シャングリラ・フロンティアの日常アフター   作:清涼飲料酢

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とあるプロゲーマーの娘の夢

 私には母親が三人……いや、八人……くらいいる。

 産んでくれた強いお母さんと、運転が上手くてドジなメイドママと、歴史や機械に詳しい電脳母。

 後は夢の中に五人ぐらい。

 お父さんは一人。いや、まぁ普通はそうなんだけど。

 比較的頭がおかしいけど良いお父さん、だと思う……。

 お母さんとは凄い仲が良い。

 ママや母とは仲が悪い訳じゃないけど、あの二人とお父さんは悪友みたいな感じ。

 お父さんのお仕事をお母さんがサポートしてるから、結構な頻度で家に居なかったりする。

 それにこっそり母も携帯端末に入ってついて行ったりする。

 そういう時はママとドライブしたり、寝たりするのが私の日常。

 私は寝て夢を見るが好きだ。

 よく寝すぎてお父さんが「睡眠ガチ勢か?」とか言ってたけど微妙に違う。

 夢を見るのが好きなのであって寝るのはその為の手段だ。

 お母さんのお爺ちゃんが「好きなときに寝られるように」って『夢枕』って(わざ)を教えてくれた。

 おかげで好きなときに寝られるし、起きる時間もある程度調整出来るようになった。幸せ。

 

 で、夢の話だけど……私の見る夢はいつも同じ。というか、同じ世界。

 どうやら、お父さんやお母さん達もこの世界に居たらしい。兎のお母さんが教えてくれた。

 兎のお母さんの話だと、お父さんが最後に寝ていたベッドで、赤ちゃんだった私が唐突に現れたらしい。

 人間の赤ちゃんを初めて見た兎のお母さんは、たまたまその時兎の国に来ていた聖女のお母さんに私を見せたらしい。

 聖女のお母さんは私を見るとすぐにお父さんの子供だと分かったらしい。

 その際に「この子はあの人の子供のようですね。うーん、そうですね……。折角ですから私が母親になりましょう♪」と言ったらしい。

 我が母ながら何とも豪気な聖女である。

 因みにこの言葉を切っ掛けに、兎のお母さん、蛇のお母さん、女王のお母さん、エルフのお母さんが増えることになったらしい。

 ……どうしてこうなった?

 うん、先ずは各お母さんを紹介しようかな。

 

 兎のお母さん。

 名前はエムルお母さん。

 見た目は完全に兎。

 魔法が得意で、兄弟姉妹がたくさん居る。

 私にとってはおじさんおばさんにあたる兎々たち。

 蛇のお母さんといつも一緒に居る。

 

 蛇のお母さん。

 名前はウィンプお母さん。

 見た目は殆ど人と同じだけど、本人(?)曰く蛇らしい。

 彫刻と料理が凄い上手い。

 師匠のお姉ちゃんのことが苦手らしい。

 

 聖女のお母さん。

 名前はイリステラお母さん。

 私はこのお母さんの笑顔以外の表情を見たことがない。

 一番最初にこっちでお母さんになってくれた人。

 逆に言えば、このお母さんが真っ先にお母さんになってくれたからこそ、私はこっちでも寂しい思いをせずに過ごせている。

 

 女王のお母さん。

 名前はアーフィリアお母さん。

 聖女のお母さんが私を紹介しに行ったときに、その場で「あのお方御子(おこ)のならば、わたくしもその子の母親になります!」と言ったらしい。

 未だに未婚だが私のせいじゃないと思いたい……。このままだと、私が次期女王なので正直早く結婚して欲しい。

 

 エルフのお母さん。

 名前はアリュールお母さん。

 お父さんに命を救って貰ったことが有るらしい。

 お父さんには結局感謝の気持ちを伝えることが出来なかったけど、私を育てることでせめてものお返しが出来たら良いと言っていた。

 実際にこっちで一番私に色々教えてくれるお母さん。

 殆どサバイバル術なのは仕方ないのかな?

 

 あ、師匠のお姉ちゃんの事だけど、名前はティーアスお姉ちゃん。

 お父さんの先生だったらしい……お父さんより年下っぽいんだけど、お父さんはホントに何やってたの?

 ちなみに、すっごいよく食べる人。

 あと、こっちの世界での戦い方を教えてくれる。

 

 こっちの世界での私は現実の私よりも凄い動きが出来る。

 現実でもお母さんが護身術を教えてくれるんだけど、お母さんの護身術は護身術って言うより忍術とかそんな感じなのが凄い気になる。

 現実でも結構動ける方だと思っているが、夢の私は正直人間離れしていると思う。

 兎のお母さん曰く「サンラクさんと生きた鎧の人のハイブリッドですわ!?」とか言ってたけど、『生きた鎧』って何?

 むしろそれがお母さんのことだとしたら、お母さんも何やってたの?

 えっと、話が逸れたけど……

 私は夢だと空を走れるし、ちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしないぐらい体が丈夫だ。

 そんな身体能力を持て余し気味だった私を指導してくれたのが師匠のお姉ちゃん。

 師匠のお姉ちゃんのお陰で、多少の魔物は問題なく勝てるようになった。

 

 そんな私の夢だけど、夢のお母さん達は口をそろえて「こっちの事はお父さんには話さなくて良い」と言う。

 どういう事なのか聞いたら「こっちは既に閉じた世界。お父さんがもう来ることは出来ないのだから、こっちの話をしてもお父さんが可哀想でしょ?」って言っていた。

 メイドママと電脳母も同じようなことを言ってたから、お父さんとお母さんは私の夢の内容は知らない。

 

 そんな感じの私の家族達。

 

 あ、私のこと?

 私の名前は『陽務 (ろう)

 栗きんとんが好きなプロゲーマーの娘です。

 


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