嫉妬の炎で暖を取る   作:大葉景華

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第1話

「……………………」

 

「………………?」

 

「……………………」

 

「…………ねぇ、邪ンヌ」

 

「あ? どうしたのよ、マスター。 あと、私のベッドに勝手に寝転ばないで頂戴」

 

「ああ、それはごめん。 で、今何してるの? それ」

 

藤丸立香が指摘する『それ』とは今邪ンヌことジャンヌ・ダルクオルタがやっていることであり、それは一般的に恋人同士が行うようなことである。しかし、今邪ンヌがしている対象は彼女が密かに想っている相手ではない。 その相手は今彼女のベッドに寝転がっている。

今、邪ンヌがしている事。 それは、ジークの頬を抓ったり引っ張ったりしている事である。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「何?なんか文句でもあるの?」

 

邪ンヌは毅然とした態度でそう言い放った。 ここでようやく藤丸も上半身を起こし彼女の正面に向く。

 

「いや、俺が部屋に入った時からずっとしてるじゃん? なんでそんな事してるのか気になって。 あとジークの顔がなんとも言えない表情になってるよ」

 

恐らく藤丸が来る時間よりずっと前から弄られていたのだろう。 しかし、ジークはジークでなされるがままで困惑した表情をしている。

 

「あの妹モドキが聞いたらしいけどコイツって邪龍ファブニールらしいじゃん? だけどどう見たってただのナヨナヨしいサーヴァントのなりそこないじゃない。 だからどんなんか気になっていたのよ」

 

「リリィが聞いたって……ああ、天草四郎か」

 

「そうだったのか……それで俺は1時間も頬をいじられていたのか……。 すまないが、今の俺は本当の俺ではなくて本体から切り離された端末みたいな物だからファブニールの姿にはなれないんだ。 期待に添えず本当にすまない」

 

ジークが申し訳なさそうな表情をする。

邪ンヌが呆れたような、又は諦めたような顔をして溜息をつきながらジークの頬を強く捻った。

 

「はぁ〜……。 あんたが気にかけることじゃ無いわよ」

 

そういいながらも頬つねりを継続する。 やわらかいジークの頬は邪ンヌの赴くままに好き勝手伸び縮みする。

 

「邪ンヌ……そろそろアストルフォが来るからやめたら?」

 

藤丸が言うも邪ンヌは素知らぬ顔だ。

 

「はぁ?あの理性蒸発男女が来たって構わないわよ。 あいつに何が出来るっての?」

 

「まぁ……それはそうだけど……」

 

「そんな事ないぞマスター。 ライダーはやる時はやるぞ」

 

そうこう話しているうちに息を切らしたアストルフォが部屋に飛び込んで来た。

 

「マスター!ジークここに来なかったって……ジーク!? どうなってるの!?」

 

ピンクの長い髪を束ね、整った顔立ちのライダー、アストルフォ。 ジークを助けるべく邪ンヌに掴みかかる。

 

「ちょっと! ジークに何してるのさ! ジークを離してよ!……ぐぎぎぎぎぎぎ」

 

ライダーが顔を歪めながら邪ンヌの腕を引き離す。

 

「ジークが無抵抗なのをいい事になんてことしてるの! 羨ましい!」

 

「後半アンタの願望漏れてるわよ……。 まぁもう飽きたしそれもう連れ帰っていいわ」

 

「言われなくてもジークは僕が持って帰るもんね!」

 

アストルフォがジークと共に立ち去る。 藤丸はアストルフォが来てから一言も発する間もないほどの出来事だった。

 

「……ジーク、行っちゃったね」

 

「そうね。 ……ちょっと詰めなさい」

 

藤丸を押しのけ隣にドスンと腰を下ろす。 触れずとも感じる距離に藤丸は顔を赤くする。

 

「邪ンヌ。 ……ちょっと近いよ?」

 

「そうね。 だから?」

 

「だからって……。 邪ンヌは女の子なんだから……」

 

藤丸がそういうも邪ンヌは素知らぬ顔だ。

 

「はっ! そういうのは女の方がか弱いから言うセリフよ。 例えアンタが襲ってきたってサーヴァントの私に勝てるとでも?」

 

邪ンヌが挑発するように言う。 藤丸が少しムッとした様な顔をするが、藤丸を煽るのに夢中な邪ンヌは気が付かない。

 

「まぁ? 仮にアンタがなけなしの勇気を絞り出して私に全てを捧げるって違うなら少しくらい寵愛を向けてあげても良くってよ?」

 

「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 

「へ? アンタ何言って……きゃあ!」

 

いくらサーヴァントとはいえ、油断していてはどうしようもない。 肩が触れ合う寸前の藤丸がいきなり体を捻り引き倒す形で邪ンヌをベッドに押し倒し馬乗りになる。

 

「ちょちょちょ! 本気!? 待ちなさいよ! まだシャワーとかも……」

 

「俺はそんなこと構わないよ?」

 

「私が構うの! 気が利かないわね!」

 

「気が利かない? それは邪ンヌの方じゃないか」

 

「は?」

 

「わざわざ俺の部屋に来たのに……ジークに構ってばかりじゃないか」

 

「……なるほどね」

 

邪ンヌが手探りで部屋の電気を消す。

 

「邪ンヌ?」

 

「カルデアは寒いわ。 ……ねぇ、マスター。 私、寒いのは嫌いよ」

 

「……じゃあ俺が暖めてあげるよ」

 

生前の最後。 最後まで神を信じ、その身を炎に包まれた聖女は墜ち、今はその身を愛の炎を包まれている。




おかしい……俺はアスジクを書くはずだったんだ……
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