ViVid Strike!ーアナザーストライクー   作:NOマル

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赤と緑のアマゾン

古びた廃工場にて、獣同士の争いが行われていた。

クモアマゾンは、奇声を発しながら、アルファに襲いかかる。

 

「よっと」

 

突進をかわし、すれ違い様に蹴りを入れる。背中を蹴られ、地面を滑るクモアマゾン。すぐに立ち上がり、鋭利な爪を振るう。

アルファはそれを払い、腹部に拳を数発入れ、裏拳で顔面を殴る。後退するクモアマゾンに、追撃をかけ、攻撃の隙を生ませない。

そこへ、もう一体のクモアマゾンが戦いへ身を投じる。背後から詰め寄り、口から糸を吐く。前方の敵を殴打すべく、振り上げたアルファの腕に絡み付く糸。

 

「あぁもう……!」

 

これで身動きは取れまい。そう高を括っていたが、すぐに終わった。アルファは、足を踏ん張り、力任せに引っ張りあげる。瞬発的な力に対応できず、もう一匹のクモアマゾンは引き寄せられ、待ち構えていたアルファのラリアットを食らってしまう。

 

「危ない危ない」

 

背中から地面に落ち、悶え苦しむクモアマゾンを足蹴にするアルファ。顔面を踏みにじられながらも、獲物(クモアマゾン)はこちらを睨み付ける。

それをものともせず、胸に走る傷痕をなぞるアルファ。突然、背後から突進を食らう。

 

「ぐっ……!?」

 

がっちりと掴み上げ、アルファを壁めがけて走り出すクモアマゾン。抗う隙も与えられず、そのまま二体は工事の壁を破り、外へ飛び出す。

それを見て、好機と感じたのか。踏みつけられた別個体が、立ち上がる。そして、フーカの方に視線を向け、奇声を上げながら、近づいていく。

 

「な、なんじゃ!?」

 

すれ違い様に糸を掴まれ、フーカは引き摺られていく。

 

「お、おい!どこに連れてくんじゃ!?この、放さんかぁ!!」

 

大声で叫ぶも、怪物は耳を貸さず、そのままフーカを連れ去っていった。

 

一方、未だにタックルを止められずにいるアルファ。鬱陶しげに舌打ちし、指をゴキゴキと鳴らす。

 

「止まれっての……!」

 

顔面に目掛け、左手を繰り出す。黒い手に備えられた鋭い爪は、深く食い込み、クモアマゾンは苦痛の声を漏らす。速度が遅くなり、その隙にアルファは地面に足をつけ、踏ん張って制止させる事に成功。そのまま足払いし、クモアマゾンを倒れさせる。

顔面を掴まれたまま、じたばたと暴れるクモアマゾン。抑えつけ、アルファは空いている右手を、ゆっくりと顔の横まで上げる。

 

「――――じゃあな」

 

ザシュッ!!――――と、右手は獲物の体奥深くまで潜り込む。肉を抉る様な、生々しい音。最早、悲鳴を上げる事すら出来ず、小刻みに痙攣するクモアマゾン。やがて、その右手は引き抜かれた。

手にしていたのは、心臓と思われる臓器。ドクン、ドクン、と鼓動が聞こえる。

 

全てのアマゾンの体内に共通して存在する“核”だ。

 

「気持ち悪いなぁ……」

 

忌々しげに言いながら、徐に握り潰す。少量の黒い血飛沫を飛び散らせながら、形を変えていく核。それに応じて、クモアマゾンの体が、動かなくなった。

否、体が段々と黒く変色。やがて体の形を維持しなくなり、黒い液体と化した。

核を破壊された事により、アマゾンは“駆除”された。手に付着した黒い液体を払い、アルファは辺りを見渡す。

 

「あ~、そういえばもう一匹いたっけ」

 

思い出したかの様に呟き、気怠そうにため息をつく。そして、また狩りに出るのだ。

 

「なんかまだ食われてない子がいたし、急ぎますか」

 

生存者がいるなら、尚更だ。アルファは早歩きから、すぐに走行へと切り替える。

紅き狩人の狩りは、まだ終わらない。

 

 

◇◆◇◆

 

 

工場跡から外へと飛び出し、場所は鉱山へと移された。周りには、作業で使用する重機が数台あり、今は機能していない。

 

「ぐあっ!?」

 

人気のない場に到着し、クモアマゾンは脇に抱えていた“餌”を乱雑に放る。ゴロゴロと地面の上を転がり、表情を歪ませるフーカ。睨む先には怪物がおり、じりじりとこちらへ迫って来る。

 

「く、そぉ……!」

 

身を起き上がらせながら、後退するフーカ。しかし、蜘蛛の糸で身動きが取れない為、距離は離れる所か、狭まるばかり。

先程、邪魔が入ったせいもあり、食事を行えなかったクモアマゾン。その息は荒く、昆虫の姿でありがらも、詰め寄る姿は腹を空かせた猛獣そのもの。目前には、格好の餌がある。やや小柄ながらも、バランスの取れた体つき。半ズボンから見える染み一つない肉付きの良い太腿。漸く味わえる事に期待しているのか、牙から涎が垂れ落ちる。

 

――――ッ!!

