに、その間に会話はない。未だに沈黙したままだ。
二人の様子を見て、イリスはまたも訳が分からずに首を傾げていた。
「えっと……久し振り、だな――――」
「この……」
「ん?」
「馬鹿野郎ぉおおおおおお!!」
渾身の右ストレートが、アキラの左頬を貫いた。
「ぶほぉっ!?」
「アキラッ!?」
間髪入れずにぶん殴られ、アキラはそのまま地面に倒れる。イリスが狼狽えている中、フーカは倒れている彼の上で馬乗りし、襟元を掴む。
「何も言わずに出ていきおって!院のみんながどれだけ心配したと思っとるんじゃ!?院を出て、バイトしながらお前の事を探し回ったけど、どこにもいなくて……一体どこほっつき歩いとったんじゃコラァ!“アイツ”も変わっちまったし、お前もお前で突然、どっか行っちまったし……」
強引に揺さぶりながら、思いの丈をぶつけるフーカ。最初は勢い付いていたが、それが段々と小さくなっていき、叫びが呟きになっていく。
「ワシは……」
「あ、あの……」
「なんじゃっ!!」
「ひぃっ!お、落ち着いて落ち着いて!?」
恐る恐る声をかけると、フーカに怒鳴られてしまったイリス。あまりの迫力に、思わず尻餅をついてしまう。
「その、アキラが……」
「…………あっ」
促されて、アキラの方を向く。
先程のパンチに加え、前後に振り回されたせいか、既に目を回している。
「お、おい!起きんか!」
「ちょいちょいちょいちょい!死ぬ死ぬ!それ以上はヤバいって!?」
イリスの制止も聞かずにバシバシ!と往復ビンタで頬を叩くフーカ。それでも、アキラは起きない。寧ろ、両頬が赤く腫れ、完全に白目を向いている。
今日の寝床は、アキラが知っている。その彼がこんな状態だ。
「どうしよう……アキラがいないと、場所がわからな――――」
急に不安になるイリス。暗い森の中を見渡すと、視線を一点に止めた。
「あっ!あった!」
「えっ、何が?」
「目印だよ、目印!ほらっ!」
はしゃぐイリスが指差した方向。それを見ると、木の板が釘で木に打ち付けられていた。それには、矢印が記されており、よく見ると、向こう側にも同様の木があった。
「アキラが目印を付けてあるって言ってたんだ!よかった~」
「お、おい!ちょっ、待たんか!」
一人で先に進むイリス。アキラをここに置いていく訳にもいかず、フーカは渋々、背負っていく事にした。
ずっしりとした体重が、彼女の体にのし掛かる。
「こ、こいつ……重っ……!」
バイト等で、力仕事には慣れている。しかし、同い年とはいえ、男子の体は重い。何とか踏ん張り、イリスの後を追いかけていった。
アキラの服装は、駆除班と同じデザインです。