決行! お嬢様作戦!   作:鈴ノ風

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NO.2 お嬢様は盗賊とともに

 ノエル・ド・ヴァルロワは『土』のスクウェアメイジである!

 彼女は生まれ持った類稀なる才能に慢心せず、美しい彫像や金を『錬金』し、メイジとしての実力を日々磨き続けていた!

 同じく『土属性』のギーシュには「アレがスクウェアか…………」などと言われているが気にしない!

 息抜きに作ったガーゴイル用ロケットパンチや内蔵兵器類がたまり続けているがそちらも気にしない!

 全ては究極の『お嬢様』となるために!

 

「おーっほっっっぅおえぇぇぇ…………」

 

 がんばれノエル! 負けるなノエル! ヤケ酒二日酔いには果物が効くぞ!

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 トリステイン魔法学院は、その名の通り魔法を教えるための教育機関である。

 メイジの大半が貴族でもある関係上、貴族としての嗜みなども教育しているが、あくまでも魔法の教育が主である。

 その関係上、学院は学生、教師含めてすべてメイジで構成されている。つまり魔法学院に侵入し害を及ぼすということは、メイジの巣窟に害を及ぼそうとすることを同時に意味している。

 そのため、トリステイン魔法学院に押し入ろうとする不届き者はおらず、見張りの当直の中に居眠りするものがいるほど、学院は日々平和であった。

 そんなトリステイン魔法学院に、ある日衝撃が走った!

 なんと学院に侵入者が出たのだ! それだけにとどまらず、宝物庫が破られ、保管されていた『破壊の杖』が盗み出されてしまった!

 犯人は悪名高き『土くれ』フーケ。トリステインの貴族たちから財宝を盗みまくっている、あのフーケである!

 トリステイン魔法学院でもあまりない大事件、巨大ゴーレムによって壁を破壊するという大胆な手口、賊の侵入と掠奪を許したという不名誉、それらが教師メイジたちのプライドに火をつけ、学院中を騒がせた!

 当直でありながら居眠りをしていたシュヴリーズは当直をサボったことを責められ、その責任を負わされそうになった。だが学院長オスマンの仲裁によりそれは無事免れた。

 その後、ミス・ロングビルによってもたらされた情報により『土くれ』フーケの隠れ家が発覚。学院の教師たちは捜索隊を編成することとなった。

「では、捜索隊を編成する。我と思うものは、杖を掲げよ」

 オールドオスマンの問いかけ! だが誰も応えなかった!

「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」

 二度目の問い! だが誰も…………

 いや見よ! 一人いるではないか!

「ミス・ヴァリエール!」

 桃色とブロンドの髪色をした少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、勇敢にもその杖を掲げていた!

「何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて…………」

「誰も掲げないじゃないですか」

 そのルイズを見て、続くように二つ杖が掲げられる。

 キュルケ、タバサ。どちらもルイズとともにフーケの窃盗現場の目撃者であり、生徒であった。

 教師の大半は彼らの幼さを心配したが、オスマン学院長だけは、彼らを信頼のまなざしで見つめていた。

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

 その言葉に三人が「杖にかけて!」と答えようとした。

 まさにその瞬間!

 

「おーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほ!」

 

 響き渡る高笑い! タバサ以外の全ての者達の顔が曇った!

「げ、この声は…………」

「話は聞かせてもらったですわ!」

 輝けるブロンド! 美しき孔雀の扇子! 傍らには箱のような鋼鉄のガーゴイル!

 誰あろう、ノエル・ド・ヴァルロワである!

「うわ似非ブロンド」

「誰が似非だとですわ!」

 サイトの鼻先にビシッ! っと扇子を突き付け黙らせると、ノエルは頭を抱えるオスマンに直訴した。

「オールド・オスマン! ワタクシも捜索隊に参加しますわ!」

「いやぁ、君は生徒じゃろ?」

「あいつらも生徒だですわ!」

「しかしの、君はなんというか、その…………」

「お前じゃ不安だってさ」

「お黙りやがれですわMr.サイト!」

 茶々を入れるサイトに再び扇子を突き付けた。

 ノエルは彼が、自らと同じ地球出身であることにとっくに気づいていた。だが気づかぬふりをした。今の彼女はヴァルロワ公爵家の令嬢、ノエル・ド・ヴァルロワなのだ。

 平民と扱われるサイトと、お嬢様たるノエルが同郷であるなど、二人が認めても周囲が認めはしない!

 だからノエルは泣く泣く、彼に冷たく当たっているのだ。

(ワタクシは生まれながらの高嶺の花。許せですわサイト!)

 なお、真実を明かしたところで「また変なこと言いだしたよこいつは」で片づけられるという真実を、ノエルは知らない。

 世の中には知らなくていいこともあるのだ。

「まさかオールド・オスマン! ワタクシの実力を疑うですわの?」

「い、いや君の力はよく存じているよ。しかしね」

「では話は早いですわ。目には目を、『土』には『土』を! 『土』のスクウェアメイジ、『砲煙』のノエルが、『土くれ』フーケ捜索隊に参加しますですわ!」

 ルイズに匹敵するほどの胸を張り、高らかに杖を掲げて「杖にかけて!」と叫ぶノエル。

 オスマンも教師たちも「どうしてこうなった…………」と呻くほかなかった。

「…………なあルイズ。『スクウェア』って一番すごいメイジなんだよな?」

「ええ。その通りよ。その通りのはずなのよ!」

 ルイズは頭痛がしてきた。

 『ゼロのルイズ』と呼ばれてきた彼女は、ノエルがスクウェアメイジであるという事実に、世界と始祖ブリミルの理不尽を感じずにはいられなかった。

「さあ皆さま! このノエルが参加するからにはどうぞ大船に乗ったつもりで安心しなさいですわ!」

 ノエルは『任せろ』と自身の張った胸をドンと叩いた。

 そして盛大にむせた。

「…………『泥船』の間違いじゃねーの?」

 そう呟くサイトに、反論する者はいなかった。

「…………あー、ミス・ロングビル。馬車の用意と…………彼女のお守りを」

「…………もとよりそのつもり、ですわ。ええ、はい」

 

 

 ミス・ロングビル、改め『土くれ』フーケは、計画通りに行っているはずの現状に、なぜか頭を痛めていた。

 

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