 

奇声を上げ、クモアマゾンは襲いかかる。

フーカは、迫り来る脅威に対し、ぎゅっと瞳を閉じた。

 

 

怪物の牙が、少女に襲いかかる――――その時だった。

 

 

 

「――――ァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

獰猛な雄叫びと共に、クモアマゾンは吹き飛ばされる。フーカは目を瞑っていた為、視認する事は叶わなかったが、“緑色の何か”が、クモアマゾンに飛びかかったのだ。自動車に跳ねられたかの様に、クモアマゾンはかなりの距離を転がる。やがて制止し、起き上がる――――と同時に、顔面を蹴られた。またもゴロゴロと地面を転がる。呻きながら、自分の食事の邪魔をした、“目の前にいる敵”を睨んだ。

 

「ゥゥ…グゥ、ルル………!!」

 

全身が緑色の獣――――【アマゾン・オメガ】は、膝をつき、唸り声を鳴らす。真っ赤な吊り目の複眼で、相手を威圧。立ち位置的に、フーカを庇っている様にも見える。背後にいるフーカは、呆然としたまま、黒いヒレの付いた背中を見つめていた。

 

「今度は、緑……?」

 

姿は、先程目にした“赤い怪人”と、体の特徴から、所々似ている部分――鋭いカッターの付いた黒い手足など――がある。

この怪人も、一体何者なんだろうか?

思考している最中、睨み合っていた二体のアマゾンは、同時に叫んだ。

 

「ラァアアアアッ!!!!」

 

駆け出し、距離を縮める二体。オメガはすれ違い様にクモアマゾンの足を蹴り上げる。一瞬で宙に浮き、オメガはすかさず、腕のヒレで切り裂く。黒い液体を飛び散らせながら、地面に叩きつけられるクモアマゾン。地面を転がり、そこへ飛びかかるオメガ。しかし、クモアマゾンはそれを回避し、起き上がって、口から蜘蛛の糸を射出。その糸は、オメガの体にまとわりついていく。

 

「ガッ!グウッ!!」

 

上半身が白い糸で覆われ、体を拘束された。

クモアマゾンは、口から糸を出したまま、両手でそれを掴む。奇声を上げながら、怪力で糸を振り回した。オメガはもがくも、そのまま体を投げ出される。地面を転がり、壁や重機に叩きつけられた。ぶつかる度に、鈍い音が鳴る。

再度、地面にぶつかる――――かと思いきや、オメガは両足で着地。

 

「グルルッ……!!」

 

地面に二本の線を描きながら、踏ん張って制止。全身に力を込め、自らの動きを妨げている糸を無理矢理引きちぎった。

 

「ッラァアアアアア!!」

 

驚くクモアマゾンを他所に、オメガは間髪入れずに引き裂いた糸を手にする。繋がれた先にいるのは、当然クモアマゾン。

オメガは両手に力を入れ、糸を振り回した。踏ん張るも、相手(オメガ)の力には及ばず、クモアマゾンは体を引っ張られる。さっきのお返しと言わんばかりに、大振りに回していくオメガ。

 

「ウラァアアア!!」

 

最後、振り上げてから、一気に振り下ろす。結果、クモアマゾンは背中から地面に落とされた。普通の人間なら、肉塊となって潰れているに違いない。だが、アマゾンの体は耐久力が高い。かつて、このミッドチルダにて暴れていた“種族”達とほぼ同等だろう。

しかし、今の一撃は、流石に効いている様だ。ブクブクと泡を吹き、痙攣している。

 

「オオオオオッ!!」

 

好機と見たか、オメガは倒れているクモアマゾンに飛び掛かる。馬乗りになり、何度も何度も、拳をぶつける。

また、雄叫びを上げたかと思いきや、クモアマゾンの首に噛みついた。見た所、口らしき物は見当たらないものの、接触している部分から黒い液体が飛び散っている為、口はあるのだろう。

クモアマゾンは奇声――否、悲鳴――を上げ、もがき苦しむ。何とか押し退け、逃走を図るも、すぐにオメガが取り押さえる。

仰向けから、うつ伏せの状態。今度は、クモアマゾンの背中から生えている腕を掴む。蜘蛛の爪らしき腕をそれぞれ一本ずつ両手で掴み、更に足蹴にする。地面に押し付けられるクモアマゾンは、抜け出そうと、二本の腕を動かす。砂を掻き出している様にも見え、必死になっているのが分かる。

すると、オメガは両手に持っている二本の爪と、“もう二本の爪”を脇で挟んだ。踏む力を、あからさまに強くするオメガ。それに伴い、抵抗が強まるクモアマゾン。

 

ミシミシ……と、爪の付け根から、音が鳴った。

 

「ォオアアアアッ!!!」

 

力を振り絞り、四本の爪を一気に引き抜いた。ブチッ!!と肉が千切れ、黒い血液が飛び散る。力が余り、後退してしまうオメガ。脇に挟んでいた二本の爪が地面に落ち、もう二本は乱雑に放る。

 

「うわっ!?」

 

その内の一本が、フーカの前に投げ出された。思わず後退り、顔を青ざめる。それに加え、目の前で繰り広げられている、“獣同士の殺し合い”。街のチンピラと喧嘩するのとは、次元が違う。無意識の内に、その体は震えていた。

 

「――――ん?」

 

その場に、もう一人が介入する。先程、もう一体のクモアマゾンを駆除したアルファだ。急いで駆けつけたものの、予想だにしない展開に、眉を潜める。

見た所、少女はまだ無事な様だ。それに、二体のアマゾンは、お互いに殺し合っている。クモアマゾンはともかく、もう一体は何だ?

 

「あのベルト……」

 

重機の陰から、様子見として、観察するアルファ。緑色のアマゾンが腰に身に付けているベルトに注目する。“自らが開発し、身に付けているベルト”と同じだ。

 

「それに、あの腕輪は……」

 

今度は、オメガの左腕に装着されている腕輪に目線を向ける。クモアマゾンが身に付けている物と似た代物。だが、アルファには分かる。あれは、かつて自分が“ある少年”に付けた物と同じだと。

 

「って事は、まさかあいつ」

 

一つの結論が出たと同時に、オメガが動き出した。

最早、満身創痍となっているクモアマゾンの体を持ち上げ、またも地面に叩きつける。そして、蹴り上げた。地面を滑っていくクモアマゾン。口から出ている泡は、黒く滲んでいる。立ち上がろうとするも、足がガクガクと震えていた。

 

「ガゥルルルッ!!」

 

だが、それでもオメガは攻撃を止めない。止めを刺す。

体勢を低くし、ベルトの左グリップを捻った。

 

【VIOLENT・PUNISH】

 

電子音声と共に、右腕の黒いカッターが僅かに伸びた。鋭さが増した様に見える。狙いを定め、オメガは駆け出した。

 

 

そして、すれ違い様に一閃――――。

 

 

引いていた右腕は、前に出されていた。

クモアマゾンは、徐に後ろを振り向く――――と、同時に、体が上下二つに“分かれた”。グチャ!と、水音を立て、地面に転がる“クモアマゾンだった”物。今では、ピクリとも動かない。命を失ったその肉体は、原型を保てなくなり、黒い泥状の物質と化した。

 

「終わっ…たの、か……?」

 

茫然と呟く、フーカ。ぺたんと尻を付き、未だに放心状態のままだ。

オメガは、肩を上下させ、微かに唸っていた。俯いたまま、動こうともしない。

 

「いや~、お見事お見事」

 

唐突に、拍手が聞こえた。見れば、アルファが手を叩きながら、ゆっくりと歩み寄っている。やがて手を下げ、オメガの前に立つ。

 

「ねぇ、君……“坊や”でしょ?」

「…………」

「僕の事、覚えてる?ほら、君を助けてあげた。腕輪を付けてあげた、僕だよ」

「…………」

 

気さくに話しかけるアルファ。知り合いなのか?と思われたが、対するオメガは一言も喋らない。

はぁ……と、ため息をつく。覚えていないのか、と舌打ちしつつ、天を仰いだ。

 

「――――喰エ」

「あ?」

「喰エ……喰ワレル前ニ、喰エッ!!」

 

アルファを敵と見なしたのか、身構えるオメガ。唸り声が大きくなり、臨戦態勢に入る。

いきなり戦意を向けられ、困惑するか、と思われたが、アルファはそうではなかった。

 

「へぇ、殺るっての?」

 

楽しそうな声音、傷をなぞり、両手を広げるー右手を横、左手を下に向けているーアルファ。

 

「……来な」

「グルルッ……!!」

「まだ、終わっとらんかったんか……」

 

相対する紅と緑のアマゾン。

 

まだ、戦いは終わらない。

 

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